太閤立志伝III
【たいこうりっしでんすりー】
ジャンル
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シミュレーションゲーム
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対応機種
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Windows 95/98 プレイステーション
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発売・開発元
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コーエー
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発売日
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【Win】1999年3月5日 【PS】1999年8月19日
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定価
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【Win】9,800円
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判定
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シリーズファンから不評
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ポイント
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自由度喪失 武将数も減少 システムは進化 イベントはより充実 チュートリアルも充実 一応は遊び易くなった
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リコエイションゲームシリーズ
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概要
『信長の野望』シリーズとは違い、豊臣秀吉の出世譚を題材にしたコーエーのリコエイションゲーム(歴史シミュレーションゲーム)『太閤立志伝』シリーズの三作目。
前二作と比べてUI・イベント・ビジュアル面が強化された。
主人公は秀吉と架空武将の2人になった。
大名である信長の『主命』を達成して勲功を稼ぎ、昇進を繰り返して、いずれ城主、大名になり天下統一というのがゲームの目的であり大まかな流れ。
問題点
シナリオ
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イベントこそ多いものの、ほぼ一本道のシナリオ通りに進む。分岐するのは本能寺の変あたりまで進めてからで、他家仕官も出来なくなった。
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PS版では、がんまくの出奔後にがんまくの家に行くと他の大名に仕官できるようになった。また、自らが謀反を起こせるようになっている。
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架空の武将が主人公となる「特別編」も存在するが、これは本能寺の変前後の時期を勝家配下としてプレイするだけの短編。
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ちなみにこのシナリオでの秀吉の最期はファンの間で語り草となっている。
登場人物の減少
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武将数の減少。ビジュアルに力を入れ過ぎたせいか1/3以下(230人)にまで減少した。
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しかも城の総数は200のまま変わっていないため、過疎感がある。
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また配分バランスも悪く、織田家には最初から30人近い武将がいるのに次点の毛利は最盛期で10人程。他の大名家など3人もいれば多い方で、しかもCOM大名は浪人を登用しないためこの傾向に拍車がかかる。
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数が少なくとも個性が出ていればと思いきや、その個性が欠如している。
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能力値は5種100段階から4種10段階に変更。また能力値によって習得できる技能レベルの上限が決まるため、低い能力値を技能で補うことすら出来ない。初期設定での秀吉の能力も「英雄型」「知将型」の二通りのみである。
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さらにその技能上限がややこしい。能力値が10に達していないカテゴリの技能をうっかり上限まで上げると、そのカテゴリ内の他の技能が上がらなくなる。(例:英雄型の秀吉は内政9。これだと内政カテゴリに属する技能3種『算術』・『開発』・『築城』のうち3まで高められるのは1種のみ)。もちろん技能を忘れることなど出来ないので、目的外の技能を3まで上げてしまうと同カテゴリ内の他の技能はゲーム中ずっと2のまま。
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これらにより武将の優劣が異常に厳しいものになった。
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PS版では財宝を除く価値6以上のアイテムを持っていると、そのアイテムの種類に対応した能力が上昇するようになった。これにより全能力最大・全技能上限にすることも可能となった。
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マップを歩いている武将が秀吉のみになった。他の武将も独自に動いているのだが、前作までのように偶然道端で遭って知り合ったりすることはない(せいぜい行商人が出てくることがある程度)。また、これによって他武将の動向が掴み難くなっている。
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主命を受けるか城主になるまで、浪人を登用して配下にすることが出来なくなった。
武将時代
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足軽時代を終えたらいきなり木下派を作って、そのトップになっている。
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足軽時代は浅野長勝の下で使い走り同然の立場であり、そんな状況の秀吉が自分の派閥を作る事は自殺行為に等しい。
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実際、派閥内には弟の小一郎(秀長)しかおらず意見はすべて却下、派閥取り込みも「会ってもくれない」、「贈り物送る金もない」、「そもそも主命や自分の技能高めるのが精一杯で暇がない」といった状況で碌に行えない。
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一応、身分が上がったりイベントをこなせば家来(木下派の人物)が加わり、時間的余裕も出来て派閥取り込みも楽になってくるのだが、これなら最初は丹羽派に所属している設定にしてある程度出世した時や、イベントで木下派を結成するという展開にした方が説得力があるし、盛り上がると思われるのだが…
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信長と勝家の性格がおかしい。
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本作の評定はおおよそ合議によって方針が決まるのだが、そこでは勝家は常に秀吉に反発し、逆のことを言う天邪鬼と化す。信長は信長で、(賛同者の身分も鑑みて)基本的に最多数の意見を採用する。
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このため序盤は勝家の派閥が最も大きいのを利用して「提案したい方針と逆のことを進言」→「勝家が(プレイヤーの)提案したい方針を進言」→「大多数の武将が賛同し、信長がそれを容れる」という流れを造ることができてしまう。
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一応、新参者に辛く当たるのは(命のやり取りが日常茶飯事の)戦国時代ではある意味当然であるとも言えるし、当時の大名家の結束や主従関係は現在ほど強固ではないので各家臣の立場を考慮しなければならない事を再現しているとも言えなくもないが…
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前作でも評定で各家臣が方針を述べることはできたが、信長がかなり自由に決定していた。イメージ的にはこちらがしっくりくるか。
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『主命乞い(手が空いた際、自ら主命を願い出る)』ができなくなった。
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今回の派閥システムの関係で削除されたと考えられる。
城主(大名)時代
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城主自身では内政等ができなくなった。
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評定で配下に命じない限り自身では開発も改修も訓練も出来ない。物資の購入すら出来ない。
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初代・IIでは城の改修や増築は行えたので完全な退化である。一応大名時代の場合は自ら朝廷工作を行うことが可能。
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家宝を買うのにも引き出し金は使えない。なんと大名になってすら所持金は俸禄のみ。
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上記の通り仮に引き出せたとしても(この段階では)家宝購入以外に使い道が無いのであまり困らないが…
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面白味のない野戦。陣形を決めた後はどの部隊もただ前進または待機して近くの敵部隊を攻撃(迎撃)するだけ。地形を利用したり、包囲や集中攻撃の指示を出すことは出来ない。ちょっとした計略を除けばあとはせいぜい夜襲をかけるくらいしかすることは無い。
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特別編での野戦は全て勝家が指揮官であるために主人公は進言する事しかできず勝家が中々受け入れないこともあって思ったように戦えずストレスがたまる。
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上杉との戦いで勝利すると最強の陣形の「車懸の陣」を習得可能なのだが上記の仕様上有効に活用できない。
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主命での攻撃対象以外の城は攻められなくなった。たとえ敵対大名家の城でも、主命の目標となっていなければ攻めることは出来ない。そのくせ行軍中に他大名家の城に近付く度「この城は攻められません」「この城を攻めますか?」といったメッセージが出るため鬱陶しい。
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ここでも野戦のように個々の部隊に指示を出すことは出来ず、最初から力攻めで行くのか一旦城を包囲するのかの大まかな指示くらいしか出せない。野戦と同じようなもので、ちょっとした計略を除けばせいぜい城によっては水攻めが出来るかという程度。
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さらには大まかな方針でどれを選ぼうが、秀吉率いる第一部隊はほとんどその場を動かない。迎撃に出てきた敵部隊が近付いてくれば攻撃するが、危くなっても逃げることすらしない。配下の部隊もひたすら近くの敵か城を攻撃するだけで助けには来ない。退却すればばらばらに逃げる始末。
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武将を捕えることが出来なくなった。大名家の本城を落とし滅亡させても、大名は必ず死に、残りの家臣も死ぬかそのまま城下で浪人になるのみで、登用したければ戦後に自身で赴かねばならない。
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大坂城築城イベントの際に自動で本拠が移転するのだが、この時大阪城の前身である石山本願寺に城主を置いたままだとバグにより詰んでしまう。
その他
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マップ移動中になぜか合戦中の城を通り過ぎることが出来ず、迂回を迫られる。
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勢力図が見にくい。マップ上に点在する城には自家との関係で決まる色がついているだけで、家紋が表示されないため他家の勢力範囲がわかりづらい。『勢力図』コマンドを使えば大名家の家紋は表示されるが、今度は城の連結が書かれていないためやはりわかりづらい。
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個人戦が削除された。移動中に山賊は襲って来ないし門番と揉めることもない。一作目の頃からあった辻斬りも出来ない。またこれにより金庫の存在がただ面倒なだけのものとなってしまった。
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また、馬屋や鉄砲鍛冶屋で働く事も不可能になった。金銭稼ぎは酒場での「ちんちろりん」のみだが「セーブ&リセット」技で簡単に金が稼げる。更に大量に稼いだ場合価値7(今作最高レベルでPS版の場合能力も上昇)のアイテムまで手に入る。
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最初の主命で大垣城(1貫で札8枚)に行き、1000貫ほど稼ぐ。居城の清州城(10貫で札8枚)で10000貫程度まで稼ぐ。これだけ資金を持っていれば、何度か馬屋に出入りすると名馬を勧められ、移動中に行商人から高価値のアイテムが買えることもある。北ノ庄城など50貫で札8枚相場の酒場でさらに荒稼ぎすれば、未鑑定の高価値アイテムが札1000枚と引き換えにもらえる。
評価点
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チュートリアルの充実
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秀吉編は足軽から始まるので、適時適時で上司や同僚が助言や説明をしてくれるので何もわからずに詰む事が少なくなった。
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辻斬りが無くなった事でいきなり襲われて殺される事が無くなり、ゲームオーバーになりにくくなった。
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歴史イベントの大幅強化。
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特に本能寺の変以降は大坂城築城位しかイベントがなかった前作までとは違い、清州会議・賤ヶ岳の戦い・小牧長久手の戦いといったその後の物語を彩るイベント群が増強された。
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美濃三人衆の調略や松永久秀の謀反なども本作で実装。前作では普通に戦って倒していた。
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自由度と引き換えとなったが、歴史イベントの強化で戦国時代の情勢や、人物の行動の背景が解りやすくなっている。
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重要武将はイベントで自動的に登場するようになった。
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前作までは、効率的なプレイを心がけずとも史実よりかなり早く物語が進行してしまい、1560年代後半~70年代以降に登場する武将が出現できずじまいという事態が多く発生した。
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本作では前述のイベントの関係もありそこまでスピード進行はしない。黒田官兵衛も石田三成も自動で登場するし、武田勝頼や毛利輝元に代替わりしないなどということもない。
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本作では配下と一丸となって主命を実行する。
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主に内政の主命は、複数の配下をそれぞれの『小作業』に割り振って実行する。これによって配下の重要さが増し、また配下と共に勲功を稼げるようになっている。
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また城主以前の、武将の時代から配下に主命を出すことができる(といっても、この頃は相場調査と修行しか命じることは出来ないが)。
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城主になってからの城攻めの際には配下の兵士数(身分によって変動)も重要になるので、城主になる前に配下の勲功を稼ぎ能動的に出世させられるのは大きい。これらは本作で最も評価されている点だが、コンセプト上の違いからIV以降に受け継がれることはなかった。
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システム面が進歩し遊びやすくなっている。
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前作までは全国十数ヶ所しか無かった『町』の宿・酒場といった施設が200以上の城で利用できるようになった(今作には堺等を除き全て城下町扱い)。さらに商家や医師宅まで全国規模で利用できる。
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前作までの町中における2D見下ろし型の移動は操作性が悪く無駄な時間を使ってしまいがちだったが、今作では城内でのアイコン移動が可能になった。
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配下や同僚に対して『技能指南(自分から技能を教える)』が可能になった。
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自宅で休養する際、細かな日数指定が可能になった。
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忍者が他家の武将の元服も教えてくれるようになった。
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生前に認知していれば、死亡した武将の情報も見ることができる。
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評定で家臣の技能が表示されるようになり、効率的に仕事を与えられるようになった。
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達成報告も台詞を飛ばして一括で受けられるようになり、前作までの城主・大名時代の煩わしさをなくしている。
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配下の城主に攻略を任せられるようになった。
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前作までは城主は城の内政を代行するだけだったが、本作では具体的に敵領攻略の指示を出せる。全国制覇を目指すには家臣をうまく使いたい。
総評
本作はシステム面こそ進化した点が多くプレイそのものはわりと快適だが、イベントが多過ぎてシナリオをなぞるような傾向が強く、最大の売りであった自由度が喪失している。
終盤以外はほぼ同じ展開で、複数回プレイを推奨できるようなゲームではない。
大河ドラマの大ヒットを受けて制作され、開発にも関わったログインの誌上で大々的に宣伝されたが、シリーズファンの評価は散々なものだった。
これ以前からコーエー歴史ゲームにおける大河ドラマの影響は強く、後代のコーエーテクモにもその手法は引き継がれていくが、本作はそうした印象を決定付けた代表例と言える。
その後の展開
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他家仕官ができるようになるなど一部に変更がなされた上でPSに移植されたが、結局評価を覆すには至らなかった。
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その後、進化したシステム面を継承しつつ全武将でのプレイが可能になった『IV』の発売によりシリーズの評価は持ち直した。
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2010年12月20日には、フィーチャーフォン向けに移植されたアプリ『Mobile太閤立志伝3』が配信された。翌年放送のNHK大河ドラマに合わせてか「お江」のイベントなどの追加要素がある。
余談
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コーエーはその後も大河ドラマの流行に便乗しシリーズの看板を利用して主人公削除ビジュアル重視のゲーム『維新の嵐 疾風龍馬伝』を発売したが、維新シリーズファンにはスルーされた。
最終更新:2023年06月22日 14:36