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エースコンバット3 エレクトロスフィア - (2015/10/11 (日) 22:43:14) のソース

*ACE COMBAT 3 electrosphere
【えーすこんばっとすりー えれくとろすふぃあ】
|ジャンル|ドラマチックフライトシューティング|&image(http://ecx.images-amazon.com/images/I/51TJs%2BI8GWL.SL170.jpg)|
|対応機種|プレイステーション|~|
|メディア|CD-ROM 2枚|~|
|発売・開発元|ナムコ|~|
|発売日|1999年5月27日|~|
|定価|6,800円(税別)|~|
|廉価版|PlayStation the Best:2000年12月7日/2,800円|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|
|>|>|CENTER:''[[エースコンバットシリーズ]]''|
|>|>|CENTER:''[[UGSFシリーズ]]''|
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#contents(fromhere)
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**ストーリー
2040年という近未来。終わることなく繰り返される多国籍企業の抗争とM&Aは、ついに「ゼネラルリソース」という一つの怪物企業を生みだすに至った。国民国家はゼネラルの広大な経済規模の前に、次第にその機能を喪失していき、やがて経済規範やそれを取り締まる警察・軍組織までもをゼネラルが代行する悪循環ができ上がる。かつて「USEA(ユージア,United States of Euro-Asia)」と呼ばれた1大陸内の連邦国家は、今では単なる地域区分としてその名を残すのみでしかない。

ゼネラルはその膨張の中で、次世代のインターネットともいえる電脳空間「エレクトロスフィア」を開発する。旧世紀とは比べ物にならない量の情報が飛び交う世界を支え、コントロールすべく生み出されたスフィアは間もなくして、もう一つの現実として人々の間に浸透していった。ますます狭くなった世界、その頂点にゼネラルが立ち、世紀末からの変革はそれで一段落するかのように思われた。

だが、巨大すぎるが故の保守的・硬直的なゼネラルの体質に反発した一部の技術者が、大挙してゼネラルを退社する事件が発生する。当時小さなネットワーク企業に過ぎなかった「ニューコム」はそうした技術者たちを率先して受け入れ、ゼネラルが生み出したはずのスフィアを舞台として急成長を遂げる。今ではゼネラルに次ぐ世界第2位の地位につき、宇宙・電子・分子工学などの先進分野ではゼネラルを凌駕するまでの力を手にしたニューコムは、必然的にゼネラルと衝突するようになった。両社はそれぞれが保有する警備(軍)組織を動員して、牽制や工作を繰り返した。

2040年、舞台はユージアとエレクトロスフィアという2つの現実。~
旧時代からの圧倒的な経済力を武器として統治を続ける「ゼネラルリソース」。新時代の技術を手に躍進を重ねる「ニューコム」。そして前世紀から形を変えて――実質的な企業間紛争の緩衝機構として存続し続けた新国際連合(NUN)揮下の平和維持組織「UPEO(ユーピオ)」の、およそ8年に渡る冷戦時代。~
そこで一人の男がカオスを望んだことから、物語は動き始める。

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**概要
フライトシューティングのジャンルを切り開いたアーケード作品『エアーコンバット』の血筋を受け継ぐ家庭用シリーズ『エースコンバット』シリーズの第3弾。~
プレイステーション末期にシリーズ最後のPS作品として世に出た本作は、マンネリ化を防ぐ為に今までにない大胆な改革を行った。~
しかし、その改革はこれまでの『エスコン』どころか、同時期の他のフライトゲームと比べてもあまりにかけ離れた路線だった為、発売当初はその世界観に対して拒否反応を示すユーザーも多く発生した。~
「&color(red){''出来は名作級だが非常に好みが分かれる作品''}」といった感じで、今でもなお現行機でのリメイクを求める声と、『エスコン』の異端児として忌む声が絶えない。
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-''世界観・システム設定''
--これまでの『エリア88』的な傭兵ロールプレイングではなく、近未来を舞台にしたガチSF。
---最大の賛否良論点となった脚本および世界観は、アニメ脚本家として活躍する佐藤大の手による。
---「企業同士の紛争と国際治安維持組織の介入」「巨大なネットワークを通して進むストーリー」「神経接続操縦の戦闘機」「奇天烈なビジュアルの架空機体の数々」「メガフロート」「ジオフロント」「ナノマシン」「人類の電脳化(サブリメーション)」など設定は非常に緻密で、何冊か小説が書けるレベル。
--''ステージは全52とシリーズ最多。''計5+1の結末が存在するマルチエンディングを採用しており、プレイヤーは自分の考えに応じて進行ルートを決定していく。
---このルート選択は「プレイヤーの所属する組織を選択し移籍する」というもの。最初はUPEO所属だが、作戦中にゼネラルに勧誘されたり、ニューコムに逃げるかといった選択肢が出てくる。物語後半には第四勢力も出現し、ここへ移籍する分岐もある。
--ミッション以外のストーリーパートでは、全て電脳空間エレクトロスフィアを通したオンライン通信でシナリオが進むという、本作独特のストーリーテリングが行われる。
---ストーリー性を重視しており、それまでのシリーズ作はもとより、後作にも負けないほどの圧倒的なボイス量が特徴。受信したニュース番組やビデオフォン、メールは逐一録画され、後から見直すこともできる。
---この設定を逆手に取り、物語後半に差し掛かる辺りで受信する内容が危険なメールは検閲にかかって自動削除されるという演出もあり。
---Production I.GとSTUDIO4℃が手掛ける高品質のアニメムービーも特徴。キャラクターは全てセル画で描かれるが、画風が映画版攻殻機動隊のようなリアル調。アニメファンでもあまり見慣れない絵柄に、これも賛否両論ある。立ち絵そのものの出来は素晴らしく、口パクはもちろん様々な表情を見せてくれ、首をかしげたり、そっぽを向いて考え事をしたり、上目遣いで企み顔になったり、表情アニメパターンは他に類を見ないほど豊富。
--機体はこれまでの購入式ではなく、所属組織から状況に応じて供給される形となり、ストーリーが進むごとに乗り換えていくことになる(大抵は異なる特性の機体が2機以上用意されている)。
---機体武装は従来どおり機銃とミサイルの2種類だが、それぞれ選んで換装することができるようになった。選べる武装は機体ごとに異なる。例えば機銃なら重機関砲(威力と連射性能が高いが射程が短い)、パルスレーザー(連射性と射程がとても高いが威力が低い)、キャノン(連射が遅く弾道が落ち込むが、戦闘機を2-3発で撃墜できる高威力)など。ミサイルなら、短射程ミサイル(一度に6発まで連射できるが射程が短い)、MIRV(一定距離進んだあとに4つに分裂して追尾し、命中率が高い)、陽電子ビーム砲(宇宙空間専用の誘導エネルギー兵器)など。後作の特殊兵器システムのはしりとなった。

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**賛否両論点
***アニメ的演出と世界観
''本作を語る上で絶対に外せないのがこの要素。''批判的な意見を出す人については「この演出はこう駄目だから嫌い」というレベルの指摘ではなく、そもそも「世界観がまるっきり合わない・受け入れられない」というマクロな拒否反応を示す人が多い。他のシリーズも十分SFをやっている(例:空中要塞、大型潜水艦、Z.O.E.、レールガン、レーザー兵器など)のだが、''今作は流石にはっちゃけ過ぎていた''。
-まず、戦闘機のビジュアルからして「異常性」が際立っている。
--本作の登場機体は全て架空の機体。正確には「完全な架空機」と「現用機をモデルにしたアレンジ」が混在している。全ての戦闘機には神経接続装置が搭載され、各機のコクピットはキャノピーを排した「コフィンシステム」になっているためにのっぺりした印象となっており、現用機マニアからは「許せない」という声や「まるっきり興味が持てない」とい意見もある。
---ちなみに航空機メーカーに正式に許可を取るのは次作の『04』からとなる。つまり本作における現用機のコフィン化はメーカーに無断で行っていることになる(形式番号も全て架空のものに改められている)。リメイク最大の障害になるのは間違いないだろう。

-シリーズお馴染みの「超兵器」がかなり前面に押し出されている点も好みが分かれる点だろう。ニューコム製の機体は全てが架空機で、その全てが既存の航空機とはかけ離れた未来的な流線型のフォルムばかり。
--ただ、後作の「タウブルグの剣」「空中艦隊」といった「それ単体が明らかなオーバーテクノロジーで世界観中で浮いている」超兵器は意外にも存在しない。良くも悪くも「超兵器が当たり前となった世界観」になっている。

-それまでの「超本格的ヒコーキごっこ(『2』のTVCMより)」のイメージを完全に払拭させるような、90年代後半のサイバーパンク的なシナリオ演出も敬遠されることになった。
--現在ならば自然に受け入れられるユーザーも多いかもしれないが、当時としてはあまりに前衛的過ぎる設定・世界観故に、完全に異次元にいるような感覚になったプレイヤーが多かった。今でも「''これって『エスコン』でなくてもいいよね?''」と呼ばれるほど、他のエスコンとは別のベクトルで高い完成度を持っている。
--宇宙にも行くし、地下都市にも潜るし、機体がナノマシーンに浸食されたりもする。あまつさえ''電脳空間に戦闘機で突入''する。本シリーズでも、戦闘機でここまではっちゃけたことをしでかしたのは空前絶後。
--あまりに特異な内容だったためか、『04』では『2』以前の路線に回帰しつつ、新たな方針を模索していく形となった。

***恋愛フライトシューティング?
シナリオの根底にあるのは「''愛憎劇''」であり、結構ドロドロした人間関係が繰り広げられるところを見ると、あながち間違ってはいない。

-5つのエンディングはいずれもユーザーの想像に任せる点が大きく、ハッピーエンドやバッドエンドと言った明確な観念で片づけられない。
--ただし共通するのは「''真面目な奴が馬鹿を見る''」ということ。フィオナのように「全てのルートで不幸」な人物までいる。

-登場人物は電波とノーマルにはっきり分かれていて両極端。
--UPEOルートではヒロインが電波だし、ニューコムルートではフィッツジェラルド姉妹の姉がやはり電波かつ自分勝手。サイモン博士は何が言いたいのかわからない。ゼネラルルートでも一見クールなナイスミドルのディジョンが次第に崩れ始める。
---一応弁護すると、電波な彼らにもそれぞれの信念や理想というものがしっかりとある。ただその表現が不得手であることが多い。むしろ演出がそれを狙っているようでもある。

***オチ
-5つのエンディングをコンプリートすると真のエンディングを見ることができる。が、ここで明かされる真実があまりに突拍子なものであったため、愕然とするユーザーが続出した。

#region(衝撃の結末(COLOR(red){''ネタバレ注意''}))
-簡単にまとめると、本作は「サイモン博士による''博士個人の恋敵抹殺のための''コンピュータ上でのシミュレーション」であり、主人公(プレイヤー)は「シミュ実行のために博士が作った''AI(人工知能)''」だった。
--サイモンが劇中、主人公ではない誰か(=ユーザー)に話すような態度をとったり、主人公があまり意思表示をしなかったり、何故かよその監視カメラを覗いていたり(=主人公がハッキングしている)、人の記憶を追体験しているようなシーンがあるのもこのため。
--ちなみに「恋敵抹殺」とはいっても、博士が横恋慕している相手は、ある事件に巻き込まれて既に死亡している。その場に居合わせながら「自分だけはぬけぬけと生き残ったあの男」を殺すために主人公を作ったのだった。なお、男に過失は一切なく、むしろ巻き添え。わけがわからないよ…。

-サイモンはこれらの事実を伝えた後にこれまでのデータを消去し、主人公を現実世界へと送り込む。サイモンの掌の上で転がされていただけの''夢オチ''(ちなみに、脚本の佐藤氏はアニメ『カウボーイビバップ』でも似た話をやっている)を「この結末だけは許せない」と憤るユーザーも多い。リメイクの際には「サイモン博士への反逆」の結末の追加を望む声もあるとか。
--ちなみに主人公のデフォルト名は「NEMO(ネモ。ラテン語で「誰でもない」)」なのだが、実は本作のゲームディスクには「2030 S.O.C(=サイモン・オレステス・コーエン) PROJECT "NEMO" ARCHIVE」の一文が刻印されている。ということは「''このゲーム自体がシミュレーションデータを収めたディスクだった''」というとんでもないメタ設定が浮かび上がってくる。
-劇中でサイモン博士がTV番組のインタビューに答えるシーンがあり、そこで博士は''人工知能''について「ヒトが、複雑な感情を持った賢いコンピュータや人工生命を作り出す事など出来ない。''それは神のみに許された行為である。''逆に、ヒトがコンピュータになる事ならば可能性がある。だから私はヒトの電脳化の研究を進めている」と語る。ところが、この時サイモン博士はすでに、主人公という人工知能を完成させているのだ。つまり・・・
-神経接続の兵器や人工知能、電脳化といった夢のような技術が現実となった未来においてもヒトは、愛憎、嫉妬、憎悪といった感情からくる原始的な争いに終始しているだろう… そんなメッセージとも受け取れる。
#endregion

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**評価点
''PSの性能をフルに引き出したゲーム構成''
-PSの限界点の一つに数えられるほど、マップの書き込みは緻密。天候表現も抜かりない。兵器や爆発のエフェクトは後発の『04』よりも手が込んでいる。
--単純に絵が美しいのもさることながら、デザインは''インターフェースの隅々に至るまで「ここまで作りこまれたゲームを探す方が難しい」''ほどに仕上げられている。音楽や効果音もマッチング具合が素晴らしい。
--機体のエアブレーキや推力偏向ノズルが動いたり、アフターバーナーが美しく点灯する、ジェット噴流で大気が歪む描写など、細かい演出も作り込まれている。「神経接続による直感的操作」という設定を生かした全周HUDは非常に見やすく、シリーズ屈指のわかりやすさ。
-ロード時間がほとんど無い。スムーズに読み込めるよう、CDに記録するデータの位置を最適化した結果だという。快適に遊べるようにという開発スタッフの配慮が嬉しい。

''新しくもどこか懐かしい世界観''
-『エスコン』としては異質だが、単体で見てみればその完成度は高い。開発陣が公式攻略本のインタビューで「新しくも懐かしい世界を目指した」「エレクトロスフィアというのも70年代の響き」と語る通り、未来的だが浮世離れしていない、レトロフューチャーな世界観ができ上がっている。
--なお、この公式攻略本は詳細な設定資料集の役割も兼ねており、それ単体でも書籍としての価値があるファン必見の内容。

-配信されるニュース番組や、数々の単語を網羅した検索エンジン(用語集)など、ここ数年のネットワーク環境と近しい様相を持つエレクトロスフィアとデータースワローのデザインも俊逸。ストーリーテリングとしても「戦闘」と「日常」が融合した、風変わりな路線が形作られている。
--とにかく細かいところまで設定が作られており、検索エンジンを見るだけでも楽しめる。緊急報道や報道管制といった小ネタも十分で、ニュースキャスター役の声優の演技がやたらとはまっていることも相まって「現実感」はシリーズでもピカイチ。
-陣営と所有機が、ゼネラルは西側系、UPEOはユーロ・ロシア系、ニューコムは完全架空機と、それぞれ機体系列がしっかり分かれている。ニューコムの高性能次世代機に対してゼネラルは既存機のアップデートを進めることで対抗し、性質上過剰軍備を避けたいUPEOは独自の保有機に加えて両社から機体提供を受けるという構造も面白い。

''数々の新要素''
-後作でのスタンダードとなる「機体と独立したカメラ操作」が導入された。敵機追従カメラなど、ビジュアル面は大きな進化を遂げた。
-クリア後のリプレイを鑑賞できるのも今作から。選択可能なリプレイカメラ視点も良くできており、特に敵機視点でプレイヤーが発射したミサイルを着弾まで追う視点は、今作のみの魅力あるもの。
-特殊兵装システムの前身となった武器選択システムにより、戦略性が向上。
--投下型爆弾や対地ミサイルなどの副武装が登場したのも本作から。僚機の演出も次作以降大きく進化を遂げる。
-クリアランク制度が初めて導入され、やりこみ要素が広がった。
--ミッション中の成績に応じてキャラクターの反応が変わるフィーチャーも。
-発進・着陸・発着艦に加えて空中給油が登場。よりリアルに。

''本作だけの魅力''
-プレイヤーデータは「アカウント」として3つまで作れるのだが、更にそれぞれのアカウントごとにデータを6つまで別個保存可能。周回プレイのストレスを緩和している。
-恐らくシリーズ1リアル(っぽい)な操作感。空力や慣性が強く、独特の浮遊感が味わえる。
-それまでのギターサウンドの一切を廃し、クールなテクノ、アンビエント路線に転向したBGMの出来もよい。環境音楽がゲーム音楽に昇華されている好例。

-ミッションのシチュエーションが非常に豊富。高高度空戦、大気圏の離脱と再突入、撃墜数競争といった色物まで多数。恒例の「トンネルくぐり」はシリーズ屈指の難易度。
--「自分の意志で戦う場所を変える」という要素も他にはない魅力。更に時系列が各組織ごとにザッピングしており、異なる視点から異なる結末を導いている作りで周回(厳密には違うが)プレイも飽きさせない。
---例えば、ゼネラルがニューコムの前哨航空基地に奇襲を仕掛けるミッションでは、ゼネラル所属だと基地への攻撃、ニューコム所属だとスクランブル発進しての迎撃、UPEOだとゼネラルへの制裁として横槍を入れるミッションとなる。
--用語辞典や通信ログなどの充実したユーティリティで設定マニアにも対応。
--操作感は空中給油と同一だが、「空中空母への着艦」を行う場面が存在する。ちなみに以降のシリーズ作品でも母艦機能を持った航空機は存在するが、味方として登場し、着艦までできるのは実は本作のみ。

-兵器の美しさ。ミサイルが半透明の煙を長く引いて飛んでいく様子は、当時のゲーマーに感嘆された。パルスレーザーやプラズマビームといった光学兵器の描写も見事。空中空母を敵に回したとき、防御兵装による圧倒的な弾幕には度肝を抜かれるだろう。条件を満たせばシリーズ屈指の超兵器「O.S.L.(軌道衛星レーザー)」を使えるが、その絶大な威力を示す演出は必見。

-独創的な機体群。
--本作を語る上でニューコム製機体(Rナンバー)の存在は外せない。そのどれもが海洋生物を由来とする愛称を持ち、ニューコムの技術の賜物たる機体群はファンを魅了し続けている。主力制空戦闘機・R-100番台のデルフィナスシリーズ、双頭の重攻撃機・R-201アステロゾア、コンコルドのような高速攻撃機・R-211オルシナスといった堅実どころから、パラサイトファイターのR-311レモラ、宇宙戦闘機・R-352セピアといった色物まで多数取り揃えている。大型機のR-500番台もユニーク。
--対照的にゼネラルは既存機の改良モデルを主とし、シナリオ後半から投入される独自開発の架空機2種(F/A-32CアーンとXFA-36ゲイム)も、現実のコンペティションで没案となったアイデアを利用している。その他の機体もカナードが追加されたり幻の試作機が見られるマニア心をくすぐる仕様。
--なお、UPEOは全て既存機の改良型を使用している。ちなみに終盤ではシリーズで初めてSu-47ベルクト(本作ではSu-43ベルクト)を操作できるのだが、当時はまだ知名度が低かったことと、他ルートの最終機体がどれも架空機であるために「こいつも架空機じゃないのか?」と誤解するユーザーも少なからず存在したとか。

ちなみに、これらのありとあらゆる要素を詰め込み過ぎて容量がDISC2枚にも収まらないレベルとなってしまい、なんとかしようと極限までデータを圧縮した結果、ロードがかなりスムーズになった。ロード演出は僅かにあるものの、明確に「ロード中」と知らせる画面は存在せず2秒程度で次の画面へ遷移しストレスフリー。~

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**難点
-アナログスティック(左側の操縦桿)の反応に癖がある。ほとんどデジタル入力に近く、人によっては十字キーの方が安定する。

-用語辞典が存在するとはいえ、設定やストーリーが複雑で、理解するのが難しい。
--特異な世界観と専門用語のため、小学生などの低年齢層やIT知識などに疎いプレイヤーでは、ストーリーの大まかな全体像を捉えることにも苦労する。
--ニュースやビデオフォンなどのリアルタイム感のある演出は、一度の情報量が多過ぎて把握に時間がかかる。

-機体支給制のため、自分の好きな機体をいつでも使えない。更にどのルートでも終盤は飛びぬけた万能機一機しか選べなくなる。
--既存機体のバリエーションが抑えられており、他の作品と比べると見劣りする。2040年という設定上、F-4やMiG-21といった旧式機は影も形もなく、超有名機のF-14も登場しない(当時トムキャットが退役決定となり話題になっていたので、それを反映させた形だろうか)。


-画面構成の都合上、クリア後に出現したミッションシミュレータは新規データ作成部分にかぶる形で表示されるため、一見すると新規データが作れなくなったように錯覚してしまう。画面右端のミッションシミュレータにカーソルを合わせ、さらに右ボタンを押すと新規データ作成が現れる。
--尚、ミッションシミュレータはその名の通り「シミュレータ」なのでランクは記録されない。「あのミッションで高ランク獲得していないからシミュレータで再挑戦」ということはできない。

-シリーズ恒例のトンネルステージは地形が複雑で、スピードを出すとすぐ壁にキスしてしまう。特に終盤は上下を見失いがちで、地形を覚えないうちは何度も再挑戦するハメになる。トンネル高難易度化のはしりとなった事と、寮機キャラクターの「(反乱の首謀者を指して)元凶めっ!」というセリフを何度も聞かされることになる事から、「元凶トンネル」というアダ名で呼ばれることも。

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**総評
良くも悪くも、『エースコンバット』というシリーズそのものの再定義のきっかけとなった作品。~
シリーズ存続のために新たな方面を目指して大幅に路線を変更するという決断をし、なおかつ同時代の他のゲームを圧倒するレベルの作りこみを見せた制作陣の努力自体は、素直に賞賛されてしかるべきものだろう。だが、その変化にファンを置き去りにしてしまった感が強いこともまた事実。~
本作を端的に表現するなら「時代を先取りし過ぎた名作」「世に出るのが早過ぎた大作」と言える。~

時と共に再評価も進んだこと、技術が進歩して「エレクトロスフィア」の世界観がより身近になってきたことなどから、本作のリメイクを希望する声も増えてきている。~
実質的な『1』『2』のリメイク作となっている『エースコンバット3D・クロスランブル』が発売されたことで、なおの事期待が高まっている。

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**余談
-シリーズお馴染みの「ケイ・ナガセ」は、ゲーム終盤のあるニュース映像に映っている顔写真で登場する。
-ストーリーに関して、本作は『04』以降の作品との繋がりが不明確。それでも『5』『X』などでコフィンシステムを採用した機体が登場していることから、少なくとも間接的には繋がりがあることは描写されている。
-ディジョンの台詞《推力に頼るな。空力を活かせ。》は、『3D』のアルビレオ1の台詞としても使われた。
-『エースコンバット インフィニティ』ではアップデートによる追加機としてR-101が登場。実に16年振りのことである。