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このページではPS3ソフト『うみねこのなく頃に ~魔女と推理の輪舞曲~』『うみねこのなく頃に散 ~真実と幻想の夜想曲~』とPSPソフト『うみねこのなく頃にportable』を紹介しています。 ---- #contents() ---- *うみねこのなく頃に ~魔女と推理の輪舞曲~ / うみねこのなく頃に散 ~真実と幻想の夜想曲~ |ジャンル|アドベンチャー|CENTER:&amazon(B0042VIZKU)|&amazon(B005LM0JYO)| |対応機種|プレイステーション3|~|~| |販売・開発元|アルケミスト|~|~| |発売元|加賀クリエイト|~|~| |発売日|魔女と推理の輪舞曲:2010年12月16日&br()真実と幻想の夜想曲:2011年12月15日|~|~| |価格|各7,980円(税抜)|~|~| |レーティング|CERO:D(17歳以上対象)|~|~| |判定|なし|~|~| |ポイント|原作を声優付きで完全移植&br()原作の雰囲気を残した上での演出強化&br()追加要素はほとんど無し|~|~| |>|>|>|CENTER:''[[なく頃にシリーズ]]''| **概要 同人ゲーム『ひぐらしのなく頃に』でゲーム界に衝撃を与えた竜騎士07のシリーズ第2弾『うみねこのなく頃に』のコンシューマ移植版。~ 『魔女と推理の輪舞曲』は原作のEpisode1から4、『真実と幻想の夜想曲』はEpisode5から8を収録している。~ 移植にあたり立ち絵及び背景画像の一新やイベントスチルの挿入、前年に放送されていたアニメ版の声優((ただし、一部サブキャラクターのキャストが変更されている。))を起用したフルボイス化が行われている。 内容は、大富豪・右代宮家が所有する孤島「六軒島」に集まった人間たちを襲う恐怖の連続殺人事件が、人間の手によるものか、それとも魔女が魔法で起こしたものかを、神の視点から考察するものとなっている。 #region(close,主要登場人物・軽度のネタバレを含むため注意) :''右代宮 戦人(うしろみや ばとら)''|本作の主な主人公。右代宮家当主・右代宮金蔵の孫の1人であり、父の再婚に反発して家を出ていたが、6年ぶりに六軒島での親族会議に参加することとなる。&br()本作の物語の前半は、六軒島で起こる様々なパターンの事件を「ゲーム」として俯瞰する不思議な世界に「プレイヤー」として招かれた戦人が、「ゲームマスター」として「全ての惨劇は魔女の仕業」と嘯くベアトリーチェに抗う様子を描いている。 :''ベアトリーチェ''|六軒島のどこかに住まうと実しやかに語られる「黄金の魔女」。金蔵にとって最愛の人物とされ、金蔵の子たちは金蔵に莫大な金を与えた愛人を「魔女」と呼んだのだろうと解釈している。&br()戦人が「プレイヤー」として招かれた世界(通称上位世界)では堂々と姿を現し、「全ては魔女の仕業」と主張し戦人に対決を挑む。 :''ラムダデルタ''|上位世界で戦人の前に姿を現す「絶対の魔女」。&br()その姿は「ひぐらしのなく頃に」に登場するとある人物の幼少期に瓜二つ。 :''ベルンカステル''|ラムダデルタと愛憎入り乱れた関係にある「奇跡の魔女」。&br()その姿はやはり「ひぐらしのなく頃に」に登場するとある人物に瓜二つ。 #endregion **特徴・評価点 -全体的なプレイの快適化。~ 原作ではシーンのスキップや巻き戻しができなかったが((一旦クリアしたエピソードを再プレイする際にはどのシーンから始めるかを選択可能だが、プレイ中はバックログの確認と文章送りの高速化はできるものの、シーンを飛ばしたり好きな場所に巻き戻したりはできない仕様になっている。))、本作ではボタン一つでシーンをスキップできる他、バックログから好きな場所を指定してジャンプすることができるようになっている。 --原作ではセーブすることで好きな場所から物語を始められるようになっていたが、その代わりとしてブックマーク機能が搭載されている。~ また、既読であればバックログに現在位置より先のシーンも表示されるため、未来に飛ぶことも可能。好きな場所から物語を読み返すことができる。 --また、原作ではスキップ不可能だったエンドロールがスキップ可能になっている。 -立ち絵の一新。~ 原作は絵柄の癖がかなり強く人を選ぶが、本作ではある程度、万人受けするものとなっている。 --2人いる原画担当のうち1人は原作でも作中に登場する肖像画の作画を担当していた江草天仁であり、原作の雰囲気もある程度残されているため、原作ファンからも概ね受け入れられた。 ---特に『散』から登場するキャラクターの一部は原作の立ち絵を強く意識した作画となっており、違和感が少なくなっている。 ---「原作の立ち絵の方が表情が豊かでいい」「なんだか綺麗になり過ぎていて違和感がある」などの意見ももちろんあるが、これは個人の好みの問題になるだろう。 --原作では表情差分の多さで多彩な表現を可能にしていたが、本作では表情差分の数こそ原作には及ばないものの、ポーズ差分を増やすことで表現の幅を広げている。 -アニメ版の声優陣による熱演。~ アニメ版は原作のEP4までしか放送されておらず、EP5以降を声優による演技で楽しめる。 --登場人物の台詞だけではなく、要所要所でモノローグなどにもボイスが付加されている。 --特に「六軒島に住まう魔女」として語られる女性・ベアトリーチェを演じる大原さやか女史は、作中に数多く登場する「『ベアトリーチェ』に関係する女性たち」をほぼ1人で演じており、1人7役を担当している。 ---残虐さと無邪気さを併せ持った魔女、まだ魔女になる前の無垢な少女、緊張を強いられる環境でも明るく振る舞う健気な女性、自らの存在意義に思い悩む女性など、それぞれのキャラクターがきっちりと演じ分けられており、ファンからも評価は高い。 -演出の大幅強化。~ 舞い飛ぶ黄金蝶のエフェクトや赤き刃などの魔法描写における演出を中心に、原作の画像を参考にした動画への差し替えが行われている。 --特に、EP3における魔法大戦やEP8におけるラムダデルタとベルンカステルの魔法は、大幅に動きが追加され非常に迫力あるものになっている。 -原作を忠実に移植している点。 --やむなく表現が差し替えられたり削られた部分((アニメ版でも規制対象になった「下女」「借り腹」といった単語や未成年の飲酒描写、実在の推理小説及び推理作家の名前に触れる台詞など。))や、小説版における加筆修正が反映された部分はあるが、基本的に原作の文章を忠実に移植している。 --BGMも、コンシューマ版OP曲が追加された以外は原作と同じものが使用されている((ただし、一部の曲はフルボイス化に当たって音声を聞き取りにくくならないように配慮したアレンジが加えられており、ボーカル曲もほとんどが再収録を行ったPS3バージョンとなっている。))。 ---『ひぐらしのなく頃に』の移植作である『[[ひぐらしのなく頃に祭]]』では、一本道のサウンドノベルである『ひぐらし』にゲーム性を持たせようと前半エピソードを共通パートから選択肢で分岐する方式へ変更した結果、描写が矛盾だらけになるなどして原作ファンから批判される結果となった。~ 更に、権利関係などの問題があったかもしれないとはいえ原作のBGMを使わなかった点も、大きな不満点として挙げられることが多かった。~ その点では、今回は『祭』における反省を上手く活かしていると言える。 --『散』では各EPのOPムービーとして、原作のOPムービーをコンシューマ版の立ち絵及び背景画像を使って再現したものが使用されている。 --ほぼ唯一のコンシューマオリジナル要素は、新規デザインされた魔女エンジェ・ベアトリーチェ。 ---原作におけるエンジェ・ベアトリーチェは元となった右代宮縁寿と同じ姿だったが、今作ではコンシューマオリジナルの魔女衣装を着用している。~ デザインにはエヴァ・ベアトリーチェの衣装や喪服の要素が取り入れられており、竜騎士07がデザインした他の魔女たちと比べても違和感の少ない仕上がりとなっている。 **問題点(システム) -折角のフルボイス化なのだが、台詞が終わった後の残響が消える前に次の台詞が入るなど、音声の繋ぎ目が不自然でぶつ切りに聞こえてしまう部分がある。 --特にオートモードでは音声再生のタイミングが速すぎる部分が多々ある。~ この点は『ひぐらし』のコンシューマ移植の際にも意見が出ていたのだが、あまり改善されていない。~ 膨大な台詞の1つ1つに対して再生タイミングを調整するのは現実的ではないため、ある程度は仕方ない部分もあるのだが。 -『ひぐらし』のコンシューマ移植シリーズ(『祭』及び『ひぐらしのなく頃に 絆』)とは異なり、本作には追加エピソードが無い。 --原作の頒布の際に会場購入特典として竜騎士07執筆の短編などを掲載した小冊子が配られ、後に大部分が本編と同じゲーム(短編集『うみねこのなく頃に 翼』及び別作品の予約特典として頒布された『うみねこのなく頃に 羽』)として纏められたのだが、そうした短編の類もコンシューマ版には一切収録されていない。 ---小冊子の内容には本編の謎に対するヒントと取れる描写を含んだものもあり((特に、現時点で最後の小冊子である「我らの告白」は作中のトリックについてかなり踏み込んだヒントが描かれた長編であり、更に『羽』と同時頒布であったためゲーム媒体への収録が一切されていない。))、コンシューマ化されればフルボイス化やイベントスチルの挿入といった追加要素も望めるため、コンシューマ化を望む声も少なくない。 --ただし、『ひぐらし』移植作での追加エピソードは竜騎士07本人が直接執筆していないことなどが原因で非常に賛否が大きく、追加エピソードがないことを好意的に受け止めるユーザーも少なくないことも述べておく。 -フルボイス化に伴う演出の変更。 --音声が追加されたため、エンドロールに突入する直前の台詞が長い場合はボイス再生に掛かる時間とED曲の長さを考慮し、エンドロールを先に流して曲が終わった後に台詞が流れるようになっている。 ---この演出変更により、本来はED曲をバックに表示されていた台詞の一部((EP1お茶会においてベアトリーチェが畳み掛けるように口にする謎、EP3裏お茶会における縁寿の「迎えにはリムジンをよこして頂戴」など。))がBGMなしの状態で流れることとなるため、テンポが原作と変わったことに対する不満の声も上がった((原作ではED曲が流れ始めてから放置した場合は曲がループするようになっているが、コンシューマ版ではED曲が流れ始めてからの台詞が台詞送り不可で自動的に進むようになっており、スキップしなければED曲1ループの間にエンドロールが終わるように調整されている。))。 **問題点(ストーリー) -本作の原作となる『うみねこのなく頃に』は、シナリオの流れについて批判的な声も多く、賛否両論の傾向が強い作品である。~ 上述の通り本作は細部の変更はあれど原作の忠実な移植と呼べるものであるため、そういったシナリオ面での問題点もそのまま引き継いでいる。 #region((以下、ストーリーの核心的なネタバレ。未プレイの方は見ないことを推奨します。)) -「推理ゲーム」概念からの逸脱 --本作のシナリオは基本的に、出題者((多くの場合ベアトリーチェ。))が六軒島を舞台に作成した「事件」を、回答者((多くの場合戦人か縁寿。))が謎を解くという形で破る、という形式で行われるメタ構造的な推理バトルであり、一般的な推理ゲームとは一線を画している。 --本作に前後して清涼院流水や綾辻行人など、「推理小説」という概念の枠組みを超越した作品を発表する作家たちが生まれたが、本作もその流れと考えて良いだろう。 ---しかしそれ故にあまりにも人を選ぶ作品となっている。推理作品に無くてはならないとされる「探偵」も「謎」も不明瞭な本作は、そもそも「推理ゲーム」と呼んで良いのかすら疑問なのだが、にも関わらず本作は「本格推理もの」であることを宣伝している為、ユーザーにしてみれば「騙された」という感じを抱く。 -一部の荒唐無稽なトリック --本作では無数の密室やトリックが発生し、それを回答者が「現実的な方法((本作の出題者と回答者との戦いは「魔法存在派」と「魔法否定派」との間の舌戦でもある為、回答者は魔法でない方法でトリックが実現可能であると証明しなければならないから。))で」回答していくのだが、その解き方が相手の言葉尻を捉えた屁理屈や机上の空論に満ちており、''真面目に考えたプレイヤーが馬鹿を見る''結果になってしまっている。 --「『絶対に真実だと保障されている』物事は『赤い文字』で表示する」というシステムを使い、「『赤い文字』の内容に反さない回答を(時には屁理屈を使って)ひねり出す」という内容はどちらかと言うと論理パズルに近い。 ---このゲームの話題で最も取り上げられる事例が、「四方を壁に囲まれた密室殺人」の例。回答者が何と回答したかと言うと「出題者は死体の状況や死因、壁面や窓・扉の状態について『赤い文字』で詳細に語った一方、天井については『赤い文字』での言及を避けた。従ってこの部屋に天井はなく、犯人は天井から出て行った」。~ もっとも、この出題は「2人の人間が、それぞれが考えた『密室殺人』をぶつけ合い対決する」という流れで行われたもので、「『六軒島』と『右代宮家』を巡る物語」として語られるメインの謎とは無関係。人間関係や動機といったものが一切排除された、いわば推理クイズに近いものである。~ ただ、いくらおまけの推理クイズとはいえ真面目に考えた結果の解答がこれでは、脱力感すら覚える人がいることも致し方ない。 -ゲームボリュームが大きすぎる。 --一般的にはゲームに於けるボリュームはあればあるだけ良いとされるが、本作はADV、加えて推理ゲームであるということで少々事情が変わってくる。 ---つまり、あまりにもボリュームがあり、多数の事件が発生する為、プレイしているうちにどれがどのEPの何夜目の事件だったのか、整理と理解が追い付かなくなってくるのである。~ これに関してはプレイヤーごとの理解力の差も関係しているが、劇中で発生する事件の登場人物が全て同じであること、そしてトリックがその場で解決されず、後のEPで解説されるような構造が多いこと等、ゲーム側が理解をややこしくしている部分もある。 ---本作の移植元の同人ゲームは、8月・12月のコミックマーケットに合わせて8回に分けて販売された為、同人で発売された当時はEPごとにじっくりと考察する時間が与えられていたのだが、本作のようにいくつかのEPをまとめてプレイすると確実に訳が分からなくなる。 ---この膨れ上がったボリュームは、プレイ感覚の冗長さにも繋がっている。 -「ノックスの十戒」「ヴァンダイン二十則」の多用。 --推理小説に詳しくない方に説明すると、これらは「推理小説でやってはいけない展開」や「望ましくないトリック・顛末」を述べた、推理作家向けの一連の法則のこと。本作の舌戦ではこれらの法則が「ノックスの十戒に違反しているからその理屈は通らない」という風に多用される。 --しかしこの規律が提唱されたのは90年近く前であり、現代ではこの法則を守っておらずとも優れた作品は多数存在している。また、この法則には一部内容が不適当な記述も存在し((「中国人を作品内に登場させてはいけない」という法則がある。これは当時の西洋で、中国人が超能力者的な存在だという偏見があった為。この項の存在だけで、法則の妥当性が怪しいのは推察されるだろう。))、そもそも''これを提唱したノックス自身、この法則を守っていない''。つまりこの法則に信憑性は殆ど存在しないというのが推理小説界の常識なのだが、本作ではこれを真に受けてしまっている為、「何を今更」感がかなり強い。 --ちなみに「うみねこ」という作品を推理作品として見た場合、当然「ノックスの十戒」を守ってはいない。 ---ただし、作中で「『十戒』を破った作品を異端と批判する原理主義者がいる」「本来、『十戒』とは思考を助ける杖のようなもの」と語られており、本作での「十戒」や「二十則」はどちらかと言えば「あまりに際限のなさ過ぎる屁理屈合戦に一定の縛りをかけるための舞台装置」としての役割が強い。 -プレイヤーに解かせる気が無い「ベアトリーチェの碑文」。 --本作のキーアイテムとして「ベアトリーチェの肖像画の下に設置された碑文」というものが存在する。~ これは右代宮家現当主・右代宮金蔵が「この碑文を解いた者に右代宮の家督と10tの黄金を与える」と宣言したもので、それぞれ金策に困っている登場人物たちはこの碑文を巡り骨肉の争いを繰り広げることになる。 --当然プレイヤーもこの謎の碑文について思考するのだが、実はこの碑文は''碑文の文面だけからでは絶対に解けないようになっており、完全に解読できるのは実際の六軒島を調べられる人間(≒右代宮家の人間)のみ''。~ つまり、現実世界にいるプレイヤーにはどうあがいても完全解読は不可能であり、作中でいくつか提示された情報から推測を重ねることで8割程度解読するのが限界である。~ 設定からして右代宮家の人間とその関係者を対象とした謎かけであることは明白とはいえ、暗号文としてはアンフェア感が否めない。 --まずこの謎を解く為には、よほど台湾の地理に精通した人間でない限り「台湾の地図」が必要。つまり資料もしくはネット環境が必須。 ---ただし、EP3で登場人物の1人が碑文を解くシーンでは書斎に入って本を探しているため、「地図が必要、つまり地名に関係した謎なのでは」という推測も多かった。 ---ちなみに、ネット上では前半部分の謎解きにほぼ成功していた人物がいたが、その人物は台湾への留学経験があった。 --碑文の一行目、「懐かしき故郷」という語が金蔵の故郷「台湾」を意味するという話が語られるのは終盤のEP7。 ---これ以前の時点では、「金蔵の『故郷』が日本国外であることを匂わせるシーン(EP3)」や「金蔵はビンロウ(東南アジアの植物で、主に台湾で噛み煙草のように使われるもの)を好んでいた(EP5)」という話があるのみであり、ここから「金蔵の『故郷』は日本ではなく台湾である」とまで推測するのは難しい。 --碑文の四行目から後は、実は「礼拝堂に設置されたレリーフの文字を動かす手順」を述べているのだが、その操作の基となる「礼拝堂のレリーフ」がはっきり登場するのはEP7の''暗号が解読される直前の場面''。 ---一応、「登場人物が英文があしらわれた礼拝堂のレリーフに目を留め、内容を和訳して読み上げようとする(EP2)」「独自に暗号解読に挑んでいたという故人が、六軒島の礼拝堂の写真を遺していたことが語られる(EP4)」といったシーンはあるが、レリーフのデザイン等の情報に一切触れられないため、「レリーフの文字が操作可能」だと気付くのはほぼ不可能。~ この点が「実際の六軒島を調べない限り完全解読が不可能」という最大の問題点となっている。 -真犯人が結局良く分からない。 --本作では幻想世界と現実世界がうやむやになって終了するため、どこまでが現実で何が真実なのかという問題については様々な解釈があるにしろ、六軒島で起こる殺人事件の犯人が明言されることはない。~ EP8の終盤では、唯一六軒島の事件に巻き込まれずに生き残った少女・縁寿が「私は何があっても『誰も死んでなんかいない』と信じる。誰もそれを否定することはできない」という旨の発言をし、六軒島の事件をネタに右代宮家の人間を弄ぶ「魔女」を退ける。~ これは捉えようによっては「真犯人が誰だったのかなんてどうでもいい」という意味にもなり、真犯人を真面目に考えていたプレイヤーを馬鹿にするのかという反発を生むこととなった。 ---終盤になって明かされるが、本作の物語は、「(作中の)現実世界の六軒島で起きた事故とも事件とも取れる出来事に惹かれた多くのアマチュア作家たちが、六軒島を舞台とした推理小説めいた『偽書』と呼ばれる創作物を創り出すようになった」という設定をベースとしており、現実世界と作中の現実、そして作中の創作(作中作)が複雑に入り組み重なった入れ子構造となっている。~ そして、作中作の登場人物が最終的に「現実に起こった哀しい事件を面白おかしく謎解きするのは不謹慎だ」と推理しようとする人々を拒絶し真相を隠した一方、現実世界の作者(竜騎士07)は「諦めずに謎を解いてください、模範解答は示しませんが解けるようには作ってあります」と推奨している。~ しかし、現実の作者からのメッセージと創作物のキャラクターの主張の境界線が非常に曖昧なままエンディングを迎えるために、「作者は『諦めずに推理しろ』と煽った挙句に『謎を解くなんて不謹慎だ』と読者を罵倒した」という誤解((これ以前に竜騎士07はユーザーの反感を買うような発言をいくつかしており、それにより竜騎士07へのユーザーのヘイトが溜まっていた、という下地もこの誤解へと繋がった。))が生まれることとなってしまった((実際には、「竜騎士07」としての主張は一貫して「推理に挑戦してほしい」というものである。))。 --イベント時に限定配布された小冊子に掲載されたミニストーリーの中には、「『後期クイーン問題((ミステリーにおける物語構成上の問題の通称。主に「作者に『全ての出掛かりは出揃った』と宣言してもらえばいい現実世界の読者とは異なり、作中世界の人物である探偵自身は、『自分が導き出した真相が正しく、偽物や未知の手掛かりは存在しない』ということを知る術がない」という問題を指す。))』を語っていた『竜騎士07』のコメントが、途中から読者を挑発する『ベアトリーチェ』のコメントに変化する」というものがあり、作品全体の方向性として現実世界と作中世界の境界線をあえて曖昧にしていたとも取れるのだが、いずれにせよその曖昧さが多くの読者に悪い方向に受け取られてしまったのは間違いないだろう。 --一応、作中の現実に起こった事件と作中作の事件の双方で、「作中の描写や『赤い文字』の情報を素直に解釈すればこの人が真犯人なのだろう」というのは分かるようになっている。 ---ただし、前述のようにこの作品における推理自体が「『赤い文字』の情報にさえ反さなければなんでもありの屁理屈合戦」の様相を呈していたため、「『赤い文字』の解釈次第でいくらでも(屁理屈とは呼べない程度に現実的な)他の説を提示することが可能で、思考・議論の材料が不足している」という意見も多い。 --作者は「真剣に推理に挑戦してくれた人々とネタバレ情報を漁っただけの人々が同じ真相に辿り着けるのでは不公平なので、簡単にネタバレできるような解答の出し方はしない」という意図だと述べているのだが、「自分の解答が正しいかどうか確かめる術がないのでは意味がない」と大ブーイングが起こることとなった。 ---そのため、原作及び本作発売後に連載された漫画版のEP8では、序盤のストーリーが大幅に改変され、過去のEPで起こった事件の「模範解答」と取れる描写が各所に挿入されることとなった。 #endregion -本作独自のシナリオ面での問題として、一か所だけ規制による設定変更で物語に影響が出てしまっている部分がある。 #region((以下ストーリーの重大なネタバレ注意)) --右代宮家当主である右代宮金蔵には「愛人を亡くした悲しみから彼女との間に生まれた娘に異様な愛を注ぎ、ついには近親相姦の関係となって子供まで生ませてしまった」という過去があるのだが、CS版では近親相姦に関する表現規制の影響か「金蔵が過ちを犯してしまったという『娘』は彼の実子ではなく、愛人と別の男性との間に生まれた義理の娘である」ということになっている(原作で「金蔵と愛人との間には娘が生まれたが、産後の肥立ちが悪く愛人は亡くなってしまった」となっていた部分が、「愛人は病気で亡くなったが、彼女には金蔵と血の繋がらない忘れ形見がいた」という表現に差し替えられている)。 ---六軒島の事件において(限定的な意味ではあるが)「真犯人」と呼べる人物がこの「金蔵と『娘』の間に生まれた子供」なのだが、この設定変更によって金蔵とその人物の血縁関係は「父であり祖父、子供であり孫」という関係から「普通の父子」になっている。~ 「自分は近親相姦の末の子である」という事実はその人物の主たる動機ではないとはいえ、密接に関係してくる要素なのだが…。 #region((以下更にストーリーの核心に迫る重大なネタバレ注意)) ---漫画版EP8では、原作でははっきり描写されなかった動機の1つとして「自分が近親相姦の末に生まれた子であった上に、初恋の相手や現在の恋人など愛する人が悉く近親であったという絶望」が詳細に描かれている。原作でも明かされている事件を起こすことを決意したきっかけ(主たる動機)はまた別の出来事なのだが、大きな要因であることは間違いない。 #endregion #endregion //「要強化記事一覧」ページにて、内容への言及が認可された旨が記載されておりましたので、ストーリー上の問題点を指摘する項を追加しました。 //そうは書いてありますけど、議論スレ内でそう言った話がでていたのかを確認してから問題点に関して触れていただきたいのですが //運営議論スレ3にて、非公認ソフト関係の話題と並行して決定されていたのを確認しましたので、改めて問題点(ストーリー)を記載しました。 **総評 そもそも、『うみねこのなく頃に』という作品は原作からして非常に賛否両論の激しい、いわゆる人を選ぶ作品である。~ その原作を忠実に移植している以上、人を選ぶという点も本作に継承されているわけだが、少なくとも『うみねこのなく頃に』を愛する人間にとっては名作と言えるだろう。~ 流石に原作よりは値が張るものの、フルボイス化と強化された演出の数々を踏まえれば、原作が好きな人であるなら(絵柄の好みさえ合っていれば)迷わず買って損はない。 ---- *うみねこのなく頃に Portable |ジャンル|アドベンチャー|CENTER:&amazon(B005DWAOHE)|&amazon(B005DWAQ9K)| |対応機種|プレイステーション・ポータブル|~|~| |販売・開発元|アルケミスト|~|~| |発売元|加賀クリエイト|~|~| |発売日|1:2011年10月20日&br()2:2011年11月17日|~|~| |価格|UMD版:各3,800円(税抜)&br()DL版:各2,800円(税抜)|~|~| |レーティング|CERO:D(17歳以上対象)|~|~| |判定|なし|~|~| **概要(Portable) PS3版をPSPに移植したもの。『1』はEP1とEP2、『2』はEP3とEP4を収録している。PS3版との違いはエピソード収録数のみ。 **開発元倒産 EP5・6を収録した『3』、7・8を収録した『4』が出る予定になっていたが、その後一切音沙汰がないまま2016年に開発元のアルケミストおよび発売元の加賀クリエイトが倒産してしまった。~ 発売されなかったのは、上記の「問題点(ストーリー)」で述べられたような批判意見が噴出した原作終了後の発売であったことや、PS3版がリモートプレイに対応していることなどもあって売り上げが伸び悩んだ影響と思われる。 なお、2015年8月に発売された漫画版EP8の最終巻には、『うみねこ』原作のメディアミックスがこの漫画版で最後であることを匂わせるような原作者のコメントが掲載されている。 //「2012年発売予定」のソース見当たらず
このページではPS3ソフト『うみねこのなく頃に ~魔女と推理の輪舞曲~』『うみねこのなく頃に散 ~真実と幻想の夜想曲~』とPSPソフト『うみねこのなく頃にportable』を紹介しています。 ---- #contents() ---- *うみねこのなく頃に ~魔女と推理の輪舞曲~ / うみねこのなく頃に散 ~真実と幻想の夜想曲~ |ジャンル|アドベンチャー|CENTER:&amazon(B0042VIZKU)|&amazon(B005LM0JYO)| |対応機種|プレイステーション3|~|~| |販売・開発元|アルケミスト|~|~| |発売元|加賀クリエイト|~|~| |発売日|魔女と推理の輪舞曲:2010年12月16日&br()真実と幻想の夜想曲:2011年12月15日|~|~| |価格|各7,980円(税抜)|~|~| |レーティング|CERO:D(17歳以上対象)|~|~| |判定|なし|~|~| |ポイント|原作を声優付きで完全移植&br()原作の雰囲気を残した上での演出強化&br()追加要素はほとんど無し|~|~| |>|>|>|CENTER:''[[なく頃にシリーズ]]''| **概要 同人ゲーム『ひぐらしのなく頃に』でゲーム界に衝撃を与えた竜騎士07のシリーズ第2弾『うみねこのなく頃に』のコンシューマ移植版。~ 『魔女と推理の輪舞曲』は原作のEpisode1から4、『真実と幻想の夜想曲』はEpisode5から8を収録している。~ 移植にあたり立ち絵及び背景画像の一新やイベントスチルの挿入、前年に放送されていたアニメ版の声優((ただし、一部サブキャラクターのキャストが変更されている。))を起用したフルボイス化が行われている。 内容は、大富豪・右代宮家が所有する孤島「六軒島」に集まった人間たちを襲う恐怖の連続殺人事件が、人間の手によるものか、それとも魔女が魔法で起こしたものかを、神の視点から考察するものとなっている。 #region(close,主要登場人物・軽度のネタバレを含むため注意) :''右代宮 戦人(うしろみや ばとら)''|本作の主な主人公。右代宮家当主・右代宮金蔵の孫の1人であり、父の再婚に反発して家を出ていたが、6年ぶりに六軒島での親族会議に参加することとなる。&br()本作の物語の前半は、六軒島で起こる様々なパターンの事件を「ゲーム」として俯瞰する不思議な世界に「プレイヤー」として招かれた戦人が、「ゲームマスター」として「全ての惨劇は魔女の仕業」と嘯くベアトリーチェに抗う様子を描いている。 :''ベアトリーチェ''|六軒島のどこかに住まうと実しやかに語られる「黄金の魔女」。金蔵にとって最愛の人物とされ、金蔵の子たちは金蔵に莫大な金を与えた愛人を「魔女」と呼んだのだろうと解釈している。&br()戦人が「プレイヤー」として招かれた世界(通称上位世界)では堂々と姿を現し、「全ては魔女の仕業」と主張し戦人に対決を挑む。 :''ラムダデルタ''|上位世界で戦人の前に姿を現す「絶対の魔女」。&br()その姿は「ひぐらしのなく頃に」に登場するとある人物の幼少期に瓜二つ。 :''ベルンカステル''|ラムダデルタと愛憎入り乱れた関係にある「奇跡の魔女」。&br()その姿はやはり「ひぐらしのなく頃に」に登場するとある人物に瓜二つ。 #endregion **特徴・評価点 -全体的なプレイの快適化。~ 原作ではシーンのスキップや巻き戻しができなかったが((一旦クリアしたエピソードを再プレイする際にはどのシーンから始めるかを選択可能だが、プレイ中はバックログの確認と文章送りの高速化はできるものの、シーンを飛ばしたり好きな場所に巻き戻したりはできない仕様になっている。))、本作ではボタン一つでシーンをスキップできる他、バックログから好きな場所を指定してジャンプすることができるようになっている。 --原作ではセーブすることで好きな場所から物語を始められるようになっていたが、その代わりとしてブックマーク機能が搭載されている。~ また、既読であればバックログに現在位置より先のシーンも表示されるため、未来に飛ぶことも可能。好きな場所から物語を読み返すことができる。 --また、原作ではスキップ不可能だったエンドロールがスキップ可能になっている。 -立ち絵の一新。~ 原作は絵柄の癖がかなり強く人を選ぶが、本作ではある程度、万人受けするものとなっている。 --2人いる原画担当のうち1人は原作でも作中に登場する肖像画の作画を担当していた江草天仁であり、原作の雰囲気もある程度残されているため、原作ファンからも概ね受け入れられた。 ---特に『散』から登場するキャラクターの一部は原作の立ち絵を強く意識した作画となっており、違和感が少なくなっている。 ---「原作の立ち絵の方が表情が豊かでいい」「なんだか綺麗になり過ぎていて違和感がある」などの意見ももちろんあるが、これは個人の好みの問題になるだろう。 --原作では表情差分の多さで多彩な表現を可能にしていたが、本作では表情差分の数こそ原作には及ばないものの、ポーズ差分を増やすことで表現の幅を広げている。 -アニメ版の声優陣による熱演。~ アニメ版は原作のEP4までしか放送されておらず、EP5以降を声優による演技で楽しめる。 --登場人物の台詞だけではなく、要所要所でモノローグなどにもボイスが付加されている。 --特に「六軒島に住まう魔女」として語られる女性・ベアトリーチェを演じる大原さやか女史は、作中に数多く登場する「『ベアトリーチェ』に関係する女性たち」をほぼ1人で演じており、1人7役を担当している。 ---残虐さと無邪気さを併せ持った魔女、まだ魔女になる前の無垢な少女、緊張を強いられる環境でも明るく振る舞う健気な女性、自らの存在意義に思い悩む女性など、それぞれのキャラクターがきっちりと演じ分けられており、ファンからも評価は高い。 -演出の大幅強化。~ 舞い飛ぶ黄金蝶のエフェクトや赤き刃などの魔法描写における演出を中心に、原作の画像を参考にした動画への差し替えが行われている。 --特に、EP3における魔法大戦やEP8におけるラムダデルタとベルンカステルの魔法は、大幅に動きが追加され非常に迫力あるものになっている。 -原作を忠実に移植している点。 --やむなく表現が差し替えられたり削られた部分((アニメ版でも規制対象になった「下女」「借り腹」といった単語や未成年の飲酒描写、実在の推理小説及び推理作家の名前に触れる台詞など。))や、小説版における加筆修正が反映された部分はあるが、基本的に原作の文章を忠実に移植している。 --BGMも、コンシューマ版OP曲が追加された以外は原作と同じものが使用されている((ただし、一部の曲はフルボイス化に当たって音声を聞き取りにくくならないように配慮したアレンジが加えられており、ボーカル曲もほとんどが再収録を行ったPS3バージョンとなっている。))。 ---『ひぐらしのなく頃に』の移植作である『[[ひぐらしのなく頃に祭]]』では、一本道のサウンドノベルである『ひぐらし』にゲーム性を持たせようと前半エピソードを共通パートから選択肢で分岐する方式へ変更した結果、描写が矛盾だらけになるなどして原作ファンから批判される結果となった。~ 更に、権利関係などの問題があったかもしれないとはいえ原作のBGMを使わなかった点も、大きな不満点として挙げられることが多かった。~ その点では、今回は『祭』における反省を上手く活かしていると言える。 --『散』では各EPのOPムービーとして、原作のOPムービーをコンシューマ版の立ち絵及び背景画像を使って再現したものが使用されている。 --ほぼ唯一のコンシューマオリジナル要素は、新規デザインされた魔女エンジェ・ベアトリーチェ。 ---原作におけるエンジェ・ベアトリーチェは元となった右代宮縁寿と同じ姿だったが、今作ではコンシューマオリジナルの魔女衣装を着用している。~ デザインにはエヴァ・ベアトリーチェの衣装や喪服の要素が取り入れられており、竜騎士07がデザインした他の魔女たちと比べても違和感の少ない仕上がりとなっている。 **問題点(システム) -折角のフルボイス化なのだが、台詞が終わった後の残響が消える前に次の台詞が入るなど、音声の繋ぎ目が不自然でぶつ切りに聞こえてしまう部分がある。 --特にオートモードでは音声再生のタイミングが速すぎる部分が多々ある。~ この点は『ひぐらし』のコンシューマ移植の際にも意見が出ていたのだが、あまり改善されていない。~ 膨大な台詞の1つ1つに対して再生タイミングを調整するのは現実的ではないため、ある程度は仕方ない部分もあるのだが。 -『ひぐらし』のコンシューマ移植シリーズ(『祭』及び『ひぐらしのなく頃に 絆』)とは異なり、本作には追加エピソードが無い。 --原作の頒布の際に会場購入特典として竜騎士07執筆の短編などを掲載した小冊子が配られ、後に大部分が本編と同じゲーム(短編集『うみねこのなく頃に 翼』及び別作品の予約特典として頒布された『うみねこのなく頃に 羽』)として纏められたのだが、そうした短編の類もコンシューマ版には一切収録されていない。 ---小冊子の内容には本編の謎に対するヒントと取れる描写を含んだものもあり((特に、現時点で最後の小冊子である「我らの告白」は作中のトリックについてかなり踏み込んだヒントが描かれた長編であり、更に『羽』と同時頒布であったためゲーム媒体への収録が一切されていない。))、コンシューマ化されればフルボイス化やイベントスチルの挿入といった追加要素も望めるため、コンシューマ化を望む声も少なくない。 --ただし、『ひぐらし』移植作での追加エピソードは竜騎士07本人が直接執筆していないことなどが原因で非常に賛否が大きく、追加エピソードがないことを好意的に受け止めるユーザーも少なくないことも述べておく。 -フルボイス化に伴う演出の変更。 --音声が追加されたため、エンドロールに突入する直前の台詞が長い場合はボイス再生に掛かる時間とED曲の長さを考慮し、エンドロールを先に流して曲が終わった後に台詞が流れるようになっている。 ---この演出変更により、本来はED曲をバックに表示されていた台詞の一部((EP1お茶会においてベアトリーチェが畳み掛けるように口にする謎、EP3裏お茶会における縁寿の「迎えにはリムジンをよこして頂戴」など。))がBGMなしの状態で流れることとなるため、テンポが原作と変わったことに対する不満の声も上がった((原作ではED曲が流れ始めてから放置した場合は曲がループするようになっているが、コンシューマ版ではED曲が流れ始めてからの台詞が台詞送り不可で自動的に進むようになっており、スキップしなければED曲1ループの間にエンドロールが終わるように調整されている。))。 **問題点(ストーリー) -本作の原作となる『うみねこのなく頃に』は、シナリオの流れについて批判的な声も多く、賛否両論の傾向が強い作品である。~ 上述の通り本作は細部の変更はあれど原作の忠実な移植と呼べるものであるため、そういったシナリオ面での問題点もそのまま引き継いでいる。 #region((以下、ストーリーの核心的なネタバレ。未プレイの方は見ないことを推奨します。)) -「推理ゲーム」概念からの逸脱 --本作のシナリオは基本的に、出題者((多くの場合ベアトリーチェ。))が六軒島を舞台に作成した「事件」を、回答者((多くの場合戦人か縁寿。))が謎を解くという形で破る、という形式で行われるメタ構造的な推理バトルであり、一般的な推理ゲームとは一線を画している。 --本作に前後して清涼院流水や綾辻行人など、「推理小説」という概念の枠組みを超越した作品を発表する作家たちが生まれたが、本作もその流れと考えて良いだろう。 ---しかしそれ故にあまりにも人を選ぶ作品となっている。推理作品に無くてはならないとされる「探偵」も「謎」も不明瞭な本作は、そもそも「推理ゲーム」と呼んで良いのかすら疑問なのだが、にも関わらず本作は「本格推理もの」であることを宣伝している為、ユーザーにしてみれば「騙された」という感じを抱く。 -一部の荒唐無稽なトリック --本作では無数の密室やトリックが発生し、それを回答者が「現実的な方法((本作の出題者と回答者との戦いは「魔法存在派」と「魔法否定派」との間の舌戦でもある為、回答者は魔法でない方法でトリックが実現可能であると証明しなければならないから。))で」回答していくのだが、その解き方が相手の言葉尻を捉えた屁理屈や机上の空論に満ちており、''真面目に考えたプレイヤーが馬鹿を見る''結果になってしまっている。 --「『絶対に真実だと保障されている』物事は『赤い文字』で表示する」というシステムを使い、「『赤い文字』の内容に反さない回答を(時には屁理屈を使って)ひねり出す」という内容はどちらかと言うと論理パズルに近い。 ---このゲームの話題で最も取り上げられる事例が、「四方を壁に囲まれた密室殺人」の例。回答者が何と回答したかと言うと「出題者は死体の状況や死因、壁面や窓・扉の状態について『赤い文字』で詳細に語った一方、天井については『赤い文字』での言及を避けた。従ってこの部屋に天井はなく、犯人は天井から出て行った」。~ もっとも、この出題は「2人の人間が、それぞれが考えた『密室殺人』をぶつけ合い対決する」という流れで行われたもので、「『六軒島』と『右代宮家』を巡る物語」として語られるメインの謎とは無関係。人間関係や動機といったものが一切排除された、いわば推理クイズに近いものである。~ ただ、いくらおまけの推理クイズとはいえ真面目に考えた結果の解答がこれでは、脱力感すら覚える人がいることも致し方ない。 -ゲームボリュームが大きすぎる。 --一般的にはゲームに於けるボリュームはあればあるだけ良いとされるが、本作はADV、加えて推理ゲームであるということで少々事情が変わってくる。 ---つまり、あまりにもボリュームがあり、多数の事件が発生する為、プレイしているうちにどれがどのEPの何夜目の事件だったのか、整理と理解が追い付かなくなってくるのである。~ これに関してはプレイヤーごとの理解力の差も関係しているが、劇中で発生する事件の登場人物が全て同じであること、そしてトリックがその場で解決されず、後のEPで解説されるような構造が多いこと等、ゲーム側が理解をややこしくしている部分もある。 ---本作の移植元の同人ゲームは、8月・12月のコミックマーケットに合わせて8回に分けて販売された為、同人で発売された当時はEPごとにじっくりと考察する時間が与えられていたのだが、本作のようにいくつかのEPをまとめてプレイすると確実に訳が分からなくなる。 ---この膨れ上がったボリュームは、プレイ感覚の冗長さにも繋がっている。 -「ノックスの十戒」「ヴァンダイン二十則」の多用。 --推理小説に詳しくない方に説明すると、これらは「推理小説でやってはいけない展開」や「望ましくないトリック・顛末」を述べた、推理作家向けの一連の法則のこと。本作の舌戦ではこれらの法則が「ノックスの十戒に違反しているからその理屈は通らない」という風に多用される。 --しかしこの規律が提唱されたのは90年近く前であり、現代ではこの法則を守っておらずとも優れた作品は多数存在している。また、この法則には一部内容が不適当な記述も存在し((「中国人を作品内に登場させてはいけない」という法則がある。これは当時の西洋で、中国人が超能力者的な存在だという偏見があった為。この項の存在だけで、法則の妥当性が怪しいのは推察されるだろう。))、そもそも''これを提唱したノックス自身、この法則を守っていない''。つまりこの法則に信憑性は殆ど存在しないというのが推理小説界の常識なのだが、本作ではこれを真に受けてしまっている為、「何を今更」感がかなり強い。 --ちなみに「うみねこ」という作品を推理作品として見た場合、当然「ノックスの十戒」を守ってはいない。 ---ただし、作中で「『十戒』を破った作品を異端と批判する原理主義者がいる」「本来、『十戒』とは思考を助ける杖のようなもの」と語られており、本作での「十戒」や「二十則」はどちらかと言えば「あまりに際限のなさ過ぎる屁理屈合戦に一定の縛りをかけるための舞台装置」としての役割が強い。 -プレイヤーに解かせる気が無い「ベアトリーチェの碑文」。 --本作のキーアイテムとして「ベアトリーチェの肖像画の下に設置された碑文」というものが存在する。~ これは右代宮家現当主・右代宮金蔵が「この碑文を解いた者に右代宮の家督と10tの黄金を与える」と宣言したもので、それぞれ金策に困っている登場人物たちはこの碑文を巡り骨肉の争いを繰り広げることになる。 --当然プレイヤーもこの謎の碑文について思考するのだが、実はこの碑文は''碑文の文面だけからでは絶対に解けないようになっており、完全に解読できるのは実際の六軒島を調べられる人間(≒右代宮家の人間)のみ''。~ つまり、現実世界にいるプレイヤーにはどうあがいても完全解読は不可能であり、作中でいくつか提示された情報から推測を重ねることで8割程度解読するのが限界である。~ 設定からして右代宮家の人間とその関係者を対象とした謎かけであることは明白とはいえ、暗号文としてはアンフェア感が否めない。 --まずこの謎を解く為には、よほど台湾の地理に精通した人間でない限り「台湾の地図」が必要。つまり資料もしくはネット環境が必須。 ---ただし、EP3で登場人物の1人が碑文を解くシーンでは書斎に入って本を探しているため、「地図が必要、つまり地名に関係した謎なのでは」という推測も多かった。 ---ちなみに、ネット上では前半部分の謎解きにほぼ成功していた人物がいたが、その人物は台湾への留学経験があった。 --碑文の一行目、「懐かしき故郷」という語が金蔵の故郷「台湾」を意味するという話が語られるのは終盤のEP7。 ---これ以前の時点では、「金蔵の『故郷』が日本国外であることを匂わせるシーン(EP3)」や「金蔵はビンロウ(東南アジアの植物で、主に台湾で噛み煙草のように使われるもの)を好んでいた(EP5)」という話があるのみであり、ここから「金蔵の『故郷』は日本ではなく台湾である」とまで推測するのは難しい。 --碑文の四行目から後は、実は「礼拝堂に設置されたレリーフの文字を動かす手順」を述べているのだが、その操作の基となる「礼拝堂のレリーフ」がはっきり登場するのはEP7の''暗号が解読される直前の場面''。 ---一応、「登場人物が英文があしらわれた礼拝堂のレリーフに目を留め、内容を和訳して読み上げようとする(EP2)」「独自に暗号解読に挑んでいたという故人が、六軒島の礼拝堂の写真を遺していたことが語られる(EP4)」といったシーンはあるが、レリーフのデザイン等の情報に一切触れられないため、「レリーフの文字が操作可能」だと気付くのはほぼ不可能。~ この点が「実際の六軒島を調べない限り完全解読が不可能」という最大の問題点となっている。 -真犯人が結局良く分からない。 --本作では幻想世界と現実世界がうやむやになって終了するため、どこまでが現実で何が真実なのかという問題については様々な解釈があるにしろ、六軒島で起こる殺人事件の犯人が明言されることはない。~ EP8の終盤では、唯一六軒島の事件に巻き込まれずに生き残った少女・縁寿が「私は何があっても『誰も死んでなんかいない』と信じる。誰もそれを否定することはできない」という旨の発言をし、六軒島の事件をネタに右代宮家の人間を弄ぶ「魔女」を退ける。~ これは捉えようによっては「真犯人が誰だったのかなんてどうでもいい」という意味にもなり、真犯人を真面目に考えていたプレイヤーを馬鹿にするのかという反発を生むこととなった。 ---終盤になって明かされるが、本作の物語は、「(作中の)現実世界の六軒島で起きた事故とも事件とも取れる出来事に惹かれた多くのアマチュア作家たちが、六軒島を舞台とした推理小説めいた『偽書』と呼ばれる創作物を創り出すようになった」という設定をベースとしており、現実世界と作中の現実、そして作中の創作(作中作)が複雑に入り組み重なった入れ子構造となっている。~ そして、作中作の登場人物が最終的に「現実に起こった哀しい事件を面白おかしく謎解きするのは不謹慎だ」と推理しようとする人々を拒絶し真相を隠した一方、現実世界の作者(竜騎士07)は「諦めずに謎を解いてください、模範解答は示しませんが解けるようには作ってあります」と推奨している。~ しかし、現実の作者からのメッセージと創作物のキャラクターの主張の境界線が非常に曖昧なままエンディングを迎えるために、「作者は『諦めずに推理しろ』と煽った挙句に『謎を解くなんて不謹慎だ』と読者を罵倒した」という誤解((これ以前に竜騎士07はユーザーの反感を買うような発言をいくつかしており、それにより竜騎士07へのユーザーのヘイトが溜まっていた、という下地もこの誤解へと繋がった。))が生まれることとなってしまった((実際には、「竜騎士07」としての主張は一貫して「推理に挑戦してほしい」というものである。))。 --イベント時に限定配布された小冊子に掲載されたミニストーリーの中には、「『後期クイーン問題((ミステリーにおける物語構成上の問題の通称。主に「作者に『全ての出掛かりは出揃った』と宣言してもらえばいい現実世界の読者とは異なり、作中世界の人物である探偵自身は、『自分が導き出した真相が正しく、偽物や未知の手掛かりは存在しない』ということを知る術がない」という問題を指す。))』を語っていた『竜騎士07』のコメントが、途中から読者を挑発する『ベアトリーチェ』のコメントに変化する」というものがあり、作品全体の方向性として現実世界と作中世界の境界線をあえて曖昧にしていたとも取れるのだが、いずれにせよその曖昧さが多くの読者に悪い方向に受け取られてしまったのは間違いないだろう。 --一応、作中の現実に起こった事件と作中作の事件の双方で、「作中の描写や『赤い文字』の情報を素直に解釈すればこの人が真犯人なのだろう」というのは分かるようになっている。 ---ただし、前述のようにこの作品における推理自体が「『赤い文字』の情報にさえ反さなければなんでもありの屁理屈合戦」の様相を呈していたため、「『赤い文字』の解釈次第でいくらでも(屁理屈とは呼べない程度に現実的な)他の説を提示することが可能で、思考・議論の材料が不足している」という意見も多い。 --作者は「真剣に推理に挑戦してくれた人々とネタバレ情報を漁っただけの人々が同じ真相に辿り着けるのでは不公平なので、簡単にネタバレできるような解答の出し方はしない」という意図だと述べているのだが、「自分の解答が正しいかどうか確かめる術がないのでは意味がない」と大ブーイングが起こることとなった。 ---そのため、原作及び本作発売後に連載された漫画版のEP8では、序盤のストーリーが大幅に改変され、過去のEPで起こった事件の「模範解答」と取れる描写が各所に挿入されることとなった。 #endregion -本作独自のシナリオ面での問題として、一か所だけ規制による設定変更で物語に影響が出てしまっている部分がある。 #region((以下ストーリーの重大なネタバレ注意)) --右代宮家当主である右代宮金蔵には「愛人を亡くした悲しみから彼女との間に生まれた娘に異様な愛を注ぎ、ついには近親相姦の関係となって子供まで生ませてしまった」という過去があるのだが、CS版では近親相姦に関する表現規制の影響か「金蔵が過ちを犯してしまったという『娘』は彼の実子ではなく、愛人と別の男性との間に生まれた義理の娘である」ということになっている(原作で「金蔵と愛人との間には娘が生まれたが、産後の肥立ちが悪く愛人は亡くなってしまった」となっていた部分が、「愛人は病気で亡くなったが、彼女には金蔵と血の繋がらない忘れ形見がいた」という表現に差し替えられている)。 ---六軒島の事件において(限定的な意味ではあるが)「真犯人」と呼べる人物がこの「金蔵と『娘』の間に生まれた子供」なのだが、この設定変更によって金蔵とその人物の血縁関係は「父であり祖父、子供であり孫」という関係から「普通の父子」になっている。~ 「自分は近親相姦の末の子である」という事実はその人物の主たる動機ではないとはいえ、密接に関係してくる要素なのだが…。 #region((以下更にストーリーの核心に迫る重大なネタバレ注意)) ---漫画版EP8では、原作でははっきり描写されなかった動機の1つとして「自分が近親相姦の末に生まれた子であった上に、初恋の相手や現在の恋人など愛する人が悉く近親であったという絶望」が詳細に描かれている。原作でも明かされている事件を起こすことを決意したきっかけ(主たる動機)はまた別の出来事なのだが、大きな要因であることは間違いない。 #endregion #endregion //「要強化記事一覧」ページにて、内容への言及が認可された旨が記載されておりましたので、ストーリー上の問題点を指摘する項を追加しました。 //そうは書いてありますけど、議論スレ内でそう言った話がでていたのかを確認してから問題点に関して触れていただきたいのですが //運営議論スレ3にて、非公認ソフト関係の話題と並行して決定されていたのを確認しましたので、改めて問題点(ストーリー)を記載しました。 **総評 そもそも、『うみねこのなく頃に』という作品は原作からして非常に賛否両論の激しい、いわゆる人を選ぶ作品である。~ その原作を忠実に移植している以上、人を選ぶという点も本作に継承されているわけだが、少なくとも『うみねこのなく頃に』を愛する人間にとっては名作と言えるだろう。~ 流石に原作よりは値が張るものの、フルボイス化と強化された演出の数々を踏まえれば、原作が好きな人であるなら(絵柄の好みさえ合っていれば)迷わず買って損はない。 ---- *うみねこのなく頃に Portable |ジャンル|アドベンチャー|CENTER:&amazon(B005DWAOHE)|&amazon(B005DWAQ9K)| |対応機種|プレイステーション・ポータブル|~|~| |販売・開発元|アルケミスト|~|~| |発売元|加賀クリエイト|~|~| |発売日|1:2011年10月20日&br()2:2011年11月17日|~|~| |価格|UMD版:各3,800円(税抜)&br()DL版:各2,800円(税抜)|~|~| |レーティング|CERO:D(17歳以上対象)|~|~| |判定|なし|~|~| **概要(Portable) PS3版をPSPに移植したもの。『1』はEP1とEP2、『2』はEP3とEP4を収録している。PS3版との違いはエピソード収録数のみ。 **その後の展開 ***開発元倒産 EP5・6を収録した『3』、7・8を収録した『4』が出る予定になっていたが、その後一切音沙汰がないまま2016年に開発元のアルケミストおよび発売元の加賀クリエイトが倒産してしまった。~ 発売されなかったのは、上記の「問題点(ストーリー)」で述べられたような批判意見が噴出した原作終了後の発売であったことや、PS3版がリモートプレイに対応していることなどもあって売り上げが伸び悩んだ影響と思われる。~ なお、2015年8月に発売された漫画版EP8の最終巻には、『うみねこ』原作のメディアミックスがこの漫画版で最後であることを匂わせるような原作者のコメントが掲載されている。 2019年10月4日に同人サークル07th Expansionからシリーズ全部入りに追加要素のある『うみねこのなく頃に咲』が発売された。~ エンターグラムから『うみねこのなく頃に咲 ~猫箱と夢想の交響曲~』のタイトルでNintendo Switch/プレイステーション4への移植も発表されている。 //「2012年発売予定」のソース見当たらず

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