塔のへつり

陸奥国 会津郡 弥五島組 白岩村 塔岪(たふのへつり)
大日本地誌大系第31巻 86コマ目

方言で淵を謂てへつり(・・・)とす。

村南1町余、大川の岸に傍て山麓を伝え松川組水門村に通る経路あり。
断崕(だんがい)数丈流れに臨て(そび)ひその腰(わずか)に1歩を通ず。
棚桟を架すること3所、嶮難(けんなん)云計なし(西崕は弥五島村の地に属す)。

東崕最(けわ)しく巨巌(きょがん)往々に畳起す。高きものは15、6丈、(ひく)きものは12、3丈。状9廥塔の如く極て奇なり。故にこの名ありとぞ。
その下絶壁の所躑躅(つつじ)紫藤多し。(また)佳観とす。
傍ら一大巌の腰に空嵌の所ありて虚空蔵を安ず。
総てこの境1丘1(たに)称して名区とせざるところなし。
左に載す。

鷲塔岩(わしがたふいわ)

東崖にあり。
9層塔の如く。その頂は鷲の頭に似たり故に名く。

鷹塔岩(たかがたふいわ)

鷲塔岩の北にあり。
岩上に小鷹巣を架して年々雛を卵わる故名く。

獅子塔岩(ししがたふいわ)

鷹塔岩の北にあり。
状獅子の面に似たり故に名く。

屋形塔岩(やかたたふいわ)

獅子塔岩の北にあり。
家屋の状に似たり故に名く

以上、松川組水門村の境内に属す。

鰐口岩(わにくちいわ)

西崖にあり。
状、似たる故名く。

陰陽石(いんいやういし)

大川の西渚に1大石あり。状男根に似たり。
また東渚の1石、状女陰に似たり。
土人名て陰陽石とす。

櫓塔岩(やくらたふいわ)

東崖にあり。
状楼櫓の如し故に名く。

九輪塔岩(くりんたふいわ)

櫓塔岩の北にあり。
状梵塔の九輪に似たり故に名く。

屋形塔岩(やかたたふいわ)

九輪塔岩の北にあり。
状大抵前の屋形塔に異ならず。

象塔岩(ざうがたふいわ)

屋形塔岩の北にあり。
状象の鼻に似たり故に名く。

疣清水(いぼしみず)

象塔岩の側、岩上にあり。
疣ある者この水にて洗えば(たちま)ち解くという。

(うし)りう

東崖大岩の下に抗洞あり。
臥牛(がぎゅう)の如く頭尾(そな)わる。
土人この洞の中をさして牛りうという。
りうは洞の方言なり。

護摩堂岩(ごまたういわ)

牛りうの北にあり。
状堂宇の如し故に名く。

舞台岩(ふたいいわ)

虚空蔵堂の前にあり。
岩上平坦にして数十人を載すべし故に名く。

烏帽子石(えぼしいし)

護摩堂岩の北にあり。
状似たる故名く。

夫婦石(めおといし)

東渚にあり。
立石2つ相対す。土人夫婦をもて名く。

屏風岩(ひやうふいわ)

東崖にあり。
石壁屈曲して屏風に似たり故に名く。

魚淵(うおふち)

舞台岩の前にあり。
大川の洞流する所、岩決れて淵となる。
魚多く集まるところ故名く。

参照


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最終更新:2025年09月02日 16:11
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