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*428 ~封鎖された渋谷で~ 【よんにーはち ふうさされたしぶやで】 |ジャンル|サウンドノベル|#amazon(B001FSKK0Q)|#amazon(B002FQKKDY)|#amazon(B002FQKKE8)| |対応機種|初出:Wii&br()移植:プレイステーション3、プレイステーション・ポータブル|~|~|~| |開発元&br()発売元【PSP・DL】|チュンソフト|~|~|~| |発売元(他機種)|【Wii】セガ&br()【PS3/PSP】スパイク|~|~|~| |発売日|【Wii】2008年12月4日&br()【PS3】2009年9月3日&br()【PSP】2009年9月17日&br()【PSP・DL】2011年3月9日|~|~|~| |定価|【Wii/PS3】7,140円&br()【PSP】5,040円&br()【PSP・DL】2,000円|~|~|~| |廉価版|【Wii】みんなのおすすめセレクション:2010年2月25日/2,800円&br()Spike The Best:2010年12月2日/【PS3】3,444円、【PSP】2,940円|~|~|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|~|~| |>|>|>|>|CENTER:''[[チュンソフトサウンドノベルシリーズ]]リンク''| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 -名作と名高い『[[街]]』の流れを汲む、チュンソフトのサウンドノベルゲーム第7作。脚本は北島行徳。 --続編ではなくあくまでも別タイトルの作品だが、舞台は『街』の10年後の渋谷という設定。 ---そのためか、一部テキストにて『街』の人物を彷彿させる箇所が散見される(後述)。 --グラフィックに実写を使用、Tip、ザッピングなど、『街』と同じシステムが使用されている。 -ファミ通クロスレビューで40点満点を得たことで話題になった。 --開発にファミ通編集部が関わっているため、多少下駄を履かせられている部分もあると思われる。 --満点を取ったことで逆にユーザーの期待感が下がった節も。 -発売日となる2008年12月には本作の舞台である渋谷の各地で大々的にプロモーションを行い、多くの話題を呼んだ。 --渋谷駅西口をはじめ道玄坂やセンター街などの各所大看板、TSUTAYA SHIBUYAのエスカレーター占拠、渋谷109前で主題歌を歌う上木彩矢の野外ライブや作中で使用された建物で抽選会を行うなど、正に渋谷をジャックするほどの規模であった。 -「日本ゲーム大賞2008」でフューチャー部門、「日本ゲーム大賞2009」で優秀賞を受賞。 -当初は『428(仮)』というタイトルで発表されていた為、あの『[[四八(仮)]]』の続編か?などとネタ扱いされていた。 --これに関しては開発者も「去年某社さんから発売された『四八(仮)』の2ではありませんよ。お間違えの無いように」と念を押していた。%%そりゃ一緒にされたくないだろう…%% -クリア後のボーナスシナリオが2つあり、片方に『[[かまいたちの夜]]』の我孫子武丸、もう片方にTYPE-MOONを起用している。 **特徴 -200X年4月28日、渋谷で起きたある事件に、偶然居合わせた複数の登場人物が巻き込まれていくという話。プレイヤーは5人の主人公が午前10時から午後20時まで体験した10時間の出来事をプレイする。シナリオの数は5つ+α。 --5人の主人公にはタマと名乗る着ぐるみの謎の人物なんてのも居る。 -5人の主人公の行動は互いに影響し合うように出来ており、ある主人公が起こしたアクションが間違ったものだった場合、別の主人公がBAD ENDを迎えてしまうことがある。その時は間違ったアクションをした主人公を正しい行動へ導かなくてはならない。 --BAD ENDへ誘う落とし穴は終盤になればなるほど増え、時には3人以上の登場人物を同時に正しく動かさなければならないことも。 -物語中の文章には時折、青色で書かれた部分がある。これは「Tip」と呼ばれるもので、青色で書かれた単語のより詳しい解説が見られる。 -物語の途中で「KEEP OUT」と表示され行き止まりになった場合は、他の主人公のストーリーを進めて特定の場所から「JUMP」をし、行き止まりを解除する必要がある。 -物語の流れは1時間ごとに区切られていて、5つのストーリーが全て正しい続き方(「To be Continued」に辿り着く)をすれば次の時間に進める。 -このように『街』と同じシステムを採用しており、舞台も『街』と同じであることから比較されることがたびたびある。 --『街』との最も大きな違いは物語の全体的な形にある。『街』はテイストの違う複数の物語を平行的に進めるものであるが、本作は5つの物語全てが最終的に1つの物語へと集束していく。互いの物語がより密接に、分かりやすく絡み合うようになっている。 --群像サスペンスと銘打っていることもあり、全ての物語に緊張感が漂うシーンが多いのも違いの一つ。最初は「ギャグ調」「ほのぼの」などテイストが一風変わっているシナリオも、時が進むにつれ事件に関わっていきシリアスシーンを多く含むことになる。 **評価点 -最も評価されている部分は、「早く続きを読みたい」と思わせる物語の作り。 --話の展開が二転三転し、驚きのどんでん返しが数多くある。 --スピード感を重視している。文章を出来る限り短くしたり、描写を背景写真に任せて必要最低限に留めるなどして、早く読める工夫がなされている。 --『街』よりボリュームが少なくなった分、濃度を濃くして充足感を味わえるように作られている。 --全主人公のシナリオを1時間分消化すると、次のセクションの予告編ムービーが挿入される。重厚なメインテーマをバックに、印象的なシーンを断片的に繋ぎ合わせたハイスピードな演出は、止め時を見誤らせる牽引力がある。 -良質な音楽とそれに合わせたテンポの良さ --映像とマッチして、良い臨場感を生み出している。サウンドはドルビープロロジックIIにも対応(なおPS3移植版はリアル5.1chサラウンド対応)。 --タイムチャートで現在それぞれのストーリー状況がどうなっているのかが一目で分かるようになっており、より便利さが追求されている。 --初めての人のためのガイド機能がある。『街』未経験でシステムに馴染みがなくても楽しく遊べる配慮がなされている。 -チュンソフトのゲーム(特に『街』)をプレイした人にはニヤリと出来るような小ネタが多く含まれている。 ---例えば登場人物「頭山花」の名前の由来、コーヒー牛乳が好きな刑事、梶原刑事のTIPであった、自分にそっくりな美容師、伝説となっている軍人、キャベツ教団など多く隠されている。 -快適な片手リモコン操作 --片手でリモコンを持ち、もう片手でお菓子を食べながらでも遊べる。 -キャラクター --『街』同様、魅力的な登場人物が多い。これは静止画の撮影のため今まで演技経験者では無い素人や日本語の不自由な外国人も起用できるため印象に残るキャスティングであるからだと思われる。特に格好良い中年~初老の男性が多い。 --特に当時12歳の謎の少女役ティギー・ウィリアムスや、「電波少年」にて「懸賞生活」にチャレンジしたなすびがアフロヘアで登場、圧倒的存在感を魅せてくれる。 -エンディング --前回好評であった、これまで静止画であった俳優、女優が楽しそうに撮影をしていたり、話し合ったりする姿を移した映像にエンディング曲を流す演出はシリアスな本編とのギャップに心が温まる。 **批判点 -2つのボーナスシナリオのうちの1つ、TYPE-MOONが担当した「カナン篇」は本編とは違い「アニメ絵」をバックに声優陣が台詞をボイスつきで読み上げるという形でシナリオが進んでいくが、これが不評で「蛇足」と評する者もいる。 --理由として、「本編と雰囲気が違いすぎる」「シナリオ担当の奈須きのこ特有の文章が読みづらい」「アニメ絵に馴染めない」「本編のある登場人物の威厳が低下」などが挙げられている。 --なお、あまりに雰囲気が違うシナリオを入れているのは、ジャンルが完全に異なる8本のオムニバスストーリーであった『街』のリスペクトの面が強い((『街』にもアニメ調の絵をバックにしたシナリオが存在する。))のだが、本作は『街』とは真逆に「統一された世界観と雰囲気」を重要視したため、本編の流れが好みだった層には前作のようなオムニバス感があまり期待されていなかった面もある(ボーナスシナリオは本編クリア後に出てくるオマケなので、普通は本編が気に入った人でないとやる気にはならない)。 --ただし、傭兵である重要キャラクターの過去(本編での大きなどんでん返しに関わる因縁の発端)を掘り下げるために「プロによる紛争地域における工作活動」を描く内容のため、「一般人がテロ事件に巻き込まれる」という本編との雰囲気の違いについては致し方ないところではある。 -本編の終わり方がすっきりしないのが嫌だという声が多い。 --下記にあるように続編のアニメ展開もあるが、アニメを見てみるとこの終わり方に言及はされていない。 --むしろこれは『街』のスタイル(渋谷で起こるドラマは永遠につづいていく「終わりがない物語」というもの)を踏襲したからではないかとも思われる((実際、トゥルーエンドにおける表記は「THE END」ではなく「NEVER END」である))。『街』よりも主軸のストーリーを強固にしたため、逆に「終わりがない物語」の部分が違和感として感じやすくなった。 -ボリュームの少なさ、話の短さが物足りないという声がある。これは前作の『街』と比べて主人公が減った事と一日で事件が終了するためだと思われる。 -物語の性質上、ネタバレを見てしまうと面白さが半減するというリスク。 --これにより、一度クリアすると満足してしまい、周回プレイをする気があまり起きないという欠点がある。 -システム向上で便利になった反面、プレイヤーが自分の力で試行錯誤する「やり込み度」が低下したという声がある。 --その逆で、攻略サイトなどを見ないと隠し要素は発見しづらい。 --特にクイズに答えて隠しシナリオを読むことができる「カルトクイズ428」のクイズはかなり難しく、「WiiConnect24」では解答の為のヒントが4回に渡って配信され、更にPS3/PSP移植版ではクイズ難易度が若干下げられた。 **総評 サウンドノベルの集大成を作ろうという意気込みのもと製作された本作は、確かな面白さで高い評価を受けた。~ あの名作『街』に比肩するほど、もしくは『街』を超えたと評するユーザーも少なくない。~ 実写サウンドノベルということでオタク受けはせず、またWiiの所持層に合うジャンルでは無かったのか当初売上はあまり伸びなかったが、~ 評価の高さからこのジャンルとしては珍しくじわじわと売上を伸ばして行き、2010年末の時点で全機種合計で約16万本を売り上げた。~ 食わず嫌いをするには本当に勿体ない逸品であり、ドラマでも映画でもない、ゲームだからこそ可能な物語を、是非楽しんでもらいたい。 **余談 -タレントの伊集院光も本作を評価するユーザーのひとりであり、ラジオやファミ通の連載で何度も激賞していた。 **その後 -2009年、講談社BOXより本編脚本を担当した北島行徳による小説版が発売された。 --新シナリオ「迷天使編」が追加された他、登場人物の心理面の掘り下げ、場面の整理、本編で説明不足と指摘された部分の補完、主人公達の後日談などが追加されている。 --北島はこれを本作の完全版とし、「428はこれで書き切った」と自身のブログにて述べている。 -同年夏、スピンオフアニメ『CANAAN』放送。ちなみにチュンソフト作品初のアニメ化である。 --ストーリーは独立しており本作を知らなくても十分楽しむことが出来る(時系列は後日談に位置する)。 ---基本的にはボーナスシナリオ「カナン篇」をベースとしているが、独自要素が多く((「ボナー」と呼ばれる特殊能力者など))、「428本編とカナン篇」以上に雰囲気の剥離は大きい点には注意されたし。 ---また、『CANAAN』では本作のネタバレ要素が根幹にあるため、『428』をプレイするつもりであるなら先に視聴してしまうのはあまりおすすめできない。 --御法川をはじめ、『428』から多くのキャラクターが出演しているのも特徴。 ---最もスピンオフ故か、一部人物の性格は本編と異なっている。 --漫画版、小説版の他、『428』と『CANAAN』を繋ぐ作品『CANAANスフィル』もある。 -同年秋、スパイクからPS3/PSP移植版が発売。本編の追加は無いが、スペシャルエピソード等が追加されている。 --2010年12月2日に両機種のベスト版が発売された。これに加えて2011年3月9日にPSP版のDL版が配信開始された。 -Wii「みんなのニンテンドーチャンネル」での「おすすめランク」内において、最も取るのが難しいプラチナランクを獲得。 --2010年、「みんなのおすすめセレクション」の一つとして廉価版が発売。 -[[風来のシレン4>不思議のダンジョン 風来のシレン4 神の眼と悪魔のヘソ]]と[[5>不思議のダンジョン 風来のシレン5 フォーチュンタワーと運命のダイス]]にこのゲームのタイトルをもじった壷『四二鉢』が登場する。物を入れても何も起こらないが、投げると爆発する。 -全くの別タイトルだが『[[ガチトラ! ~暴れん坊教師 in High School~]]』には御法川の妹が登場する。兄と同じくジャーナリストであり、その兄についても作中で触れられている。 --そもそも御法川自体、元々は『[[3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!]]』の登場人物である。 -2011年11月、チュンソフトからiOS版(iPhone/iPod Touch/iPad用アプリ)が配信。 -2013年3月、スパイク・チュンソフトからAndroid版が配信。 //アプリに関しては、↑の様な本文中での簡単な記述に留めるのがよいとし、データの方は消しました。
*428 ~封鎖された渋谷で~ 【よんにーはち ふうさされたしぶやで】 |ジャンル|サウンドノベル|&amazon(B001FSKK0Q)|CENTER:&amazon(B002FQKKE8)&amazon(B002FQKKDY)&amazon(B07F43XVKZ)| |対応機種|Wii&br;プレイステーション3&br;プレイステーション・ポータブル&br;プレイステーション4&br;Windows|~|~| |発売元|【Wii】セガ&br;【PS3/PSP】スパイク&br;【PS4/Win】スパイク・チュンソフト |~|~| |開発元|【Wii/PS3/PSP】チュンソフト&br;【PS4/Win】スパイク・チュンソフト / Abstraction Games|~|~| |発売日|【Wii】2008年12月4日&br;【PS3】2009年9月3日&br;【PSP】パッケージ:2009年9月17日 / ダウンロード:2011年3月9日&br;【PS4/Win】2018年9月6日|~|~| |定価|【Wii/PS3】6,800円&br;【PSP】パッケージ:4,800円 / ダウンロード:1,905円&br;【PS4】3,800円(各税別)&br;【Win】3,960円(税込)&br;|~|~| |廉価版|【Wii】みんなのおすすめセレクション:2010年2月25日 / 2,800円&br;【PS3】Spike The Best:2010年12月2日 / 3,444円&br;【PSP】Spike The Best:2010年12月2日 / 2,940円|~|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|~| |ポイント|実写の渋谷を舞台にした大スケールのサスペンス&br;『街』と世界観を共有しているが''続編ではない''|~|~| |>|>|>|CENTER:''[[チュンソフトサウンドノベルシリーズ]]''| ---- #contents(fromhere) ---- ~ #center(){{ &big(){''今日、渋谷は壊滅する。''} }} ~ ---- **概要 名作と名高い『[[街]]』の流れを汲む、チュンソフトのサウンドノベルゲーム第7作。脚本は同社の『[[3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!]]』『[[忌火起草]]』等にも携わっていた北島行徳。~ 『街』とは「実写」「渋谷が舞台」「複数主人公」「ザッピング・TIPS」などの共通点が多いが、続編というわけではなく''あくまで独立した作品''である。~ しかし小ネタとして『街』に言及している部分もあり、舞台設定としては『街』の10年後と位置付けられている。 ---- **特徴・システム ''5人の主人公が1つの事件をめぐる物語'' -200X年4月28日、渋谷で起きた誘拐事件に端を発する大規模な物語に、偶然居合わせた複数の登場人物が巻き込まれていくというストーリー。プレイヤーは、5人の主人公が午前10時から午後8時まで体験した10時間の出来事をプレイする。 --主人公たちは、元チーマーで現在はゴミ拾いに勤しむ「遠藤亜智」・正義感の強い新米刑事「加納慎也」・製薬会社の研究所長「大沢賢治」・フリーライターの「御法川実」・そして謎の猫のきぐるみ「タマ」の5人。 ''システム'' -オーソドックスなサウンドノベルと同様、画面全体に横書きの文章が出て、選択肢によって物語の展開が変わるシステム。 --『街』同様、主人公たちの行動はお互いに影響し合う。ある主人公の選択肢によって、他の主人公が「''BAD END''」を迎えてしまうことがある。その時は正しい選択を選び直して物語を進める必要がある。 ---BAD ENDへ誘う落とし穴は終盤になればなるほど増え、時には3人以上の登場人物を同時に正しく動かさなければならないことも。 -プレイ中はいつでもタイムチャートから全主人公の自由な時間まで移動が可能である。 -文章の中に青色で書かれた部分が出てくる。これは「''Tip''」と呼ばれるもので、その単語のより詳しい解説が見られる。 -物語を読み進めていくと「''KEEP OUT''」と表示され先に進めなくなる場面がある。その際は他の主人公のストーリーを進めて、特定の場所からKEEP OUTされているキャラクターに「''JUMP''」をすると先に進めるようになる。 -物語の流れは1時間ごとに区切られていて、5つのストーリーが全て正しい続き方(「''To be Continued''」に辿り着く」)をすれば次の時間に進める。 -ボーナスシナリオ --ボーナスシナリオとして「鈴音編」と「カナン編」が収録されている。 -隠しシナリオ --さらなる隠しシナリオとして「エコ吉編」「陰謀編」「真の陰謀編」が存在する。 ---- **評価点 ''ストーリー'' -本作のメインストーリーは、誘拐事件に端を発し、やがて細菌兵器やテロ、国際的な陰謀などスケールの大きな物語へ展開していく、壮大なアクションサスペンスと呼ぶべきもの。 --序盤から謎や先が気になる展開が散りばめられており、中盤以降もストーリーの展開は二転三転し、驚きのどんでん返しも数多くあるシナリオの評価は概ね良好。 --スピード感を重視し、文章を出来る限り短くしたり、描写を背景写真に任せて必要最低限に留めるなどの工夫がされている。 --総じて万人受けの方向に近いストーリーになっている。そのため『街』の弱点であった「シナリオに興味を惹かれない」「ノリや世界観にクセがある」といった問題は解決されている。 ---後述のように、両作品は本質的に違いも多い。 -開発者によればストーリーの内容や雰囲気は、アメリカのヒットTVドラマ『24 ーTWENTY FOURー』を意識したとのこと。 ''演出'' -全編通して、演出面のレベルが高い。 --全主人公のシナリオを1時間分消化すると、ドラマさながら、次のセクションの「予告編」ムービーが挿入される。重厚で盛り上がるメインテーマをバックに、印象的なシーンを断片的に繋ぎ合わせたハイスピードな演出はクオリティが高い。 --キャラクター選択画面にも動画演出が取り入れられており、カーソルが合ったキャラクターは短い動作を行い、選択決定時にはアップになりながらさらなるアクションを行う。 ---例えば加納の場合、カーソルが合った際には横向きだった身体を前へ向け、選択決定時には耳の警察無線用イヤホンに当てていた手を離して前を見据えるという具合。 ---物語の進行内容に合わせてキャラクターの服装などが変化するという細かな演出も行われている。 -実写映像も高画質で高品質。 --俳優の演技も印象的。本作の背景画像は写真1枚ごとに撮影するのではなく、基本的にドラマの撮影のように役者が台詞を喋って演技している様子を何枚も撮影し、その中から選ぶ形式となっている。~ そのため、登場人物のリアリティのある仕草や表情が切り取られており、それでいて完成するのは静止画であるため、演技経験のない素人や日本語の不自由な外国人も起用可能で、自由度の高いキャスティングが可能となった。特に格好良い中年~初老の男性が多い。 ---特に謎の少女を演じた当時12歳のティギー・ウィリアムス氏や、かつて『電波少年』にて「懸賞生活」にチャレンジしていたなすび氏は、圧倒的存在感を魅せてくれる。 ---また、ある場面には脚本担当の北島氏まで出演している。 ---さらに前作『街』で出演した俳優が再びキャステングされている。役柄は違うが、嬉しいファンサービスである。 --ごく一部だが動画が流れるシーンもある。 -BGMは佐藤直紀氏と坂本英城氏の2人が担当。多数のドラマ・映画音楽を担当する佐藤氏、ゲーム・動画配信など多方面での活動の多い坂本氏のタッグは強力。~ オープニング、次回予告で流れるメインテーマや各登場人物のテーマ曲など様々な楽曲が時にシリアスに、コミカルに物語を盛り上げる。 -『街』で好評だったTIPSは画像や動画が挿入されるなど進化した。 --TIPSの面白さもそのまま。説明からギャグ、サブストーリーや裏設定など多種多様。キャラの説明台詞やテンポの悪い部分が少ない。 --また『街』のTIPSは例えば人が死んでいる場面のTIPSで、ギャグを挟むなどシナリオの空気と合わないという声もあったが、『428』のTIPSではそのようなものは特にない。 ''システム'' -サウンドノベルの老舗チュンソフトだけあって、システム面やUIはレベルが高く、不備点はほとんど無い。 --序盤のチュートリアルが丁寧なので、サウンドノベル初心者でも安心してプレイできる。 ''『街』の小ネタ'' -登場人物「頭山花」の名前の由来、コーヒー牛乳が好きな刑事、久瀬管理官の兄、梶原刑事にそっくりな美容師、伝説となっている軍人、キャベツ教団など多く隠されている。 ''エンディング'' -『街』で評価が高かった、エンディングにメイキング動画が流れる演出を踏襲している。 -これまで静止画でしか見られなかった俳優たちが楽しそうに撮影をしたり会話している姿は、シリアスな本編とのギャップも相まって感動的。 -スペシャルエピソード --クリア後のおまけであり、『428』の脇役達のエピソードが描かれ、設定・背景の補強ができている。 ---- **賛否両論点 ''良くも悪くも『街』の続編ではない'' -本作はゲームのシステムや舞台等、『街』との共通点が非常に多いため、『街』の実質的続編と見られる・期待される事が多かった。 --しかし、一見同じような見た目に反して、''ゲームとしてのコンセプトは根底から異なる''点に留意が必要である。 -『街』は「''一見無関係な主人公たちの運命が、実は裏でつながっている''」というコンセプトのオムニバスだが、『428』は「''同じ1つの大きな事件を、様々な主人公たちがそれぞれの立場から奮闘して解決する''」という物語である。 -従って本作を「10年後の『街』」としてプレイすると、前作にあった「裏で登場人物がつながっている」面白さや、同じ街を舞台にしながらまったく異なる雰囲気の物語が進行するという特徴を感じられず、肩透かしを食らう可能性も。 --とは言え上記の通り街の欠点も改善しているので、賛否は分かれる。 -なお、当初は『街』の主人公の1人である雨宮桂馬が登場する案があったが、『街』との関連が強くなりすぎるということで没になっており、明確に『街』との間に一線を引いていることがうかがえる。 ---- **問題点 ''TYPE-MOONによるボーナスシナリオ「カナン篇」'' -隠しシナリオの1つ「カナン篇」は『[[Fate/stay night]]』等で知られるTYPE-MOONが制作を担当し、アニメ絵に声優陣が台詞をボイスつきで読み上げるという形でシナリオが進んでいくが、これに対しては批判意見が多い。 --『街』でも同じく「アニメで描かれる隠しシナリオ」である「青ムシ抄」は賛否が分かれる評価であり、同じ問題を受け継いでしまった。 -傭兵である重要キャラクターの過去(本編での大きなどんでん返しに関わる因縁の発端)を掘り下げるために「プロによる紛争地域における工作活動」を描く内容なのだが、舞台は渋谷ではなく異国であり、マンガチックなバトル展開、やたらと小難しい台詞回しが頻発する、奈須きのこ特有の''非常にクセのある文章''など、本編とあまりに雰囲気が異なる。 --''実写ドラマを見ていたらいきなり厨二系アニメに切り替わっていた''、というような作風の急激な変化に戸惑ったプレイヤーが多かった。 --キャラクターデザインも「青ムシ抄」では実際の俳優を寄せたキャラデザで再現できていたが、カナン篇では''俳優に全く寄せてない。''オリジナルのキャラデザインという点もカナン篇の別世界感を加速させている。 -シナリオの分量もかなり長い。読み終えなければ他の隠し要素が開放されないため、嫌でも読む必要がある。 --幸いにも、というべきか、選択肢は存在しないので、オートモードにして放置しておけば読まなくてもクリアすることは可能((この方法を使って突破したプレイヤーの数は少なくない模様。))。 -もう一つのボーナスシナリオの作者は『[[かまいたちの夜]]』の原作担当でもあるミステリー作家の我孫子武丸で、こちらは分量の短さもあり特に問題視されていない。 //ボーナスシナリオの記述がやや冗長だったので整理。 -スペシャルエピソード --基本は補足エピソードであるが、「梶原のポケット」や「チリの体質」などは漫画やアニメのような設定になっており、実写ゲーでそのような荒唐無稽の設定が非常に相性が悪い。 ''本編の終わり方がすっきりしない'' #region(エンディングのネタバレ) -エンディング自体は黒幕と呼べる人物が捕まり、事件が解決する大団円なのだが、スタッフロール後に挿入されるエピローグでは実は黒幕の力が権力上層部にまで及んでおり捕まってはいなかったこと、目的の完遂こそ出来なかったが一定の成果は手に入れたこと、そしてその暗躍が続くことが示される。 --作中では膨大な策を巡らせて多くの人々を手玉に取る策謀家である事や自身の戦闘能力も極めて高いなど、黒幕が如何に強大で恐ろしい人物なのかが描写される一方、それを打ち倒す爽快感は無く、消化不良感が残ってしまう。そして渋谷の人々のドラマから離れたところで戦いが続いていくことが暗示されており、せっかくの良い読後感が最後の最後で釈然としないものに変わってしまう。 ---さらに、は主人公達の行動の多くも黒幕にとっては大した問題ではなかった事まで作中で語られている((序盤から続く事件や終盤の大事件も黒幕にとってはその殆どが目的達成の為の布石、大いなるブラフに過ぎなかった、と言う話である。))。壮大なドラマを繰り広げながら黒幕に報いを受けさせる事が出来なかった上に、目的の一部まで果たされてしまう結末は尚更釈然としない。 ---一応、黒幕が渋谷を去る際に敗北感を抱いていた事が語られるが、あまりフォローになっていない((その敗北感も、クライマックスにおけるある人物の行動に対してであって、事態の収束に尽力していた人々に対してではない。))。 --下記にあるように続編のアニメ展開もあり、黒幕との戦いもそちらで描かれるが、この終わり方に言及はされていない。 -むしろこれは『街』のスタイル(渋谷で起こるドラマは永遠につづいていく「終わりがない物語」というもの)を踏襲したからではないかとも思われる((実際、トゥルーエンドにおける表記は「THE END」ではなく「NEVER END」である。))。『街』よりも主軸のストーリーを強固にしたため、逆に「終わりがない物語」の部分が違和感として感じやすくなった。 -また、隠しシナリオに進むための条件が相変わらずわかりにくく、攻略情報無しでたどり着くのは難易度が高い。 #endregion //''ボリュームがやや物足りない'' //-多彩なバッドエンドやボーナスシナリオ、スペシャルエピソードなどメインストーリー以外にも様々に用意はされており、一作品としてのボリュームは十分ある。 //--しかし『かまいたちの夜』などに比べると、異なるルートに分岐しない点、『街』に比べると主人公が減って一日で完結してしまう点など、いささか物足りなさを感じるかもしれない。 //上を見たらキリがないし、単独で見て十分あるならそれはもう問題じゃないだろう //''JUMPの演出が弱い'' //-『街』のZAPと同様、ゲームの進行に不可欠な重要なシステムだが、「KEEP OUT」のテープが千切れて落ちるだけど演出は簡素。 //--全体的に演出に凝った点が評価されている作品であるだけに残念。もう少し「KEEP OUT」のテープをバリバリ剥がしたりといった演出があれば更にプレイヤーを惹き込めた事だろう。 //実際の演出と異なった記述である上、一部内容が主観的すぎる ''主題歌が作中で何度も流れる'' -上木彩矢による主題歌『世界はそれでも変わりはしない』が作中で何度も流される。ただそれだけなら挿入歌が流れる他のゲームでもたまにありうることだが、この曲の再生がストーリー上でギミックとして使われているせいで「この曲が聴こえてきたらバッドエンド」というような状態となってしまっておりプレイヤーに悪い印象を持たれやすい。 --また劇中で登場人物が上木彩矢のファンであるという設定(音楽や他人に興味がなかった人間がたまたま曲を聴き音楽に目覚め、果ては上木彩矢という人間そのものに入れ込むという極端さ)が語られたり、当の上木彩矢も登場しているなど、ゴリ押し感が目立つことも悪印象を強めている。%%ゴリ押すつもりならもっとポジティブな場面で使えばよかったのでは…?%% ''TIPSが減った'' -TIPS自体は進化したものの、その数が大幅に減ってしまった。 //良い部分悪い部分はっきりしてるので分割 ---- **総評 サウンドノベルの集大成を作ろうという意気込みのもと製作された本作は、先が気になるしっかりしたメインシナリオ、安定したシステム面、高質な映像と演出など、どの要素も高いレベルで完成されており、好評を受けた。~ Wiiの所持層に合うジャンルでは無かったのか発売当初の売上はあまり伸びなかったが、高い評価の口コミでこのジャンルとしては珍しくじわじわと売上を伸ばして行き、2010年末の時点で全機種合計で約16万本を売り上げた。~ 『街』との相違点は意外に多く、比較も難しいものの、ノベルゲームとして万人に勧められる良作であるのは間違いない。 ---- **余談 -ファミ通クロスレビューで40点満点を得たことで話題になった。 --開発にファミ通編集部が関わっているため、多少下駄を履かせられていた可能性もある。 --満点を取ったことで逆にユーザーの期待感が下がった((ファミ通はクロスレビュー満点を安売りし、すでに信用度が低くなってしまっていたため。))節も。 -発売日となる2008年12月には本作の舞台である渋谷の各地で大々的にプロモーションを行い、多くの話題を呼んだ。 --渋谷駅西口をはじめ道玄坂やセンター街などの各所大看板、TSUTAYA SHIBUYAのエスカレーター占拠、渋谷109前で主題歌を歌う上木彩矢の野外ライブや作中で使用された建物で抽選会を行うなど、正に渋谷をジャックするほどの規模であった。 -「日本ゲーム大賞2008」でフューチャー部門、「日本ゲーム大賞2009」で優秀賞を受賞。 -当初は『428(仮)』というタイトルで発表されていた為、あの『[[四八(仮)]]』の続編か? などとネタ扱いされていた。 --これに関しては開発者も「去年某社さんから発売された『四八(仮)』の続編ではありませんよ。お間違えの無いように。」と念を押していた。%%そりゃ一緒にされたくないだろう…。%% --なおタイトル自体は「よんにーはち」と読むが、数字は「渋谷(し=4/ぶ=2/や=8)」の語呂合わせになっている。''断じて四谷ではない。'' -タレントの伊集院光も本作を評価するユーザーのひとりであり、ラジオやファミ通の連載で何度も激賞していた。 ---- **その後の展開 ''小説版『428』'' -2009年、講談社BOXより本編脚本を担当した北島行徳氏による小説版が発売された。全4巻。 --新シナリオ「劇団・迷天使編」が追加された他、登場人物の心理面の掘り下げ、場面の整理、本編で説明不足と指摘された部分の補完、主人公達の後日談などが追加されている。一方、後述の『CANAAN』へと繋がる描写が変更され、関連が薄くなっている。 #region(エンディングのネタバレを含むため閲覧注意) --黒幕の宿敵であり、トゥルーエンドで生存が明言されるとある人物が、小説版では生死不明(周囲の認識上は死亡)のままとなっている。~ 『CANAAN』は今作のその後の時系列で黒幕とその宿敵の戦いを描く物語であるため、この変更により(生死こそ明言されていないものの)『CANAAN』と直接は繋がらないような描写となっている。 #endregion --北島氏はこれを本作の完全版とし、「『428』はこれで書き切った」と自身のブログにて述べている。 ''アニメ『CANAAN』'' -上記小説版に先駆け2009年夏、スピンオフアニメ『CANAAN』放送。ちなみにチュンソフト作品初のアニメ化である。 --ストーリーは独立しており本作を知らなくても十分楽しむことが出来る(時系列は後日談に位置する)。 ---基本的にはボーナスシナリオ「カナン篇」をベースとしているが、独自要素が多く((「ボナー」と呼ばれる特殊能力者など。))、「本編とカナン篇」以上に雰囲気の乖離は大きい点には注意されたし。 ---また、『CANAAN』では本作のネタバレ要素が根幹にあるため、『428』をプレイするつもりであるなら先に視聴してしまうのはあまりおすすめできない。 --御法川をはじめ、『428』から多くのキャラクターが出演しているのも特徴。ちなみに『CANAAN』における御法川の声は『金八先生』同様、浜田賢二氏が演じている。 ---なお、本作の公式ガイドブックの奥付(最終ページ)には、「本来最終章のエンディングで表示されるはずだった」という御法川のモノローグが記載されている。~ 内容は、取材で中東を訪れた御法川が、命の危険を承知で事件の黒幕の素性についての取材続行を決意するというもの。恐らくは、『CANAAN』の前振りとしての役割を持っていたと思われる。 ---後の移植版ではこのモノローグがスペシャルエピソードとして収録されている。 ---もっともスピンオフ故か、一部人物の性格は本編との違いが大きい。 --2010年にこちらも小説版が登場。全2巻。原作サイドに許可を取った上で『428』と『CANAAN』をより深い部分で融合させる事を目指しており、アニメでははっきりとは語られていない『428』の根幹のネタバレにあたる部分も盛り込んでいる --コミカライズ版も存在する。全3巻。こちらはTV版・小説版と多少人物・展開が異なっている。 --また、上記コミカライズとは別作者による『428』と『CANAAN』を繋ぐ物語を描いた漫画作品『CANAANスフィル』もある。全2巻。 --『CANAANコミックアンソロジー』も発売されている。こちらは本編の設定とは特に繋がりのない複数作家によるパロディアンソロジーである。 ''移植作品・廉価版など'' -2009年秋、スパイクからPS3/PSP移植版が発売。本編の追加は無いが、上記のスペシャルエピソード等が追加されている。 --2010年12月2日に両機種のベスト版が発売された。これに加えて2011年3月9日にPSP版のDL版が配信開始された。 -Wii「みんなのニンテンドーチャンネル」での「おすすめランク」内において、最も取るのが難しいプラチナランクを獲得。 --2010年、「みんなのおすすめセレクション」の1つとして廉価版が発売。 -2011年11月、チュンソフトからiOS版(iPhone/iPod Touch/iPad用アプリ)が配信。 -2013年3月、スパイク・チュンソフトからAndroid版が配信。 //アプリに関しては、↑の様な本文中での簡単な記述に留めるのがよいとし、データの方は消しました。 -2018年9月6日にPS4/Win版が発売。 --Win版は海外向けに『428: Shibuya Scramble』としてSteamで先行販売されたが、これとは別に日本向け専用に日本語のみを収録した独立したバージョンが販売されている。 --このため、''英語版(日本から閲覧不可)と日本語版のストアページがそれぞれ別々に用意される''というSteam上では珍しいケースとなっている。 ''その他関連作品'' -本作の主人公の一人である「御法川実」は、元々は『[[3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!]]』の登場人物であり、スピンオフ出演となっている。 --2008年に『[[忌火起草]] 解明編』の発売を記念して連載されていた『忌火起草ノベル』の一編「ゴシップ」でも主人公に抜擢されていた。 --2011年に発売の『[[ガチトラ! ~暴れん坊教師 in High School~]]』には御法川の妹・御法川ミドリが登場する。兄と同じくジャーナリストであり、その兄についても作中で触れられている。 -『[[風来のシレン4>不思議のダンジョン 風来のシレン4 神の眼と悪魔のヘソ]]』と『[[5>不思議のダンジョン 風来のシレン5 フォーチュンタワーと運命のダイス]]』に、このゲームのタイトルをもじった壷「四二鉢」が登場する。物を入れても何も起こらないが、投げると爆発する。 -ディレクターを務めたイシイジロウ氏はレベルファイブに移籍後、本作の流れを汲むADV『[[TIME TRAVELERS]]』を手掛けた。 --実写ではなく3Dアニメーションによる映像、フルボイスで展開する物語と、本作とは演出の方向性が大きく異なるが、ザッピングシステムは本作とほぼ同様のものが採用されている。 --舞台も本作の約20年後の渋谷となっており、ストーリーに直接の繋がりこそないものの、本作にまつわる小ネタが多数登場している。

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