レーション(戦闘糧食)

登録日:2011/02/06(日) 12:35:40
更新日:2021/06/06 Sun 09:10:09
所要時間:約 8 分で読めます




レーションとは、主に軍隊で食べられる携帯食糧のことを指す。


【Ration】

そもそもレーション、つまりRation英語)とは、「期間をおいて配給される、食糧などの配給品全般」を指している。

しかし日本で単にレーションと言った場合、軍隊において、基地から離れて行動する兵員に対し支給される、個人用の野戦糧食セット(コンバットレーション)を特に指すことが多い。軍隊糧食、さらにくだけて言えば「ミリメシ」とも。
この項目ではこの戦闘糧食、コンバットレーションについて解説する。


【レーションの基本】


軍隊でも食事は普通に調理したものを摂るのが基本。対するコンバットレーションとは、その名の通り作戦行動のために基地やキャンプから離れ調理ができない環境で使うためのもので、軍人と言えどこればかり食べているわけではない。
あくまで「戦闘中/任務中の配給食」となるよう考えられたもので、それに特化された性質を持っている。


つまり

  • 作戦行動中や前線までの輸送中に腐らないように保存性
  • 行軍に便利なように、また輸送効率を高めるために携帯性
  • 警戒態勢の真っ最中!などの状況でも短時間でも食べ終われるように、即席性・簡便性
  • ハードな肉体労働を行う兵士に十分な栄養素を供給するべく、栄養面、特にカロリー

などの点を重視しているといった特徴を持つ。
……となると、次には当然「で、味は?」と聞きたくなるところだが……。

正直なところ、↑の要素をすべて満たした上にさらに味まで追求する、というのは実際問題として結構難しい。
特に技術が足りなかった昔はマズいもの揃いだった*1が、近年では技術の発展に伴い、味もだいぶ改良されてきている。

というかいかに保存性や携帯性が良くとも、味を完全に犠牲にしてしまっていては、それはそれでまた色々な意味で「マズい」
平時よりも遥かにストレスの溜まる戦場では食事は重要な娯楽だし、また兵士の心理にとって極めて重要な「日常性」を維持するためにも、人間らしい(味の)食事を摂るのはとても大事だからだ。

過去の戦史においても、配給食に対する不満が士気を下げたり、甚だしくはサボタージュや脱走、反乱まで招いたり、という事例は枚挙にいとまがない。
かつてイギリスが世界の覇権を握れたのは、彼らがメシマズに慣れすぎていてクソみたいな戦闘糧食でも平気だったからだ、という説は非常に有力


【各国のレーション】


レーションも食事である以上、当然世界各国にその国独自のスタイルが存在している。その国の自然環境、気温や湿度、外交状況から想定される想定戦場、戦闘ドクトリンにおける兵士たちの運動強度などによってコンバットレーションに求められる性能は様々だし、当然ながらメニューの問題だってある。
日本人が連日パンだけ食わされたって士気を維持できないし(え?最近はそうでもない?)、イタリア人からパスタを取り上げたらクーデターすら起こされかねない。

なので基本的には「その国で日常的に食されているもの」を出すのが最も効率的で、どの国も可能な限りその実現に努めている。


エチオピア人にも拒絶される味(Meal Rejected by Ethiopians)*2として有名。つまりメシマズ国家はやっぱりレーションもお察しということ。
人種や民族が入り乱れ、宗教も多種多様なため、メニューはわりと無難でメジャーなものが多い。ベジタリアン用メニューも充実している。
ちなみに近年、幾年月に渡る開発の結果ついにペパロニピザが導入されたそうな。なんだこれ(アメリカ人のピザへの執念)は、たまげたなあ……。

  • カナダ
メニューが豊富。
文化的にアメリカとかなり近く、メニューも似ているものが多いが、寒い気候の国なのでカロリーは高め。

  • フランス
バリエーションが豊富で、何よりやはり美味。なんたっておフランス料理の国だし!
多分、容器から出してオシャレなお皿に盛り温めて提供したら、実は軍用缶詰めだと言われない限りわからないのではないか、というくらい美味しい。主食、デザートに至るまでスキが無い。
そのためか、世界各国の軍隊が共同行動をするPKO活動などでは、兵士たちの間で「レーション交換会」がよく行われるらしいが、基本的にフランスのレーションは不動の1位だそう。
また、かつての植民地だったアフリカ諸国の料理がメニューに取り入れられていたり、イスラム教の教えで食べてはならないとされている豚肉やその成分由来の添加物などを使わないといった宗教的配慮がなされていたりするレーションもある。

  • イギリス
ティータイムが楽しめる。そう、戦車の中でもね!
お茶菓子の充実ぶりが特色。カレーもある。世界に名だたるメシマズキングダムとして有名な同国だが、意外にもレーションはそれほど悪評を受けてはいないようだ。

  • 日本
米飯関連が充実、味も高評価。
市販の食品を調達して組み合わせるのが慣例になっている。

  • ロシア
カーシャというロシア風リゾット(『艦これ』のガングートが朝8時の時報で振る舞ってくれるあれ)が中心。温かい食事ができるように工夫されている。
温めて食べるのが前提なので、冷めると食えたものではなくなる牛脂をふんだんに使ったメニューが多い。

  • 中国
自力更生といって、各軍が自給自足する体制故に、統一した戦闘糧食の研究が始まったのは実は最近のこと。
日本と同じく米主体だが、冷たい料理を嫌うお国柄*3故にヒーターには気を使っているのが特徴。

  • 韓国
やっぱりキムチが付属している。

  • イタリア
パスタは無論必需品。デザートも充実。
現代のコンバットレーションとしては珍しく、酒(ワインやグラッパなど)までが含まれている。
しかし中身は割といい加減で、1つ入っていると箱には印刷されているのにフタを開けたら2つ3つある、なんて日常茶飯事。良くも悪くもかの国らしさ全開といったところ。

  • ドイツ
ソーセージの国らしく、肉加工食品が豊富。
独特なクセがあるライ麦パンの缶詰も特徴。

  • ノルウェー
寒い国故とにかくエネルギーを補給するために、一食なんと7500kcalもある。

などなど。

無論1国には一種類のレーションしか存在していない、というわけではなく、だいたいは1つの軍隊でも任務内容、運動強度、気候、などに合わせて様々なタイプのコンバットレーションを使い分けるのが普通。


【レーションの形態】


基本としては保存食なため、缶詰や乾燥食品、レトルトパックやフリーズドライなどといった形態をとる。
食器は別途で必要としないように、使い捨てスプーンなどをパッケージに含め、缶詰や(そのまま食べやすい形にされた)レトルトパックなどから直接食べる、というの形態が多い。
先進国では環境保護、及び現地に証拠を残さないという目的で生分解性プラスチックによって器やスプーンが作られているものも存在する。

長時間・長距離の作戦を行う特殊部隊や、あるいはそれに類する負荷の高い状況で用いられるようなレーションには「エネルギーバーと各種補助栄養剤のみ」で構成されたものもあるが、機能性に特化しすぎており、レーションとしても異端の部類。

「暖かい食事」というのは士気維持の上で極めて重要で、また動物の脂やβ化した炭水化物などを温めることで食べやすくする目的もあって、レトルトパックや缶詰を温める化学ヒーター、あるいは固形燃料なども同封される。

先進国の個人用コンバットレーションでは、1食分あるいは1日分を1つのパッケージにまとめて携帯しやすくするのがメジャーである。
分隊や小隊といった複数人数で1つのパッケージとなっていることもあるが、日本で一般にレーションと言った場合このタイプは含まないことが多い。

ちなみに冒頭でもちらっと触れたが、レーションとは「配給品」の意であり、パッケージ内に含まれているのは必ずしも食料品だけではなく、タバコなどの嗜好品や、トイレットペーパーや髭剃りなどの衛生用品、なんだか危険な香りの漂うコンドームなどが同封されていることも……。


【レーションを食べてみたい!】


軍隊用の食事なので、当たり前と言えばそうだが一般販売はしていない国の方が多い。一応は食事だって重要な軍事機密だし……。

とはいえ、現実的には(オンラインを含む)ミリタリーショップや、基地の周りで払下げ品を売っている店などで割と簡単に購入できる。
……だが、基本的に日本で市場に出回っているレーションは「ワケアリ品」が多く、安全性の保証は必ずしもあるわけではない。
アメリカ軍などでは期限が近付いたレーションを民間に払い下げているが、日本で消費者の手元に届くころには結構きわどい期限になっていることも多く、ショップでも「コレクション品」として「食べるためのものではありません、食べて何か起きてもを責任は取れません」としていることが少なくない。

なので本当に食べてみたくても、自己責任でどうぞ。間違っても、お店の方を訴えるなんていけません。

また日本の自衛隊など、一部の軍隊ではそもそもレーションを部外秘として払下げ禁止にしており、この場合入手したソレは法的にも限りなくアレなものということになってしまう。
ただし「〇〇軍のレーションと同じものを食べたい!」というだけなら、実はほとんどのものが正規ルートで手に入る。
国にもよるが、大体のコンバットレーションは軍自体ではなく、軍の依頼で普通の食品メーカーが開発+製造している。
なので各種コストを抑えるため、民生向けの市販モデルに栄養バランスや塩分、容器の保存性などのカスタマイズを施してレーションとしたり、下手するとまるっきりそのまま(パッケージさえ!)レーションとして採用していることも少なくないのだ。

え、軍独自の仕様や技術とか無いの?と言わると、現代では実際のところ「あんまり無い」と言わざるを得ない。
食品に関する技術では軍よりも各食品会社の方が先んじているのは当然だし、軍人とは言え同じ人間である以上、食べるものに大差があるわけでもない。
兵士だって一般に売っている物と近い品の方が馴染み深いし、味の面でも安心だろう。

例えば、自衛隊で「パック飯」とか言われる「戦闘糧食II型」はスーパーで売っているレンジか湯煎で食べられるパックのご飯と原理的には一緒だし、さらには牛大和煮やクラッカー、ハチミツスプレッドなど、民生品をそのまま転用しているものも実に多い。
そして数年前のミリメシブーム以降、メーカー側もこの流れに乗っかり始めており、「(自衛隊納品タイプと同仕様の)ミリメシモデル!」などといって同モデルを堂々と売っていることも。

ただし特殊部隊向けのような極限状況用のレーションには(民生における需要が無い分野なので) 軍向けに作られた、軍専用のものもある……特殊部隊員ですら連食には音を上げるシロモノらしいので、お勧めはしないが。


【Meal, Ready-to-Eat】


いくつかのアメリカ製レーション「MRE」を実食した人の声を載せる。主な内容物、味などの感想を紹介しよう。

◇内容物

メインディッシュ、主食、飲料、副食的な菓子類など、アクセサリー、ヒーターで構成されている。

  • メインディッシュ
チキン・ウィズ・ヌードル、チキンブレスト、ツナ、ビーフパテ、チキン・ウィズ・ダンプリングなどなど。
ツナのように市販品をそのまま使ったと思われるカラフルなパッケージをしているものもある。
レトルトパウチに入れられていて、後述のヒーターで温めて食することができる。
が、噂の通りマズいものが多い。特にチキン・ウィズ○○シリーズシリーズはぐちゃぐちゃしてるうえに味付けも微妙……。
とにかく味が単調でケミカルな薬品臭もキツく、日本人の口に合わない物が多いのだ。加えてベジタリアンメニューになると、旨味が決定的に欠けているので評価はさらに厳しくなる。
最新のメニューではチリソースベースの料理の割合が多く、スパイシーな味付けと付属の調味料でそれなりに美味しく味わえる。
ハズレメニューとして有名なのがオムレツ。ぶっちゃけた話モソモソとした食感のゲ○(○ロ食べたことあんのかよ、とか訊かないでほしい)。蔑称の通り人類であれば誰でも床に叩きつけたくなるだろう。

  • 主食
クラッカー、パンなど。チーズスプレッドやジャム、ピーナッツバターも付属する。
クラッカーは固く分厚く、粉っぽい。パンは「Wheat snack bread」と表記された、食パン型の薄く圧縮されたもの。意外とカロリーはある。
「Corn bread」と表記されたぐちゃぐちゃな粒の無いお粥状の物体が入っていたことがあったが、マズかった。
チーズスプレッドはかなり塩辛く、保存状態で味が左右されやすいので好みが分かれる。
また、ピーナッツバターとジャムが両方付いているが、両方とも塗りたくるのがアメリカ流*4である。

  • 飲料
全て粉末で、ココア、レモンライムドリンク、バニラシェイク風味ドリンク、アップルティー、レモンティー、市販品のネスカフェなど。
ココア、紅茶系は普通の味だが、レモンライムドリンクやエナジードリンクなど一部はドぎつい色と味
その上砂糖はお湯じゃないと溶けにくい。

  • 副食
チョコチップクッキー、乾燥ベリー入りオートミール・ブロック、m&m'sチョコなど。
クッキー類は総じて粉っぽいが美味しく、甘味が疲れもとってくれるだろう。
伝統的に採用されているパウンドケーキは、甘いものはとことん甘くするアメリカらしからぬ上品な甘さとしっとりした食感で、MREの中でも至極の逸品。

  • アクセサリー
スプーン、、砂糖、小さな瓶入りタバスコ、粒ガム、ティッシュ、マッチなど。
ガムは必ず付属している。眠気覚まし用のカフェインが入ったガムは1日の摂取量などが注意書きされている。

  • ヒーター
透明な緑の袋に入れられた、カイロ状の物体。
袋の中に少量の水とレトルトパウチを入れると、化学反応が起こりレトルトを温めることができる。

これらを、持っているなら迷彩服を着て、ベランダでもいいから外に出て、器なぞ使わずに袋から直接食す……すると、さすがに気分が高揚してくるではないか。

なお、MREとは「Meals Ready to Eat(食べる準備ができている食品)」の略だが、味があまりよろしくないことから「Materials Resembling Edibles(食べ物に似た物体)」、「Meals Refused by Everyone(みんなから拒否された食べ物)」「Mentally Retarded Edibles(知恵遅れな食べ物)」等々、無駄にウィットに富んだ蔑称が多数ある。

◇フィクションにおいて





飯の時間だ!
追記・修正が終わったらレーション食うぞ!!

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2021年06月06日 09:10

*1 「あまり美味すぎると必要ない時にも食べてしまう」という理由で意図的に味を落としたものまで存在した。

*2 下記にもある通り「MRE」のもじり。なぜエチオピアなのかというと飢饉で有名な時期があったからとか。

*3 「冷たい料理は身体に悪い」とする価値観が根強いようだ。

*4 いわゆるPB&J(ピーナッツバター&ジェリー)サンドイッチというやつで、アメリカの子供にとってはありふれた食べ物。