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サラダの国のトマト姫 - (2015/03/04 (水) 09:56:19) の編集履歴(バックアップ)


注意:ここでは、ファミリーコンピュータ版とその原作となるパソコン版の情報を併記し、もっとも知られているファミコン版を中心に解説する。



サラダの国のトマト姫(ファミリーコンピュータ版)

ジャンル アドベンチャー
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売・開発元 ハドソン
発売日 1988年05月27日
定価 5,900円
配信 バーチャルコンソール
【Wii】2010年1月19日/500Wiiポイント
【3DS】2012年9月19日/500円
【WiiU】2014年5月14日/514円
分類 良作

概要

擬人化された野菜たちの住む星を舞台に繰り広げられるファンタジー風のアドベンチャーゲーム。
クーデターを起こしオニオン王に代わって実権を握るカボチャ大王を懲らしめるべく、プレイヤーはキュウリ戦士となって王国とトマト姫を救うために様々な場所へ行き、仲間を助けながらストーリーを進めていく。

オリジナル版は1984年に8Bitパソコン向けに発売された作品で、コマンド入力型*1だったが、FC移植の際にオーソドックスなコマンド選択型のシステムに変更され、シナリオも一新されている。

ストーリー

はるかむかしのことです。
あるところにヤサイたちのすむほしがありました。
この国のオニオン王のけらいのカボチャだいじんが王さまをうらぎってしまったのです。
だいじんはウツボさんみゃくのふもとのしろへ、トマトひめをさらっていきました。
王さまは、トマトひめをさらわれたショックと、かなしみのあまりなくなりました。
いま、国中の人がトマトひめのことをしんぱいしています。
さあ、あなたはゆうかんなキュウリせんしとなってひめを助け出してください。

特徴

  • コマンド選択型のアドベンチャーゲームとなっており、『ポートピア連続殺人事件』や『オホーツクに消ゆ』と似たシステム。*2
    • これにより、コマンド入力型ADVにありがちだった言葉探しに起因する難易度の高さが撤廃され、グラフィックの一新に伴うイメージの変化も手伝って、ビジュアル面、ゲーム性共に低年齢層向けに配慮されたゲームデザインとなった。
    • 物語の最初で助けることになる柿の男の子『柿ッ八』を助けると脇役としてお供する様をしてくれるようになる。様々な所でヒントになる発言をしたり、色々な活躍をしてくれる。
    • アドベンチャーパートに留まらず3Dダンジョンや戦闘モードがある。戦闘モードはとある場面で『たたかう』ことで起こる。コマンド式ではなく『あっち向いてホイ』で勝敗を決める。
    • パスワードで小節を挟む形になっており、全9章のシナリオを進めていく。
    • テキストがファミコン版にしては大きくて読みやすく(通常のフォントの4倍角の大きさ)、数少ない漢字フォントを使用しているゲームでもある。使用する漢字も小学1~2年生レベルのもので難しい漢字は使われていない。低学年でも満遍なく楽しめる。

長所

  • 非常に温もりのある個性的なキャラクターとグラフィック。
    • 各シーンに表示される一枚絵は丁寧に描かれており、風景画を思わせる。更にその中に擬人化された野菜たちが登場することでファンシーさをうまく表現しており、さながら絵本でも読んでいるような気分になる。
    • 登場する各キャラクターも子供向けの絵柄になっているがコミカルかつ、とても可愛い。一部はそれを超えるものがあり、サラダロアの酒屋の悩ましげな表情のフサ子や微笑みが美しいアップルリサに至っては美人クラス。また、キャラも個性的で擬人化された野菜以外にも『ノーミン族』といういわゆる人間にあたる種族も存在している。*3ちなみにアップルリサは名は果物の名前であるが姿は人間。これはノーミン族と野菜族のハーフという設定。*4
  • 練りこまれたストーリー・世界観。
    • オニオン王を裏切ったカボチャ大王の国が圧政を敷く中で、一般の町民の生活模様から国政から迫害され浮浪者として一生懸命に生きる者や、反乱軍を結成し対抗するレジスタンスの生き様など、いわゆる乱世状態に置かれた世界が描かれている。子供向けのイメージ漂う作品としてはシビアな世界情勢ではあるが、登場するキャラクター達がそれをフォローしてくれている為に不穏さすら感じさせない。敵との戦闘の勝敗が「あっちむいてホイ」で決まるあたり、至って平和で牧歌的である。
    • 舞台も町外れからはじまり、町、奉行所、パセリックの森やウッピー洞窟といった3D迷路、キャロット高原を経て、最終的に本拠地のカボチャ大王の城へと舞台は様変わりに進んでいく。展開に応じてBGMも変わって行き、牧歌的で穏やかな曲調もあればノリノリな曲もあり、カボチャ大王の城ともなるとラストに相応しい曲調になったりする。
  • バトルシステム。
    • 随所敵と戦う場面があり、先述のように『あっちむいてホイ』で戦う。ポイント制であり、敵に勝つことでポイントは減っていき、全部無くなると勝利。逆に8ポイント以上になると負け。しかしカボチャ大王を除いてはゲームオーバーにならず、戦う前の場面に戻る。各敵にはジャンケンで手を出す時や顔の向きに法則性があり、仲間などに会話することでヒントが出たりする為、しっかりとつかんでいればまず負けることは無い。誰もが知っている遊びをバトルシステムにしたあたり、低年齢層向けへの配慮が感じられる。
  • 救済キャラクター・オクトベリー。
    • ストーリー上どうしてもお金が必要になる場面があるが、そこで登場するのがオクトベリーという生き物。特定の条件になるとこいつが画面横切りかならず金貨(お金に両替できる)を落としてくれるので、行く先々詰みになりにくい、ありがたい存在である。
  • 隋所にパロディやネタが演出されている。とある住人を「たたく」とドラクエ風のダメージのメッセージが流れたり、モビルヤサイスーツとガンダムまんまの戦闘機があり、「たたかう」場面になるとアムロよろしく「いきまーす!」のセリフがあったりと、各所に散りばめられており子供のみならず、大人でもクスリとさせられる場面もある。

短所

  • 3Dダンジョンが迷いやすい。道中で方向ヤサイというコンパスを手に入れることで一応は向いている方角が把握できるようになっているが、周りのグラフィックが似たりよったりのため、自分の位置が把握しづらい時がある。
    • ダンジョン内の配色は暗めでなおかつ恐怖感をあおるBGMが重なり、このゲームのダンジョンがトラウマになった子供が続出した。パセリックの森では化け物の形をした木があったりと演出も怖いところがある。
  • セーブ機能はなくパスワード制。パスワード表示は章単位であるため、任意の場所から再開できない。

総評

低難易度かつ分かり易く明快なプレイ環境、温もりあるグラフィックとキャラクターのかわいらしさ、そして笑みをも誘う織り交ぜられたネタとアドベンチャーの王道に域している本作は当時の少女達からも広く支持を得ており、発売から20年余り経つ今も今なお本作のファンは多い。

移植もされており、Windows版(現在は販売終了)やゲームボーイアドバンス『ハドソンベストコレクションVOL.4 謎解きコレクション』にも収録。*5
携帯アプリ版やWii/3DS/WiiUバーチャルコンソール*6で配信されている。興味のある方は楽しんでみるといいだろう。


サラダの国のトマト姫(パソコン版)

【さらだのくにのとまとひめ】

ジャンル ADV
対応機種 PC-6001、PC-8001mkII、PC-8801
MZ-1500/2000、X1
FM-7、MSX、SMC-777
開発・発売元 ハドソン
発売日 1984年7月
定価 6,200円
判定 良作

概要

上記ファミコン版の原作。擬人化された野菜が登場人物という点や童話的な世界観、ストーリーの大筋は一緒だが、シナリオ展開や一部の登場人物の設定に相違点がある。*7
コマンド入力型ADVの常として、難易度はかなり高い。

ストーリー

はるか大昔。ずっと離れた場所に、地球とよく似た星がありました。そこにサラダ王国という、小さな国があります。
国民は野菜ばかりという国で、みんな仲良く平和に暮らしていました。この国の王様はオニオン王といい、名君として国民から慕われていました。
皆が満足して暮らしているようですが、不満を持つものが一人いました。オニオン王の側近、パンプキングです。
いつか王様になろうと思っていた彼は、ついにクーデターを起します。クーデターは成功し、パンプキングは王となりました。
ですが彼は暴政を敷いて国民を苦しめます。すると、ついにオニオン王の娘、トマト姫を盟主とした反乱軍との戦争となりました。
戦争は一進一退。なかなか決着が付きません。そこでパンプキングは、トマト姫の誘拐を思いつきます。
誘拐は成功し、トマト姫は囚われの身となってしまいました。
姫の救出へ何人も向かいましたが、帰って来る者はいません。もはや反乱軍は風前の灯でした。
そんな時、ふと一人の戦士がこの国に立ち寄ります。その名はキュウリ戦士。事情を聞いた彼は、トマト姫を救い出す決心をするのでした。

特徴

  • コマンド入力式ADVだが、入力できる文字は英語とカナから選択できる
  • 直線を主体とした作画。一見すると子供の書いた落書きのようだが、一応、イラストレーターによるイラスト。
    • この絵を童話的と見るか、単に拙いと見るかは微妙な所。
    • とはいえ、当時のパソコンゲームのグラフィックは座標を指定して描画するという、
      機械的なプロセスを経て描かれるため、絵的にぎこちなさがあるのは仕方ないところである。
  • 入力履歴が見られる点、セーブの方法など、基本システムは『デゼニランド』と同様。

評価点

  • 直線をあえて多用した絵なので、描画速度は速い。
  • ストーリーはまさに冒険譚。アイテムを収集し、方々を回り、人々の協力を得ながら、姫救出へ向かう。様々な展開があり、飽きさせない。
    • サラダが国民というファンシーな世界観だが、反乱軍が出てきたり、死体が出てきたりと、なかなかシリアス。さらに巨大野菜ロボットまで登場してしまう。それらが、なんとも言えないシュールさを醸し出す。
  • 『デゼニランド』では英語のみの入力だったが、本作ではカナにも対応するようになった。
    • 英単語の意味を調べるために辞書とにらめっこするのがコマンド入力型ADVの常であったが、このおかげで単語探しが非常に楽になった。

問題点

  • さらなる高難易度。
    • ヒントは多くなく、頭を捻るような場面多数。ミスリードを招くようなものもあり、頭の柔軟性が必要。突拍子もないものが、正答の場合もある。難易度の高さは『デゼニランド』より上。
    • 同じコマンドを繰り返す、という場面が何度かあり、引っかけ要素が強い。
    • ただ目的語のあるコマンドが正答の場合、対象を聞いてくるので、これが正答を導き出す手段として使える。
  • 手詰まりも多い。
    • 要所々が話の区切りとなっており、そこから元に戻れなくなる。このため、それまでに必要なアイテムを集めていないと、当然詰まる。使い方を間違っても詰まる。もちろん、その他にも、ゲームオーバーになってしまう展開もある。
    • もっとも、この手の手詰まりは、当時よくあるものだった。程度の差はあるが。

総評

登場人物が全て野菜という変わったADV。その絵柄も含めどこか童話的。ただ内容は見かけとは違い、まさしく冒険譚。いろいろな展開を見せ、躍動感のあるものだ。一方で、難易度は、『デゼニランド』の方向性をさらにパワーアップ。かなり難しいものとなっている。
童話的な雰囲気ながらも、冒険ものとして良くできた一作。