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I/O - (2016/07/18 (月) 01:11:58) の編集履歴(バックアップ)


I/O

【あいおー】

ジャンル SFミステリーアドベンチャー
対応機種 PS2
発売元 GNソフトウェア
開発元 レジスタ
発売日 2006年1月26日
定価 6,800円
判定 賛否両論
ポイント 良くも悪くも難解なSFノベル
あまりにも少なすぎる立ち絵

概要

18禁ゲームのコンシューマ化を主に手掛けていたGNソフトウェアのオリジナル作品第1弾。
コンピューターネットワーク、電脳世界と言ったサイバーなテーマを扱ったSFアドベンチャーである。SFと言ってもインターネット世界が進歩した2032年という事で、そこまで現在の生活に変化は無い。また、作中の世界観はメソポタミア神話(バビロニア神話)を下敷きにしている。
infinityシリーズ』の中澤工がKID退社後に監督を務めた作品であり、原案に『CROSS†CHANNEL』の田中ロミオ、シナリオに神話・ファンタジー関連の数々の書籍を手掛けた健部伸明、ムービーにMju:z代表の神月社と、各分野の著名人を起用して製作された。


シナリオ構成

  • シナリオはABCD4つのルートがあり、各ルートはゲーム開始後間もなくプレイヤーが任意で選択する。
    • Aルートは導入部的シナリオであり、ライトで分かり易い内容。アルファベットが進むごとにハード且つ難解になっていく。
      • A、B、C、Dの順番でプレイする事が推奨されているが、逆の順番でプレイする事で高難易度の謎解き、コアな展開が味わえるとも述べられている。他作品のような感覚で適当に選ぶのはお勧めしない。
    • 条件を満たすことにより、各ルートを総括する最終章Eルートを開始する事が出来る。
      • Eルートをクリアすると一旦物語は終了するが、更にダッシュルートがプレイ可能となる。
    • A´B´C´D´E´と、各シナリオに対応した5つのルートが用意されている。分岐は無く、ストーリーも本編ほど長くはない。各シナリオの主人公は本編と同じ。
    • D´C´の二つは過去編、 B´A´は未来編、は虚実編 となっている。
  • デフラグマップ
    • I/Oのシナリオ構造はデフラグマップと呼ばれる円形のボードで管理されており、最初は全て虫食いの状態だが、プレイする内に色が付いて行く。
      • 色はA:青、B:赤、C:橙、D:緑である。
    • シナリオを次々とクリアする毎に、だんだんとシナリオは完全な状態へと修復されていく、
    • 修復されると、これまで断片化して読めなかった部分が、次回からは読めるようになり修復処理はクリアしたルートだけでなく、他のルートにも行われる。
    • 修復の状況とメッセージの既読状況を確認することができ、どこの選択肢がおかしいか、どのEDを読んでいないか分かりやすい。
    • まれにBADエンディングによっては、修復した箇所が再び破損する場合もある。

ストーリー

西暦2032年04月26日月曜日。午前00時12分。 メガロポリス:東京。

およそ3年ぶりに皆既月蝕が観測された。 単なる天文イベントだったはずのそれは、やがてまったく予期しない「ある怪現象」を引き起こす。 なぜか、それに呼応するように頻発化していく不可解な事件やテロ、ネットワーク犯罪……。

複雑に入り乱れ、混ざり合っていく実と虚。 まるで、起きていながら眠り続けるように。

何かが狂い始めていた。 誰にも見えないどこかで、誰もが知っている何かが。

これは、そんな世界に生きる少年少女たちの、邂逅と別離の物語。

そして……。

始まりは終わり、終わりが始まるのだ。

(公式サイト引用)

シナリオ紹介

  • 葵 日向(Aルート)
    • 葵 日向は夢月という双子の妹がいたが、2年前に失踪して行方がわからなくなり、それ以来、離人症が悪化する。
    • ある日どこからともなく送られてきた怪メールをきっかけに、能動的に行動するようになり、妹の失踪の原因を探ることになる。
  • イシュタル/Ishtar。(Bルート)
    • イシュタルはハッカーチーム《クリミナル》のリーダーとして活動する。《クリミナル》を中心とした全体的に明るいシナリオ。
    • そんなある日、チームは謎のクラッカーと衝突する。やがてそれは、サイバーテロを目論むテロリスト集団《コード》との対決にまで発展していく。
  • イシュタル/Ishtar(Cルート)
    • こちらもイシュタルが主人公だが、なぜか単独で行動している。また、Bルートのイシュタルと比べると、やや冷たい印象を受ける。
    • 二人のイシュタルは同一人物かのか別人なのか。その理由はシナリオを進めれば明らかになる…かもしれない。
    • 時間の流れが曖昧になっており、各シーンが断片的に描かれる。
  • He/ヒィ(Dルート)
    • 神出鬼没で、その痕跡を残さない、インターネット上に現れる伝説のハッカー
    • 「He」とは、あくまで都市伝説の中の人物のはずだったのだが……
    • こちらも時間の流れが曖昧且つ断片的に描かれる。

評価点

  • 多く伏線を張られたシナリオ
    • ミステリー小説のように、巧妙な伏線を最終シナリオで判明させるストーリー構成はプレイヤーを感嘆させてくれる。
    • 張られた謎も多いため最後まで引っ張ることができ、プレイヤーをクリアまで飽きさせない。
    • 中澤氏が嘗て手掛けていた『infinityシリーズ』のようなトリックやカタルシスも健在。同シリーズファンならきっと引き込まれるだろう。
    • 中澤氏の代表作と言うと、投げっ放しの結末で波紋を呼んだ『Remember11 -the age of infinity-』が挙げられるが、本作は下記のような問題点こそあれど露骨な投げっ放しのオチではない。
  • 親切なシステム
    • オートプレイ機能、いつでも行えるセーブ/ロード機能(100箇所セーブ可能)選択肢など自動でセーブしてくれるクイックセーブ機能。
    • プレイ環境をカスタマイズできるオプション機能、各システムへのショートカットが行えるファンクションキー高速な既読メッセージスキップ機能。
    • 前回のプレイの履歴さえも閲覧できるテキストログ機能(ログ中の音声再生や、ログ上からのゲーム再開も可能)。
    • シナリオを途中から開始できるショートカット機能など、繰り返しプレイを快適にサポートするシステムも万全極めてユーザー思いのシステムである。
  • TIPS
    • 『Remember11』同様、ゲーム本文中の用語を解説するキーワード機能が搭載されており、未知な用語や固有名詞などはすぐに調べられる。
    • メッセージから直接用語解説にジャンプできるのも嬉しい。
  • 世界観
    • 近未来のSFでバーチャル世界と現実世界の区別しづらくなったという映画マトリックスに似たような非日常感が多いシナリオだが、どこが現実味のある世界観でプレイしていく内にのめり込むようになっている。
    • SF要素もそこまで非現実的な物ではないためSFが苦手な人間もそこまで取っ付きにくさはない。
  • BGM
    • 当時、BMS作者として活動しており、現在は音ゲーに曲を提供しているonoken氏が作曲を担当。どれのよく場面にあっており、OPテーマ『fragment』も高評価。

問題点・賛否両輪

  • 立ち絵が少なすぎる。
    • 作中に立ち絵があるのは説明書の登場人物紹介に載っているキャラと、敵の名も無き戦闘員のみ。それ以外は脇役はもちろん、声のあるキャラクターすら無い。
    • それなりにシナリオに関わる家族やクラスメイト、果ては重要キャラクターさえ立ち絵が無い。なので重要な会話シーンが誰もいない部屋で姿や形が出ない透明人間の音声だけが流れるホラーのような事もしばしば。
    • 唯一の例外である敵の戦闘員もどれも使い回しである。
    • 他にも重要なアイテム、テーブルに置いてある食べ物、ベッドに寝ているキャラなども描かれていない。想像しろとでも言いたいのか…
    • CGにはキャラが描かれているが、立ち絵が無いという残念な事も
    • これは予算の問題だったらしく、中澤氏も「圧倒的に立ち絵が不足していた」と認めている。後に発売されたPC版では10人以上もの立ち絵が追加されている。
  • テーマが多すぎる
    • 神話、宗教、哲学、心理学、科学、IT、プロミング、力学などあらゆる要素が込めれらており、テーマが多すぎて何が何だか分からない。
    • 一つの事件を軸とした物語なのだが、これらテーマの絡み方はまちまちで、時には少々内容とズレている印象すら受ける。
      • 事件後のダッシュルートでは遺伝学の分野まで絡んで来るが、それまでそんな描写は皆無であり、唐突な展開になってしまっている。
    • またメインテーマのSF部分もSF好きな人にも進められるかと言えば、かなり難しい。
    • これもまた、実力派の脚本家陣がそれぞれの得意分野を活かし過ぎて、整合性が取り切れなかった結果かもしれない。
  • 選択肢が少ない
    • 1ルートでせいぜい5~6個。他のADVと違い選択肢が少なく、一本道要素が高い。
    • またBADエンドも「選択肢を間違えたら即死」が殆ど。
    • ダッシュルートについては完全に一本道である。
  • ボリューム
    • 標準プレイ時間は50~60時間。シナリオ数も実際は10に及び、かなりの文章量を誇る。
    • ボリュームがあるのは良い事だが、本作は難解でややこしい事この上ないシナリオな上に、提示される情報量も凄まじい。プレイヤーへの負担も割かし大きい点に注意。
  • 一部科学的に間違いがある
    • 「100匹の猿」理論や「レミングの集団自殺」など現在では否定されている説が事実とされている。
    • 著名な科学者がいる世界観なのだから一人も否定しないのは違和感を覚える人は覚える。
    • 無論、フィクションなら「説が正しいと認められた世界」「否定されたがそれは捏造だった」と言う設定でも問題は無いのだが、ならばそうと作中で明言しておくべきだったかもしれない。
  • シナリオ
    • バーチャル世界と現実世界が混合していくという環境で進んでいくシナリオは徐々に境が分からなくなり混合する。
    • 4人の主人公が現実、バビロンを時間や空間を行ったり来たりするため分かりづらい。主人公たちや敵の目的がしばしば理解が追いつかなくなる。またここまで理解が追い付かないのも立ち絵の少なさがあるだろう。
    • 本作にはいわゆる多くの物語作品である「解説役」「聞き役」という立場の人間が少なく、世界観を理解しているキャラクターばかりで、プレイヤーを置いてけぼりにしている感覚を覚える事も
    • 特に「C」、「D」パートは時間の流れが曖昧であり、シーンも飛び飛びなので理解は非常に困難。
      + ネタバレ注意
    • 現実世界とバーチャル世界を混合し、さらにプレイヤーの理解が及ばなくなる。またこれまでのシナリオと違いSF全開、ファンタジー全開で何でもアリなお話になってくる。
    • 主人公がゲームをログオフしていると勝手に行動してくれるシャドウヌルというAIがあるのだが、「C」、「D」パートではそのシャドウヌルが生命を得て勝手に行動するため、現実の人物かシャドウか分からなくなる。
    • また終盤はある人物が別の人物としてバビロンで活動するため、判別しづらい。
    • 加えてバーチャル世界の出来事が現実にも起こる多世界解釈や量子論などのせいで現実とネットの世界が混合する。
    • 最終版、夢月が寝ている状態を起こすため、日向と真佑実が夢月の夢に入る、するとその夢で寝ている夢月の夢に入る、さらにその夢で寝ている夢月の夢に入るという無限ループに陥ると言う訳がわからない展開がある。
    • このように時系列や視点や環境が入り乱れるシナリオC以降は情報を整理するのが極めて困難。
    • 一方で「A」「B」パートはしっかりとした骨組みのため理解が追いつかない事は少ない。
    • 結末
      + ネタバレ注意
      • 最大の敵である大企業「エクサーク社」は諸悪の根源として語られる一方、実際にそこまで「悪」らしい描写は作中には無く、寧ろ別の組織や事件の元凶達の方が悪どく見える。また、その壊滅がやけにあっさりで、少々物足りない。
      • 多層世界説=パラレルワールドの要素を含む為、正史があっても終盤で分岐してしまう。例えばとあるルートではハッピーそうなエンドでも、他の結末のせいですっきりとしない。
      • また現実とバーチャルが混合されたので死んだキャラが生き返ったり、AIが生命を持ったりと少々強引。
      • 終盤部分は世界観を広げすぎてまとまって無いという意見もある。
      • ラストの虚実編についてはメタな観点にまで話を持って行ってしまっている為、もうエピローグは解釈任せ。『Remember11』のような投げっ放しではないにしても、後味スッキリとはとても行かないだろう。
  • 一部の描写のテンポ
    • いちいち雑魚の断末魔を挟む、同じムービーを何度も流すなどテンポが悪い所がある。
    • 難解なSF理論の解説など挟まれ助長とも言われる部分も多く、意味のない回想シーン多く、特に無限ループに落ちる場面は二度も繰り返される。
    • 今作はスキップがしっかりしている分、まだマシな部類だが。
  • キャラクター
    • 一部キャラクターが少々共感や同情しにくい。これも立ち絵が(ry
    • 日常的描写が薄く、キャラクター感情が分かりにくい。ストーリーを進める記号とも言われる事も
    • また多くのキャラクターはアバターネームを使用するため現実の名前と混合してしまい、誰が誰なのか理解しにくい。
    • 一部、理解に苦しむキャラ描写もある。
      + 例えば…
    • 葵 日向
      • うじうじキャラで好感が湧きづらい。おまけに行動理念も少々描写不足気味。後に成長の兆しを見せ、主人公らしいキャラになっていくのだが、ダッシュルートではまたうじうじキャラに逆戻りする事も。
    • アンドラス
      • 《クリミナル》のメンバー綾瀬 みかをストーカーした人物であり、《クリミナル》と対決する。卑屈かつ小物で同情の余地も無い様な人間で、しかも直接は描写されていないが強姦疑惑まである。
      • あるパートでは可愛い妹が居て兄を大切に思っていたりイシュタルに協力するなど比較的良い奴のように描かれる。
      • 何故こんな奴を優遇するのか首をかしげるユーザーも多い。
    • エンリル
      • テロ集団のリーダー。《クリミナル》のメンバーを殺害し、その家族まで容赦無く手に掛けるという悪の親玉のような存在感を見せつける。
      • にも関わらず終盤にあっさり和解。上記の事もあるのに少々強引である。しかもいくら本人なりの信念や目的があったとは言え、大事件を起こしながら咎めを受けたり罪を償うと言った描写は無く、ダッシュルートでは何事も無かったかのように味方になる。一応、エピローグで自身の行いを悔いるシーンはあるが…。
      • また、日向が探していた夢月の恋人でもあり、日向目線で見るとなんだがNTRされたような気がしないでもない。
    • 葵 夢月
      • 日向の妹。本作の主人公達の最終的な救出対象なのだが、同時に今回の騒ぎの元凶の一人。それも不可抗力的に元凶になったのではなく、本人の意志でやった事が今回の事件の引き金となっている。おまけに(少なくとも救出するまでは)好感の持てる描写も殆ど無い為、あまり助ける気力が沸かないというプレイヤーも多い。
    • 本編の敵
      • 正体は伏せるが事件の黒幕と呼べる存在が、ダッシュルートのあるシナリオでは急に味方になったかのような描写がある。あれだけの大事件を起こしておきながらこの存在は咎めず、「悪いのは全部エクサーク社でした」と言う展開に持っていく為、釈然としない気持ちになりかねない。
    • キャラの行動理念や作中の扱いには原案の田中ロミオ氏の哲学が強く出ており、人を選ぶ部分もある。
  • 同性愛者が出てくる
    • 何人か同性愛者、もしくはそれに準じたキャラクターが出てくる。例えば主人公の一人のイシュタルなど、「おねえさま」と呼ぶ女性を慕っているなど、モロにそれである。
    • 人それぞれだがやはり多くの人が好感を抱く設定ではないだろう。

総評

実力派スタッフを起用しただけあり、オリジナリティ溢れる設定や濃厚な世界観、謎解き要素、伏線回収など魅力的なシナリオを誇る作品である。
一方でプレイヤーを置いてきぼりした場面も多く非常に理解しにくく、癖の強いキャラや展開の数々もまた人を選ぶ。
登場人物が多いのに立ち絵が少なすぎるせいで様々な弊害も起きた。
その結果、著名人を多く起用した割にはかなりマイナーな作品になってしまっている。もう少し一般向けにシフトしたら名作として名を馳せたかもしれない、惜しい作品である。
上記の通り、魅力的なものを持っているのも確かなので、ミステリアスで難解なADVをプレイしたい人はやってみてもいいかもしれない。もしプレイするなら、立ち絵問題が解決された下記のWin版をお勧めする。

その後の展開

  • 2008年8月29日にはWin版『I/O revisionII』が発売された。
    • シナリオそのものに変更はないがPS2版で立ち絵が無かった登場人物達にも立ち絵が与えられており、本作の大きな問題点の一つが解消されている。
  • 後に中澤氏が手掛けた『ルートダブル -Before Crime * After Days-』には本作のBGMが一部使用されている。