アリババと40人の盗賊

登録日:2018/09/26 Wed 12:03:04
更新日:2024/04/24 Wed 20:02:18
所要時間:約 18 分で読めます




『アリババと40人の盗賊』とは、アラビアンナイト(千夜一夜物語)に収録されている昔話のうちの一話である。
単独で児童向けの絵本などに収録される事の多い作品であり、話の大筋だけなら知っている人も少なくないだろう。
原文の日本語訳は、岩波文庫の『完訳 千一夜物語』第11巻に収録されているものが入手しやすい。


◇あらすじ


昔々、ペルシアの国に二人の兄弟がいました。
兄の名前はカシム、弟の名前はアリババ。
カシムは大金持ちでしたが、大変強欲な性格をしていました。
一方でアリババは貧乏でしたが心優しい性格でした。

さて、この「アリ・ババ」という名前についてまず解説しておかねばなりません。
絵本などではしばしば少年のように描かれるアリババですが、実は「ババ」とは「お父さん」の意味。
つまり「アリのおやっさん」「アリおじさん」くらいの意味なのです。
読者の皆さんも、アリババは立派なヒゲをはやしたイケオジとして、以下のお話をお読みください。

さて、ある日の事。
アリババが売り物にする為の薪を森で拾い集めていると、遠くから馬の蹄の音が聞こえてきました。
アリババは自分の馬を隠して木に登り、身を潜めていました。
下を見下ろすと、40人もの盗賊達が馬に乗って走って来ていました。

盗賊達が岩山の前に着くと、

お頭「開け…胡麻!」

と、呪文を唱えました。

するとどうでしょう。
岩山に穴がひとりでに開き、洞窟が現れたではありませんか。
盗賊達は洞窟の中に、金銀財宝を山のように隠していたのです。
盗賊達が今日奪ってきたお宝を洞窟に運び込むと、お頭は「閉じよ胡麻!」と叫びました。
すると今度は岩の扉が閉まり、洞窟は消えてもとの岩山になってしまいました。
盗賊達はその場を後にしました。

一部始終を見ていたアリババは木から降りると、盗賊のお頭の真似をして、「開け…胡麻!」と、唱えました。

洞窟の扉が開くと、アリババは中に入りました。
中には金貨の袋、銀貨の袋、銅貨の袋、絹織物、宝石、絨毯、壺などが数え切れないほど積まれていました。

アリババは金貨の袋を一袋だけ頂戴し、洞窟から出てきました。

「閉じよ…胡麻!」

洞窟の扉は再び閉まりました。

帰宅したアリババは金貨の袋を見せ、おかみさんに一部始終を話しました。
そして金貨を数えてみたくなりました。

おかみさんは金貨を測る為の升を借りにカシムの家に行きました。
カシムのおかみさんは、(義弟の家は貧乏なはず。一体何を升で測るのだろう?)と不思議がり、升の底に油を塗って貸しました。

しばらくの後、戻ってきた升を見てカシムのおかみさんは驚きました。
金貨が一枚貼り付いていたのです。

カシムのおかみさん「お前さん、これを見ておくれ!」
カシム「こ、これは金貨ではないか!弟の奴、一体何処で!?」

カシムはアリババの家に乗り込み、アリババから一部始終を聞き出しました。おいやめろ…

カシム「よし、それなら俺も盗賊達の財宝を奪ってやる!」
「花咲かじいさん」とか「したきりすずめ」とか中国の「学様」とかもそうですが、どうもこういう人の存在は洋の東西を問わないようです。話を進めやすいからだろうか。

翌日、カシムは馬をありったけ連れて洞窟に行き、アリババから教わった呪文を唱えました。

カシム「開け…胡麻!」

洞窟の扉が開くとカシムは中に入り、「閉じよ…胡麻!」と唱え、扉を閉めてしまいました。
中には見たことがないような金銀財宝の山。カシムは狂喜乱舞し、連れてきた大量の馬に載せられるありったけの金貨を持ちだそうとします*1
しかし、カシムは喜びのあまり頭がアッパッパのウルトラハッピーになってしまい、すっかり呪文を忘れてしまいました。

カシム「開け豆!じゃないし… 開け麦!でもない、開け米! 開け茄子! 開け芋! 開け大根!
アブラカダブラ! テクマクマヤコン! エロイムエッサイム! エクスペクト・パトローナム! アバカム! チチンプイプイ! キュアップラパパ! ぬぬぬマジーヌ!…」
お頭「開け胡麻!!」

正解の呪文は外から聞こえてきました。盗賊たちが帰ってきてしまったのです。
お頭「おおっ!侵入者をとらえたか。斬れっ!「げえっ!」
あわれカシムは切り刻まれ、輪切りもしくはサイコロステーキじみたバラバラ死体にされてしまいました。

翌日、アリババはカシムが帰って来ない事を心配し、洞窟に行きました。
中ではカシムがサシミめいて殺されていました。

よせばいいのに善良なるアリババはカシムの亡骸を持って帰りました。「兄さんが死んだのは俺が悪いんだよ」と悲嘆するアリババ。
しかしこのままお葬式を行えば、カシムがバラバラにされたことは町中に知れ渡り、アリババが洞窟の秘密を知っている事が盗賊達にバレてしまうでしょう。
そこで彼は、カシムの家の若く美しく聡明な女奴隷、モルジアナ*2に相談しました。

モルジアナ「アリババ様、この私にお任せください」

モルジアナは町中の薬屋を駆け回ってカシムが急病だと言いふらしその足で遠くの靴屋に行き、金貨*3を一つ渡して次の様に頼みました。

モルジアナ「靴屋さん、目隠しをして家まで来て下さい」

モルジアナに目隠しをされた靴屋は、彼女に手を取られるままカシムの家に到着。
カシムの亡骸を見て最初は驚きましたが、何とか縫い合わせ、カシムのサシミをカシムのヒラキ程度に修復する事に成功しました。ホントに靴屋かお前?
靴屋「クセになってんだ、目隠しして歩くの」

アリババは、「兄さんは流行り病で亡くなった」と街中に言いふらし、カシムのお葬式を無事とり行いました。

一方、洞窟では盗賊達が驚いていました。
カシムの亡骸が消え去っていたからです。

「バカな!昨日オレ達が出てからここには誰も出入りしていないはず!」
「死体消失トリックだ!」ゾンビになったんだ」フリーザ様レベルの戦闘力なら治るかも…」悪魔の実の能力者!
お頭「ええい黙れバカども! 誰かこの洞窟の呪文を知っている奴がおる。 そいつが死体を持ち出したのだ。 探せ、探し出して殺すのだ!」
子分「アイアイサー! アッシが行って参ります!」

しかし、すぐに見つかるかと思われた「バラバラ死体のお葬式」の情報はなかなか集まりません。
やがて壊れてしまった靴を直すため、腕の良さそうな革職人を求めて
子分が街を歩いていると、「バラバラ死体を縫い合わせた」と自慢する靴屋を発見。
早速何処でバラバラ死体を縫い合わせたかを問いましたが、靴屋は目隠しをされていたので分かりませんでした。
そこで部下の一人は靴屋に目隠しをさせました。
するとどうでしょう。
目隠しをされた靴屋はカシムの家(今はアリババが住んでいる為、以降はアリババの新家とする)を思い出し、盗賊の部下の一人に手を取られながらアリババの新家に到着しました。 そういうものかなあ…。*4

子分A「この家だな」

子分はアリババの新家に×印を着け、靴屋を解放した後に洞窟へ戻りました。

その後、若く美しくとても聡明なモルジアナが買い物から帰ってくると、奇妙な×印を発見しました。
常人であれば子供の落書きとも見えるであろう×印でしたが、卓越した危機管理意識を持つモルジアナ盗賊達の仕業と看破。
そしてアリババと協力して街中の家に×印を書いたのです。

その夜。


あわれな子分Aは責任を取らされお頭に首チョンパされちゃいました。

お頭「むむむ…誰かやつを殺せるものはおるか!」
子分Bヨーソロー!オイラが行って参りやす!」

子分Bはまたしても靴屋に金貨を握らせ、目隠しをさせてアリババの家を探し出します。

子分B「この家だな」

子分はアリババの新家に赤い×印を着け、靴屋を解放した後に洞窟へ戻りました。

その後、若く美しく極めて聡明なモルジアナが買い物から帰ってくると、奇妙な赤い×印を発見しました。
常人であれば子供の落書きとも見えるであろう×印でしたが、モルジアナに同じ技が2度通用するはずもありません。そもそも1度目も通じてないし
そしてアリババと協力して街中の家に赤い×印を書いたのです。

その夜。

お頭「ザッケンナコラー!!街中赤い×印だらけじゃねえか!!」
子分B「で、でも確かにオイラはアリババの家に赤い×を書いたんですよ!でもそれが街中にある、つまりこうだ、やっぱこの町の全員がアリババ」
お頭「バカチンが!!そんなはずがあるかーーっ!!」

あわれな子分Bもお頭に首チョンパされちゃいました。

子分C「お頭!今度はオレっちが行って参りやす!」
お頭「黙らっしゃい! どうせおまえは青い×を書いたりするんだろう」
子分C「何で分かったんです!?」「字の色!」
お頭「役立たずどもめ、もうよい、わし自らが出る!」

今度はお頭自らが街に出向き、またしても靴屋に目隠しをさせ、アリババの新家に到着しました。
ところがお頭はその辺のカンダタこぶんとは格が違います。
恐ろしいことに、子分と比べ格段に頭の良いお頭は、アリババの家の場所を何の目印もなく覚えてしまったのです!普通だ!
お頭は「盗みに入る家の場所を覚えていられない」という自らの子分の盗賊適性のなさを嘆きながら帰っていきました。

翌日、盗賊のお頭は油売りに化け、アリババの新家にやってきました。
お頭は19頭の馬に38個の油壺を載せていました。
この中で油が入っているのは1つだけで、他の油壺の中には子分達が潜んでいました。
お頭が合図をすると中から子分たちが飛び出し、アリババ達をなで斬りにしようという算段です。

お頭「私は旅の油商人です。今晩泊めては頂けないでしょうか?」


今や屋敷の中には38人の武装した盗賊たち。
対してアリババは剣の心得一つない一般市民。
カシムから遺産相続した召使いも多少は居るでしょうが、とても大の男38人に対抗するのは不可能。
まさに絶体絶命でんぢゃらすアリおじさん状態です。

そこで問題だ!この限られた戦力でどうやって盗賊の攻撃をかわすか?
3択―ひとつだけ選びなさい
答え①イケオジのアリババは突如反撃のアイデアがひらめく
答え②仲間がきて助けてくれる
答え③かわせない。現実は非情である。














正解はもちろん②である。
仲間って誰かって? 若く美しく常軌を逸して聡明なモルジアナさんに決まっているじゃないですか。

その日の夜、モルジアナは料理の際、ランプの油を切らしてしまいました。

モルジアナ「そうだわ、あの油壺から少し油を拝借しましょう」

さらっと窃盗行為の実行を宣言したモルジアナが庭に出た時でした。

子分「お頭、まだですかぁ?」

壺の中から子分の1人が叫びました。

モルジアナはこの瞬間に壺の中に盗賊が隠れており客人が盗賊の首魁であると超速理解。
さらに恐るべき咄嗟の判断力で、お頭の物真似をして、「まてまて、もう少しだ」と返しました。
モルジアナに真似できるお頭の声って相当高かったんだろうか?
逆に言えばこの時までモルジアナさえも盗賊を油商人と思い込んでいたという事である。

幾つもの油壺のうち、本物の油が入っているのは一つだけでした。
モルジアナはそこから油を汲むと、グラグラと煮立て、残りの壺全部の中にことごとく注ぎ込みました。
おそらく子分が1人でも「グエーッ!」などと叫んだら、他の子分たちは何事かと飛び出してきたことでしょう。
しかし若く美しく聡明で主人公補正の掛かりまくったモルジアナ37人の人間を一言も叫ばせることなく油を注ぎ込み殺すという超A級アサシンのスーパー・アクションを実行。
子分達は一人残らず全身火傷で死んでしまいました*6

一方、油売りに化けたお頭は、アリババから沢山の料理とお酒を御馳走されていました。

お頭「ちょっと、手洗い場へ」

お頭は席を外すと手洗い場へ行く振りをして油壺のある庭へ行きました。

お頭「お前ら、もういいぞ!」

しかし、子分達は壺の中から出てきませんでした。

お頭は不思議がり、壺の中を見て驚きました。
子分たちは全員グラグラに煮立った油を頭から浴びて物言わぬテンプラと化していたからです。

お頭「悪魔だ…この家には悪魔がいる…
 逃げるんだあ…勝てるわけがない…!」

さしもの豪胆なお頭も、全身に熱せられた油を浴びせられ重度熱傷で死んだ37人もの子分の死体を見せられてはかないません。
この大虐殺がたった1人のか弱い(?)女性の手によるものとはついぞ思わず、一目散に逃げ出しました。

かつては40人からの子分を従えていたお頭も、今や孤立無援となりました。
「おのれ…よくもわしのかわいい39人の子分を…
 絶対に許さんぞアリ・ババ! じわじわとなぶり殺しにしてくれる!!
お頭は39人の子分のうち2人を自分が殺したことを棚に上げて激昂しました。

それからほどなく。
アリババの家の向かいに、新たに宝石店が開店しました。
品揃えは豊富で主人は話し上手、店はたちまち評判となりました。
主人と懇意になった1人に、アリババの息子が居ました。
息子は主人を家に招き、宴を開く運びとなりました。

アリ家の客人となった宝石商は、アリババにこう告げます。
「ワシは今神様に誓って塩断ちをしておりますですじゃ。塩の入った料理は食べられないのですじゃ」
「いえいえ、そういう事なら塩抜きの料理を作らせましょう。
 モルジアナ、そういう訳だからこの方に超減塩料理を出してあげなさい」

若く美しく、諸葛孔明の頭脳と関羽の勇気を併せ持つモルジアナは、この瞬間に宝石商の正体に気づきました。
ペルシアには『仇と共に塩を食べてはならない』という風習があったのです。アウトローでも風習は守るんだね!だからバレるんだよ…
この主人とは誰あろう盗賊のお頭の変装。
売り物は、洞窟にしこたま貯めていた盗品の宝石だったのです。

お頭の決意は悲壮というほかありません。
懐に潜ませた短刀でアリババを刺せば、アリババは殺せるでしょう。
しかしこの家には、一晩で37人もの子分を皆殺しにした悪魔のような屈強な暗殺者が潜んでいるのです。 だれだろーなー。果たして、そこから生還できる確率は……
――復讐心。ただ復讐心のみが、彼を動かしていたのでしょう。

何の警戒心も抱かず話に花を咲かせるアリババと、話に相槌を打ちつつ虎視眈々と殺害のチャンスを狙うお頭。
2人の前に踊り子の服を着た美しきモルジアナが現れました。
客人へのもてなしとして剣舞を披露するというのです。
彼女の卓越した剣舞に、一座は万雷の拍手に包まれました。
モルジアナは人々の間を周り、おひねりを集めました。
一刻も早くアリババを殺したいお頭が、復讐心を笑顔の仮面で隠しながらお金をモルジアナに渡そうとしたその時。

モルジアナの剣が、お頭の胸を貫いていました*7

モルジアナから全てを聞かされたアリババは大変驚きました。

その後、洞窟が開けられていないことを確かめて盗賊の全滅を知ったアリババ達は盗賊達が盗んだお宝を街の人達に分けてあげました。
感謝しきりのアリババによってモルジアナは奴隷の身分から開放され、アリババの息子と結婚し、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。

めでたしめでたし。



◇このお話の登場キャラクター


  • アリババ
「花咲かじいさん」における良いお爺さんポジション。
善良という点以外に特に特徴のないギャルゲー主人公めいた人物であり、
中盤から出てきた知恵者に主人公の地位を奪われてしまうという「三国志演義」における劉備のようなキャラクター。
しかも、その善良さが功を奏したのは「多くの金貨を持ち出そうとしなかったので、盗賊が帰ってくる前に退散できた」という一点のみで、
物語の後半はひたすら「アリババのお人好しのせいで持ち込まれたトラブルをモルジアナがなんとかする」ことに終始している。
どうにも「危険極まるアウトローの財産を強奪する」事の危険性を理解していないように思われる、平和ボケした人物。
しかしタイトルと「開けゴマ」の呪文が有名なお蔭で、実力に反して知名度は高い。

  • カシム
アリババの兄。「花咲かじいさん」における意地悪爺さんのポジション。
こういう人は洋の東西を問わず居るし、その末路も洋の東西を問わなかった。
洞窟に入った時に「閉じよ胡麻!」と唱えたのが運の尽きだったと言える。

  • アリババのおかみさん
アリババの妻。夫が持ち帰った金貨を数えることにした。だけ。
正ヒロインは別にいるからね、仕方ないね。

  • カシムのおかみさん
カシムの妻。
彼女が升に油を塗らなければカシムが盗賊のお宝を奪おうとすることはなく、盗賊に殺されることもなかったであろう。
ある意味、夫の死に一役買ってしまったと言える。
夫亡き後はアリババと共に暮らしたようだ。

  • モルジアナさん
本作における「かちかち山」のうさぎポジションを務める、絶対無敵スーパーアルティメットヒロイン
中盤から出てきて圧倒的知略で大活躍しお人好しなだけの主人公から主人公の座を奪ってしまうという、「三国志演義」の諸葛孔明のような人物。
敵の策をことごとく見破り逆用する辺りも孔明感がある。
劇中で確認できるだけで

  • 地の文からも言及される美貌
  • カシムの死体の修繕方法を考える卓越した発想力
  • バラバラ死体や盗賊の群れを目の前にして冷静に対処法を考える胆力
  • 落書きにさえその真意を見出す観察力
  • たまたまランプの油が切れて庭に出る運の良さ
  • 子分のたった一言の言葉から瞬時に適切な返答を導き出す判断力
  • 性別の違うお頭の声を真似する声帯模写
  • 37人もの盗賊を声を上げる間もなく殺害する暗殺力
  • 宴席の一同を感嘆させる剣舞の腕
  • 油断があったとはいえ、無数の斬りあいを制してきたであろうお頭を殺害する剣の腕

という凄まじい高スキルぶりを発揮しており、一体どういう環境で育ってきたのかとても気になる。やっぱ アサシン なんじゃ…。
1度の話の中で38~40人の敵を殺害するという、昔話の登場人物の中でもトップクラスのキルスコアを誇る人物でもある。次点は鬼退治した桃太郎一味か金太郎あたりだろう。
最終的に金持ちとなったアリババの息子と結婚するという玉の輿エンドを迎えた。

ちなみにこの名は「真珠」という意味(マーガリンと同語源)であり、訳によっては「真珠」という名に訳されていることも。
ますます忍者めいてくるが、当時の女奴隷の名はこんな感じだったらしい。
なお、版によってはカシムが殺害されるところで終わっており、彼女の存在自体がオミットされている物もある。

  • アリババの息子
コイツも盗賊のお頭を家に連れてくるというトラブルしか起こしていないが、スーパーヒロインモルジアナと結婚した勝ち組。
版によってはカシムの遺児をアリババが養子にしたとされる事も。

  • 靴屋
モルジアナと並ぶ本作第2の超人
「バラバラ死体を縫い合わせて病死したように見せかける」という裁縫スキルも大したものだが、
目隠しされた状態でどこをどのように歩いたかを完全に記憶できる能力は、人間離れしているとしか言いようがない。五条先生かよ。
死体の縫合役にこの異常な記憶力を持つ靴屋を選んでしまった事は、劇中におけるモルジアナの唯一の失策と言えるが、
おかしいのは靴屋の記憶力の方であり、あのモルジアナの目をしても見抜けなかったのは無理もない事であろう。
モルジアナと盗賊からちゃっかり金貨を4枚もせしめている辺りもただならぬ人物である。

  • 盗賊のお頭
このお話の悪役。「かちかち山」のタヌキポジション。
あるいは打つ策がことごとくチート主人公に見破られるという「三国志演義」の曹真のポジション。
アリババと実に3度も顔を合わせているが、アリババはそれらが同一人物である事に気づく様子がなく
あのモルジアナでさえ外見からは「油売り=宝石商」である事に気づかなかったことから、変装の腕はかなり確かなものがあると思われる。
だが復讐心に囚われた彼に、大人しく宝石商として余生を送るという選択肢はなかった。

宴席で剣舞を披露したモルジアナに殺害されるという、「三国志演義」の孟獲(4度目の捕獲時)のような最期を迎える。
総合するとこの話は実質三国志なのではないだろうか。



◇パロディ・関連作品


荷物に隠れ侵入しジャスミンとの結婚式を台無しにした40人の盗賊を追うアラジン。
「開け胡麻」の呪文によって海が裂け入り口が現れるアジトに侵入するが、盗賊の首領はアラジンの父・カシームだった。

エピソードの一つに『アラビアンナイトの巻(旧版はアルカジル王国編)』がある。
扉を開ける呪文が「開け胡麻」ではなく、「開け豆」になっている。

主人公がアリババでカシムとは義兄弟だが、設定は全く違う。
奴隷の少女モルジアナもヒロインとして登場するがアリババと同世代。
↓の影響か、カシムが盗賊団の首領になっていた。

カシムが盗賊団の首領として登場する。

  • しんちゃんと40人の盗賊
クレヨンしんちゃん』でやっていたネタ。
祖父母と共に暮らしていたしんちゃんが盗賊達の財宝の隠し場所を発見。
少しだけ持ち帰り、祖父母と共にお寿司を食べた後、宝の隠し場所へ。
盗賊達に発見されるも、最後はしんちゃんがすかしっぺをかまし、隠し場所から脱出。
盗賊達は逮捕。ちなみにこのエピソードに出てくる盗賊達は全員女性である。
アニメ版は登場人物や展開が原作と大きく異なっており、祖父母役がひろし&みさえ、盗賊役がふたば幼稚園の先生に変更されている。
ストーリーは盗賊達が用意した空飛ぶ宝箱で財宝を持ち帰ろうとするが、起動するにはあと10円足りなかったので仕方なく出直すことになり、それを陰から見ていたしんのすけとひろしが10円を持っていたので宝箱に乗って家へ帰る。
その途中で盗賊達に目撃され後を追われるが、ひろしが薪を落としてしまいしんのすけの家がバレてしまい、一家は宝箱に乗って逃げようとするが、財宝の中で魔法のランプを発見し3つのくだらない願い*8を叶える。
遂に追いつかれてしまうが、重量オーバーで宝箱が墜落し、丁度幼稚園だったので盗賊達はそのまま先生になったというオチだった。

  • バカボンおそ松カレーを訪ねて三千里
六つ子が盗賊役として登場。タイトルにも名前が出ているが完全に悪役(中ボス)である。

アリ・ババロアという敵キャラクターがスーシーの港に登場。
元ネタとは違い、完全な悪役である。

アリババ神帝というキャラクターが登場。
ゴーストアリババになってしまった事もある。
第三勢力に洗脳を解かれたと見せかけてまた別の術を掛けられていたらしく、
新ビックリマン期にはその第三勢力に与していたり、
意外と知られていない最終盤には転生体がまたしても悪堕ちしたデュークアリババがラスボスになったりと
波乱万丈な生涯を送っている。

エピソードの一つに『アンドロメダ千夜一夜』がある。
砂漠の惑星アリババに住む機械人間の盗賊団の女ボスとしてアリババが登場する。こちらも完全な悪役。
本家と分家に分かれて争っており、本家アリババの一味と分家アリババの一味がメーテルの美しい体を狙って奪い合いを行うも、星に住む怪鳥ロックの群れによって盗賊団もろとも食べ尽くされる。

  • 仮面ライダーSD マイティライダーズ
アリゾナに住むゴルゴム三神官の一人・ビシュムの部下のアリ怪人達が「 アリ ババと40人の盗賊」なる盗賊団を名乗っている。
ビシュム自身は次期創世王のための地下都市「不思議の国のアリ巣」を築くために長い金髪にエプロンドレスという姿でアリ怪人達の女王として君臨し……
え、もういいって?

  • アイウエオリババ
児童文学者の生越嘉治によって書かれた児童劇。
初出は恐らく『クラス全員が出演できる名作劇』という本であると思われる。
最大の特徴は主人公がアリババ・イリババ・ウリババ・エリババ・オリババの五つ子であるという点。仮にもペルシャが舞台なのになぜアイウエオなのかとか考えたら負けである。
主人公が五つ子であることを除けば序盤の展開はだいたい原作をなぞっているが、この作品はカシムが呪文を忘れて盗賊に見つかったところをアイウエオリババが助けに来るという展開になっている。
そして五つ子で協力して盗賊を倒したところで劇終を迎えるのでモルジアナさんは影も形もない。

  • マルジャーナの知恵
経済学者の岩井克人によって書かれた評論文。
元は『二十一世紀の資本主義論』という著書の一節であったものだが、高校の国語の教科書に収録されている*9ことで知られる。
タイトルのマルジャーナというのがモルジアナさんのことである。
内容はというと、モルジアナさんが扉に書かれた印を見つけて町中の扉に同じ印をつけて盗賊を欺いたという件からモルジアナさんは「差異」という情報の本質に気付いた最初の人物であるとし、この「差異」こそが現代の資本主義の基本原理である、と説くものになっている。

  • アサシンクリードミラージュ
DLCの「四十人の盗賊」が本作をモチーフとしている。
アリババは既に大商人でモルジアナはアリババの娘という設定。
ちなみにアリババは登場時点で既に盗賊によって殺されている
主人公はモルジアナと二人で盗賊たちと盗賊王に復讐を果たし、モルジアナは父を継いで大商人となる決心をするというストーリー。

◇アニメ化

『まんが世界昔ばなし』でアニメ化。
流石に盗賊達を殺害する部分は次の様に変更されている。
子分達→壺の上に岩を置かれ、監禁状態となった。
お頭→モルジアナによってリボンでグルグル巻きにされる。
そして最後はアリババとモルジアナが幸せなキスをして終了。



◇余談

実はこのエピソード、編纂された『アラビアンナイト』のアラビア語原本には存在していなかった可能性が高く、
現存する写本はフランス語からアラビア語に訳されたものであることが立証されていたりと、その知名度に反して出所が極めて不明瞭であり、
一説では編纂者によって創作された、比較的近代の作品なのでは?という疑惑も挙がっている。
ちなみに同じく『アラビアンナイト』に内包されている「アラジンと魔法のランプ」や「空飛ぶ絨毯」も似たような立ち位置の作品であるらしい。




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最終更新:2024年04月24日 20:02

*1 版によっては宝石になっており、「弟も馬鹿な奴だ。金貨なんか盗らずに宝石を盗れば、売った時に何万倍もの金貨が手に入ると言うのに」とぼやいている。

*2 版によっては「召使い」「お手伝いさん」等と表記されている

*3 版によっては銀貨

*4 靴屋が元々盲目だったと設定されていることも

*5 但し盗賊側が余りにアホだったので油断しきっていた感はある。 少なくともモルジアナも騙されていたのだし…

*6 絵本によっては、死ななくても火傷で再起不能になったと書かれていたりする

*7 版によってはこの下りは省略され、『子分達の死体を発見したお頭は塀を登って逃走する際、足を滑らせて落下し、地面に頭を打ち付けて死亡』という展開になっている場合もある。

*8 しんのすけとひろしがそれぞれ美人のお姉さんを出してほしいと言った後、怒ったみさえが鉄拳制裁した後に2人の出したお姉さんを帰してほしいと言った。

*9 2023年時点では三省堂、筑摩書房、明治書院の教科書に収録。