蒲原郡下條組行地村

越後国 蒲原郡 下條組 行地(ゆくち)
大日本地誌大系第34巻 73コマ目

府城の西北に当り行程16里。
家数26軒、東西1町30間・南北2町、山間に住す。

新発田街道駅所にて、村中に官より令せらるる掟条目の制札あり。
津川町駅より2里9町39間ここに継ぎ、ここより26町54間新谷村駅に継ぐ。

東34町計鹿瀬組鹿瀬村の山に界ふ。
西6町細越村の界に至る。その村は戌(西北西)に当り35町。
南34町京瀬角島両村に界ひ諏訪峠を限りとす。角島村は南に当り2里1町。京瀬村は未申(南西)に当り2里。
北16町新谷村の界に至る。その村は戌亥(北西)に当り25町。

村南に一里塚あり。

この村の肝煎長谷川義右衛門というもの古文書2通を蔵む。その文如左。
對(長尾)晴景黒田和泉守年夾慮外之連続之間 去秋此口へ打越可加成敗分候處 其身以黒衣之躰 可進他國之由色々歎之候間 任其旨舊冬當地へ相移候處 無幾程逆心之企現形之條 被加御屋形様御意 黒田一類悉被盡生害候 倚之本庄方へ被成御書候 爰元之儀定加為御満足候 恐々謹言
          長尾平三
 二月廿八日        景虎(花押)
      小河右衛門佐殿

前々如持所河前出之候 為後日如此候 仍如件
 天正十七
     無神月廿四日 (直江)景綱(花押)
   長谷川縫助とのへ

山川

諏訪峠

村南、新発田街道にあり。
登ること34町(角島村の条下に詳なり)。

土倉山(つちくらやま)

村東35町計にあり。
頂まで3町余。
東は鹿瀬村の山に界ふ。

加良久羅山(からくらやま)

村の辰(東南東)の方5町余にあり。
頂まで3町計。
松樹多し。

下達山(しもたつやま)

村東35町にあり。
頂まで5町計。
東は鹿瀬村に界ひ、北は新谷村の山につづく。

行地川

源を諏訪峠・下達山・土倉山より発し、村中を過ぎ西に流るること1里計細越村の界に入る。
広7間。

関梁

行地橋

村中、行地川に架す。
長7間・幅1間半、勾欄あり。

神社

山神社

祭神 山神?
相殿 伊勢宮
   安倍神
鎮座 不明
村中にあり。
鳥居あり。西村皆川下総これを司る。

毘沙門天神社

祭神 毘沙門天?
鎮座 不明
村中にあり。
村民の持なり。


  • Google Map
    • 行地地区
    • 諏訪峠
      • 角島村にも記載しましたが、角島から行地へと最短距離で結ぶ道は現存しないようです。
    • 土倉山
      • GoogleMapで見たら、おじいさんの顔が写った動画が投稿されていました(汗
    • 加良久羅山?
    • 下達山?
    • 鹿島神社
      • 神社明細帳には鹿嶋社の登録があり、祭神が大山祇神で(訂正されていますが)昔は境内に伊勢神社と阿部神社があったようです。
        ※越後佐渡デジタルライブラリー『神社明細帳 阿賀町』No.132より。
    • 毘沙門天神社 - 不明
      • 神社明細帳には記載がありません。
      • 寺院明細帳で「東蒲原郡三川村大字行地村字堂ノ上」に毘沙門堂があるとの記載を見つけました。ですが(鹿島神社と同じ住所ではあるのですが)付近に毘沙門堂を見つけることができませんでした。
        ※越後佐渡デジタルライブラリー『寺院明細帳 阿賀野市 阿賀町 五泉市』No.87より
      • 新潟県の鹿島神社は毘沙門天と関連が深いようです(参照:新潟県の鹿島神社)。地図に記載がないだけで鹿島神社の境内に毘沙門堂があるのかもしれません。


余談。
唐突に安倍神社や安倍神なる神様の名前が出てきました。何の神様なのでしょう?
陸奥国河沼郡坂下組長井村にはこの地方では珍しい安部仲麿神社があり、百人一首で有名な阿部仲麻呂を祭神として奉っています。また長井といえば城長茂の妻・竈御前の邸宅があった所です。
関連があるかどうか不明ですが…。

神社明細帳を見たところ、柏崎市安田(旧地名は刈羽郡安田村字中道)に安田阿部神社があったそうです。明治から大正にかけて安田村にあった複数の神社が合併、さらに安田村字山王の真澄里神社を合併後に安田神社と改称し移転したと記載があります。
合併した神社と元々奉っていた祭神を記載してみます。社名の左の数字は「神社明細帳・柏崎市刈谷村」の画像Noです。
神社名 祭神 合併先
116(明後澤)諏訪社 建御名方命 119(姥谷)多岐神社
117(上ノ土下)熊野社 速玉男命・事解男命・伊弉冊尊 119(姥谷)多岐神社
118(姥谷)神明社 天照皇大神 119(姥谷)多岐神社
119(姥谷)多岐社 建御名方命 124 安田神社
120(北谷)劔社 日本武尊 124 安田神社
121(涎清水)八幡社 誉田別尊 124 安田神社
122(鳥越)十二社 大山積神 124 安田神社
123(十二木川原)保田社 天神七代・地神五代の神 124 保田阿部神社
124(中道)安田阿部神社 護良親王・中納言藤房
別天津神五柱の神・?天神七代の神
安田神社と改称
125(山王)真澄里神社 大山咋命 124 安田阿部神社
神社明細帳の社名一覧の安田阿部神社の備考欄に「保田阿部神社と改称→真澄里神社(整理番号707)外4社と合併 安田神社と改称し移転」とありますが、保田神社と安田神社が別社であれば外5社と合併が正しいかと。

相変わらず阿部の出所が不明ですね…。

最終更新:2020年11月22日 22:50