レーション(戦闘糧食)

登録日:2011/02/06(日) 12:35:40
更新日:2024/11/05 Tue 19:07:58
所要時間:約 14 分で読めます






俺は……できることならローズの手料理よりもずっとこのレーションで過ごしたい。

……お前、意外と苦労してるんだな。


レーションとは、主に軍隊で食べられる携帯食糧のことを指す。


【ration】

そもそもレーション、つまりration英語)とは、「期間をおいて配給される、食糧などの配給品全般」を指している。
つまり、この定義に厳密に従うならば、レーションは必ずしも食糧のみを意味することにはならない。
また食糧であっても、例えば米国のAレーション・Bレーション*1は野外炊事場での調理が前提となっているし、これらは現在はユニット式集団用レーション(UGR)としての側面も持ち、50人分がセットになっているという。

しかし日本で単に「レーション」と言った場合、軍隊において、基地から離れて行動する兵員に対し支給される、個人用の野戦糧食セット(コンバットレーション)を特に指すことが多い。
「軍隊糧食」、さらにくだけて言えば「ミリメシ」とも。
この項目ではこの戦闘糧食、コンバットレーションについて解説する。


【レーションの基本】

誤解されることも少なくないが、軍隊でも食事は普通に調理したものを摂っている。基地やキャンプなどでちゃんと暖かいメシが食えるように拵えられているのだ。
だが、何時でも基地やキャンプで食事を摂れるわけではなく、例えば長時間を要する作戦行動などでは半日或いは数日間帰還できないということも珍しくはない。
そんな時に食されているのがコンバットレーションなのである。

従ってコンバットレーションはあくまで「戦闘中/任務中の配給食」となるよう考えられたもので、それに特化した性質を持っている。

つまり
  • 作戦行動中や前線までの輸送中に腐らないように保存性
  • 行軍に便利なように、また輸送効率を高めるために携帯性
  • 警戒態勢の真っ最中!などの状況でも短時間でも食べ終われるように、即席性・簡便性
  • ハードな肉体労働を行う兵士に十分な栄養素を供給するべく、栄養面、特にカロリー
などの点を重視しているといった特徴を持つ。
これについてもお国事情や作戦の内容によっても多少変わりはするが、カロリーと携帯性は基本重視されていると考えてよい。

……となると、次には当然「で、味は?」と聞きたくなるというもので……。


実際のところ技術進歩や軍隊を動かすため(後述)の研究が進んだ昨今においては、民生の長期保存タイプの加工食品と味の面では大して変わらない。
日本だったらパック飯+レトルトカレーとか、そんなレベルである。何なら民生品とほぼ同仕様のものが採用されている事すら多い。
ただ、普段からそういうのを食べ慣れていればともかくそうでもなければ「(日常的に食っているものと比較して)そこまで美味しくない」という感想になってしまうだろうし、
そもそも作戦行動中に喰うという前提ゆえに、多くの場合火を熾して(湯を沸かして)熱々にしていただくという訳にはいかない。
ヒーターが支給される場合もあるが熱々にできるかどうかはモノにもよるので、冷めた、或いは生ぬるいメシを喰う羽目になることも多いだろう。
そのため大体のレーションは「人を選ぶ」と称されており、後述の歴史も相まって「レーション=クソ不味い」というレッテルが貼られるのが定番となっている。

そもそも幾ら軍隊と言えど働いているのが人間である以上、いかに保存性や携帯性に優れていたとしても、味を完全に犠牲にしてしまっていては、それはそれでまた色々な意味で「マズい」
平時よりも遥かにストレスの溜まる戦場では食事は重要な娯楽だし、また兵士の心理にとって極めて重要な「日常性」を維持するためにも、人間らしい(味の)食事を摂るのはとても大事なことだからだ。
あまりにまずいレーションは、結局食料としては当てにされず、兵士たちが民間人からの略奪を起こしたりダイナマイトを口にする*2と言うリスクまで増えてしまう。
非常食として民間人に配布する可能性もあるので、その意味でもまずすぎる食品は無用の不満をため、非協力的な人々を増やしてしまいかねない。
過去の戦史においても、配給食に対する不満が士気を下げたり、甚だしくはサボタージュや脱走、反乱まで招いたり、という事例は枚挙にいとまが無い。映画『戦艦ポチョムキン』をご覧あれ。
かつてイギリスが世界の覇権を握れたのは、彼らがメシマズに慣れすぎていてクソみたいな戦闘糧食でも平気だったからだ、という説は非常に有力
とは言えバウンティ号の反乱に見ることができるように、単にマズメシを我慢できるだけであって、これがストレスを蓄積する主な原因となり得る、という事実に変わりはない。

さらにあくまでフィクションの話だが、『機動戦士ガンダム サンダーボルト外伝 』第13話「戦闘糧食」に登場するウェンディさん曰く…

「最後の食事になるかもしれない!」
「そう思って食べる戦闘糧食がクソ不味かったら、生きる活力も沸かないわ!」
「人間、食事に飽きたらお終いよ!1日3食、毎日毎日しっかり食べて生き続ける努力をしなきゃ!戦場で戦う兵士なら尚更でしょ!」

…と言っている。配給されたレーションが人生最後の晩餐にもなりかねない戦場を生きる兵士達にとって、「必ず生き残ってやる!」という活力をもたらすためにも味も重要なのである。

ただ、この辺りの配慮というか研究が不十分だったころは、おいしすぎると
「必要ではない時にも食べてしまう」「普通の食事を作れる状況にあるのにレーションから食べ始めて、結果必要な時に無くなる」という問題があるとされていた。
つまり意図的に不味く作っていたレーションもあり、これもまたレーション=不味いの印象に一役買っている。
なお前述の通り兵隊さん達はキャンプや基地での給食がメインであり、レーションは基本的に作戦行動でしか支給されない。
なので大体の場合レーションは余ることになる。後述する払い下げ品は多くの場合、余らせていて保存期間が過ぎてしまったものである。
WW2ではそんな余っていたレーションを(普通の食事が作れる状況下で)無理矢理食わされていたという逸話もあるので、おいしすぎて必要ではない時にも食べて無くなってしまうというのは正直よほどの事ではあるだろう。

【レーションの歴史】

レーションの歴史は「保存食」という観点から見ればかなり昔まで遡ることができるが、現代的なレーションの起源となったものは1800年代始めごろに現れた「瓶詰食品」と「缶詰」
基本的にそれまでの軍隊の糧食は現金を支給し、兵士が随行する商人から買ったり現地で調達したり、場合によっては行く先々の農村や町から食べ物を強引に徴発、場合によっては略奪をしたり、そのへんにいる動物を狩ったり……といった方法で兵士たちは空腹を満たしていた。
しかし、当時は兵士たちがや徒歩で移動する時代。兵士を効率よく動かすには画一的かつ衛生的で円滑な糧食の配給体制が必要とされていた。
当時、海外遠征などで世界を渡り歩き、軍隊における糧食の重要性をよく知っていたナポレオンが、常温で長期保存できる保存食開発を公募したのがはじまり。
名乗りを上げたニコラ・アペールによる、瓶に食品を詰めて調理して保存する「瓶詰食品」が考案されたが、結局はガラス製なので手荒に扱うと割れやすく、重たいのが難点だった。

そんな中、フランスの敵国イギリスにて、金属製の密閉した容器に食品を保存できる「缶詰」がピーター・デュランドの手によって開発され、問題を解決。
軍事面のみならず人類の「食」における革新的な発明であると同時に、軍事技術が後に民生分野でも大きく活躍する例の先駆けとも言える。
なお缶切りの発明にはそれから約半世紀も時間がかかった。それまではフタがハンダ付けされていて溶かして開けたり、ハンマーとのみで叩き割ったり銃で撃ったりしていたらしい。

その後は缶詰や保存の利く食品(クラッカーやビスケットなど)がレーションの主流となったが、アメリカの南北戦争で食されたハードタックや、日本の堅パンのように、保存性優先のあまり致命的なまでに硬すぎて食べ難い食品もあった。
また、食品の保存技術が進んだとは言え、レーションと言えどもすぐにそのまま食べれる食品ではなく、煮たり焼いたりと言った手間のかかる調理を前提とする糧食もまだまだ多く、味に関しても未だ改善が必要であった。

現代のレーションの原型となったのは、WW2前にアメリカ軍が開発したCレーションとKレーション。
缶詰や防水加工した紙パッケージの中にクラッカー、ビスケット、粉末飲料(ココアコーヒー)などを一纏めにしたこのスタイルは「持ち運びしやすく長期保存できて簡単に食べられる」というレーションに必要な要素をしっかり備えていた。他国も似たようなもので、様々な形式の保存食を一纏めにパッケージしたレーションを現場に配るようになっていった。

ただし、いざWW2が始まるとアメリカ軍だけでも「非常時でしか使わないはずのレーションを、補給の都合で毎日食べさせられて現場がウンザリする」「連食するにもメニューのバリエーションが貧弱すぎてすぐ飽きる」「兵士があまりにも忌避して食べないものだから栄養バランス崩れまくり」などの問題点が浮上したのは言うまでもない。*3

WW2が終わり、その後もメニューのバリエーション化や味・栄養・利便性の向上など世界各国のレーションは様々な改良が進んだが、戦場のテクノロジーが発展する一方でレーションは未だ従来の缶詰主体の物が殆どを占めていた。

しかし、冷戦中期以降に登場したフリーズドライとレトルト食品*4という新技術がレーションに技術革新をもたらした。地味に重たくてかさばりゴミも増える缶詰から、軽量でゴミも少なく、それでいて保存も効くこの技術でレーションの軽量化と利便性が向上。かくして、現在でも使用されているレーションの姿はここで完成を見たのである。


【各国のレーション】

レーションも食事である以上、当然世界各国にその国独自のスタイルが存在している。
その国の自然環境、気温や湿度、外交状況から想定される想定戦場、戦闘ドクトリンにおける兵士たちの運動強度などによってコンバットレーションに求められる性能は様々だし、当然ながらメニューの問題だってある。
日本人が連日パンだけ食わされたって士気を維持できないし(え?最近はそうでもない?)、イタリア人からパスタを取り上げたらクーデターすら起こされかねない。

なので基本的には「その国で日常的に食されているもの」を出すのが最も効率的で、どの国も可能な限りその実現に努めている。
戦闘糧食パッケージの中身は「お国柄」を無言のうちに、しかしかつ雄弁に語っているのだ。

  • アメリカ
現代のレーションは「MRE」となっている。
メインディッシュ、クラッカーやパンやシリアル、ジャムなどの塗り物、おやつ、粉末ジュースなど、ガムや塩など便利品が詰まったアクセサリーパックから構成されており、とりあえずこれさえあればどうにかなるという合理主義的な面を感じさせる。
人種や民族が入り乱れ、宗教も多種多様なため、メニューはわりと無難でメジャーなものが多い。ベジタリアン用メニューも充実している。
……のだが、肝心の味については「エチオピア人にも拒絶される味(Meal Rejected by Ethiopians)*5として有名。つまりメシマズ国家はやっぱりレーションもお察しということ。
MREに関しては百戦錬磨のレーション愛好家ですら「無理に調味料をふりかけて食べた」「付属のタバスコでどうにかしのいだ」「どれも茶色の食い物ばかりで見た目が最悪」と言った喫食リポートが多く見受けられるあたり大概である。

もっとも、実際は ほぼ毎年 現場の兵士の意見を汲んで内容の改善を行なっており、普通に食えるものも多いらしい。
民間に回ってくるのは古い(払い下げ品の)ものが多いという事情や、ヒーターの問題などで温い、或いは加熱できない状況で食わされる羽目になる、そもそも日本人が試食する場合はアメリカ人との嗜好の差があるなどの理由も関係しているのだろう。
ただし戦地でトイレに行く回数が増えるとまずいこともあるため 故意に食物繊維を抜いた品 なんてのもあり、
もちろん食べる兵士はそれを充分に踏まえた水分摂取や排泄をしているが、何も知らない民間人が払い下げ品を説明読まずに食って重度の便秘に苦しむなんてこともある。ある意味プロの戦士用としては合ってる

なおレーションが不評な反面、前線基地に設置されるキッチンなどのハード面は充実していてちゃんとした食事を食べる機会も多いという。
裏を返せば普通の食事を作る為の設備に力を入れていて、レーションに頼る場面が少ないが為に改善が進んでいないという見方もできる。
ちなみに近年、幾年月に渡る開発の結果ついにペパロニピザが導入されたそうな。
なんだこれ(アメリカ人のピザへの執念)は、たまげたなあ……。
払い下げや廃棄品なども多く世界に展開している軍隊らしく、MRE自体はミリタリーショップ等でもコレクション用として多く販売されたり、軍に納入しているメーカーが内容物を流用した民生用MREも出回っており、おそらく民間人が手に入れるレーションとしては最も安価でありふれた存在になっている。

アメリカでポピュラーな菓子が入っている事が多く、m&mのキャンディーでコートされたチョコレートなどはMREではお馴染み。
実はこのキャンディーコートのチョコレート自体が、「クソ暑い戦場でも美味しく食える、口の中で溶けて手に溶けないチョコを作ってくれ。簡単だろ?」というアメリカ兵の無茶振り要望を基に開発されたものだったりする。
糖衣チョコ以外にもチョコレートバーの開発にも腐心しており、アメリカ人のチョコに対する執念を感じさせなくはない。
変わり種では、他国に展開する事の多いアメリカらしく、戦闘地域の民間人や飢餓に苦しむ人達の食料支援として航空投下などで配布される「人道支援レーション」なる物も存在している。

ちなみに第二次大戦中にSPAM(塩漬け肉)缶詰を配給として配りまくり、兵士たちが食い飽きて嫌気がさしたという経緯はモンティ・パイソンのネタにされた。そのコントから迷惑なメッセージを大量に送りつける「スパム」という単語が生まれたのは有名な話。

  • カナダ
メニューが豊富。ランチバッグのような薄茶色のパッケージがちょっとお洒落。
文化的にも地理的にもアメリカとかなり近く、メニューも似ているものが多いが、寒い気候の国なのでカロリーは高め。
味に関してはアメリカのMREよりも高評価な傾向がある。食文化が似ているのにこの差よ……フランスの影響か?

  • フランス
バリエーションが豊富で、何よりやはり美味。なんたっておフランス料理の国だし!
多分、容器から出してオシャレなお皿に盛り温めて提供したら、実は軍用缶詰めだと種明かしされない限りわからないのではないか、というくらい美味しい。主食、デザートに至るまでスキが無い。
どの形式もレーションも一概に評価が高く、通常の兵士向けから、後述のハラルレーション、サバイバル用の特殊レーションに至るまで評価が高い傾向にある。
そのためか、世界各国の軍隊が共同行動をするPKO活動などでは、兵士たちの間で「レーション交換会」がよく行われるらしいが、基本的にフランスのレーションは当然というか不動の1位だそう。
また、かつての植民地だったアフリカ諸国の料理がメニューに取り入れられていたり、イスラム教の教えで食べてはならないとされている豚肉やその成分由来の添加物などを使わないといった宗教的配慮がなされていたりするレーション(ハラルレーション)もある。数少ない外国人部隊を抱える先進国ならではの配慮と言えるだろう。

ティータイムが楽しめる。そう、戦車の中でもね!
実際、戦争中は衛生的に怪しい現地の水を煮沸消毒して飲用する場面も出てくるため、お湯を飲む際に溶かす飲料粉末は多くの国が採用している。そういう副次目的もあるので、馬鹿にはできないんだとか。だがそこで意地でも紅茶なのがまさに英国面だ。
その他、プディングやビスケット等のお茶菓子の充実ぶりも特色。あと日本のカレーの起源は実はこっち。
産業革命のせいで世界に名だたるメシマズキングダムとして有名なかの国だが、意外にもレーションはそれほど悪評を受けてはいない。
詳しくはイギリス料理の項目で説明されているが、飛行機の機内食が美味しいのと同じ理屈で、ちゃんと手間とコストをかけてさえいれば相応の食事になるのがイギリス料理なのだ。

  • 日本
現代の自衛隊では民生品でもお馴染みのパックご飯+レトルトorフリーズドライのおかずという組み合わせが基本。
災害派遣で隊員が食べたり配給したりする「非常用糧食」と、演習や作戦行動で使われる「戦闘糧食Ⅱ型」の二種が令和のラインナップであり、それに加えてカロリーメイトなどの民生品を追加した「災害派遣増加食」などもある。
ご飯は白ご飯がメインだが、とり飯・牛めし・ドライカレーと言った味付け飯も多い。
赤飯もある(もち米のおかげで腹持ちがよく、結構人気があるらしい)が、災害派遣で自衛隊が活躍するようになると「こんな大変な時に赤飯を食べるなんて」という声が上がる事が懸念されたため、現在では「非常用糧食」には赤飯は存在しない。
防衛省のWEBサイトによると「戦闘糧食Ⅱ型」の方には引き続きラインナップされている模様。
現行のラインナップでは「飯パック×2、おかずパック×1~2」が基本になっている様子。肉体を酷使する隊員の事を考えるとそりゃ飯2パックは要りそうだ。

基本的には各メーカーが自衛隊仕様(梱包など細かい部分が違うらしい)にしたものを調達して組み合わせるのが慣例になっており、中身そのものは民生品と大きく差が無いとされる。
従って現職や元隊員からの実際の評価はかなりまちまちで「まずい」という直球な評価*6もちらほら。
なお米飯は性質上、完全に冷えた状態ではでんぷんがβ化しており消化に適さない。なので支給される前に予め湯煎などで温めて一定時間食べれるようになっている。
勿論時間が経ちすぎると冷えてマズく(消化できなく)なってしまうのだが……
長期間山に籠る演習中などでは、戦闘糧食とは別に自前で用意した民生品*7を携行する隊員もいるようである。

元々は缶詰タイプの戦闘糧食Ⅰ型が主流となっており「カンメシ」と呼ばれて親しまれていたが、平成に入ってからはレトルトパウチタイプの戦闘糧食Ⅱ型が普及。
陸上自衛隊では現在Ⅱ型のみ使用されており、そのⅡ型も米系の物は平成後期に入ってから旧来のレトルトタイプから民生品でもお馴染みのプラ容器と一体化したタイプに移行している。
ちなみに、日本において牛肉食を一般に広めたのは軍で支給された牛肉のしぐれ煮の缶詰とのこと。

保存食としてお馴染みの乾パンも未だに現役。
おやつや酒のつまみぐらいの扱いで、飽食の現代ではお世辞にも主食として食べるようなものとまでは言い難い代物であるが、乾パンは水分量が少ないため他の食材が凍ってしまう温度でも平常時と変わらず食えるという特徴を持つ。
これは試される大地北海道や、非常に厳しい気候の山間部を多く抱える日本の自衛隊にとってメリットが大きいので現代でも戦闘糧食として存在しているという訳である。
ただしやっぱり主食としてはイマイチな評価らしく、駐屯地では余ったものがおやつとして供されているとか……
「非常用糧食」の方には、あまり見かけない大型乾パンがラインナップされていたりする。

なお、災害時に自衛隊カレーライスを炊き出しして避難者に提供している映像をニュースで視たことがあるかもしれないが、あれは炊き出し用の食事であって自衛隊員が食べるレーションではない。
避難者からは「自衛隊の人はいつ食事をしているの?」とよく質問されるようだが、炊き出しとは別途にレーション(非常用糧食)が隊員それぞれに支給されてて、人目につかない車内などでレーションを食べているらしい。
これに関しては前述の通り、困窮している被災者の前で食事を摂ることに配慮した…というか民間企業に勤めている者だとしても 仕事中に顧客から見えるところで飯を食うのは嫌だろう 会社側だって見えないところで気兼ねなくのんびり食べてほしい だろう。
自衛隊だって同じという当然の理由である。

  • ロシア
カーシャというロシア風リゾット*8が中心。温かい食事ができるように工夫されている。
温めて食べるのが前提なので、冷めると食べられたものではなくなる牛脂をふんだんに使ったメニューが多い。パッケージ自体もレトルトではなく金属缶を多用して直接火にかけて加熱できる物が多い。また寒冷地での活動を考慮し、他国に比べ高カロリー。
2022年に勃発したロシアによるウクライナ侵攻では、レーションがウクライナ側に鹵獲されたり*9、ロシア軍陣地にこのレーションが転がっている光景が数多く見られたりした。
また、この戦争を契機に、安全な装甲車両内ではなく、危険で無防備になりがちな外に出て火を使って加熱・調理しなければいけない脆弱性*10についても議論されている。
スラヴ圏の国もロシアと同じようなメニューのレーションが多いが、それぞれ国によってメニューや形態に細かな違いがあったりする。

  • 中国
広大な土地を抱える中国軍だが、そもそも中国では冷えた飯を食べない(冷たい料理は身体に悪いと嫌う)お国柄だったことや、自力更生とかいって各軍が自給自足する体制が結構長続きした。
故に統一した戦闘糧食の研究が始まったのは実は最近のこと。
前述の通り冷えた飯は食べないという価値観故に、ヒーターには気を遣っているのが特徴。
最近では「 ドローンを使って調理された料理を前線に配達する 」という実験を行い、戦闘糧食に関わらず、食・輸送全般に関する軍事技術の研究も積極的に進めている。

  • 韓国
アジアらしく米料理がメイン。でもやっぱりキムチやコチュジャンが付属している。
ビビンバなどの御国の料理の他、カレーライスと言った日本でもお馴染みの料理もある。
比較的寒冷な地域なのでヒーターは結構研究されており、栓を引っ張るだけで加熱がスタートする方式となっており、加熱も手軽。
ちなみにレーションを自国で開発するようになったきっかけは、ベトナム戦争で アメリカ軍供与のレーションがクソ不味くて不満が多かった からだそうな。贅沢言いおって、という気持ちとまあ解らんではない、という感想を同時に抱いてしまうのは何故だろう。
発酵食品のため取り扱いの難しいキムチ(缶詰にすると発酵で膨張し缶が破裂してしまう)に関しては、試行錯誤の結果レーションとして温暖な気候でも常温で喫食できるようにする等、開発まで長い道のりがあったそうな。そんな缶詰キムチも、現在ではレトルパウチ式で提供されている。

  • 台湾
ビスケットやクラッカー、それに塗るスプレッド類、ジャーキーやキャンディと言った、加熱調理せずそのまま食べれる物が中心。
どちらかと言えばスナックの詰め合わせのような構成が中心で、大陸とは違ってちゃんと加熱して食べるメニューは非常に少ない。
元々専守防衛が中心で長距離移動を必要としない国土故に、温食(つまりちゃんとした食事)が基本で、それが用意出来ない時のための補助としての役割をレーションが担っているとの事。

  • イタリア
パスタは無論必需品。デザートも充実。味も概ね高評価。
現代のコンバットレーションとしては珍しく、気付け用に酒(ワインやグラッパなど)までが含まれている。
しかし中身は割といい加減で、例えば1つ入っていると箱には印刷されているのにフタを開けたら2つ3つある、それかそもそも入っていない……なんてことは日常茶飯事らしい。
良くも悪くもかの国らしさ全開といったところか。

  • スペイン
スペイン王室の紋章の入った緑色単色の缶詰やパッケージがイカす一品。
オイル漬けの食べ物なども多く、全体的に味の質も高い。
朝昼晩で各7つのメニューがあり、それぞれを組み合わせを変えて連食でも飽きないように工夫されている。
栄養補助のタブレット類も多い。

  • ドイツ
ソーセージのお国らしく、ソーセージやミートパテなどの肉加工食品が豊富。独特なクセがあるライ麦パンの缶詰も特徴。
缶入りのチョコレートである「ショカ・コーラ」は1935年のドイツ生まれで、後にレーションとしても採用されていた。
日本でも輸入品販売店などで買えるので、かの国の兵士の気分を味わいたいなら一番お手軽かつ安価である。
しかし カフェイン含有量が非常に高い(レッドブルの約7倍!) のでその点は注意。その強烈な覚醒効果によって戦場で重宝された。

  • ノルウェー
ロシア同様、寒い土地柄故かとにかくエネルギー補給を優先したために、一食なんと7,500kcalもある。

  • オーストラリア
英連邦の一員という事もあってか、イギリス軍のレーションと似た構成だが、レーションに袋麺が付属している事でも有名。
何より、オーストラリア特産品のヴェジマイト(クラッカーなどに塗る、しょっぱ苦い独特の風味が特徴の健康食品)がパッケージに含まれているのが特徴。

  • ブラジル
南米らしくバナナやパイナップル、グァバなどフルーティーなものや生黒砂糖などのご当地甘味が多い。
しかし主食の量はやや乏しく、それを補うためか夜食まで入っている。

などなど。

無論1国には1種類のレーションしかない、というわけではなく、だいたいは1つの軍隊でも任務内容、運動強度、気候などに合わせて様々なタイプのコンバットレーションを使い分けるのが普通。


【レーションの形態】

基本としては保存食なため、缶詰や乾燥食品、レトルトパックやフリーズドライなどといった形態を取る。
食器は別途で必要としないように、使い捨てスプーンなどをパッケージに含め、缶詰や(そのまま食べやすい形にされた)レトルトパックなどから直接食べる、という形態が多い。
先進国では環境保護の観点に加えて、現地に証拠を残さないようにする目的から、生分解性プラスチックの器やスプーンも取り入れられている。
味の飽き対策や、個人の味覚に合わせるため、調味料の小袋のや胡椒などが同封される事が多く、MREには小瓶のタバスコまで入っていた時期があった。
他にも嗜好品としてのチョコレートや飴などの菓子類や、歯磨き効果や食後の口直し用としてガムが同梱される事もある。

長時間・長距離の作戦を行う特殊部隊や、あるいはそれに類する負荷の高い状況で用いられるようなレーションには「エネルギーバーと各種補助栄養剤のみ」で構成されたものもあるが、機能性に特化しすぎており、レーションとしても異端の部類。
他にもサバイバル用のレーションという、文字通り「緊急時の非常食」としての軍用レーションも存在する。
敵地や海上に墜落したパイロット、乗艦が撃沈され漂流する海軍兵士など、極限の状況下で兵士たちを生存させるための食料であり、限界まで軽量化と高カロリー化を目的として作られた物が基本。
例えば射出座席に据え付けたり、パイロットスーツに付属するぐらいに軽量小型化されていたり、海上での漂流を見越して海水を淡水化して飲料水に変えるキットがついていたり、容器そのものを調理器具として使える用に配慮していたりと、生存の為のあらゆる手段・方法が備わっている。*11

また、持っていく場所の気候などにも考慮した特殊なものもある。
代表的な物では、アメリカ軍が採用していた寒冷地用レーション(凍結しないよう水気を含んだ物が無い、湯で戻して食べる食品が中心)や、湾岸戦争時に作られた、暑さにより溶けることのないチョコバー(「デザート(砂漠)バー」の名称で呼ばれた)などもある。

「温かい食事」というのは士気維持の上で極めて重要。
また動物の脂やβ化した炭水化物などを温めることで食べやすくする目的もあって、レトルトパックや缶詰を温める化学ヒーター、あるいは固形燃料なども同封される。利便性や補給の手間を考慮して、これらのヒーターや固形燃料は基本的に使い捨てであるケースが殆ど。
ただし前述の通り、普通に火を焚いて湯を沸かして温めるものにはまだまだ及ばない。ぬるい程度にしか加熱できず不評を買うこともしばしばあるそうだ。

先進国の個人用コンバットレーションでは、1食分か1日分を1つのパッケージにまとめて携帯しやすくするのがメジャー。前者は8時間用、後者は1日用か24時間用、等と言った表記で呼称される事が多い。1日用は内容量の問題で大型のパッケージになりがち。
分隊や小隊といった複数人数で使う事を目的として1つのパッケージとなっていることもあるが、日本で一般にレーションと言った場合このタイプは含まないことが多い。
米軍が採用しているレーションの中には50名という大人数で一度に喫食する事を想定したユニタイズド・グループ・レーション(UGR)という変わり種も存在する。

ちなみに冒頭でもちらっと触れたが、レーションとは「配給品」の意で、パッケージ内に含まれているのは必ずしも食料品だけではなく、ガム、タバコなどの嗜好品や、火を点けるためのマッチ、トイレットペーパーや髭剃り、歯ブラシなどの衛生用品、果てはなんだか危険な香りの漂うコンドームなどが同封されている*12ことも……。
もっとも、タバコは健康を害するので、レーションのパッケージにタバコを含む風習は20世紀後半(アメリカではベトナム戦争以降)から無くなっている。



【レーションを食べてみたい!】

軍隊用の食事なので、当たり前と言えばそうだが一般販売はしていない国の方が多い。
一応は食事だって重要な軍事機密だし……。

とはいえ現実的には(オンラインを含む)ミリタリーショップや、基地の周りで払い下げ品を売っている店などで割と簡単に購入できる。
そう、買うこと自体は容易い……だが問題は基本的に日本で市場に出回っているレーションは「ワケアリ品」が多く、安全性の保証はされていないということ。
アメリカ軍などでは期限が近付いたレーションを民間に払い下げているが、日本で消費者の手元に届くころには(保存が効くものが多いはずとはいえ)結構きわどい期限になっていることも少なくない。ショップでも「コレクション品」と銘打って「食べるためのものではありません、食べて何か起きても責任は取れません」としていることもよくある。

なので本当に食べてみたくても、自己責任でどうぞ。間違っても、お店の方を訴えるなんていけません。何かが混入していたり、中身が変質したりしている可能性があることも承知の上でどうぞ。

また日本の自衛隊など一部の軍隊やそれに準ずる組織では、そもそもレーションを部外秘として払い下げ禁止にしている。
日本の場合国税が使われた官公品なので払い下げは思いっきり法律に抵触してしまうことから、そういうところで入手したソレは法的にも限りなくアレなものということになってしまう。
実際に期限切れのレーションを横流しさせた事で罪に問われた事件があったり、明らかな横流し品(まだ期限が切れていない所か作りたての新品)が市場に流通しているケースもあったりする。*13

ただし「〇〇軍のレーションと同じものを食べたい!」というだけなら、実はほとんどのものが正規ルートで手に入る。
国にもよるが、大体のコンバットレーションは軍自体ではなく、軍などの依頼で普通の食品メーカーが開発・製造している。
なので各種コストを抑えるため、民生向けの市販モデルに栄養バランスや塩分、容器の保存性などのカスタマイズを施してレーションとしたり、下手するとまるっきりそのまま(パッケージさえ!)レーションとして採用したりしていることも少なくないのだ。

え、軍独自の仕様や技術とか無いの?と言わると、現代では実際のところ「あんまり無い」と言わざるを得ない。
食品に関する技術では軍よりも各食品会社の方が先んじているのは当然だし、軍人とは言え同じ人間である以上、食べるものに大差があるわけでもない。
強いて言うのであれば、肉体労働が主な兵士向けに市販品よりも僅かにカロリーを高めに作ってあるレーションもあるが、それぐらいなものである。
兵士だって一般に売っている物と近い品の方が馴染み深いし、味の面でも安心だろう。
作る側だって、「軍用」と「民生用」で生産ラインを分けなくて済めばコストカットにも役立つ。
加えて、先に述べた日常性の維持にも一役買うというメリットもある。

例えば、自衛隊で「パックメシ」とか言われる「戦闘糧食II型」はスーパーで売っているレンジか湯煎で食べられるパックのご飯と原理的には一緒だし、さらには牛大和煮やクラッカー、ハチミツスプレッドなど、民生品をそのまま転用しているものも実に多い。
そして数年前のミリメシブーム以降、メーカー側もこの流れに乗っかり始めており、「(自衛隊納品タイプと同仕様の)ミリメシモデル!」などと謳って同モデルを防災食品や保存食として堂々と売っていることも。
レーション付属のアクセサリー(使い捨てヒーターなど)もキャンプ用品として手軽に入手できたりするので、やろうと思えば軍用のレーションを民生品で再現することもたやすい。
有名なMREに至っては中身がほぼ現用のものと変わらない、防災やアウトドア用の民生用レーションもアメリカ本国で販売されている。日本でも通販で手に入ることすらある。

ただし特殊部隊向けのような極限状況用のレーションには(民生における需要が無い分野なので) 軍向けに作られた、軍専用のものもある……ただ、精強な特殊部隊の隊員ですら連食には音を上げるシロモノらしいので、一般人にはなおさらお勧めはしないが。
一説によると「嗜好品みたいに食べられると本当に必要な時に無くなっているから」という理由でワザと不味くしたらしい。
実際緊急用として一時使われていたアメリカ軍の「Dレーション」は、いわば保存性を高めたチョコバーなので平時におやつとして食べられたら困ると「茹でたジャガイモよりややましな程度の味にすること」が開発要件の中に入っていたが、
その結果めでたく「 飢えて死にそうな時でも食べるのに躊躇する 」「というか弱った時の歯で噛み切れるか怪しいほど固い」「1グラムでも荷物を軽くして行軍したいので 最優先で廃棄する 」対象となってそこそこ早く改善された。

というかDレーションは数十年前の軍用品でレシピが公開されており、チョコ・砂糖・バター・小麦のチョコレートケーキで
今手に入る材料でレシピ通り作ると どう作っても美味しいチョコケーキにしかならない。
日本人が昔食べていた白米よりマズい麦やヒエの飯を再現しようにも今では 充分おいしく品種改良された麦や穀物しか手に入らない ため
昔の不味かった食糧を再現する方がはるかに難しくなっている。

ちなみに合法的に手に入るレーションとしては、リエナクター(再現した装備や軍服を着て、昔の戦争や戦闘を再体験する歴史愛好家)向けに、かつて生産されていたレーションを再現した「リプロダクション(再生産)のレーション」なる物も存在する。
実物が用意しやすい装備と違い、賞味期限のあるレーションは用意が難しい上に食べるのは不可能なため、当時のメニュー、パッケージを再現した再生品をリエナクター向けに販売する業者やマニアが存在する。
当たり前だが軍が作った製品ではないので(海外通販が主になったり価格面などのハードルはあるが)現行の軍用レーションよりは入手性は容易い。
日本の場合は前述の通り民生品の組み合わせなのでそれを活用した「再現」という形で売られることはある。

また再三書かれていることだが、どれもカロリー高めであるため、適切な運動もなしに常食すれば肥満まっしぐらである。有名なMREも「健康上の理由から2週間以上の連食は控えるべき」と言われている。

【レーション愛好家・研究家】

ミリタリー分野において、様々なマニアや研究家がいる事は周知の通りだが、レーション分野に関しても同じ事が言える。
レーションの歴史、各国で使用されてきた様々なタイプのレーション、時期ごとに細分化されている各メニューなどを細かく調べ上げている研究家も存在しており、今日まで辿って来たレーションの歴史や形態を伝えている。

また、レーションのコレクターも存在しており、世界中から取り寄せて入手したレーションの山に囲まれながら暮らしている人たちも存在する。
当たり前だが、食べ物という劣化が著しい物品であるため、コレクション中の破損・劣化という危険性に常に悩まされており、そのへんの装備収集よりも気を遣うコレクションである事には間違いない。
値段も様々であり、古かったり生産数が希少なものほど高値で取引されており、どこかの倉庫で眠っていた期限切れレーションが、eBayなどの大手オークションサイトに出品され、マニア達がこぞって落札競争をしている。

レーション愛好家の中には、期限が切れたレーションを率先して食べてレビューするという猛者も存在しており、長い時間を超えて当時のレーションを世に伝える貴重な人柱語り部となっている。
ネット上では昔からレーションの試食レポなどをUPしている酔狂な愛好家たちも存在しているが、現在ではYouTubeなどの動画投稿サイトを中心に、映像と解説でわかりやすく試食動画をアップする人たちが主流となっている。
中にはこの2020年代に第一次世界大戦時のレーションを試食したという恐るべきチャレンジャーも存在している。ここまで来ると数年程度の賞味期限切れは誤差のようなものである。

上の章でも述べたが、基本的に期限を切れたレーションを食べるのはとても危険を伴う行為であり、自己責任である。
長年の経年劣化で味が変容している程度はまだマシで、食中毒のリスクがあり、洒落にならない菌が繁殖していれば最悪の場合、命を脅かす可能性もある。
彼らはその命を張って、今日も期限の切れたレーションを喫食してレーションの歴史を今日に伝えているのである。
良い子は絶対に真似しないように。

【Meal, Ready-to-Eat】

いくつかのアメリカ製レーション「MRE」を実食した人の声を載せる。
主な内容物、味などの感想も紹介しよう。

◇内容物
メインディッシュ、主食、飲料、副食的な菓子類など、及びアクセサリー、ヒーターで構成されている。
肥料袋のように分厚く頑丈なビニール製の外袋と、場合によっては中袋と二重に保護されている他、アクセサリー類は1つの袋にまとめて保管されている。当たり前だが食器はついていないが、袋を容器代わりにしたり、袋から直接食べれる物で構成される。
カトラリー類として茶色のやや丈夫なスプーンが付いており、これはMREスプーンとして長らく有名である。
外袋や内容物の袋には「デートコード」と呼ばれる4ケタ数字の製造年月日が記載されている。西暦の末尾1ケタと、その年の何日目に製造したかを表す3ケタの数字を合わせたもので、例として「3150」と記載されている場合は「2023年の150日目に製造されたもの」として読む事が出来る。日本と違い、賞味期限・消費期限の表示義務が無いアメリカ特有の読み方となっているので面を食らう人もいるかもしれない。
喫食できる期限は概ね製造から3~5年ほどと言われている。たとえ5年以内製造の物であってもヒーター類が使えなくなっていたり、内容物の味が変わっていたり、場合によっては喫食に適さない状態になっている物も多いので、再三言っているが「喫食は自己責任」となる。特に袋に穴が空いてたり液が漏れてたり密閉が保たれていない物を食べるのは自殺行為である。
長年、ベージュ色に近い大型のパッケージで親しまれていたが、2024年にはより小型の真空型パックになった新型MREも出回り始めている。


  • メインディッシュ
チキン・ウィズ・ヌードル、チキンブレスト、ツナ、ビーフパテ、チキン・ウィズ・ダンプリングなどなど。
ツナのように市販品をそのまま使ったと思われるカラフルなパッケージをしているものもある。
レトルトパウチに入れられていて、後述のヒーターで温めて食することができる。
が、噂の通りマズいものが多い。特に「チキン・ウィズ○○」シリーズはぐちゃぐちゃしているうえに味付けも微妙……。
とにかく味が単調でケミカルな薬品臭もキツく、日本人の口に合わない物が多いのだ。
加えてベジタリアンメニューになると、旨味が決定的に欠けているので評価はさらに厳しくなる。
最新のメニューではチリソースベースの料理の割合が多く、スパイシーな味付けと付属の調味料でそれなりに美味しく味わえる。
一方、ハズレメニューとして有名なのがオムレツぶっちゃけた話モソモソとした食感のゲ○(「○ロ食べたことあんのかよ」とか訊かないでほしい)
蔑称の通り人類であれば誰でも床に叩きつけたくなるだろう。
上の章でも述べたが、あまりに不人気なメニューは兵士たちから意見・要望を精査した上で除外される。現場の兵士たちから忌避された不人気メニューが払い下げに流れる結果、市場に出回るMREの多くがマズいと評される原因になっているのでは?という推察もある。

ちなみにレトルト食品というこもあり、基本的には煮込み系メニューが多い模様。
ピザを頑張って開発しているらしく、2019年以後に少しずつ出回り始めている、らしい。

  • 主食
クラッカー、パンなど。チーズスプレッドやジャム、ピーナッツバターも付属する。
クラッカーは固く分厚く、粉っぽい。人によっては「段ボールを齧っているみたい」と評される事も多い。真空パックで保管されているが、大抵一般人が喫食できる物は持ち運びの衝撃などで割れてる事が多い。
パンは「Wheat snack bread」と表記された、食パン型の薄く圧縮されたもの。意外とカロリーはある。
「Corn bread」と表記されたぐちゃぐちゃな粒の無いお粥状の物体が入っていたことがあったが、マズかった。
他にもメインディッシュを挟む用のトルティーヤという変わり種もメニューによっては存在する。
チーズスプレッドはかなり塩辛く、保存状態で味が左右されやすいので好みが分かれる。
また、ピーナッツバターとジャムが両方付いているが、両方とも塗りたくるのがアメリカ流*14である。ピーナッツバターは日本の物と比べて甘さが控えめで素材の味が全面に出ている。

  • 飲料
全て粉末で、ココア、レモンライムドリンク、バニラシェイク風味ドリンク、アップルティー、レモンティー、市販品のネスカフェなど。
ココア、紅茶系は普通の味だが、レモンライムドリンクやエナジードリンクなど一部はドぎつい色と味
その上砂糖はお湯ではなく熱湯でないと溶けにくい。
シェイク用のジップロック式の容器に水を注いで作るようになっているが、大抵の場合は粉がダマになってしまう事が多く、作るのに難儀する。基本的にハズレは少ない。
一部の粉末コーヒーなどは容器が存在しないため、自前で用意する必要がある。

  • 副食
チョコチップクッキー、乾燥ベリー入りオートミール・ブロック、m&m'sチョコなど。
クッキー類は総じて粉っぽいが美味しく、甘味が疲れも取ってくれるだろう。
伝統的に採用されているパウンドケーキは、甘いものはとことん甘くするアメリカらしからぬ上品な甘さとしっとりした食感で、MREの中でも至高の逸品。
しょっぱい風味の副食(ジャーキーや塩気の強いスナック類など)もあるが、基本的に既製品をそのまま流用している場合も多いのか、MREの中では当たり率が高い印象がある。
パフの入ったヌガーバー風の高カロリーエナジーバー(FIRST STRIKEバー、昔はHOOAH!バーとも呼ばれていた)も採用されているが、油断すると歯の詰め物を持って行かれそうな代物となっている。

  • アクセサリー
スプーン、塩、砂糖、小さな瓶入りタバスコ、粒ガム、ティッシュ、マッチなど。スプーン以外は全て透明なビニール袋に纏めて入っており、湿気やダメージから守られている。
味変に役立つ調味料は概ね揃っている一方で、メニューによっては付属しない調味料があったりする。
ちなみに砂糖に関しては、通常の白砂糖ではなく人工甘味料の粉末になっている場合もあるのはお国柄と言える。
ガムは必ず付属している。眠気覚まし用のカフェインが入ったガムはカフェインの過剰摂取を避けるために1日の摂取量などの注意書きがある。
付属のウェットティッシュを、戦地や演習中に応急的な銃火器の汚れ拭きに使う本職兵士もいるとか。

  • ヒーター
透明な緑の袋に入れられた、カイロ状の物体。
袋の中に少量の水を決められた分量まで入れると、化学反応が起こりレトルトを温めることができる。
メインディッシュとヒーターを束ねて温めるためのボール紙容器もついていたりと親切設計になっている。
払い下げで手に入るMREのヒーターは基本的に使用期限が過ぎていたり劣化でまともに機能しない事が多い。家で食うなら湯煎した方が早い


これらを、持っているなら迷彩柄の服を着てヘルメットを被りブーツも履き、ベランダでもいいから外に出て、器なぞ使わずに袋から直接食す。
……すると、さすがに気分が高揚してくるではないか。

なお、MREとは「Meals Ready to Eat(食べる準備ができている食品)」の略だが、味があまりにもよろしくないことから、実際に食した経験がある兵士やレーション愛好家が名付けた無駄にウィットに富んだ別称蔑称が多数ある。

■別称一覧
+ ...
「Materials Resembling Edibles(食べ物に似た物体)」
「Meals Refused by Everyone(みんなから拒否された食べ物)」
「Meals Rejected by Everyone (誰もが拒否した食べ物)」
「Mentally Retarded Edibles(知恵遅れな食べ物)」
「Meals Ready to Excrete(吐き戻す用意ができている食べ物」
「Mr.E (存在が"ミステリー")」
「Meals Rarely Edible (とても食えたものじゃない食物)」
「Meals Rejected by the Enemy (敵からも拒否された食べ物)」

◇フィクションにおいて
基本的には「大して旨くない、或いはマズい」ことが強調されている。











飯の時間だ!
追記・修正が終わったらレーション食うぞ!!

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 軍事
  • ミリメシ
  • メタルギア
  • 回復アイテム
  • GE
  • GEB
  • みんちのおにぎり
  • 食べ物
  • レーション
  • 軍隊
  • 歩兵
  • ration
  • 軍用品
  • 軍需品
  • 腹が減る項目
  • 食事
  • ご飯
  • MRE
  • 携帯食料
  • レーション
  • 命綱
  • コメント欄ログ化項目
  • 腹が減っては戦ができぬ
  • スネーク「マズすぎるっ!」

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年11月05日 19:07

*1 Aレーションが生鮮・冷蔵・冷凍食品のセットであるのに対し、Bレーションは冷蔵・冷凍施設が不十分でも準備できるよう缶詰や保存料を用いている

*2 ニトログリセリンは甘い味がするらしく、大日本帝国軍の資料によると前線に送ったダイナマイトの半分は兵士に食べられていたこともあったという。もちろん体調不良を起こすリスクがある。

*3 ただし満足に食べられている国の兵士だから言える文句で、補給もままならなかった末期日本軍ではあれだけアメリカ兵が嫌っていたアメリカ軍のレーションがご馳走として重宝された、という話もある。

*4 ちなみにレトルトもアメリカ軍が開発した、軍用目的の技術である。

*5 下記にもある通り「MRE」のもじり。なぜ「E」がエチオピアなのかというと別に味覚をバカにしているのではなく、飢饉が悩みの国で一時期有名だったためとか。

*6 隊員内でもハズレ扱いされるメニューがあったり、演習中にロクに加熱してない状態や、最悪加熱しないで固まった米や冷えたおかずそのまま食べなければいけないケースもあり、食べれたものではない状態で食べざるを得ない場合もあるとか。

*7 魚肉ソーセージや、間食として使える柿の種やナッツやチョコレート類など

*8 スラヴ圏で言うお粥で、蕎麦の実や豆などが主な材料に使われる。『艦これ』のガングートが朝8時の時報で振る舞ってくれるアレ。

*9 この鹵獲品の中に数年前に期限が切れたレーションが混じってたということで、ロシア側の管理体制がずさんだったことがバレている。

*10 装甲車内でレーションを温めようとして装甲車を炎上・全損させた事件が過去にロシア軍内であった

*11 余談だが自衛隊で採用されている救難食糧には、食べ方の説明書に「がんばれ!元気を出せ!救助は必ずやってくる!」と記載されており、遭難者に対するメンタル面での支援も考えている

*12 避妊具に関しては本来の用途以外に応用が効く事や、性的な事を想起させて生存への意欲を高める事から、サバイバルキット等にも入っている。

*13 そのような問題を受け、防衛省では支給される全てのレーションに「転売禁止」と言う表記をしている。

*14 いわゆるPB&J(ピーナッツバター&ジェリー)サンドイッチというやつで、アメリカの子供にとってはありふれた食べ物。

*15 中身はハーシーのチョコレートが4つのみの、あくまで雰囲気を味わうためのファングッズだが。

*16 項目を参照して欲しいが、提督は料理上手という設定がある。

*17 明言こそされていないが、艦娘の台詞から現実世界と同じ出来事が艦これ世界でも起きている事が示唆されており、最低でも2022年に入っていると見られている。