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*G-SAVIOUR 【じーせいばー】 |ジャンル|3Dシューティング|&amazon(B000069RUA)| |対応機種|プレイステーション2|~| |発売・開発元|サンライズインタラクティブ|~| |発売日|2000年9月14日|~| |定価|7,800円|~| |判定|BGCOLOR(lightsalmon):''クソゲー''|~| |ポイント|PS2初のガンダムゲー&br()映像偏重&br()攻撃は最大の防御なり&br()&bold(){ある意味黒歴史}|~| |>|>|CENTER:''[[ガンダムゲームリンク>ガンダムシリーズ]]''| //ポイントの黒歴史は変えるべきでない。この作品の象徴的なネタ ---- #contents(fromhere) ---- **概要  PS2初のガンダムゲーム。発売元は当時バンダイの子会社だったサンライズインタラクティブで、サンライズの子会社なので系統的にはいわゆる孫会社でもある。開発も同社が行っているが、アトリエ彩((模型の原型や3DCGを手掛ける会社で、『サンライズ英雄譚』において同社が作った模型から3DCGを製作するといったことも行っていた。2013年4月に倒産。))も協力している。~  登場人物は実写真で、英語によるフルボイス。これは本作が、ハリウッドの実写版ガンダム『G-SAVIOUR』の1年後を描いた外伝的位置づけの作品であるため。以下、映画版については二重かぎ括弧を用いる。 > 宇宙世紀223年、プレイヤーは世界の調停者『イルミナーティ』のパイロット、リード・フォックスとなりプロジェクトレイブン阻止のために出撃する。しかし、G-SAVIOURはレイブンの圧倒的な力の前に敗北し大破、リードも負傷してしまう。~  数週間後、怪我から回復したリードは、量産機J-SAVIOURの予備機で良いから出撃させてほしいと望む。それに対して指令は、リードの乗機はあくまでG-SAVIOURであるとして、セイバーチームによって修理と徹底的な改修を施された「G3-SAVIOUR」を与えるのだった。 **特徴 -ゲームとしてはターゲット、射撃、撃破、進行というオーソドックスなシューティングゲーム。 --雑魚は防御されなければ一撃。ボス戦は耐久がある。 -メインウェポンは弾数無制限、近接攻撃は距離で自動的に選択される。スーパーウェポンはG3-セイバーのみに存在し、タイプによって異なる。 -サーカスモーションアタック(SMA)という自動攻撃が存在。 --ボタン一つで発動し、周囲に弾をまきちらしながら前に進む。発動中は無敵。シューティングによくある必殺技のようなもの。 ---ゲームとしてはこういった「画像の迫力」を謳い文句にしている。 -ステージクリア時、残った耐久、メインウェポンの命中率、撃破率でランクが決まる --高難易度をクリアしたり、高いランクを得ると隠し要素がアンロックされる。 -一定時間ホバーをし続けるとオーバーヒートするというプロペラントの仕様、シールドの仕様、緊急回避、クリアのランク制度とそれに伴うアンロックなど、その後のガンダム系アクションゲームと比べても基礎的で無難な仕様が多い。 **評価点 -美麗な3D。PS2最初期の作品ではあるが映像的には中期頃の作品と比べても大きくは遜色ない。 --機体の線はかなり多めだが、よく表現している。ステージも初期作品としてはオブジェクト等良く作ってある。 --ただし、中後期のものと比べるとジャギーがかなり目立つ。またテクスチャーの色みが若干チープ。CG映画用に作られた線の多い機体を表現するためにアンチエイリアス等を妥協した感がある。 ---ただし最初からアンチエイリアスを使っていないゲームもPS2初期作品には多数存在しており、これも同様の可能性がある。また、サンライズインタラクティブは1998年に設立された歴史の浅い会社であるため、省容量で綺麗に見せるノウハウが不足していた可能性はある。 ---それでも一部処理落ちが発生する。ただし難易度HARDで敵の数が極端に多く写りこんだ場合くらいであり、問題点となるほどのものではない。 -宇宙世紀に基礎を置いたステージが複数登場。 --0079年に落着したコロニー、エンジェル・ハイロゥ、キリマンジャロ基地と、旧作品の遺構がステージとして登場する ---ファンサービスともいえる一方、原作ではバラバラになったのになぜか原形をとどめているエンジェル・ハイロゥ、150年経過しても崩落していないスペースコロニーに、その内部で一年戦争時代のMSの残骸が見られたりと、突っ込みどころは多い。 -J-SAVIOURという量産機や、『G-SAVIOUR』本編ではちょっと登場しただけの地上モードも使用可能。 -音楽は良質。ただし戦場にしては透き通った音を多用したものが多く、ゲームにマッチしているかは意見が分かれる。 **問題点 ***ゲームコンセプトの問題 -実質的な疑似3Dゲーム。というのも&bold(){ジャンプができない}。よって2次元機動のみ。 -延々と水平角に弾を打つだけの固定砲台、まっすぐ飛ぶだけのガトリングなど非常に地味なものがある。くるぶし程度の高さのバリケードさえ超えられず引っかかる。 --飛べないガンダムゲーは他に『ジオニックフロント 機動戦士ガンダム0079』があるが、こちらはそもそもアクションより戦術を重視したゲームであり、そしてヘリ程度の飛行物体は登場する。 ---本作にはヘリなども登場せず、かろうじてMSの頭と同じくらいの高さに浮いている砲台がある程度。 --宇宙世紀200年代ということもあり、ムービーでは自機も味方の増援も敵も普通に飛行しているのでなおさら違和感は強い。 ---特にラスボスの「レイブン」はあんまりな仕様。 #region(ラスボスについて) -「レイブン」は可変MSで、ラスボスは3連戦。MS形態を2回撃破後にMA形態で戦闘になる。 --MA形態での攻撃はと言えば「突っ込んでくる」だけ。『Ζ』最終話のウェイブライダー突撃のような攻撃を延々と仕掛けてくる敵を避けながらチマチマ削るのは、もはやMS戦というより闘牛である。 ---もっとも、実際に闘牛のような立ち回りをしてもまともな戦いにはならないので、下記のバグを利用するかSMAでゴリ押しで終わらせるのが速かったりする。 ---MA形態なのに地べたすれすれを飛んで牛のごとく突っ込んでくる姿は結構シュールではある。 --この戦闘にはバグが存在しており、戦闘開始直後に右ステップを1回行うとレイブンが自機の周りを延々と周回するだけになる。~ 自機が動かない限り永久に回り続け、敵は明後日の方向に弾を撒き散らすだけになるので、あとは撃ち続ければそのうち終わる。 ---腐ってもPS2レベルのシューティングでこういった致命的なバグが発見されるのは珍しいが、そもそも開始前からステップを入力して即回避しないと開始直後に撃破されるため、初手がかなり限られている。なので発見されたバグ、もとい攻略方法といえる。 //これバグなの? //バグと解釈するしかないかと。ダメージを与えてもミズスマシの如く延々と回り続けるので(その際、関係ない方向に弾をまきちらしていることから、AIがこちらを見失ってる可能性も)、AIの思考に問題があると思われる。 #endregion -ステージ数は全8戦とやや少なく、内容は薄い。 //内容的には「やや」どまり。STとしては極端に少ないとは言えない。 --ただ移動して敵を倒して進んでいくだけの単調なステージしかない。8つ全てが「最深部に到達してボスを倒す」というタイプのミッションで、その内の2ミッションには時間制限付きという程度の違いしかなく、バリエーションに乏しい。 -自機として使用可能な機体も決して多いとは言えず、ストーリーに登場する4機+隠し要素の2機しかない((G-SAVIOUR 宇宙モードとその地上モード、G3-SAVIOURとそのバリエーション2種、そして量産機J-SAVIOURの計6種。))。 -移動と視点変更について操作周りが微妙。左スティックで移動と旋回、右スティックで視点移動と操作にやや癖がある。 --ゲーム画面を見ての通り照準がなく、レティクルも存在しない。実際のところ細かい照準はつける意味がなく、画面内に収まると勝手にターゲットロックが働くという、シューティングとしては微妙な仕様。 --加えて、左スティック左右の入力が、歩行時は旋回、ホバー時は横移動となっている。歩行時は横移動できず、ホバー時は旋回できないうえ、しかも障害物に当たると勝手に旋回しだす。なお、歩行時は横移動の代わりにステップ移動があるが、方向キー+L2という微妙なキー設定。 ---キーコンフィグはできるものの、どちらかといえばキー配置の問題ではない。 --また、キー2,3ではライフルの上下という動作があるが意味不明。動かすとライフルを上下に撃つことができ、ロックオンキーを押すまで自動ロックが働かなくなる。しかし前述の通り照準に当たるものがないため、ロックしなければ結局当たらない。視点が上向きになるわけでもなく、謎仕様としか評価できない。 ***ゲームバランスの問題点 -雑魚が防御されなければ一撃なのは好悪あるとして、ボスは硬いだけで単調な敵が多い。 --敵AIが貧弱で、ただ弾をまきちらすだけの敵が殆ど。ボスも同様。自分も敵も、立ち止まれば当たるが平行に動いていれば当たらない。偏差射撃も何もない。 ---難易度が上がっても同様で、敵の数とまきちらす弾が増えるだけ。 -雑魚敵の攻撃でも2,3発食らえば撃破される鬼仕様。一方でビームシールドさえ構えていれば前方からのダメージは0になる。シールドは被弾するとゲージが削れていくが、使用をやめれば回復する。 --シールドなしで攻撃を食らうとかなり大きな隙が生じる。無敵時間も短いため、1発当たったら2発3発と立て続けに攻撃を受けて、一瞬でスクラップになる事もしばしば。 ---この仕様上、「シールドを貼り続けて削れたら後ろに引いて回復し、敵を1体ずつチマチマ倒してから進む」というのが鉄板。というかそうしないと一瞬で死ぬ。 ---高ランクを取るには1発の被弾も許されない。どんなに命中率を上げて撃破率を高めても、一発食らえば全て水泡に帰す。シビアというより理不尽。 --実は本作で一番怖いのは敵MSではなく&bold(){榴弾砲}。一度に複数発飛んでくる上、爆風でダメージ範囲が広いため回避が難しく、食らった場合シールドを貫通するほどの威力を持つためである。 ---HARDモードはこの榴弾砲の位置を覚えるゲーム。 -機体はどれもこれも没個性。スーパーウェポンはG3-SAVIOURの3種類にしかなく、ほか3機はただのパラメーター差があるだけ。耐久は前述の通りなので意味をなさず、足の速さも接地していたらカニ歩きできないため意味がなく、機体性能の強さはホバーの長さが全てという状況。 --スペシャルウェポンも個性を見いだせたとは言い難い。 --その中でもG3-SAVIOUR 強行型がホバー無制限等で強すぎるため、他の機体がいらない。隠し要素も機体レベルで関与するのは、G-SAVIOUR 宇宙モードでHARDモードをクリアをすると出現する、G-SAVIOUR 地上モードだけ。 ---ちなみにそれ以外の隠し要素はCGが見れるようになるだけである。 -近接攻撃は地雷。 --歩行状態で敵と一定の距離になると勝手に切り替わる。周りに他の敵がいようが、&bold(){相手が機雷}だろうが関係ない。 ---ホバー時には近接攻撃は出ないため、敵に近付くときはホバーにして近接攻撃を出さない方が有効という有様。 --繰り出しも遅く、&bold(){命綱のシールドは近接攻撃時には消える}。 ---威力は高いのだが&bold(){そもそも雑魚は一撃}なので意味がない。一方ボスはかなりの回数当てても死なない。 ---こちらが敵の近接攻撃を食らえば一瞬で死ぬので、ハイリスクローリターン。はっきり言って、ない方がマシなレベルである。 -サーカスモーションアタックも地雷に近い。 --弾を撒き散らしながら突進するのだが両脇の攻撃範囲が狭く、雑魚相手だと取りこぼしがかなり出る。そのため無敵が切れた途端後ろから撃たれて…というケースが多い。 --一応、前述のラスボス戦でバグを使わない場合ならばそれなり役に立ち、うまく壁際にはめて3連発すればそのまま撃破できる。 -全体的に演出が貧弱。質はそこまで悪くないのだがバリエーションが著しく乏しい。 --攻撃が命中した雑魚敵は凍りついたようにピタリと固まる。爆風で倒そうがビームで貫こうが一切変わらない。倒れたりといったモーションもなくただ爆発する。 --近接攻撃の場合、演出的には胴から敵を真っ二つにする。雑魚の場合上半身がちゃんと崩れる等演出は細かいのだが、この1種類しかない。 --自機とボスがダメージを受けた場合も、モーションはのけぞるだけ。ダウン等は一切なく、のけぞり姿勢も方向で若干差があるだけ。 ---なお、序盤のボスはのけぞり時の隙が大きく、適当な距離から撃ちまくれば相手はのけぞり続けてそのまま勝てるというお粗末さ。 ***ストーリー関連の問題点 -本作のストーリーは、親作品『G-SAVIOUR』の世界観を下敷きにしているのだが、その親作品の出来が悪いため(余談参照)結果として没入感に欠けている。それに加え、単体作品としても全体的な構成が悪く、矛盾点や突っ込みどころが多い。 --2回もクーデターを起こされる東京。そのたびに捕まるサイド1使節団。 --主役機はすでに量産機に性能で後れを取っている。それに重ねてトラブルが起こっているという状況にもかかわらずそのまま出撃。 --1年前にガーノー提督は死んでいるのにその腹心というバイス准将。 --「プロジェクトレイブン」が一体何を目指していたのか説明不足。 #region(以下ネタバレ) -最終戦にて、レイブンはMW(モビルウェポン。無人MS)であり、それを動かしていた「ライシス」はレイスの人格をコピーしたAIらしいことが判明する。 --レイスは主人公リードの教官時代の教え子で、友と呼べる存在であるとリードは劇中で言う。またMWの可能性にも言及していた、とリードは述べている。 --MWの実用化はすでに完了しており((『G-SAVIOUR』本編ですでに実戦投入されている。もっとも、味方であるガーノー提督を敵と誤認して撃ち落としているが…。))、自我に近い物を持つ完全自立式のMWが目標であるとしても、そのあたりは一切語られないために想像する以外にない。 --そもそも実態や目標を把握せずに阻止に動いていたとしたら間抜け以外の何物でもないのだが、どうやらベン指令さえ把握していない。 -レイスの位置づけも完全には謎のまま。「自発的にコピーを開発したのち不審な死を遂げた」のか「自発的にコピーしたうえ、記録上死んだことにして雲隠れした」のか「勝手に人格を使われた挙句消された」のかではそれぞれ大きな差があるのだが、どれとでも取れる状態になっている。 --少なくともリードは1つ目と取っている節がある。しかし最終ステージ前のベンとアサカのやり取りからはそれ以外の可能性も強く疑わせる。 -ライシス率いる「グレムリーシープ」の副隊長リチャード・ライト(ミッション7ボス)の言動も不可解。ライシスがただの機械であるとしたら、その地位を狙ったり実力を認めたうえで「あの方」とまで言うのは理解しがたく、立場を考えればライシスが機械であるということを知らないと言うのはあまりに不自然。 --もっとも妥当なのは、ライト含め「グレムリーシープ」全体がMWであるということだが、劇中では一切語られない以上憶測でしかない。 -最後の「Gセイバーの物語は終わらない」というメッセージも含めて、続編の構想が窺われる。しかし主役機のG-SAVIOURはすでに喪失してしまっており、仮に同型機があるとしても前述の通り型落ちなのに、ここからどう展開するのかまじめに考えていたのかは甚だ疑問である。 #endregion -現在ではネット用語として一般名詞化している「黒歴史」だが、初出である『∀ガンダム』での定義は「過去の宇宙戦争の歴史」(≒なかったことにしたいもの)であるのを踏まえれば、''『G-SAVIOUR』は本当の意味で「黒歴史」と言える。'' --なお、『∀ガンダム』は偶然にも本作の発売と同時期にテレビ放送されていたものである。 ***そのほか細かい問題点 -ゲーム内も説明書も全体の校正が不十分。 --説明書の機体紹介で、他は「である調」なのにJ-SAVIOURだけ「ですます調」になっている。 ---操作等も「ですます調」なので、『機体紹介だけ「である調」』と見るのが妥当かもしれない。 --「宇宙世紀」についてゲームのオープニング映像では“Space Century(S.C.)”になっているが、ゲーム本編のボイスや映像特典では“Universal Century”となっており全体的に不統一。 --G-SAVIOURのモード呼称について、ゲーム内字幕では「宇宙モード」、説明書では「宇宙用モード」と一致しない。ちなみにガンプラでは「無重力戦仕様」と、全体として“SPACE MODE”の訳語が統一されていない。 ---地上モードも同様で、英語“TERRAIN MODE”の訳が一定しない。ゲーム内では「地上モード」だが「重力下モード」などの訳も存在しており、ガンプラの表記に従えば「重力戦仕様」あるいは「陸戦仕様」とも訳せる。 --サーカスモーションアタックについて、ゲーム内のコンフィグなどは英語のままなので“C.M.A(Circus motion attack)”なのだが、説明書などでは“SMA”が使われている。全個所そうなっていることから校正ミスというより、“sakasu”のSにわざわざしたらしい。 //-近接攻撃時のビームサーベルのモーション、エフェクトが『[[アーマード・コア]]』のブレードのそれと全く同じ。 **総評  PS2のグラフィックス性能とCGの質に頼り切った作品であり、ゲームとしての面白さやストーリー性に欠ける出来である。バグ等はほぼなく仕様通りに完成しているにもかかわらずの出来であり、ゲームコンセプト自体が失敗している。~  そもそも、この「敵を一発で倒しつつ一本道を進んでボスを倒す」というコンセプトはSFC時代やアーケードのシューティングにおける定番であり、それを3D作品に持ち込んだという点ですでに失敗している。なお、クソゲーである点は疑いないが、映像を見るための代物と割り切ればほんの少し楽しめる部分はある、というレベルである。  『G-SAVIOUR』という作品自体、後の事ばかり考えて大失敗したと言える。肝心の映画は不評、ガンプラはG-SAVIOUR 無重力戦仕様が出たきり、そしてゲームの出来は良くない、その後の広がりもない、というガンダムシリーズの黒歴史。&bold(){公式サイトがすでに消滅}((http://www.gundamofficial.com/www_gs/。インターネットアーカイブには残っている。それによれば2003年というかなり早期に消滅している。))という状況は伊達ではない。 ---- //(2017/11/08)映画と商品展開に関する記述を余談として分離。 **余談 ***映画『G-SAVIOUR』について -映画『G-SAVIOUR』はハリウッドのCG技術を駆使して造られた特撮作品で、ガンダムの映像作品としては現時点では唯一の実写である。製作費は10億円。 --舞台は宇宙世紀222年。U.C.世界では最も先の年代にあたる。 --CG映像は綺麗なものの、従来のガンダムからあまりに乖離した上に理解しにくい世界観、視聴者置いてきぼりのストーリー展開、一向に起こらないMS戦に、主役機の初出撃は母艦にぶつかりそうな''デブリの破壊''、ようやく起こった戦闘は全体的にスピードが遅い上にビームサーベルの斬り合いで下半身が動かない等ともっさり気味で違和感が強く、そして最後は尻切れトンボと、出来は「2時間版トレーラー」というような代物。 ---なお、小惑星の破壊のような「デブリ回避」((作品によって小規模戦闘だったりする。安上がりに場をつなげるためであるのは変わらない。))はハリウッドSF作品の定番である。一番金がかかるCG戦闘を最後まで引っ張る手法も低予算映画で多用される手法。最後が民主主義を称揚する演説で終わるのもアメリカ映画の典型的なもの((だからと言って必ずしもクソとは限らないが。この典型的な筋書きを全部踏襲して、かつ大ヒットしたものとしては『スター・ウォーズ』第1作がある。))であるが、「ガンダムってそういう話だっけ?」という感想だらけになったのは言うまでもない((宇宙に出た者と地球に残った者の血みどろの争いがガンダムの主要なプロットであり、「民主政体になればどの国も幸せ」的なアメリカンな楽観主義とは無縁。))。この辺は海外のファンも同様らしい…。 //↑正確性に疑問。「「デブリ回避」はハリウッドSF作品の定番」「一番金がかかるCG戦闘を最後まで引っ張る手法も低予算映画でよくやる手法」「最後が民主主義を称揚する演説で終わるのもアメリカ映画の典型的なもの」。本当か? //ハリウッド作品を知っていれば本当か?なんて疑問がわかないはず。SWに限らず、金をかけた作品(たとえばインディペンデンスデイ)ですらこの筋のタイプはハリウッド系に山ほどある。ネタ違いなので列挙は控える。 ---セットや衣装はかなりチープ((地球議会軍の制服は『スターシップ・トゥルーパーズ』のお下がり。いくら同じ地球連邦軍といってもあんまりである。さらに戦闘服は1999年映画『Wing Commander』のお下がり。))で、MSコクピット(実写セット)も貧相な計器がゴテゴテ置かれていて全天周モニターですらなく、MSらしさが全くない。CG部分との落差は擁護しようがなく、全体の質を泥沼に引っ張っり込んでいる。 -それ以前の世界とを繋ぐような設定を作っていたり、終盤に少しだけ登場するIセイバー、及び陸戦仕様と、その後の展開を意識した造りがなされている。しかし肝心の映画がそのためのトレーラー化していては…。 --そもそも、当初『G-SAVIOUR』は宇宙世紀は宇宙世紀でも「Space Century(S.C.)」という別世界という設定だった。それが後付けでユニバーサルセンチュリー(U.C.)に組み込まれたという経緯がある。ゲームでもこの混乱を引きずっているのは先述の通り。 ---それでいて宇宙世紀の公式年表からは省かれているというあんまりな扱いをされている。 --短い戦闘時間の割に登場する機体の種類が多すぎ、視聴者が違いを理解できる限界を超えている。また全般的にそれらの説明がない。「ガイア」方が使う旧式MS「フリーダム」もバリエーションが細かく描き分けられているのだが、多くは認識する前に画面から消えていく。 ***G-SAVIOURのその後 -ガンプラの展開も失敗に終わっており、販売されたのは「G-SAVIOUR 無重力戦仕様」だけであった。 --一応、他のバリエーションも出すつもりで設計はなされていたようである((キット割で素体と無重力戦仕様のパーツがある程度別ランナーに配置され、加えて脚部やリアスカートには明らかに重力戦仕様向けと思しきハードポイントがある))。 --キット自体は腰部スラスターなど大型部品の保持力が若干弱い以外は良好な出来。数年来再販がかかっていないため新品は入手困難であったが、下記の『ガンダムビルドファイターズ』に合わせてか2013年11月に再販が行われていた。興味があれば、機会を見て購入してみるのもいいだろう。 -その後は他のガンダム作品やメディアでの展開が一切なく、一部のファンの間では「アメリカとの間で版権の問題があるのでは」「存在を完全抹消されたのでは」とまで言われていた…が、アニメ『ガンダムビルドファイターズ』にて''13年ぶりに''(かつ初の2Dアニメで)出演を果たす。 -以降はTCGの『ガンダムウォー ネグザ』でカード化したり((ただし、「映画G-SAVIOURのMS」ではなく「ビルドファイターズに登場したガンプラ」という扱いでのカード化。))、ガンダム関連の雑誌やイベントでも紹介されるようになったりと、徐々に日の目を浴びるようになってきている。もっとも、宇宙世紀の公式年表において記載の復活は果たせていないが。 -そもそも、宇宙世紀における外伝人気は一年戦争(ファースト)~第二次ネオジオン抗争(逆シャア)に集中しており、それ以降の『F91』や『V』ですらほとんど外伝が無い有様なので、それらよりさらに先の時代である本作が日の目を浴びる可能性はほぼ無いと言える状態であった。 --しかし、2016年から連載が開始された『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』がそれまで描かれていなかった宇宙世紀169年を舞台にしており、本作の世界観を匂わせる設定も見られるため、本作のファンも含めて注目を集めている。 -ガンダムシリーズの実写化は本作以降長らく行われなかったが、2018年に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督による映画『レディープレイヤー1』にてゲスト出演の形ではあるが久々にガンダム自体が実写映画に登場する事になった。 --一応『レディープレイヤー1』より前に公開された『パシフィックリム・アップライジング』でもユニコーンらしきガンダムがカメオ出演している。EDロールでもサンライズがスペシャルサンクスとして名を連ねている。 //(2018/02/15)開発元に関する記述を余談に移動 ***その他 -発売・開発元のサンライズインタラクティブは名前の通りサンライズの子会社で、版権や映像技術には強みがあったが、他社はもちろん、ガンダム系アクションゲームを多く手掛けていたベック(現:B.B.スタジオ)系統の作品と比べても技術力不足が目立つ((当時はこのほか『サンライズ英雄譚』『ハロボッツ』シリーズなど多様な版権作品を集めた作品を作っていた。本作に限らず、同社が出したゲームは版権頼りで、音楽と映像以外の要素、特にゲーム性やストーリー性に難のある作品が多い。元々のスタッフがゲーム屋というよりアニメ屋であるためだろうか。))。更にこの会社は、後の[[サンライズ ワールド ウォー from サンライズ英雄譚]]でも似たようなことで失敗している。
*G-SAVIOUR 【じーせいばー】 |ジャンル|3Dシューティング|&amazon(B000069RUA)| |対応機種|プレイステーション2|~| |発売・開発元|サンライズインタラクティブ|~| |発売日|2000年9月14日|~| |定価|7,800円|~| |判定|BGCOLOR(lightsalmon):''クソゲー''|~| |ポイント|PS2初のガンダムゲー&br()映像偏重&br()攻撃は最大の防御なり&br()&bold(){ある意味黒歴史}|~| |>|>|CENTER:''[[ガンダムゲームリンク>ガンダムシリーズ]]''| //ポイントの黒歴史は変えるべきでない。この作品の象徴的なネタ ---- #contents(fromhere) ---- **概要  PS2初のガンダムゲーム。発売元は当時バンダイの子会社だったサンライズインタラクティブで、サンライズの子会社なので系統的にはいわゆる孫会社でもある。開発も同社が行っているが、アトリエ彩((模型の原型や3DCGを手掛ける会社で、『サンライズ英雄譚』において同社が作った模型から3DCGを製作するといったことも行っていた。2013年4月に倒産。))も協力している。~  登場人物は実写真で、英語によるフルボイス。これは本作が、ハリウッドの実写版ガンダム『G-SAVIOUR』の1年後を描いた外伝的位置づけの作品であるため。以下、映画版については二重かぎ括弧を用いる。 > 宇宙世紀223年、プレイヤーは世界の調停者『イルミナーティ』のパイロット、リード・フォックスとなりプロジェクトレイブン阻止のために出撃する。しかし、「G-SAVIOUR」はレイブンの圧倒的な力の前に敗北し大破、リードも負傷してしまう。~  数週間後、怪我から回復したリードは、量産機J-SAVIOURの予備機で良いから出撃させてほしいと望む。それに対して指令は、リードの乗機はあくまでG-SAVIOURであるとして、セイバーチームによって修理と徹底的な改修を施された「G3-SAVIOUR」を与えるのだった。 **特徴 -ゲームとしてはターゲット、射撃、撃破、進行というオーソドックスなシューティングゲーム。 --雑魚は防御されなければ一撃。ボス戦は耐久がある。 -メインウェポンは弾数無制限、近接攻撃は距離で自動的に選択される。スーパーウェポンはG3-SAVIOURにのみ存在し、各モードによって攻撃内容が異なる。 -サーカスモーションアタック(SMA)という自動攻撃が存在。 --ボタン一つで発動し、周囲に弾を撒き散らしながら前に進む。回数制限はあるものの発動中は無敵であり、シューティングによくあるボムや必殺技のようなものである。 ---ゲームとしてはこういった「画像の迫力」を謳い文句にしている。 -ステージクリア時、残った耐久、メインウェポンの命中率、撃破率でランクが決まる --高難易度をクリアしたり、高いランクを得ると隠し要素がアンロックされる。 -一定時間ホバーをし続けるとオーバーヒートするというプロペラントの仕様、シールドの仕様、緊急回避、クリアのランク制度とそれに伴うアンロックなど、その後のガンダム系アクションゲームと比べても基礎的で無難な仕様が多い。 **評価点 -美麗な3D。PS2最初期の作品ではあるが映像的には中期頃の作品と比べても大きくは遜色ない。 --機体の線はかなり多めだが、よく表現している。ステージも初期作品としてはオブジェクト等良く作ってある。 --ただし、中後期のものと比べるとジャギーがかなり目立つ。またテクスチャーの色みが若干チープ。CG映画用に作られた線の多い機体を表現するためにアンチエイリアス等を妥協した感がある。 ---ただし最初からアンチエイリアスを使っていないゲームもPS2初期作品には多数存在しており、これも同様の可能性がある。また、サンライズインタラクティブは1998年に設立された歴史の浅い会社であるため、省容量で綺麗に見せるノウハウが不足していた可能性はある。 ---それでも一部処理落ちが発生する。ただし難易度HARDで敵の数が極端に多く写りこんだ場合くらいであり、問題点となるほどのものではない。 -宇宙世紀に基礎を置いたステージが複数登場。 --0079年に落着したコロニー、エンジェル・ハイロゥ、キリマンジャロ基地と、旧作品の遺構がステージとして登場する ---ファンサービスともいえる一方、原作ではバラバラになったのになぜか原形をとどめているエンジェル・ハイロゥ、150年経過しても崩落していないスペースコロニーに、その内部で一年戦争時代のMSの残骸が見られたりと、突っ込みどころは多い。 -音楽は良質。ただし戦場にしては透き通った音を多用したものが多く、ゲームにマッチしているかは意見が分かれる。 **問題点 ***ゲームコンセプトの問題 -実質的な疑似3Dゲーム。というのも&bold(){ジャンプができない}。よって2次元機動のみ。 -延々と水平角に弾を打つだけの固定砲台、まっすぐ飛ぶだけのガトリングなど非常に地味なものがある。くるぶし程度の高さのバリケードさえ超えられず引っかかる。 --飛べないガンダムゲーは他に『ジオニックフロント 機動戦士ガンダム0079』があるが、こちらはそもそもアクションより戦術を重視したゲームであり、そしてヘリ程度の飛行物体は登場する。 ---本作にはヘリなども登場せず、かろうじてMSの頭と同じくらいの高さに浮いている砲台がある程度。 --宇宙世紀200年代ということもあり、ムービーでは自機も味方の増援も敵も普通に飛行しているのでなおさら違和感は強い。 ---特にラスボスの「レイブン」はあんまりな仕様。 #region(ラスボスについて) -「レイブン」は可変MSで、ラスボスは3連戦。MS形態を2回撃破後にMA形態で戦闘になる。 --MA形態での攻撃はと言えば「突っ込んでくる」だけ。『Ζ』最終話のウェイブライダー突撃のような攻撃を延々と仕掛けてくる敵を避けながらチマチマ削るのは、もはやMS戦というより闘牛である。 ---もっとも、実際に闘牛のような立ち回りをしてもまともな戦いにはならないので、下記のバグを利用するかSMAでゴリ押しで終わらせるのが速かったりする。 ---MA形態なのに地べたすれすれを飛んで牛のごとく突っ込んでくる姿は結構シュールではある。 --この戦闘にはバグが存在しており、戦闘開始直後に右ステップを1回行うとレイブンが自機の周りを延々と周回するだけになる。~ 自機が動かない限り永久に回り続け、敵は明後日の方向に弾を撒き散らすだけになるので、あとは撃ち続ければそのうち終わる。 ---腐ってもPS2レベルのシューティングでこういった致命的なバグが発見されるのは珍しいが、そもそも開始前からステップを入力して即回避しないと開始直後に撃破されるため、初手がかなり限られている。なので発見されたバグ、もとい攻略方法といえる。 //これバグなの? //バグと解釈するしかないかと。ダメージを与えてもミズスマシの如く延々と回り続けるので(その際、関係ない方向に弾をまきちらしていることから、AIがこちらを見失ってる可能性も)、AIの思考に問題があると思われる。 #endregion -ステージ数は全8戦とやや少なく、内容は薄い。 //内容的には「やや」どまり。STとしては極端に少ないとは言えない。 --ただ移動して敵を倒して進んでいくだけの単調なステージしかない。8つ全てが「最深部に到達してボスを倒す」というタイプのミッションで、その内の2ミッションには時間制限付きという程度の違いしかなく、バリエーションに乏しい。 -自機として使用可能な機体も決して多いとは言えず、ストーリーに登場する4機+隠し要素の2機しかない((G-SAVIOUR 宇宙モードとその地上モード、G3-SAVIOURとそのバリエーション2種、J-SAVIOURの合計6種。))。 --量産機のJ-SAVIOURや、『G-SAVIOUR』本編ではわずかな出番しかないG-SAVIOUR 地上モードが使えるのは評価できなくはないが、後述の個性のなさもあって選択する意味が薄い。 -移動と視点変更について操作周りが微妙。左スティックで移動と旋回、右スティックで視点移動と操作にやや癖がある。 --ゲーム画面を見ての通り照準がなく、レティクルも存在しない。実際のところ細かい照準はつける意味がなく、画面内に収まると勝手にターゲットロックが働くという、シューティングとしては微妙な仕様。 --加えて、左スティック左右の入力が、歩行時は旋回、ホバー時は横移動となっている。歩行時は横移動できず、ホバー時は旋回できないうえ、しかも障害物に当たると勝手に旋回しだす。なお、歩行時は横移動の代わりにステップ移動があるが、方向キー+L2という微妙なキー設定。 ---キーコンフィグはできるものの、どちらかといえばキー配置の問題ではない。 --また、キー2,3ではライフルの上下という動作があるが意味不明。動かすとライフルを上下に撃つことができ、ロックオンキーを押すまで自動ロックが働かなくなる。しかし前述の通り照準に当たるものがないため、ロックしなければ結局当たらない。視点が上向きになるわけでもなく、謎仕様としか評価できない。 ***ゲームバランスの問題点 -雑魚が防御されなければ一撃なのは好悪あるとして、ボスは硬いだけで単調な敵が多い。 --敵AIが貧弱で、ただ弾をまきちらすだけの敵が殆どで、ボスも同様。自分も敵も、立ち止まれば当たるが平行に動いていれば当たらず、偏差射撃といった工夫も何もない。 ---難易度が上がっても同様で、敵の数と撒き散らされる弾が増えるだけ。 -雑魚敵の攻撃でも2,3発食らえば撃破される鬼仕様。一方でビームシールドさえ構えていれば前方からのダメージは0になる。シールドは被弾するとゲージが減っていき0になると一時的に解除されてしまうが、使用をやめれば回復していく。 --シールドなしで攻撃を食らうとかなり大きな隙が生じる。無敵時間も短いため、1発当たったら2発3発と立て続けに攻撃を受けて、一瞬でスクラップになる事もしばしば。 ---この仕様上、「ホバーしながらシールドを貼り続けて削れたら後ろに引いて回復し、敵を1体ずつチマチマ倒してから進む」というのが定石。というかそうしないとあっさりと撃破されてしまう。 ---高ランクを取るには1発の被弾も許されない。どんなに命中率を上げて撃破率を高めても、一発食らえば全て水泡に帰す。シビアというより理不尽。 --実は本作で一番怖いのは敵MSではなく&bold(){榴弾砲}。一度に複数発飛んでくる上、爆風でダメージ範囲が広いため回避が難しく、食らった場合シールドを貫通するほどの威力を持つためである。 ---HARDモードは、実質的にこの榴弾砲の位置を覚えるゲームと化す。 -機体はどれもこれも没個性。スーパーウェポンはG3-SAVIOURの3種類にしかなく、ほか3機はただのパラメーター差があるだけ。耐久は前述の通りなので意味をなさず、足の速さも接地していたらカニ歩きできないため意味がなく、機体性能の強さはホバーの長さが全てという状況。 --スペシャルウェポンも個性を見いだせたとは言い難い。 --その中でもG3-SAVIOUR 強行戦闘モードがホバー無制限等で強すぎるため、他の機体がいらない。隠し要素も機体レベルで関与するのは、G-SAVIOUR 宇宙モードでHARDモードをクリアをすると出現する、G-SAVIOUR 地上モードだけ。 ---ちなみにそれ以外の隠し要素はCGが見れるようになるだけである。 -近接攻撃は地雷。 --歩行状態で敵と一定の距離になると勝手に切り替わる。周りに他の敵がいようが、&bold(){相手が機雷}だろうが関係ない。 ---ホバー時には近接攻撃は出ないため、敵に近付くときはホバーにして近接攻撃を封印した方が有効という有様。 --繰り出しも遅く、&bold(){命綱のシールドは近接攻撃時には消える}。 ---そもそもの仕様として、&bold(){射撃だろうと格闘だろうと雑魚は一撃}なのでリスクのある近接攻撃を振る意味がない。ボスに対しても、倒すにはかなりの回数を当てる必要があり使い道に乏しい。 ---こちらが敵の近接攻撃を食らえば一瞬で死ぬので、ハイリスクローリターン。はっきり言って、ない方がマシなレベルである。 -サーカスモーションアタックも地雷に近い。 --弾を撒き散らしながら突進するのだが両脇の攻撃範囲が狭く、雑魚相手だと取りこぼしがかなり出る。そのため無敵が切れた途端後ろから撃たれて…というケースが多い。 --一応、前述のラスボス戦でバグを使わない場合ならばそれなり役に立ち、うまく壁際にはめて3連発すればそのまま撃破できる。 -全体的に演出が貧弱。質はそこまで悪くないのだがバリエーションが著しく乏しい。 --攻撃が命中した雑魚敵は凍りついたようにピタリと固まる。爆風で倒そうがビームで貫こうが一切変わらない。倒れたりといったモーションもなくただ爆発する。 --近接攻撃の場合、演出的には胴から敵を真っ二つにする。雑魚の場合上半身がちゃんと崩れる等演出は細かいのだが、この1種類しかない。 --自機とボスがダメージを受けた場合も、モーションはのけぞるだけ。ダウン等は一切なく、のけぞり姿勢も方向で若干差があるだけ。 ---なお、序盤のボスはのけぞり時の隙が大きく、適当な距離から撃ちまくれば相手はのけぞり続けてそのまま勝てるというお粗末さ。 ***ストーリー関連の問題点 -本作のストーリーは、親作品『G-SAVIOUR』の世界観を下敷きにしているのだが、その親作品の出来が悪いため(余談参照)結果として没入感に欠けている。それに加え、単体作品としても全体的な構成が悪く、矛盾点や突っ込みどころが多い。 --2回もクーデターを起こされる東京。そのたびに捕まるサイド1使節団。 --主役機はすでに量産機に性能で後れを取っている。それに重ねてトラブルが起こっているという状況にもかかわらずそのまま出撃。 --1年前にガーノー提督は死んでいるのにその腹心というバイス准将。 --「プロジェクトレイブン」が一体何を目指していたのか説明不足。 #region(以下ネタバレ) -最終戦にて、レイブンはMW(モビルウェポン。無人MS)であり、それを動かしていた「ライシス」はレイスの人格をコピーしたAIらしいことが判明する。 --レイスは主人公リードの教官時代の教え子で、友と呼べる存在であるとリードは劇中で言う。またMWの可能性にも言及していた、とリードは述べている。 --MWの実用化はすでに完了しており((『G-SAVIOUR』本編ですでに実戦投入されている。もっとも、味方であるガーノー提督を敵と誤認して撃ち落としているが…。))、自我に近い物を持つ完全自立式のMWが目標であるとしても、そのあたりは一切語られないために想像する以外にない。 --そもそも実態や目標を把握せずに阻止に動いていたとしたら間抜け以外の何物でもないのだが、どうやらベン指令さえ把握していない。 -レイスの位置づけも完全には謎のまま。「自発的にコピーを開発したのち不審な死を遂げた」のか「自発的にコピーしたうえ、記録上死んだことにして雲隠れした」のか「勝手に人格を使われた挙句消された」のかではそれぞれ大きな差があるのだが、どれとでも取れる状態になっている。 --少なくともリードは1つ目と取っている節がある。しかし最終ステージ前のベンとアサカのやり取りからはそれ以外の可能性も強く疑わせる。 -ライシス率いる「グレムリーシープ」の副隊長リチャード・ライト(ミッション7ボス)の言動も不可解。ライシスがただの機械であるとしたら、その地位を狙ったり実力を認めたうえで「あの方」とまで言うのは理解しがたく、立場を考えればライシスが機械であるということを知らないと言うのはあまりに不自然。 --もっとも妥当なのは、ライト含め「グレムリーシープ」全体がMWであるということだが、劇中では一切語られない以上憶測でしかない。 -最後の「Gセイバーの物語は終わらない」というメッセージも含めて、続編の構想が窺われる。しかし主役機のG-SAVIOURはすでに喪失してしまっており、仮に同型機があるとしても前述の通り型落ちなのに、ここからどう展開するのかまじめに考えていたのかは甚だ疑問である。 #endregion -現在ではネット用語として一般名詞化している「黒歴史」だが、初出である『∀ガンダム』での定義は「過去の宇宙戦争の歴史」(≒なかったことにしたいもの)であるのを踏まえれば、''『G-SAVIOUR』は本当の意味で「黒歴史」と言える。'' --なお、『∀ガンダム』は偶然にも本作の発売と同時期にテレビ放送されていたものである。 ***そのほか細かい問題点 -ゲーム内も説明書も全体の校正が不十分。 --説明書の機体紹介で、他は「である調」なのにJ-SAVIOURだけ「ですます調」になっている。 ---操作等も「ですます調」なので、『機体紹介だけ「である調」』と見るのが妥当かもしれない。 --「宇宙世紀」についてゲームのオープニング映像では“Space Century(S.C.)”になっているが、ゲーム本編のボイスや映像特典では“Universal Century”となっており全体的に不統一。 --G-SAVIOURのモード呼称について、ゲーム内字幕では「宇宙モード」、説明書では「宇宙用モード」と一致しない。ちなみにガンプラでは「無重力戦仕様」と、全体として“SPACE MODE”の訳語が統一されていない。 ---地上モードも同様で、英語“TERRAIN MODE”の訳が一定しない。ゲーム内では「地上モード」だが「重力下モード」などの訳も存在しており、ガンプラの表記に従えば「重力戦仕様」あるいは「陸戦仕様」とも訳せる。 --サーカスモーションアタックについて、ゲーム内のコンフィグなどは英語のままなので“C.M.A(Circus motion attack)”なのだが、説明書などでは“SMA”が使われている。全個所そうなっていることから校正ミスというより、“sakasu”のSにわざわざしたらしい。 //-近接攻撃時のビームサーベルのモーション、エフェクトが『[[アーマード・コア]]』のブレードのそれと全く同じ。 **総評  PS2のグラフィックス性能とCGの質に頼り切った作品であり、ゲームとしての面白さやストーリー性に欠ける出来である。バグ等はほぼなく仕様通りに完成しているにもかかわらずの出来であり、ゲームコンセプト自体が失敗している。~  そもそも、この「敵を一発で倒しつつ一本道を進んでボスを倒す」というコンセプトはSFC時代やアーケードのシューティングにおける定番であり、それを3D作品に持ち込んだという点ですでに失敗している。なお、クソゲーである点は疑いないが、映像を見るための代物と割り切ればほんの少し楽しめる部分はある、というレベルである。  『G-SAVIOUR』という作品自体、後の事ばかり考えて大失敗したと言える。肝心の映画は不評、ガンプラはG-SAVIOUR 無重力戦仕様が出たきり、そしてゲームの出来は良くない、その後の広がりもない、というガンダムシリーズの黒歴史。&bold(){公式サイトがすでに消滅}((http://www.gundamofficial.com/www_gs/。インターネットアーカイブには残っている。それによれば2003年というかなり早期に消滅している。))という状況は伊達ではない。 ---- //(2017/11/08)映画と商品展開に関する記述を余談として分離。 **余談 ***映画『G-SAVIOUR』について -映画『G-SAVIOUR』はハリウッドのCG技術を駆使して造られた特撮作品で、ガンダムの映像作品としては現時点では唯一の実写である。製作費は10億円。 --舞台は宇宙世紀222年。U.C.世界では最も先の年代にあたる。 --CG映像は綺麗なものの、従来のガンダムからあまりに乖離した上に理解しにくい世界観、視聴者置いてきぼりのストーリー展開、一向に起こらないMS戦に、主役機の初出撃は母艦にぶつかりそうな''デブリの破壊''、ようやく起こった戦闘は全体的にスピードが遅い上にビームサーベルの斬り合いで下半身が動かない等ともっさり気味で違和感が強く、そして最後は尻切れトンボと、出来は「2時間版トレーラー」というような代物。 ---なお、小惑星の破壊のような「デブリ回避」((作品によって小規模戦闘だったりする。安上がりに場をつなげるためであるのは変わらない。))はハリウッドSF作品の定番である。一番金がかかるCG戦闘を最後まで引っ張る手法も低予算映画で多用される手法。最後が民主主義を称揚する演説で終わるのもアメリカ映画の典型的なもの((だからと言って必ずしもクソとは限らないが。この典型的な筋書きを全部踏襲して、かつ大ヒットしたものとしては『スター・ウォーズ』第1作がある。))であるが、「ガンダムってそういう話だっけ?」という感想だらけになったのは言うまでもない((宇宙に出た者と地球に残った者の血みどろの争いがガンダムの主要なプロットであり、「民主政体になればどの国も幸せ」的なアメリカンな楽観主義とは無縁。))。この辺は海外のファンも同様らしい…。 //↑正確性に疑問。「「デブリ回避」はハリウッドSF作品の定番」「一番金がかかるCG戦闘を最後まで引っ張る手法も低予算映画でよくやる手法」「最後が民主主義を称揚する演説で終わるのもアメリカ映画の典型的なもの」。本当か? //ハリウッド作品を知っていれば本当か?なんて疑問がわかないはず。SWに限らず、金をかけた作品(たとえばインディペンデンスデイ)ですらこの筋のタイプはハリウッド系に山ほどある。ネタ違いなので列挙は控える。 ---セットや衣装はかなりチープ((地球議会軍の制服は『スターシップ・トゥルーパーズ』のお下がり。いくら同じ地球連邦軍といってもあんまりである。さらに戦闘服は1999年映画『Wing Commander』のお下がり。))で、MSコクピット(実写セット)も貧相な計器がゴテゴテ置かれていて全天周モニターですらなく、MSらしさが全くない。CG部分との落差は擁護しようがなく、全体の質を泥沼に引っ張っり込んでいる。 -それ以前の世界とを繋ぐような設定を作っていたり、終盤に少しだけ登場するI-SAVIOURやG-SAVIOUR 地上モードなど、その後の展開を意識した造りがなされている。しかし肝心の映画がそのためのトレーラー化していては…。 --そもそも、当初『G-SAVIOUR』は宇宙世紀は宇宙世紀でも「Space Century(S.C.)」という別世界という設定だった。それが後付けでユニバーサルセンチュリー(U.C.)に組み込まれたという経緯がある。ゲームでもこの混乱を引きずっているのは先述の通り。 ---それでいて宇宙世紀の公式年表からは省かれているというあんまりな扱いをされている。 --短い戦闘時間の割に登場する機体の種類が多すぎ、視聴者が違いを理解できる限界を超えている。また全般的にそれらの説明がない。「ガイア」方が使う旧式MS「フリーダム」もバリエーションが細かく描き分けられているのだが、多くは認識する前に画面から消えていく。 ***G-SAVIOURのその後 -ガンプラの展開も失敗に終わっており、販売されたのは「G-SAVIOUR 無重力戦仕様」だけであった。 --一応、他のバリエーションも出すつもりで設計はなされていたようである((キット割で素体と無重力戦仕様のパーツがある程度別ランナーに配置され、加えて脚部やリアスカートには明らかに重力戦仕様向けと思しきハードポイントがある))。 --キット自体は腰部スラスターなど大型部品の保持力が若干弱い以外は良好な出来。数年来再販がかかっていないため新品は入手困難であったが、下記の『ガンダムビルドファイターズ』に合わせてか2013年11月に再販が行われていた。興味があれば、機会を見て購入してみるのもいいだろう。 -その後は他のガンダム作品やメディアでの展開が一切なく、一部のファンの間では「アメリカとの間で版権の問題があるのでは」「存在を完全抹消されたのでは」とまで言われていた…が、アニメ『ガンダムビルドファイターズ』にて''13年ぶりに''(かつ初の2Dアニメで)出演を果たす。 -以降はTCGの『ガンダムウォー ネグザ』でカード化したり((ただし、「映画G-SAVIOURのMS」ではなく「ビルドファイターズに登場したガンプラ」という扱いでのカード化。))、ガンダム関連の雑誌やイベントでも紹介されるようになったりと、徐々に日の目を浴びるようになってきている。もっとも、宇宙世紀の公式年表において記載の復活は果たせていないが。 -そもそも、宇宙世紀における外伝人気は一年戦争(ファースト)~第二次ネオジオン抗争(逆シャア)に集中しており、それ以降の『F91』や『V』ですらほとんど外伝が無い有様なので、それらよりさらに先の時代である本作が日の目を浴びる可能性はほぼ無いと言える状態であった。 --しかし、2016年から連載が開始された『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』がそれまで描かれていなかった宇宙世紀169年を舞台にしており、本作の世界観を匂わせる設定も見られるため、本作のファンも含めて注目を集めている。 -ガンダムシリーズの実写化は本作以降長らく行われなかったが、2018年に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督による映画『レディープレイヤー1』にてゲスト出演の形ではあるが久々にガンダム自体が実写映画に登場する事になった。 --一応『レディープレイヤー1』より前に公開された『パシフィックリム・アップライジング』でもユニコーンらしきガンダムがカメオ出演している。EDロールでもサンライズがスペシャルサンクスとして名を連ねている。 //(2018/02/15)開発元に関する記述を余談に移動 ***その他 -発売・開発元のサンライズインタラクティブは名前の通りサンライズの子会社で、版権や映像技術には強みがあったが、他社はもちろん、ガンダム系アクションゲームを多く手掛けていたベック(現:B.B.スタジオ)系統の作品と比べても技術力不足が目立つ((当時はこのほか『サンライズ英雄譚』『ハロボッツ』シリーズなど多様な版権作品を集めた作品を作っていた。本作に限らず、同社が出したゲームは版権頼りで、音楽と映像以外の要素、特にゲーム性やストーリー性に難のある作品が多い。元々のスタッフがゲーム屋というよりアニメ屋であるためだろうか。))。更にこの会社は、後の[[サンライズ ワールド ウォー from サンライズ英雄譚]]でも似たようなことで失敗している。

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