会津郡黒谷組黒谷村

陸奥国 会津郡 黒谷組 黒谷(くろたに)
大日本地誌大系第31巻 138コマ目

府城の西南に当り行程18里10町。
家数23軒、東西1町30間・南北4町。西南は山に倚り東北は田圃(たんぼ)なり。

村中に官より令せらる掟条目の制札あり。

東7町長濱村の界に至る。その村まで12町。
西7町上・下荒井両村の界に至る。上荒井村まで8町、下荒井村まで18町。
南9里余古町組檜枝岐村の山に界ふ。
北8町小川村の界に至る。その村は戌亥(北西)に当り18町10間。
また
丑寅(北東)の方3町荒島村に界ひ檜枝岐村を限とす。その村まで18町。

もと村南1里20町に釜脇と云う端村あり。今は廃せり。

小名

(おき)

本村の辰巳(南東)の方4町にあり。
家数12軒、東西1町20間・南北2町。東は黒谷川に近く三方田圃なり。

沢口(さはくち)

沖の未申(南西)の方1町10間にあり。
家数8軒、東西2町・南北1町。西南は山に倚り東北は田圃なり。

祢宜屋(ねきや)

沢口の東2町にあり。
家数7軒、東西1町・南北2町。東は黒谷川に近く三方田圃なり。

端村

峯沢(みねさは)

祢宜屋の南11町50間にあり。
家数3軒、東西1町10間・南北1町。山間に住し東は黒谷川に()

阿弥陀堂(あみたたう)

峯沢の南21町にあり。
家数4軒、東西12間・南北40間。山間に住し西は黒谷川に()ふ。

黒谷新田(くろたにしんでん)

阿弥陀堂の南17町にあり。
家数2軒、東西20間・南北15間。
また阿弥陀堂の西3町に家居1間あり。
共に黒谷川に()ひ山間に住す。

山川

朝日(あさひ)

村南4里にあり(本郡の条下に詳なり)。

梵天(ほんてんが)

村の辰巳(南東)の方9里計にあり。
檜枝岐村と峯を界ふ。
雑木多し。

水晶(すいしやう)

村南3里にあり。
昔この山より水精を産せしと云う。
今は石英を出す。

檜枝岐川(伊南川)

俗に伊南(いな)川と云う。下同。
村の丑寅(北東)の方3町にあり。
長濱村の境内より来り、黒谷川を受け西に流ること4町40間、上・下荒井両村の界に入る。
広60間。

黒谷(くろたに)

小名沖の東1町にあり。
源は梵天嶽より出て山中の諸渓を得て、北に流るること9里計檜枝岐川に入る。
広40間。
(ます)・「いはな」・鰥を産す。
この川特に急流にてまた廔洪水の患ありて橋を架すべからず。(ゆえ)に川中に柴をくみて籠とし、中に石を盛り上に丸木をわたして往来を通ず。

土産

鱒梵割

秋に至て黒谷川に産するを捕り割てこれを製す。
味佳なり。

関梁

黒谷橋

小名沖の東1町。
府下の通路黒谷川に架す。
長14間。丸木橋なり。

水利

黒谷堰

村南にて黒谷川を引き田地を潤し上・下荒井両村の方に注ぐ。

神社

八所神社

祭神 不明
鎮座 不明
村中にあり。
縁起に、昔観音堂と7社ありて八所明神と称し勝峯山萬願寺(今この地を詳にせず)という寺の司なりしが、数年を経て頽轉*1せしを、寛文中(1661年~1673年)一の社頭を再興しなほ旧名によりて八所神と称す。
祭神詳ならず。
この事までは奉掛『奥州南山伊北郷八所宮于時應永八辛巳年十月八日大旦那江長六郎敬白』と銘せし鰐口1口ありしとぞ。
鳥居幣殿拝殿あり。

神職 木津式部

寛文中(1661年~1673年)新大夫吉通という者この社の神職となる。
今の志区部吉廣は5世の孫なり。

鹿島神社

祭神 鹿島神?
相殿 若宮八幡 2座
三崎神
愛宕神
鎮座 不明
村中にあり。
木津式部が司なり。

若宮八幡宮

祭神 若宮八幡?
相殿 愛宕神
鎮座 不明
峯沢の南3町にあり。
鳥居あり。村民の持なり。

寺院

龍泉寺

村中にあり。
真言宗巖風山と號す。高野山遍照光院の末寺なり。
何頃にか山内兵庫某という者この村に住せし時、祈願のため建立せしという。
永正12年(1515年)智慶という僧住してより相継て今に至る。
本尊大日客殿に安ず。
鐘1口あり。径2尺5分『寶永三戌年五月第十六世法印快榮代造立』と彫付けあり。

十王堂

小名沖にあり
草創の初、詳ならず。
村民の持なり。

古蹟

館跡

南より子丑(北~東北東の間)の方1町にあり。
東西25間、南北40間。
何の頃にか山内兵庫某住せしという。



外部リンク等


村名について

明治22年(1889年)4月1日町村制の施行により、黒谷村、黒沢村、小川村、荒島村、熊倉村、亀岡村、長浜村、福井村、楢戸村の区域をもって朝日村が発足。
昭和34年(1959年)8月1日、只見村に編入。同日朝日村廃止。只見村は即日町制施行して只見町となる


只見町神社一覧

(「13 只見町史 3巻 民俗編」[PDF](P.623)より本村の所のみ)
場所 神社名 祭神 祭日 備考
西山 八所神社 正哉吾勝々速日天忍穂耳命
熊野樟日命
天津彦根命
活津彦根命
天穂日命
多紀理毘売命
狭依毘売命
多岐都毘売命
九月九日 往古等館の領主山ノ内兵庫守という者の氏神なりと伝へり
寛文年中、一の社再興、神職木津式部
昭和五年、道路工事のため旧社地字町四九六より現在地に遷宮
西山 鹿島神社 建甕槌神 八月二六日 昭和五年、八所神社遷宮に伴い、同境内に遷宮
玉島 若宮八幡神社 大雀命 七月二九日 峯沢の南三町にあり
白沢 大山祇神社 大山祇命 九月三日 白沢の鎮守
最終更新:2025年09月09日 19:20

*1 頽(たい)轉(てん。転の旧字体)。衰えてしまう様を指す言葉か?