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天外魔境II 卍MARU - (2023/12/01 (金) 14:27:07) のソース

*天外魔境II 卍MARU
【てんがいまきょうつー まんじまる】
|ジャンル|RPG|CENTER:&amazon(B0000ZPTTM,image=https://img.atwikiimg.com/www26.atwiki.jp/gcmatome/attach/4718/2255/Tengai2_01.jpg,width=160)[[高解像度で見る>https://img.atwikiimg.com/www26.atwiki.jp/gcmatome/attach/4718/2255/Tengai2_01.jpg]] [[裏を見る>https://img.atwikiimg.com/www26.atwiki.jp/gcmatome/attach/4718/2256/Tengai2_02.jpg]]&br;&br;&amazon(B000COEKM8)|
|対応機種|PCエンジン スーパーCD-ROM2&br()ニンテンドーDS|~|
|メディア|【PCE】CD-ROM 1枚&br()【DS】512MbitDSカード|~|
|発売元|ハドソン|~|
|開発元|ハドソン&br()レッドカンパニー&br()アルファ・システム|~|
|発売日|【PCE】1992年3月26日&br()【DS】2006年3月6日|~|
|価格|【PCE】7,800円(税抜)&br()【DS】4,800円(税抜)|~|
|廉価版|【DS】ハドソン・ザ・ベスト&br()2007年3月15日/2,800円(税抜)|~|
|レーティング|【PCE】CERO:B(12歳以上対象)((PCエンジンアーカイブスで付与されたレーティングを記載。))&br()【DS】CERO:全年齢対象|~|
|配信|PCエンジンアーカイブス&br;2011年3月17日/838円(税10%込)|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|
|>|>|CENTER:''[[天外魔境シリーズ]]''|
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#contents(fromhere)
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**概要
前作『[[天外魔境 ZIRIA]]』(以下、ZIRIA)の続編。~
日本をモチーフにした架空の国ジパングのうち『ZIRIA』では描かれなかった、中部地方~西日本(九州・四国を除く)が舞台となっている。~
主人公は「火多の国」に住むイタズラ好きだが根は優しいガキ大将・卍丸。~
自分が「火の一族」の末裔と知り、各地にいる「火の一族」の末裔を探し、暴虐の限りを尽くす「根の一族」と戦い、各地に開花した暗黒ランを切るべく旅立つ。
//本数はネタバレなので
//---本作のエンディングで火の一族と根の一族の謎が解かれる事になる。根の一族はIIからだしここで出すのはなにかへんな気が

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**特徴
-30分に一度はイベントが発生する・24名の声優起用とCD容量をフルに生かした部分がウリ。プレイ時間もやりこみ無しで70時間前後というボリューム。
--前作同様キャラクターの数やイベント時のアニメーションは健在。
--ミュージックコンポーサーには久石譲、福田裕彦と言った名前が乗っている。
//妻を殺された憎しみが徐々に卍丸への歪んだ愛へ代わって行くデューク・ペペや、人を豚に変えて村人に世話をさせ、時にはそれを知らない人にも食わせた地獄釜の肉助、生まれたままの姿を見せてやると言って物凄い豹変をとげるはまぐり姫等、キャラクターのインパクトは相当なもの。
//ネタバレ&桝田省治節の項でもイベント内容を具体的には書いていないのでCO。
//敵・アイテム名は桝田省治節の項に移行。

-戦闘自体の難易度は高めだが、[[邪聖剣ネクロマンサー]]や[[ファンタシースターII>ファンタシースターII ~還らざる時の終わりに~]]のような凶悪なものではなくライトユーザーでも馴染み易い程良い難しさである。
--主人公の体の値(HP)が0になると敗走だが、敗走してもお金が減らされない等全滅のリスクがなく(前作は金半減だったが)、希少な非売品回復アイテムが所持していなければ宝箱から何度でも取れる等、救済措置がある。知らないと分からないが…。
//((ハズレに近いある霊薬が「技力を50%回復」になったとしても、その霊薬を無限に稼げる所がある、等。))←8種類ある霊薬の効果は4パターンのいずれかが割り振られるがそういったシステムについてゲーム内では明かされない。また回天丹が「所持してない場合何度も取れる」ことは知らないとわからない。
//一部評価点に移動

//ハドソンからの唯一の指示の記述は余談の項に移行。

-シリーズの他作品と同様に、P.H.チャダの著書『FAR EAST OF EDEN』を原作としている。これについてくわしくは[[前作の記事>天外魔境 ZIRIA]]を参照。
//「原作」に関してはIIだけでなくシリーズ全部に共通する話題なので、前作の記事に移動させました。

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**評価点
-当時の常識をはるかに超えた、充実したビジュアルとサウンド。
--頻繁にフルボイスのアニメイベントムービーが挿入され、またムービーのないイベントでもキャラクターが頻繁に喋る。
--ボス戦ではテレビ画面の半分ほどの大サイズでボスの姿が映し出され、常に動きつづける。ボスの攻撃時の演出もよく動く。戦闘前後の台詞はフルボイスである。
---ちなみに戦闘後のセリフには勝利後だけでなく敗北時のパターンも用意されている。負けるとボスにフルボイスで愚弄される。再戦時にも専用のメッセージで愚弄される細かさ。
--それにもかかわらず、当時の大容量ゲームとしては『ロードに関するストレスが少ない』のも評価されてよい。
---例えば、頻繁に繰り返されるザコ戦闘では背景を黒くし、エフェクトやBGMなども簡素にすることでCD読み込みを排除。カートリッジ媒体並に快適なロード時間を実現している。町や村の中では、基本的に町を出るまでノーロード。
---その一方で、イベントシーンやボス戦の直前では長めのCDロードが発生する。だがこれらは一過性のものであり、またこれからワクワクすることが起こる直前でのロードであるため、プレイヤーにもたらすストレスは少なくて済んでいる。

-個性豊かで魅力的な仲間達。またその個性が、特技やアイテムの所持量などのゲームシステムによっても現れている。
--主人公卍丸はプレイヤーの分身であるため、ほとんどセリフを喋らない。とあるイベントを除けば「母ちゃんおかわり!」「我が道に敵無し!」の2つだけ。その分卍丸が長台詞をしゃべる唯一のイベントは印象深く、天外魔境IIで最も感動したシーンに挙げるファンも多い。
--性能は直接攻撃よりだが平均的。各地で根の城から聖剣を解放するたびに新たな奥義を覚えていく。ラスボス戦では攻撃の要になる。通常プレイではあまり目にしないが、実は限界まで段を上げると素の素早さが1番高くなる。
--卍丸が初めて出会う火の一族であるカブキ団十郎は、当初は自己中心的な性格で、卍丸が直接頼んだ時に「苦労するのは嫌だ」といった理由で仲間にならない上に、卍丸が名を上げると勝手な発言と共に勝手に仲間になる。
--仲間になっても自分勝手な理由でパーティを離脱、各地で女を作る、天狗の巻物を盗む等ユーザの頭を悩ましてくれる。しかし卍丸に助けられる場面から自己のうぬぼれに反省しつつ、終盤は人に対する気遣いも見せるようになっていく。
--天才肌という設定の通り性能は万能型で、直接攻撃と術の両方をこなす。ただし後半は卍丸はおろか絹にすら総合攻撃力で抜かれてしまうため、補助系の術によるサポートや凍竜での追加効果による行動不能、奥義・悪態で敵の攻撃をひきつける係になる。
---ユーザからは圧倒的な人気だったようで、次回作の主人公に抜擢された。
--極楽太郎は典型的なパワータイプで、体の値と攻撃力が非常に高いが、最終盤まで術が一切使えない((極楽が低い段のうちは術の値が0のままなため。ストーリー上の理由はない。))。図体がでかいため道具(武具以外のアイテムの分類)の所持最大数が多いが((卍丸とカブキは6、極楽は9、絹が3。))、巻物はほとんど持てない。さらに極楽のみ、かばうコマンドを使うと味方全体が対象になる。
---見た目に反してパーティで一番の常識人。声を当てた赤星昇一郎氏の渋い名演もあって印象深いセリフが多い。ちなみに図体がでかすぎるため卍丸やカブキが装備するような普通の武器・防具は使えず、たらいや信楽焼きなどいろいろ変なものを装備して戦うことになる。
--パーティの紅一点である絹は、儚げな印象通り体の値と素の守備力が極端に低く道具を3つしか所持できないが、巻物を大量に所持可能で技(MPと同義)も高く、絹専用の防具の守備力が高い。両親の死の後に相手を傷つけないという誓いを立てているため、両手を純潔の鎖(武具を持物として使うと敵の攻撃力を下げる「月読」の効果)でつないでおり、直接攻撃と攻撃系の術が一切使用できない(ただし攻撃アイテムや特定の乗り物に乗ったとき専用の攻撃コマンドは使用可能)。ただし、終盤…。
//あるイベントで絹が怒り、純潔の鎖を破り、吹雪御前を倒してしまうほど強い。
//素での攻撃力は極楽の次に高かったりする、装備補正込でもカブキより高い。←ネタバレにつながる。
//しかしその代わりに、愛犬のシロが戦闘に参加して直接攻撃をしてくれるため足手まといという印象はない。←シロは離脱が早い上に、シロが活躍してもそれが絹のフォローにはつながらないのでCO。絹本人が後半強くなるがそういう話ではないだろうし
---ラピュタやトトロの主題歌を歌う井上あずみ氏が声を当てており、本職の声優さんとは違った透明感のあるか細い声がキャラにマッチしている。
//(若干棒読みなのが気になるが…)この辺物騒なので信用できるソース得られるまでCO 
--それ以外の登場人物(脇役とか敵とか)も非常に個性的である。

-絶妙な戦闘バランス。
--敗走のペナルティが宿に戻されるだけということもあってか、雑魚は強めに設定されており、余程レベルを上げない限りは一戦一戦全力で戦う必要がある。
---しかしプレイヤー側にも有利な点があり、本作の「火の勇者」は尋常でない回復力を持っているという設定のため、「状態異常になっている場合」以外は歩いているだけで徐々に体力、技が回復していく。段が上がった場合、体力も技も全回復する。
//特に終盤の吉備地方以降は更に強くなる。←吉備国、またそこが特に目立つわけでもないような
--ボスキャラは、''体力と守備力に定評があり''ほとんどが長期戦。敵の体力とこっちの技力を見て、ペース配分を考えないとあっさりとジリ貧負けになる。
---特に名無しの十八番は体力が''4000''と桁外れに高く((その前に戦う根の将軍(その地域を支配する大ボス)はまぐり姫の3倍強である。))、しかも体力1200以下になると使用する「守りを捨てて…」では''下手したら一発死級の強烈なダメージを出す''という、中盤最大の壁ボスになっている。
--しかし奥義と術をうまく駆使することで戦闘を有利に運ぶことができ、このあたりのバランスが絶妙。例として、
---凍竜等で敵を行動不能にさせた後、静乱斬((一騎打ちを行ない自分の攻撃、相手の攻撃を2~5回繰り返す技。))で一方的に必中の連続攻撃を叩き込み
---城壁(物理系攻撃を無効化)もしくは結界(術系攻撃を無効化)をかけた極楽でかばうを実行して味方全体を守る
---赤影(術使用者の分身が1~3体出現)で出現させた影に体力消費技を使わせたり、防御面で的として敵の攻撃を分散させたり等
--各キャラが持つ奥義は大半は無制限に使用可能だが、多大なデメリットを併せ持つものが多い。与えるダメージは''通常の4倍''だが使用者の体力を半減させる、''攻撃力・守備力・素早さを大幅に上昇させる''代わりに体力がどんどん減少する、等々。そのため使いどころを見極める必要もあるが、戦闘中は常に敵の体の値(HP)が表示されている(ラスボスですら!)ので、相手と自分の状態に応じた行動を考えることができる。
---これらの要素により、雑魚・ボス共に術・奥義をうまく使用すれば低段状態でも勝てる、経験値稼ぎをして段を上げれば誰でも簡単に勝てるという絶妙のバランスに仕上がっている。
--おまけに戦闘のテンポも良く、オプションでメッセージ速度を上げればさらに速くなる。ノーロードと合わせて段(レベル)上げもさほど苦にならない快適なプレイが楽しめる。

-乗り物が豊富である。船((たらい舟や落書きが実体化した舟、というものもある。))やトロッコなどといった普通なものから空飛ぶ岩や巨大蜘蛛が牽く馬(?)車といったファンタジー的な乗り物、更には初期は戦車だが変形して飛行機や潜水艇にもなる万能移動機械、大仏ロボ(奈良の大仏の正体である)、空飛ぶ巨大要塞などなど挙げていくとキリがなく非常にバリエーションに富んでいる
--乗り物の登場シーンも印象的なものが多く、落書きが実体化する場面や、大仏が輝き、設置されていた寺院を壊して移動を開始する場面などがムービーで表現されている。搭乗中もモノによっては豪快なアクションをやらかしてくれる。主砲で砲撃できたり、問答無用で敵を踏み潰したり、望むところへ一瞬でワープしたり…。

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**賛否両論点
''桝田省治節あふれる猥雑で生々しいイベントの数々''
-ゲームデザインを行った桝田省治自身が本ゲームのキーワードを「もっと下世話に、もっと猥雑に。」であると語っている。そのキーワードの通り、桝田省治節ともいうべきどこかエロティックなイベントの数々がこのゲーム独特の雰囲気を醸し出している。
#region(もっと下世話に、もっと猥雑にの例(ネタバレを含む))
--このゲームの目的は根の一族が各地に出現させた暗黒ランという巨大な植物((当初「暗黒卵」のつもりで「あんこくらん」と口頭で説明したが勘違いされ、結果出来上がった不気味な人面蘭がインパクト等の面で卵よりいいかもという事で採用されたとか。))を全滅させること。暗黒ランの目の前に行くと卍丸が暗黒ランに断ち切るビジュアルシーン(1本目と7本目の時のみ)が入るのだが、このとき卍丸は聖剣を暗黒ランに突き刺す(斬るのではなく突き刺す)。ちなみに、''蘭という花はその形状から女性器に例えられることもある。''つまりこのシーンの意味するところは…。ちなみに作者自ら公式攻略本でこれを語っている。
--尾張の弁天塔に弁天様を助けに行くイベントがあるのだが、ボスを倒した後の女中達、及び弁天様の会話が非常に意味深なものばかり。
---''一晩泊めてくれた後で「弁天様にはナイショよ」と言ってたり''、「耳と耳かきを比べたら、絶対気持ちいいのは耳のほうなんです。私、女に生まれて得をしたわ」と語りかけてきたり…。
---肝心の弁天様は胸元の大きく開いた和服を着こなし、目も眩むような美女((モデルは当時の宮沢りえらしい。PCE版では服の下から乳首の影が浮き出ており、さらにセクシャル。))。ちなみに『公式完全攻略絵巻』巻末の辞典によると、彼女は「ヘビが脱皮をするように転生を繰り返している」 「身長などを含む全ての容姿は、見た人の理想の姿に見える」らしい。ということはつまり…?彼女も2回目に話しかけると泊めてくれるのだが、その時のセリフは「あなたがあと五年早く生まれてれば、帰しゃしないんだけどねー」…どうやら、卍丸は''よっほど彼女に気に入られた''らしい。
--菊五郎という歌舞伎者のボスキャラがいて、和歌山城を乗っ取っているのだが、城内に謎の予定表が貼り出されていて、月:三 火:六 水:二 木:八 金:四、七 土:九 日: と書かれている。同じく和歌山城には女性が何人も捕まっており、「夜がこわい! このままでは体がこわれてしまう」「やつはケダモノよ………」という情報が聞ける。ちなみに女性たちは菊五郎に番号で呼ばれている。城中には男性もおり、「私はもう世の中に怖いモノなんか一つもありませんよ」とつぶやく。さらに詳しく聞き込んでいくと、女性からは「月曜日に割り振られている三番は女性たちの中にはいない、誰だろう?」という情報が聞ける。つまり、先述の男性も他の女性と同じく……。
//COLOR(red){''菊五郎はバイセクシャルで、先述の男性は他の女性達と同じく凌辱されているのである。''}
//他の記述はぼかしてるのにここだけオープンに書く必要ないだろ。
---小説版『天外魔境I・II架話 髑髏譚 -SKULL TALE-』では、菊五郎と百々地三太夫の花火が子供の頃の腐れ縁という設定で(花火は菊五郎がネの一族であることを知らなかった)、しかも菊五郎が年上の花火に初恋してしまい、ついには「やらせてくれ」と頼んだとか。もっとも花火は菊五郎を「尻ばかり触るスケベなガキ」としか見ていなかった模様。
--ヒロイン「絹」に関係する、大変印象深いあるイベントシーンがあるのだが、これもまた上記の暗黒ランと似たような意味を持たされている。こちらも作者自ら公式攻略本でその意味するところを語っている。
--''「肉の夢」「満開地獄」「人間牧場」「超絶真珠男」「夜の右手」「官能の横笛」「背徳の穴」''等と敵の雑魚キャラ名が凄まじい。子供には分からないと思われるあたりも絶妙だ。
--他にも、「人肉切包丁」や「抗夫の腹巻」等の武器・防具の名前のインパクトも相当なもの。特に豚装備は事情を知ると…。
#endregion

-所々で敵側が侵略地に起こす容赦ない仕打ち。
--桝田省治はこのゲーム製作にあたり、犯罪者や精神異常者に関する本を読み漁ったといわれている。それが「根の一族」の容赦ない仕打ちなどにも繋がっている。
--そんな「根の一族」の将軍たち(いわゆる中ボス)は、いずれも忘れられない強烈なキャラクターばかり。コミカルな者もいれば、プレイヤーの心胆を凍らせる、恐ろしい物語を展開してくれる者もいる。

-これらのグロ演出や下ネタはリアルな生々しさも本作の魅力の内とは言え、大きく人を選ぶ。

-グラフィックの進化と退化
--スーパーCD-ROM2専用ソフトとして制作されたのに、前作ZIRIAより通常戦闘シーンの背景はほぼ真っ黒の質素なものへと変わりデモシーンの背景も単色ベタ塗りが非常に多くなってしまっている(例:菊五郎登場・三太夫登場・極楽登場・絹登場・ニック・ペペ弁慶…要するにほとんど)。
---アクセスが快適になった代わりにグラフィックが簡素化されているということで、1進化して1退化した。
--スーパーシステムカードを購入させておきながら、全てにおいて演出面がパワーアップ…とはならなかった。
---アクセス軽減を優先したのだろうが、通常戦闘シーンの背景の有無をプレイヤーが選択できるようにするなど、色数が優れたPCエンジンの機能を発揮できるようなやり方は無かったのだろうか。

-徳(経験値)とステータスが固定されている
--どういうことかというと、例えば『卍丸が一人で100の徳を得た』場合、実はまだ出てきていない・一緒にいない仲間にもしっかり100の徳が計上されていて、仲間になった時にレベルを計算する…というシステムが採用されているのである。
---そのため他社のRPGのように『主人公にだけ集中して経験値を稼がせる』といった育成は不可能。「力の種」のような消費型のステータス上昇アイテムも存在しない。
--その代わりアイテムや奥義や巻物が豊富なのでカスタマイズ性はある。

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**問題点
-戦闘演出の長さ
--全体攻撃の術でも個々のエフェクトが入る。また必中ではないためそれも合わさってストレスになりがち。

-いくつかのバグ
--ボスを倒す前に倒した後のイベントが起こせたり、仲間離脱イベントと仲間がいる状態で起きるイベントの順番を違う状態で起こすことができ、場合によってはフリーズしてしまう。
--初期版に存在するバグには、&bold(){ゲーム開始時の状態によってはセーブが行えなくなる}というものも存在(詳しくはソース参照)。
// バッテリバックアップが一杯でセーブ出来る容量が残っていないときに、ファイル削除画面で天外2ファイル一個分の容量を空けて開始するというものらしい。
// 参考URL:http://workshop.game.coocan.jp/pceside/sittoku.htm#tengai2bug

-卍丸の奥義に差がありすぎる。奥義は必ずメリットとデメリットがあるのだが、どうにも調整不足で使える奥義・使えない奥義がハッキリしすぎている。
--ぶっちゃけ、「黒羽斬((敵1体に通常攻撃の2~2.5倍のダメージだが、使用後数ターン行動不能になる。))」しか使わなくて問題ない。敵の最後の一匹を倒せるターン時ならデメリットはないため、戦闘の数だけ「黒羽斬」の出番があると言っても過言ではない。
--「女彦斬((敵1体に通常攻撃の2倍のダメージだが、攻撃目標を倒せない場合、与えたダメージの半分が卍丸に返ってきてしまう。))」と「松虫斬((敵1体に『攻撃力+(攻撃力+防御力)/2』のダメージを与えられるが、次に卍丸が行動するまで防御力が半減してしまう。))」は「黒羽斬」と似た奥義だが黒羽斬より習得が遅い。そのうえ『卍丸がやられるとパーティが敗走する』このゲームにおいてはリスクとリターンが釣り合わない。これを使うくらいなら会心の一撃や連続攻撃が出る可能性のある通常攻撃のほうがマシかもしれない(操作もボタン連打してればいいだけなので楽である)。
--「静乱斬」は先述の通り上手く使うと有用だが、回数がランダムである上に途中で止めることができないため、下準備が必要かつ運用に細心の注意が求められる。良くも悪くもボス戦にしか必要ない。
--「三郎斬」に至っては本当に産廃で調整ミスと判断して差し支えない。
---当たれば一撃必殺という要は某国民的RPGの「ザキ」なのだが、当然ボスには当たらない。ザコ相手でもかなり低確率でしか決まらないので、よっぽどの低段プレイでもない限り「会心の一撃狙いで通常攻撃」のほうがマシだと思われる。
-結局、全体的に見てスタッフが『7つも特色のある奥義が思いつかなかった』事を露呈させただけなのではないだろうか。

-所々にチープなシナリオ、完成度
--発売当時は「50年は抜かれない」と豪語した作品だが、しかし細かい所のアラや、よく考えるとプレイヤーに違和感や疑問を感じさせる個所はそれなりにある。
--たとえば、終盤ある味方が退場してしまうのだが、その方法についていいアイデアが浮かばなかった事を発売直後の広井・桝田・岩崎3人による座談会で認めている。本来は感動的なものにしたかったのだろうが実際のゲームではかなり唐突な退場となってしまい、あまり印象に残る場面とはいいがたい。
--タイクーンや赤目村など、ノロくて長くだるいのにスキップできない会話の存在。
---タイクーンは海牛法師ばりにのろのろとした口調で、初回はともかく何度も聴くには耐えない。体験版を何度も遊んだプレイヤーは散々聞かされる。
---赤目村は最後の選択肢で念を押されるため、うっかりボタン連打したらまた聞かされてしまう。スタッフは聞き逃しのないように設定したのだと思うが、プレイヤーからしたら罠としか思えない。
--「ツノ王は卑怯な手を使ってくる」という情報があるが、肝心の手段は『一回目はやられたふりをしてその場で延長戦になる』だけ。別に奇襲攻撃や毒を付与してくるわけではない。
---最初のボス戦だから易しめにしたのだろうとはいえ、いささか拍子抜けである。それに村人はなぜそれを知っていたのか。
--とある女ボスを倒すと「実は主人公に好意を持っていた」ような発言をするのだが、事前にそれを示唆するような情報はまったく出てこず唐突感がぬぐえない。

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**総評
前作『ZIRIA』からより一層のボリュームと派手派手しさと胸に響くシナリオやキャラクター達を盛り込んだ。~
同時にRPGではほぼ慣習的であったレベル上げ重視のスタイルに対し、レベル上げをしなくてもやり方しだいで低レベルでもクリア可能なゲーム性を実現した。~
前作で打ち出された、要所に挟まれるムービーイベントや、表情豊かなCGとフルボイスで描かれる魅力的なキャラクターなど今の時代のRPGの先駆ともいえる要素は本作にて完成度を高められ、高い評価を獲得することとなった。

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**移植版
-[[PS2/GC>天外魔境II MANJI MARU (GC/PS2)]]/DS/PSPに移植/リメイク版がある。
--これらに共通する改良点として、商店での装備の能力値が見られるようになった。術の消費を戦闘中に確認可能になった。マップ移動中のダッシュが可能になった。
--PS2/GC版はグラフィックの3D化をはじめ、随所に手が加えられたリメイク版。凄まじいまでの低難易度化((段が上がりやすいためクリアまでのプレイ時間も大幅に短縮された。))や残虐表現をわずかに弱めたなどの変化(しかし村のメッセージの改変が中途半端に残っている,終盤のイベントでも断面を見せないが腕が飛ぶ程度の残虐性は残っている)により、評価は良くない。そのためか微妙な出来のリメイクとされた。
//(オリジナルではノーロードだったザコ敵との戦闘前後や町での散策中にも、長めのロードが頻繁に発生する、プレイ総時間は大幅に低下したが)。←PS2版だとしてもロードはそうは発生しません。プレイ時間が短縮されたこととも合致しません。
--DS版は一部のイベントを除いてオリジナルに忠実な移植が実現され、タッチペンによる弱・中・強攻撃や、2画面に対応した画面表示追加などを加えた移植版で、プレイ感覚はオリジナルに近い(タッチペンを一切使用しない操作も可能)。一部のイベント改変に関しては表現規制という大人の事情ゆえ仕方のないところである。
--PSPには、オムニバスソフト[[『天外魔境コレクション』>PCエンジン ベストコレクションシリーズ]]として移植(『ZIRIA』/本作/『風雲カブキ伝』/『カブキ一刀涼談』の4作を収録。)。また「PCエンジンアーカイブス」として単体でDL販売もされている。どちらも(一部表現の変更を除き)オリジナルプログラムをエミュレータでそのまま動かした内容。
---CEROレーティングはPS2/GC/DS版がCOLOR(black){CERO:A}(全年齢対象)、PSP版がCOLOR(green){''CERO:B''}(12歳以上対象)となっている。
---DS版とPSP版は共に現在プレミア化しているため、今からプレイするのであればPCエンジンアーカイブスか、後述のPCエンジンminiを推奨。
--なおこれらの移植版はいずれも、タイトルが「卍MARU」から「MANJI MARU」に変わっているほか、一部表現がオリジナル版と異なっている。詳しくは[[Wikipedia>https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E5%A4%96%E9%AD%94%E5%A2%83II_%E5%8D%8DMARU]]の「各機種版における違い」を参照(ネタバレなので要注意!)。

-2020年3月19日にコナミより発売の『[[PCエンジン mini>復刻版ミニゲーム機収録タイトルリンク#id_b5165ad6]]』に本作が収録されている。
--画面のフラッシュやごく一部のグラフィック、禁止ワードの修正といった細かい点をのぞけば上記のイベントやムービーは原作そのままになっており、限りなく原作に近い移植となっている。
--収録に伴い桝田省治氏、岩崎啓眞氏、蝦名寿昌氏への[[インタビュー記事>https://www.konami.com/games/pcemini/topics/jp/ja/topics_7]]が掲載された。

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**余談
-ハドソンからの唯一の指示が「制作費はいくらかけてもいいから発売日だけは守るように」だったという逸話がある。
--…だが結局発売日は守られなかった。「スーパーCD-ROM2とほぼ同時に発売し、普及に勢いをつける」という目論見が崩れてしまい、PCエンジン界全体にとっても痛い発売延期であった((PCエンジンFAN 1992.1号「…このソフトはただハドソンの年末商戦のドル箱ソフトであるだけではなく、スーパーCD-ROM2を普及させる意味で重要な位置を占めていたからだ。近年激戦のゲーム業界に置いて、この決定はPCE界にとって正直痛い…。」))。
--ちなみに開発始動が公表されたのが1990年5月号の『月刊PCエンジン』で、この頃はSUPER CD-ROM2の話は何も出ていなかったが、ハドソン内部ではCD-ROM2をバージョンアップさせてSRAMを拡張する企画が進んでおり、天外IIはこの新バージョン対応ソフトの第一弾にするつもりでいた((新バージョンの事は当然言えないので、SUPER CD-ROM2規格が公表されるまではノーマルのCD-ROM2用ソフトとして発表していた。))。

-「電撃PCエンジン」誌末期の付録「PCエンジンソフトカタログ」の総合評価において堂々の1位に選ばれている。
--「グラフィック」「シナリオ」「音楽」「お買い得度」の総合点で最高得点。ちなみに2位は『[[スナッチャー]]』3位が『[[ときめきメモリアル]]』であった。

-中井貴一氏主演のTBSのドラマ「運命の逆転 盗まれた企業秘密!」では『[[邪聖剣ネクロマンサー]]』がDQなみの超人気RPGで、本作がそれを越えるソフトという設定になっている。
--このドラマには高橋名人もゲスト出演しているが、名人曰く台詞のミス((マップがアップと誤植されており、役者もおかしいと思いつつそのまま収録してしまった。))を発見したもののすでに修正不可能な状況になっており、やむなくそのまま放送したとのこと。

-本作は本職の声優だけでなく、歌手や舞台女優からもセレクションして声を選んでいる。「予算を抑える」以外の目的でこういうセレクションを行うのは、当時としては前例の少ないことであった。
--歌手の井上あずみ氏を絹の声優に選んだのはゲームデザイナーの桝田省治氏だが、氏のイメージと違う声であった為、透き通った声が出せるような(そういう声しか出せないような)精神状態に無理矢理追い込んで、アフレコをさせた…と言う酷い話がある。
---このとき、イベントシーンでの相手役の声優(こちらは当時相応のベテランさんである)もとばっちりで何度も何度もアフレコをしなければならなかったため、カリカリしてあずみ氏も相当怒られたらしい。桝田省治氏曰く「あずみさんはきっと僕のことを大嫌いだと思う」とのこと。
---「そこまでやるか…」と言いたくなってしまうが、妥協をしたくなかったのだろう。出典は[[こちら。>http://www.alfasystem.net/a_m/column/sub.6.3.htm]]
--百々地三太夫のみこし役の柿沢美貴(本職は『戦え!イクサー1』の歌手)と花火役の木下千鶴子(本職は舞台女優)もその例である。
---この二人は後に『[[ラストハルマゲドン]](PCECD)』のハーピィ役・アンドロスフィンクス役でも起用された。木下千鶴子は2年ぶりの声優活動となっている。
---『カブキ一刀涼断』ではみこしがプレイアブルキャラとして参戦したが、こちらの声優はこおろぎさとみに変更された。

-桝田省治によると、百々地三太夫はあからさまにオタク対策で入れたキャラで「こんな露出の高い忍者がいるわけねーだろ!」と思いながら露出の高いキャラを作ったとのこと。
--ちなみに名称が「百々地三太夫」に決まるまでは「伊賀くノ一三人衆」と呼ばれていた。初期の構想ではパーティが揃わない前半部分でNPCとして戦闘に参加させる案もあった。

-恐怖のストーカーイベント「孝子の文」は広井王子の実体験(手紙だけでは済まず本人が来たとのこと)が元ネタ。

-後の岩崎氏の[[ブログ記事>http://www.highriskrevolution.com/wp/gamelife/2020/03/20/%e5%ae%9f%e7%8f%be%e3%81%97%e3%81%aa%e3%81%8b%e3%81%a3%e3%81%9f%e3%80%8e%e5%a4%a9%e5%a4%96%e2%85%a1%e3%80%8f%e3%81%ae%e3%82%a8%e3%83%b3%e3%83%87%e3%82%a3%e3%83%b3%e3%82%b0/]]で明らかにされた没案のエンディング。
#region(ネタバレ回避)
-「ラスボスを倒して地上に戻ると血の海が広がるだけの静まりかえった世界に四人とも絶望的になるが、やがてみんな何かを悟り仲間から外れて去っていき、最後に残された卍丸も一人で歩き出す」というのを考えたが、あまりにもダークということで速攻で却下されて「神の力でみんな生き返ってめでたしめでたし」というご都合主義極まりないハッピーエンドが採用された。
--「これじゃ作品のテーマも何もあったもんじゃない」「今考えてもお話を着陸させるポイントとしては(この案で)間違っていないと思う」と岩崎氏は述べているが、しかし同時に「当時の僕は若かったのだ」「どんだけデタラメなご都合主義だろうが、(何十時間も苦労した後の)ハッピーエンドはみんな大好きなのだ」とも述べている。
#endregion

-フィールド画面は季節の移り変わりでグラフィックが変わり、「冬は雪が積もっていて見つからなかったアイテムが春に行くと見つかる」などの仕掛けも考えられていたが、グラフィッカーがあまりの作業量に音を上げたことで最終的に言い出しっぺの桝田氏が折れてお蔵入りになった。他に城ごとにマップに特殊ギミックを入れるという案もあったが、これも作るのが大変という理由で没になった。

-本作の発売前にリリースされた『SUPER CD-ROM2体験ソフト集』に収録されてる体験版は火多の国の前半のツノ王とのボス戦でシナリオが終了するが、当時の雑誌インタビューで岩崎氏は「尾張までを体験版にしたかった」と語っており、体験版もデータ自体は尾張の国の一本目の暗黒ランを撃破する所までが(一応、遊べる状態で)入っている。

-タイトル画面の伸縮するタイトルロゴやパレット処理で回転する背景は、スーパーファミコンの回転拡大縮小機能に対抗する意味合いで取り入れられた。
--同様に体験版CD-ROMはSUPER CD-ROM2の起動画面がRUNボタンを押すと回転しながらフェードアウトしていくが、これはあらかじめ用意したパターンを書き換えているもの。

-2009年に三洋物産からパチンコが『CR天外魔境卍MARU MTH』、パチスロが『パチスロ天外魔境 卍MARU』としてホール導入された。
--声優陣キャスティングもオリジナルに準じており、原画などもオリジナルスタッフが起用されている。
//パチンコ、パチスロは当Wikiでは執筆禁止作品です。発売されたという事実のみを書くことは認められますが、執筆禁止作品の評価や詳述はお控えください。

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**その後の展開
-この後、『天外魔境』は『風雲カブキ伝』『ZERO』『第四の黙示録』と続く。
--その内のどれも正規ナンバリングタイトルでなく外伝扱いであった。今作のラスボス・EDの性質上直接の続きは作りにくかったのかもしれない。正規ナンバリングタイトルであるIIIはPCエンジン末期に雑誌で取りざたされており、現在開発中! となっていた。
--が、PCEがダメになってしまったのでPC-FXにて開発中! と情報が変わり、PC-FXも振るわなかったためIIIはお蔵入りしてしまう事になった。
--13年を経た2005年、待望のIIIが出ると言う事で大いに期待を寄せられたが、登場した『天外魔境III NAMIDA』はキャラクターデザインが当時公開していた物から大幅に変更され、シリーズを通して手がけてきた桝田省治が関わっていなかったためシリーズファンからの評価は芳しくないものとなっている。ちなみにI,IIとの関連は特にない。
---惜しまれながらも開発中止が決まったIIIではあるが、当時の電撃PCエンジンの記事によるとシナリオだけは既に出来上がっていたとされている。だが著作権の問題で本来IIIで使うはずだったシナリオが『NAMIDA』では使う事が出来なかったので、最初からシナリオを作り直さざるを得なかったという経緯がある。
---そのIIIで本来使われるはずだったシナリオは、桝田省治自らが執筆した小説「ハルカ 天空の邪馬台国」「ハルカ 炎天の邪馬台国」にて日の目を見る事になった。