登録日:2018/11/04 Sun 22:02:44
更新日:2026/03/24 Tue 23:03:36
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枯れた技術の水平思考とは、
任天堂の元社員だった故・横井軍平の技術面における哲学である。
概要
簡単に言うと、「既に存在している技術の別方面への転用・組み合わせ」のこと。
横井軍平は、自著である「横井軍平ゲーム館」でこう書いている。
ゲーム&ウオッチは、5年早く出そうと思ったら10万円の機械になっていた。
量産効果でどんどん安くなって、3800円になった。それでヒットしたわけです。
これを、私は"枯れた技術の水平思考"と呼んでいます。
技術者というのは自分の技術をひけらかしたいものだから、最先端技術を使うということを夢に描いてしまい、売れない商品、高い商品ができてしまう。
値段が下がるまで、待つ。つまり、その技術が枯れるのを待つ。枯れた技術を水平に考えていく。
垂直に考えたら、電卓、電卓のまま終わってしまう。そこを水平に考えたら何ができるか。
そういう利用方法を考えれば、いろいろアイディアというものが出てくるのではないか。
「枯れた技術」とは、最先端ではないものの十分に普及していて安価に採用でき、
バグなどの欠点も実用レベルに克服されている技術のこと。
そして
「水平思考」というのは、別方面への使い方を考えるということである。
(垂直に)積み上げるだけでは同じ性質の物しか出来上がらない。
(水平に)発想を広げていくことで発展するものだから。
つまり、基本型が既に普及して使い倒された時期だからこそ、新たな価値を生み出す為に当初や本来の用途から横に逸れる余裕が生まれるという、技術の新規利用あるいはリサイクル理論である。
「既にあるものを新たな組み合わせをする」というのは一見すると簡単であるが、普及しきった技術で簡単に作れるものは既にやり尽くされているわけで、今あるものを「適材適所」で組み合わせて新しいものを作り上げるというのがどんなに難しいかは、実際にやってみるとよく分かるはずだ。
この、「あるものを組み合わせて、或いは別の使い方を考えることで、新しい発想を生み出す、或いは創造力を鍛える」というのが、枯れた技術の水平思考という哲学の真髄である。
某所の携帯ゲームソフト板のデフォルトネームである「枯れた名無しの水平思考」の元ネタ。
この哲学は、横井氏がかつて身をおいた任天堂にも今もなお受け継がれている。
枯れた≠古い技術
ただ、「枯れた技術」という言葉の雰囲気から、この言葉が独り歩きして、時たま「役目を終えた古い技術のみに頼る保守的な思考・哲学」という間違った解釈をされることがあるが、
枯れた技術というのは「既に完成されている技術」という意味であり、今の時点で完成されている、あるいは見込みがあるのなら、最新のものですら遠慮なく使う、つまり古典的だろうと最新鋭だろうと「安定した利点があるなら採用する」というのがこの哲学の真髄である。
枯れた技術とは古いだけの技術ではなく、使い慣れた円熟した技術、と考える方が正確だろう。
センサーやタッチパネルで確かに便利になったが、ボタンやスイッチの方が便利なものだって今でも沢山あるのだ。
古い技術だけに固執するのは「枯れた技術を水平思考で別の使い方を考える」のではなく、ただの「古い技術だけでやるという、
縛りプレイ」に過ぎないのだ。
そもそも本当に「役目を終えた、古い技術」のみに頼るとなると、その「古い技術」を再研究するための、あるいは製造段階になればラインを再開・再構築するための費用が余計に発生し、却って高くつくこともある。
以下はその例。
ガンダムの
一番くじの景品で、「こんなもの賞」として
アムロの父である
テム・レイが作った
ガンダムのパワーアップパーツをモチーフとした
USB1.1規格のUSBハブがあったが、この企画をメーカーに持ち込んだときに「ハァ?今更USB1.1仕様で作って下さい?」「
もうUSB1.1のチップそのものがほぼ無いのでメーカーに頼んで特注で作ってもらう必要があるから、その分コストが余計にかかりますよ、それでも本当にいいですか?」(意訳)と返されたという逸話がある。
これも「役目を終えた技術のみに頼る」ことがどれだけ難しいかを表している逸話と言えるかもしれない。
尤も、これは実用品ではなくあくまでジョークグッズ、あるいはガンダムの世界観を再現するためのこだわりという方面が強いので、商業用商品に使うべき「枯れた技術」の比較対象としては無理があるかもしれないが(この賞品では「時代遅れのブツ」であるからこそ意味があるため。コストが掛かってもあえてやっているので。)。
フィクションの話だが、
ラーメン発見伝シリーズというラーメンの調理だけでなく経営戦略を描いた漫画作品に、「老舗ラーメン店の謎」というエピソードがある。
だいぶ年齢を重ねた従業員たちが
「創業者のやり方を貫きたい、変えるつもりはない」「赤字になっているのは大卒の経営戦略でなんとかしろ」という、
経営者への無茶振りがされている。
先代の教えを重んじる古参の従業員たちは券売機や給水器の導入提案に対して「代金はお客様から直接感謝しながら貰うもの」「お客様に働かせて水を注がせる気か」とバッサリ反対。
古参従業員がなぜこのような猛反対を行うのか、この話の行方はどうなるのかは是非作品を読んで頂きたいが、古い伝統や技術を盲目的に用いることと「枯れた技術」は根本的に別物という一例である。
また、古いものより新しいもののほうが洗練されていて使いやすくなっているというのもよくある話、だったら「安価で洗練されていて使いやすい、今どきの技術」でやるほうがいいじゃないという話になってしまう。
例えば例えば
最近流行りのレトロゲーム機の
復刻版であるが、こいつらの中身は当時のチップである6502系や68000やMIPS RISCではない。
ファミコンやPSの場合はスマホやタブレットや現代の携帯ゲーム機でお馴染みのARMアーキテクチャの
CPUを使って、一種の「エミュレータ」として動作してレトロゲーム機を再現している。
復刻版
MSXの場合は、FPGA…簡単に言うと「可変電子回路チップ」を使い、チップ内にMSXの回路をプログラミングすることでMSXの機能を再現している。
モニターとの接続に至っては、コンポジット端子ではなくHDMIである。
HDMIならケーブル1本どころか端子一つで映像もステレオ音声も同時に送れる、つまり端子そのものの繋ぎ間違えの心配がないから利便性に関してはコンポジット端子よりも遥かに高い。
それに今更コンポジット端子なんかを採用したところで、例えばアナログ入力端子搭載テレビそのものが絶滅しているアメリカでは何にもならない。
今どきの接続端子であるHDMIの方が、利便性が高い上に確実なのだ。
昔のCPUを今あえて使うよりも、今どきのCPUや半導体チップで再現する方が、省エネルギーで安価に設計製造できるし、取り扱える技術者も多数存在するため、効率がいいのだ。
Nintendo Switchだって、CPUはカーナビやタブレットなどで幅広く使われているTegra、それもおそらくは開発開始時点での最新モデルであるX1がベースなのだ。
Tegraは既にカーナビ、スマホ、タブレットなどで多数実績がある安定した、つまり「枯れた」CPUである。
だったらこれを「ゲーム機」に使えば、省エネでリッチなグラフィックを出せるから、家でも外でも楽しめる新発想のゲーム機ができるはずだ。そして作り上げてしまった。
そういうことである。
繰り返すが、枯れた技術と古い技術はイコールではない。
古い技術だけに頼るのは単なる縛りプレイに過ぎないのである。
今の時点で使えるものなら何でも使う。そして新しい物を作り出したり、懐かしのものを再現する。
これこそが「枯れた技術の水平思考」である。
そもそも技術なんてものは日進月歩なので、
「最新鋭であまり知られていない技術」→「新しいが浸透し始めた技術」→「全体的に使われている技術」→「やや古いがまだ使われている技術」→「古くなって時代遅れとなっている技術」
という感じに移っていく。
このうち3~4番目あたりが「枯れた技術」となる。
重要なのは「広く使用されておりメリット・デメリットがはっきりしている。それを使える技術者も多い技術」であることなのだ。
「最新の新技術」というものは往々にしてメリットばかりが強調されてしまい、デメリットが判明していないことが多い。
教育が終わっておらず扱える技術者も少なかったり、コストも余計に掛かってしまうことがある。
一方で「すでに役目を終えた古い技術」では上記の通り既に在庫が無かったり、技術者も次の技術に移行してしまって残っていないことも多々あるのだ。
有名な話として
「アポロ11号のコンピュータはファミコン以下」というものがあるが、実際、この当時はファミコンを上回るコンピュータなどごまんと存在していた。お金をかければスーファミ以上のCPUを組むことも可能だったかもしれない。
ただ、頑丈でかつ安全で、乗組員の修理も比較的簡単だからこそ、その程度のCPUを選択したのである。
また、当時の最先端の技術だからといって必ずしも残る訳ではない。
有名所で言えば
VHSとの競争に負けたベータマックスや、MD(ミニディスク)、LD(レーザーディスク)など他の機器や媒体に淘汰されてあっさり市場から消えてしまうこともある。
そういった物に大金を投資していれば莫大な損失となって会社が傾き、最悪の場合は倒産することさえあるだろう。
そんなバッドエンドを防ぐ為にも「まずは一般に広まるまで待つ」という
長期的な戦略でもあるのだ。
枯れた技術の水平思考の例
ヨコイズム、そして枯れた技術の水平思考の原点。
簡単に言うと「感情の変化で汗が出て人体の電気抵抗値が変わる」という原理の嘘発見器を、男女の親密さを図るジョークグッズ、或いはおもちゃに転用したもの。
好きな人と手をつなぐとドキドキして汗が出る、つまり電気抵抗値が変わる。これをおもちゃに応用した。
最近ではメイドインワリオなんかに収録されているので、これで知った現代っ子も多いはずだろう。
冒頭にもある携帯型LSIゲーム機。
半導体で演算してその結果を液晶画面に出すという電卓の構造を、電卓サイズの「簡単なゲームのできる機械」に転用したものである。
LSI+液晶画面=「計算機」じゃなくて、「ゲーム機」に発想を変えたものである。
CPUには当時のMacintoshで使われていた「PowerPC G3」をベースにしたものを使用している。
パソコンに使うような
CPUをゲーム機に転用したことで、パワフルで尚且扱いやすいゲームマシンができた。
銀行のATMや一部の携帯端末で使われていたタッチパネル操作をゲームに転用したのがニンテンドーDS、
携帯電話で普及していた加速度センサーや、様々な分野で活用されているCMOSカメラを、画像や動画の撮影ではなく「赤外線ビーコンを使った位置検知」に応用したのがWii。
ボタンではなくて画面に直接触れたりコントローラーを振るというわかりやすい操作のおかげで、新発想のゲームを生んだだけではなく、今までゲームを敬遠していた層の取り込みにも成功した。
それに、小型の液晶画面でも2つつければ実質大画面にもなる。
ゲーム体験の幅を広げるために新たにマウス操作が採用されている。
実際「開発者に訊きました」では「世の中で広く使われているマウス操作をJoy-Conで実現するのはそこまでコストがかかるものではないですし、それこそ『枯れた技術の水平思考』かな」に直接言及している。
また使われているCPU・
GPUの技術の多くも先にPC向けに開発された物を採用した。
ゲームそのものは一枚絵と選択肢、テキストメッセージで構成されている、
「
ポートピア連続殺人事件(ファミコン版)」などのような初期のコマンド選択式のアドベンチャーゲームである。
しかし、そこに現代のゲームでは当たり前である
声優によるボイスなどのエフェクトを盛り込み、見た目が派手でスピード感のあるゲーム性を生み出した。
ゲームそのものは「昔のスタイル」であり複雑な操作が要求されないので、その辺りを敬遠していた層の取り込みにも成功している。
MtGに代表されるトレーディングカードゲームと、
モノポリーや人生ゲームなどのような双六ゲームを組み合わせた。
どちらもボードゲームの定番ジャンルだが、この2つを組み合わせたその結果全く新しいゲーム性を作り出すことに成功。
お湯を注ぐだけでお手軽に美味しいご飯が食べれるアレ。
カップヌードルの具材などにも利用されている。
今でこそ、フリーズドライは食品関連の技術で有名だが、元は医療用の技術。輸血用血液を鮮度の高い状態で持ち運びできるように開発された経緯があり、それを食品関連会社が目をつけたのである。
軍用で使われていたソナーの漁業への応用。元々ソナーは誤探知で鯨や魚群を見つけてしまう事が多々有ったので「ソナーで潜水艦だけじゃなくて魚も見つけられるんじゃ?」となって民製品化した物。
完成までには様々な困難があったものの、このおかげで勘と運に頼らない安定した漁獲が実現している。
ちなみに余談だが、実はゲームボーイにも魚群探知機は実在する。
紐を引くと加熱できる弁当というアレ。
加熱部の中に入っているのは水と生石灰であり、生石灰に水を加えると反応して熱が出る。
この当たり前のことを応用した
軍用のレーション加熱パックを、訓練されていない民間人でも簡単安全に使えるようさらなる改良を施し、どこでも温かい弁当が食べられるようにしたものである。
世界最速の枯れた技術の水平思考。
開発コンセプトの一つには「未経験の技術は使わず、既存の技術だけを組み合わせる」というものがあった。
電気系統は交流電気機関車からの転用、駆動系は旧営団丸ノ内線の車両の拡大発展版。
WN駆動装置やミンデン系台車だって、私鉄で多数実績がある。
最近流行りのLCCこと格安航空会社、この手の会社は「小型で燃費が良くて航続距離の長い飛行機」に統一することで運航コストを下げている。
大手の航空会社じゃ短距離やローカル線で使うような機体を、航続力と燃費を取って「主力機材」に使うという発想の転換である。
そもそもAppleという企業自体が枯れた技術の水平思考を地で行く面があるのだが、その中でも代表格なのがこれだろう。
音楽プレーヤー+HDD+タッチセンサー=iPod
携帯電話+Webブラウザ+タッチパネル=iPhone
いずれも当時既に普及していた製品・技術だが、組み合わせ方を工夫することで機械が苦手な人にとってもわかりやすい操作を実現しヒット商品となった。
枯れた技術大好きのソ連の生み出した謎の高速戦闘機。
…のはずが、機体は軽金属のアルミニウムやチタンではなくステンレスがメインであり、レーダーに至っては真空管という、一見すると時代遅れのような仕様である。
だが、縛りプレイでこんな仕様にしたわけではない。
当時の半導体は高いだけでなく不安定であり、ならば信頼と実績の真空管を使ったほうが確実。
ボーイング747の無線機にも真空管を使っている部分があったのである。
それに真空管ならEMPにも強いため、万が一核戦争になったとしてもレーダーをバリバリ使える。
アルミは熱に弱いためマッハ3の世界では不安。しかしチタンは高いだけでなく加工も難しい。
なら熱に強い鉄系材料で作り、重くなった分はハイパワーのジェットエンジンで補って
力業でマッハ3を超えてやる。
脳筋といえばあまりに脳筋、しかしあくまで目的は敵地への侵攻ではなく、自国の領空の防衛。
その点で言えば目的に沿った堅実な方法で作られた戦闘機と言え、また防空戦闘機ならばちょっとくらい燃費が悪くても構わない。
そういった割り切りの末に出来上がったのが最高速度マッハ3の迎撃戦闘機、MiG-25という訳である。
第二次世界大戦中にドイツが生み出したビックリドッキリメカ。
「有線リモコンで操作する」「エンジンor
モーターでキャタピラを動かして自走する」「
爆弾」という、特に最先端というわけではないありふれたものを組み合わせた結果、
「60kg以上の爆薬を積んで地雷原や戦車に突入してくる爆弾」という、敵にとって見れば
恐怖の兵器に仕上がった。
しかし、「じゃあ線切っちゃえばいいじゃん」というこれまたありふれた発想で駄っ作兵器へと転落した。
現在は「ドローンで空中からテルミットを振りまく」という、この発想を昇華させたであろう恐ろしい兵器がロシアとウクライナとの実戦で使用されている。
漫画『逃げ上手の若君』にて登場した、1335年、即ち室町時代一歩手前の日本に於いては超兵器と言う他無い代物。
戦車といっても「チャリオット」ならヨーロッパには紀元前から存在したが、これは第一次世界大戦で出現した「タンク」の方の戦車である。
履帯は装備されておらず、動力は人力、全高は2~3階建て民家程の巨大サイズと、戦車というより自走式攻城櫓に近い代物。
足利尊氏に注入された神力によって覚醒した
清原信濃守が考案したもので、駆動系は「牛車の車輪」、外壁は「置き盾」、上部構造物は「仏塔」、主兵装は「弩」、動力と弩の装填には「
敵の領地から攫った奴隷」、弱点である火攻め対策に「
人質を用いた肉盾」と、14世紀の日本でも枯れている技術の流用のみで作られている事から、巨大奇想兵器でありながらも竣工に要した時間は
僅か3日であった。
創作の兵器ではあるが、歴史監修からも
理論上は当時でも作れた旨のお墨付きを頂いた珍兵器。
兵庫県を走る北条鉄道(北条線)は、かつて路線全体で1閉塞しかないため行き違いができず、1編成の列車をひたすら往復させることしかできなかった。これを改善すべく、2020年、途中駅に行き違い設備を設置することとなった。しかし2編成の列車を同時に走らせるには2つの閉塞を設けなければならない。現代の鉄道ではほとんど自動閉塞が使われているが、導入するにはコストがかかる……という背景で誕生したトンデモ方式。
まずこれは非自動閉塞である。自動閉塞に追われ、限られたローカル線で細々と残っていた状態で、廃止はあれど新規採用はまず異例。しかし鉄道黎明期から長く使われ、少ないとは言え今だ現役で使われており、信頼性は高いと言えよう。
ただここで問題となったのが票券の受け渡しだった。非自動と言うように、票券(閉塞内の通行手形)をやり取りするためには、行き違いの際に駅員が必須。しかし駅員を雇ってしまうとコストは下がらない。
この事態を大きく変えたがICカードだった。従来の金属製のものではなく、乗車券としてもお馴染みのICカードを何と票券として使用。行き違いの際にはカードリーダーにICカードをタッチし、それを運転指令から遠隔監視する。さらに票券は駅に設置した専用の箱を通じて交換することで、無人駅で票券のやり取りを可能とした。
使い古されてとっくに枯れた非自動閉塞の技術に、普及し安定しつつあるICカードの技術を組み合わせることで、見事安全性とコストの両立を実現した。
なお乗車券としてのICカードはまだ使えない模様。
現在都市圏の鉄道事業者ではホームドアの設置が進められているが、駅のホームドアはただ単に扉をつければいいというわけではない。車両の扉が開くと同時にホームドアを開かなければらず、さらにこの効率が悪ければ当然乗り降りにも支障をきたすことになるので、可能な限りスムーズな自動動作が必要なのである。
従来この連動には車両とドアを無線で繋いで、車両側のドアオープンの信号に合わせてホームドアも開くといった仕組みを使っていたが、ここで都営地下鉄の相互乗り入れが問題となった。それでなくても車両編成やドアの数に合わせた個別対応が必要なのに、複数の会社がまたがることでコストがさらに高くなることが予測されるし、乗り入れ側もそんな改修には協力してくれない。しかし東京都交通局のとある職員が素晴らしい発想の逆転でこの問題を確実かつ安価に解決したのである。
それは、車両のドアに自分の情報をもたせたQRコードを貼り付けておき、ホームドアの側がそれを読み取りコードを追いかけて開くというもの。無線連動のような車両への追加装置は一切必要なく、なんせコードをプリントして貼り付けるだけなのでコストは冗談のように安くなり、しかも非常に柔軟性のある対応ができる。
これにより車両の改修コストは当初見積もりの20億円から270万円にまで下がったとのこと。当然乗り入れ各社も喜んでこれに対応し、都営地下鉄のホームドア設置は急速に進むこととなった。また社会的に価値のある技術ということで、他社でもこの方式を採用する会社が増えている。
浮き上がった点で文字を表現し、指で触れる事で読み取る技術。
元々は19世紀のフランス軍で使用されていた暗号で、目の利かない夜や暗闇の中でも手先の感覚で意思疎通するためのものだった。
しかし、盲学校に通う当時12歳の少年ルイ・ブライユはこれが全盲の人間の意思疎通にも利用できると考え、元の暗号より簡略化するなどの工夫の末に4年後に完成させたのが今日の点字である。
今やブライユの名前は
「点字」そのものを指す名詞となっている。
ドン・キホーテなどで販売されているパーティグッズ。
文字通り、飲むとゲップが出やすくなってしまうパウダーで、YouTuberのHIKAKINが
飲みすぎて大惨事を起こした動画で知った人も多いと思われる(後輩のデカキン曰く「伝説の動画」)。
実はこのグッズ、胃の検査に使われる歴とした医療品を転用したものである。
元々は患者がこれを飲むことで胃を膨らませ、病巣の確認をしやすくするというもの。人によっては健康診断で毎年お世話になる馴染み深さで、これをパーティ商品に転用しようと考えた企画者の着眼点が光る。
なお実際の検査ではゲップを出さないよう釘を刺される。パーティの用途とは真逆である。
SCP財団日本支部で収容されている
オブジェクト。
ざっくりいうと「様々な表示に変形でき、変形した内容を実際に起こす生きた標識」。
これ自体は作中世界においては単なるオブジェクトの一つと言えるが、メタ的には「既にやり尽くされたような(よくある)設定に新しいものを加える」という、枯れた技術の水平思考的なコンセプトで制作されている。
実際、
「変身して色々なことを起こすオブジェクト」というシンプルな特性に、
GIFアニメというこれもネット界隈では一般的になった表現法を組み合わせることで制作されており、一部の古参の参加者からの否定的な意見もあったものの総合的には大量の高評価を得たオブジェクトとなっている。
昔の日本で栄えた「空気圧やモーターを使わない、ゼンマイなどの機械構造を利用した仕掛け」のこと。
江戸時代にはその存在が確認されている古い技術。
しかし、近年では「重たいものを持ち上げやすくする、分別をしやすくする、それらの仕掛けに電気も空気も必要としない」という点が注目され、工場の現場改善に使われるようになった。
一方で導入費用が高く、また動力源こそ掛からないものの機構であるためメンテナンスという維持費が発生するため、大企業がからくりを導入してお年寄り社員たちの働き方改革に活躍した一方で、中小企業が導入こそしたもののまともに活かせなかったという事例もある。
一時的な眠りづらさがある時に眠りに就くのを補助してくれる薬。
字面が似ているため混同されがちではあるが、医師による処方が必要な睡眠(導入)薬とは異なる。
巷のドラッグストアでも容易に購入することが出来るが、主成分は第1世代(旧世代)の抗ヒスタミン薬のジフェンヒドラミン塩酸塩。
この薬品は古くから用いられ、アレルギー性鼻炎や風邪の諸症状緩和、アレルギー性皮膚炎の痒みに対して抜群の効果を発揮する反面、口の渇きを誘発すること、何より中枢神経系を抑制するために非常に強い眠気を催すことが問題視されており、服用後の機械類の運転が禁止されることもあって徐々に使用量が減少していた。
入眠補助剤はその強い副作用を逆手に取ったものである。
ただし、飽くまでも極短期間の眠りづらさに対してのみ使用するように注意書きがあり、本当の不眠症の患者が入眠目的で使用するのは禁忌とされている。
本当に困っている人は医療機関で相談しよう。
アクリル板にイラストや人物/キャラクターの写真/立ち絵を張り付けたスタンド。これをフィギュアと呼んでいいかでひと悶着起きるアレ
2020年に発生した新型コロナウィルスの大流行(所謂コロナ禍)が終息したことで、飛沫感染を遮断する仕切り材として使われていた透明なアクリル板の需要が激減。
余ったアクリル材や回収し破砕・再加工した再生アクリル、そのアクリル材を精密に裁断するレーザー加工機、UVプリンターという『当たり前の(枯れた)設備インフラ』を流用することで、コロナ禍後の『推し活』グッズとしての地位を確立した。
「飛沫感染を防ぐため、人と人の間を目立たず遮断する」透明な板を「推しの姿を目立たせる」アイテムの素材として真逆に転換したのは、まさに水平思考の真髄と言える。
手元にあるものを別の使い方を考えながら追記修正をお願いします。
- 枯れた技術とか最新技術とか そういう問題じゃないのもあるんだな。まがりなりにも国が作ったんだぜ?接触確認アプリとワクチン予約サイトなんだけども…… -- 名無しさん (2021-06-04 23:10:49)
- 理屈は分かるけど、実際には保守層の言い訳にしかなってないのが現実よね -- 名無しさん (2021-09-14 20:08:28)
- キッズコンピュータ・ピコはメガドライブのコントローラーをタッチペンにし、スペックはサウンド面を変更した枯れた技術のマシンだけど幼児向けの電子知育玩具に特化しているとはいえロムカセットによる差し替えの存在も考えてゲーム機としても見られているから完全な水平思考とまでは言いにくい。普通に考えるとゲーム機とみなさない人は多いだろうけど -- 名無しさん (2021-11-09 20:09:01)
- 枯れた技術と古い技術の境目ってのは難しいね。ゲームボーイはモノクロの理由は十分あったが、ワンダースワンはその成功体験にとらわれたといえる。 -- 名無しさん (2021-11-09 21:25:45)
- リバイスドライバーなんかもこれに当てはまるのでは(砂鉄で絵を描く玩具の応用) -- 名無しさん (2021-11-10 00:18:16)
- 「枯れた」という言葉から古い技術と考えやすいが、実際は「成熟した技術」の別分野への転用だから、無限に広がる考えと言えるか -- 名無しさん (2021-12-12 15:47:04)
- スプラトゥーンもこれに近いと思うんだよね -- 名無しさん (2022-10-24 00:48:42)
- 相当なセンスが無いと出来ないからあんまり真似できない気がする -- 名無しさん (2023-01-21 11:29:27)
- 老舗ラーメン店の謎 -- 名無しさん (2023-01-21 12:06:38)
- ガンダムとかスライムとかの例えは同ジャンル内の垂直思考でしかない。そのキャラ設定を王道少女マンガや睡眠計測アプリみたいな一見すると関係性も親和性も見当たらない別ジャンル別作品に宛てがって初めて成立する -- 名無しさん (2023-05-11 12:37:36)
- ゲームボーイの時に任天堂社内ですら「カラーじゃなくて大丈夫なの?」って言われたんだよね。それで言ったのが「他社がカラーで来たらうちの勝ち」というあの名言。出そうとしてる商品の本質がどこにあるのか本当に分かっていないとこんな判断は怖くてできない。ここまでいけたのは多分横井軍平ただ一人だと思う。 -- 名無しさん (2023-06-30 18:46:27)
- 人工衛星の太陽光発電パネルの折り畳み方が折り紙のやり方、っていうのもこれかな? -- 名無しさん (2023-06-30 21:34:53)
- 最近の番組で、「ひろがるスカイ!プリキュア」と「ウルトラマンブレーザー」の変身アイテムのセンスが妙に似てるような気がするんだけど、ああいうクルクル回転しながら発光して文字が出てくる装置(?)が安く使えるようになって玩具に採り入れやすくなったのかな? -- 名無しさん (2023-06-30 22:06:01)
- 第二次世界大戦期ではまだ珍兵器だった自走地雷ゴリアテも、時代が進んで要求される技術がさらに枯れ、現代のドローン兵器がほぼ同じ構想を達成していることを考えると、当初のコンセプトが漸く完成を見たといえるのかもね -- 名無しさん (2025-01-14 12:41:31)
- 生まれたばかりの最新技術ではなく一般普及している技術を独創的な発想で応用するというニュアンスがわかりにくい表現よね。実際に使われた言葉だから変えようがないんだけど… -- 名無しさん (2025-06-07 08:26:45)
- 「枯れた」というより「成熟した」とか「使い慣れた」の方が分かりやすいかもしれない。実際、水平思考とまでは言わないけど、関数を組まないでフィルタやコピペを駆使した方が作業が速いというのはある…。 -- 名無しさん (2025-06-07 11:51:06)
- 「枯れる」には「無駄や過剰が抜けて使う分だけが残る」意味もあるけどゲームとかハイテク畑だとあまり使わないかな -- 名無しさん (2025-06-08 20:59:11)
- ↑工学の世界だと無理はともかく無駄は許容される印象がある。想定より高い負荷に耐えられるようにしておく、アップデートを見据えて余裕を持たせておくことは多い。横井さんの製品でいえばゲームボーイの通信ケーブルは必要ではなかったけど後にポケモンブームを後押しすることになる。 -- 名無しさん (2025-06-09 22:15:57)
- だいぶ↑のカードゲーム話について亀レスだが、『古いデッキタイプのコンボなどを取り入れてデッキを組む』みたいな感じだと思うんだ。古いコンボやデッキタイプを発掘して今のレギュで調整しつつ、最近の弾のカードが有用なら躊躇なく取り入れていく感じ -- 名無しさん (2025-06-12 16:57:04)
- 某魔術ラノベのタイトルに似てる名前 -- 名無しさん (2025-06-20 11:38:25)
- スズキのジムニーにしても「枯れた技術の水平思考」で生まれた名車だし -- 名無しさん (2025-10-21 10:51:46)
- ラーメンハゲの話は唐突過ぎてこの記事に合ってるように思えない…実例ですら無いしまさに情報食って喜んでそう -- 名無しさん (2025-10-22 12:03:23)
- ↑反論がなければ消してもいいかもしれませんね。 -- 名無しさん (2025-11-02 18:10:55)
- コメントのログ化を提案します -- 名無しさん (2025-11-04 13:13:03)
- コメントをログ化しました -- (名無しさん) 2025-11-11 09:59:27
- 湾岸ミッドナイトの80スープラのエピソードでも、敢えて古い型式のターボをスープラに取り付ける理由として、これに近い理屈を説明してたな -- (名無しさん) 2025-11-12 04:35:14
- 実はDIYをよくやる人ならば無意識化でやっている考え方でもある。例えば100円ショップなどで安価な素材(=枯れた製品)を入手、加工して全く別ジャンルの自分が求める物品を自作するとかね。実際、横井氏は元々ものづくりが好きだったらしいからなぁ。 -- (名無しさん) 2025-11-20 11:39:00
- ↑6で突っ込まれているので「老舗ラーメン店の営業方針」の部分を修正して何とか記事に沿うようにしてみましたが…正直自分でも無理矢理だと思うので、やっぱり唐突で記事に合って無いようなら折りたたみ部分は全部消してください -- (名無しさん) 2025-12-09 21:12:04
- ラーメン発見伝ならお店で提供されている既存のスープを組み合わせてラーメンスープを作る話がこの記事にあってるんじゃないかな? -- (名無しさん) 2025-12-09 22:02:20
- あれ、アクリルスタンドってコロナ前から無かったかな -- (名無しさん) 2026-03-31 18:39:48
最終更新:2026年03月24日 23:03