※本作のタイトルは『ToHeart』ですが、PS移植版と同名のため、区別として記事名に「(2025)」を加えています。
ToHeart
【とぅはーと】
ジャンル
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アドベンチャー
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対応機種
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Nintendo Switch Steam
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開発・販売元
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AQUAPLUS
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発売日
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2025年6月26日
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定価
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ダウンロード版:2,800円(税抜) 通常パッケージ版:3,980円(税抜) プレミアムエディション:9,800円(税抜)
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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CERO:B(12才以上対象)
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判定
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良作
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ポイント
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伝説的ギャルゲーの令和リメイク グラフィックが全面3D化 ボイスは新声優版と原作版を切り替え可能 テキストは原作そのまま
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Leaf/AQUAPLUS作品
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概要
1997年にPCで発売された『To Heart』と、1999年にPSで発売されたその移植版(以下「原作」)を元にしたリメイク作品。
テキストはほぼ原作通りだが、グラフィックは全面3Dに刷新され、キャラクターボイスも新録されている。
変更点・評価点
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グラフィックがフル3D化
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原作のグラフィックはイラストだったが、リメイクに伴いキャラクター・背景共に3Dで描画されるようになった。
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原作のイベントCG(一枚絵)は同じアングルのまま3Dで再現されているものも多い。また一部のシーンは専用モーションでムービーとして描かれる。
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衣装も全体的にリファインされている。特徴的な制服はそのままだが、体操着がブルマから短パンになっていたり、志保や琴音が制服に上着を羽織っていたり、各キャラの私服が変更されているなど。
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放課後にヒロインのいる場所を選択した際、場合によっては3Dマップ上で主人公を操作してヒロインの元まで移動する形式になる。
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ヒロインたちが3Dモデルになって動いているのを見られるのは、やはりファンには嬉しいポイント。特にキャラクターの動きがあるシーンは没入感が増しており、原作プレイ済でも新鮮な感覚で楽しめる。
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新ボイスと原作ボイスの併録
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全キャラクターに新声優が付き、ボイスも新録された。原作にはなかった主人公(藤田浩之)のボイスも追加されている。
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新声優はいずれも原作版のイメージを踏襲したキャスティングになっており、原作プレイヤーでも違和感は薄いはず。
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また原作版のボイスも併録されており、オプションからいつでも変更可能(新ボイスは「モダン」、原作ボイスは「レガシー」という表記)。
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ボイスはキャラクターごとに設定可能。「このキャラだけは原作ボイスで聴きたい」「主人公は喋らない方がイメージ通り」といったプレイヤーの要望に沿った柔軟な設定が可能。
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BGMも新規アレンジされている。
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オープニング曲は原作同様『Feeling Heart』だが、こちらも新規アーティストによるカバー。オープニング映像も原作アニメのカット割りを3Dで忠実に再現しており、公式で比較動画も公開されている。
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テキスト
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本編のテキストはほぼ原作(PS移植版)そのまま。ただし一部、現代に合わせて表現が変更されている箇所も存在する。
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文字表示は、画面下部のウィンドウに表示されるオーソドックスなADV形式である「ウィンドウ」と、原作通り画面全体に文字が表示される「ノベル」をオプションで切り替え可能。
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主人公の名前変更はできなくなり、デフォルトネーム「藤田浩之」固定となった。
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その他の追加機能
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「選択肢ヘルプ機能」をオンにすると、ヒロインの好感度が最も上がる選択肢にハートマークが付くようになる。
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またゲーム開始時に「ルートガイド機能」をオンにすると、選択したヒロインのエンディングに到達するための行き先や選択肢に全てマークが付く。
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これにより、ガイド通りに進めれば攻略で失敗することはない。原作ではやや特殊な攻略条件だったあかりルートにも確実に入ることができる。ただし一度でもガイドを逸れると、その時点でガイド機能は強制オフになる。
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「MEMORY」では、攻略したヒロインごとにこれまでに見たイベントを自由に回想(再生)することができる。見たことがないシーンもわかるのでチェックリストとしても使える。
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また「CHARA VIEWER」では、エンディングを見たヒロインの3Dモデルを自由に鑑賞することができる。
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原作にあったミニゲームは削除された。
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DLC
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有料DLCとして「セリオ・佐藤雅史」の追加ストーリーが配信された。いずれもリメイクに伴う新規シナリオのため、原作ボイスに変更はできない。
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セリオは脇役ながら根強い人気があるキャラであり、ファンには嬉しいサプライズとなった。PC版から数えると実に28年越しの攻略可能ヒロイン昇格となる。
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雅史ストーリーも、本編(ヒロインの誰とも結ばれなかった場合は、雅史とのいわゆる友情エンドになる)のそれとは別の新規シナリオが用意されている。
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価格
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ダウンロード版は税込3,080円と比較的ロープライスに抑えられている。
賛否両論点
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内容面の追加要素が乏しい
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本編のテキストは良くも悪くも原作そのまま。オリジナル通りにプレイしたい場合はありがたいが、追加要素を求めている場合は物足りないだろう。
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攻略部分も変わらず。ヒロインの好感度は可視化されておらず、単純に目当ての相手を追いかけているだけではエンディングにたどり着けないこともしばしば。現代のゲームと比較すると難易度は高めと言える。
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前述のルートガイド機能を使えば確実に攻略できるが、代償としてプレイの自由度は失われてしまう。
問題点
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グラフィック面
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ヒロインのモデリングはある程度作り込まれているものの、3Dグラフィック全体のクオリティはあまり高いとは言えない。ハード性能にもよるが、全体的にテクスチャの粗さ・ジャギー・処理落ちなどが目立つ。
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放課後選択時に3Dマップ上を移動するパートが挟まることがあるが、申し訳程度に少し移動するだけなので必要性が薄い。またマップによってはヒロインがどこにいるのか分かりづらい。
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テキストの時代設定は1990年代後半に発売された原作そのままだが、背景のみ現代的になっている(自宅に薄型ワイドテレビがあるなど)ため、矛盾というほどではないがややチグハグな印象になっている。
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ミニゲームの削除
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実装のコストを考えれば致し方ないが、ゲームとして評価が高かったこともあり、ファンからすれば寂しい点。
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もっとも、ストーリー中に強制させられることもなくなったのでプレイのテンポは良くなっている。
総評
現代まで続く「学園ギャルゲー」というジャンルに大きな影響を与えたヒットタイトルのリメイク。
グラフィックは現代風に3Dにリファイン。キャラクターボイスは新録版と原作版が併録されているため、新鮮さを感じたいプレイヤーにも、原作通りのままプレイしたい既存ファンにも対応する仕様になっている。
テキストも原作に忠実であり、ヒロインたちの魅力が描かれた物語をそのまま楽しむことができる。普遍的な王道学園ギャルゲーということもあり、今プレイしてもキャラクター描写やノリは古びていない。しかしその反面、リメイクに伴う追加要素は薄い。
変わった仕様と変わらない仕様を鑑みて、バランスが取られていると感じるか、中途半端と感じるかはプレイヤーがリメイクに何を求めているかに依るところが大きいだろう。
余談
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プレミアムエディションにはアニメ版(1999年放映)をリマスターしたブルーレイディスクが同梱された。評価の高い作品ながら、発売時点ではネット配信もされておらず視聴が困難だったためファンに喜ばれた。
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あかり・マルチ・智子・芹香にのみ、現代風にリファインされた新規イラストが存在し、公式サイトで確認することができる。
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初期はSwitch2の動作に問題があったが、更新データにより改善した。
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ファミ通でインタビューが掲載された。
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「ミニゲームはコストがかかり、今楽しめるかわからないため、ストーリー演出に力を入れた」、「『2』の新生や完全新作『3』も考えている」などと述べられている。
最終更新:2025年09月26日 11:14