*デア ラングリッサー 【であらんぐりっさー】 |ジャンル|シミュレーションRPG|&amazon(B000068I5S,image);| |対応機種|スーパーファミコン|~| |発売元|メサイヤ(日本コンピュータシステム)|~| |開発元|メサイヤ(日本コンピュータシステム)&br;プログラム: クロストーク|~| |発売日|1995年6月30日|~| |定価|10,800円(税別)|~| |配信|バーチャルコンソール【Wii】&br;2009年4月14日/800Wiiポイント|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |ポイント|ベースとなったMD版『II』から大幅進化&br;しかし処理速度は遅め|~| #contents() **概要 -名作SRPG『ラングリッサー』シリーズのMD版『II』をSFCに移植した作品。 -ただし移植と言っても大幅な改修が施されており、ほとんど別のゲームと言える程の内容になっている。 -マルチシナリオ採用、ゲームバランスの大幅な見直し、新曲の追加、さらにロウガやソニアといった新キャラも追加された。また小説版『II』に登場したオリジナルキャラのファイアスも本作に逆移植されている。 **ストーリー 前作『I』においてバルディア王国王子レディンと聖剣ラングリッサーによって、闇の皇子ボーゼルと混沌の神カオスが倒され、世界に平和が戻ってから数百年もの年月が流れた。~ そんな中、レイガルド帝国の皇帝ベルンハルトが、長らく封じられていた魔剣アルハザードを入手。復活した闇の皇子ボーゼル率いる闇の軍勢と同盟を結び、その強大な力によって世界各国へと侵攻を開始した。~ 魔剣アルハザードと皇帝ベルンハルト、そして帝国軍の力は圧倒的で、周囲の国々を次々と傘下に収めて行く。~ 一方その頃、レディンの子孫である青年エルウィンは、旅の途中で知り合ったヘインと共に当てのない旅をしていたのだが、立ち寄ったヘインの故郷の村において、青竜騎士団隊長レオン率いる帝国軍の襲撃を受けてしまう。~ 帝国軍の目的はヘインの幼馴染である少女リアナを捕らえる事。~ 何故レイガルド帝国がリアナを欲するのかは分からないが、エルウィンはヘインの懇願を受け、リアナを救う為に帝国軍へと立ち向かい、無事にリアナを救出。そして成り行きで帝国に敵対する光輝の軍勢に手を貸す事になるのだが、戦いの中でエルウィンの力とカリスマ性を認めたレオンもまた、力による統治こそが真の平和への近道なのだと、敵であるはずのエルウィンを帝国軍へと誘う。~ 光輝の軍勢の一員として帝国と戦い続けるのか、かつての味方を敵に回してでも帝国軍に加わるのか…果たしてエルウィンはどのような道を選ぶのか…。 **評価点 -マルチシナリオが採用された --MD版『II』では光輝ルートのみの一本道だったのだが、本作では光輝ルート以外にレイガルド帝国と手を組む帝国ルート、闇の軍勢の一員となる闇ルート、そしてこの3勢力全てを敵に回す独立軍ルートの4つの勢力の物語を楽しめるようになった。 --さらに光輝ルートと帝国ルートにもそれぞれ大まかに2つのルートが用意されており((厳密に言うと特定のキャラの生死によってさらに細かく分岐するのだが、シナリオの内容はほとんど変わらないので除いた。))、合計6つのルートが用意されている。 --これによりMD版『II』と比較してボリュームが大幅に増加。1つのルートだけでも結構なボリュームがあるので、非常に長く楽しめる作品となった。 --これはMD版『II』のアンケート葉書において「光輝だけじゃなくて帝国や闇の物語も見てみたかった」という意見があったからとのこと。 --また裏技扱いだが、レベルや装備を維持したまま好きなシナリオを遊べる「シナリオセレクトモード」が搭載されているので、周回プレイもそれ程苦にならないようになっている。 -ただの勧善懲悪ではない、各勢力ごとに込められた『想い』を描いた秀逸なシナリオ --物語を進める中で、闇の軍勢を手を組み各国を支配下に置き、逆らう者は皆殺しにするという帝国の非道さを思い知らされる事になるのだが、これはいつまで経っても争いが無くならないこの世界から、少しでも早く争いを無くす為だという皇帝ベルンハルトの想い故だという事が明らかになっていく。 --やり方はどうあれ、一見すると酷い事をしているようにしか見えない、というか実際に酷い事をしている((例えばリアナを連れ去ろうとした際に、抵抗した自警団を皆殺しにする、エルウィンたちの足止めの為だけに周辺地域への被害を一切省みずに、現れた魔物の大群を敢えて放置して立ち去るなど。))のだが…とにかく帝国なりに争いが無くならない世界を平和にしようと尽力しているのである。 --また、どう考えても悪党にしか見えない闇の軍勢もまた、「自分たちが魔族だというだけで人間たちに長年迫害を受け続けてきた」という経歴があり、彼らなりに全うな戦う理由が存在している。他の勢力のルートではただの悪人にしか見えないボーゼルもまた、独立軍ルートでは長年迫害を受け続けた闇の一族を、彼なりにどうにか救おうとしていた事が描かれているのである。 --さらにこれら3勢力全てを敵に回してでも戦おうとする独立軍ルートでもまた、自分が覇王となって大陸を統一する事で「光輝や帝国は人間だけの、闇は魔族だけの世界を作ろうとするだろうが、俺たちなら人間と魔族が共存出来る世界を作れる」という、エルウィンの強い信念や想いが秀逸に描かれている。 --光輝ルートは光輝ルートで「力で脅して屈服させて掴み取る平和なんて間違ってる」という名目の下で帝国と戦う事になるのだが、「そんなぬるいやり方で平和を掴めるか」というレオンやベルンハルトの言い分もある意味正当な物ではあり、どちらが正義でどちらが悪かというのは簡単に議論し切れる物では無い。 --どの勢力の言い分もきちんと筋が通っており、単純な勧善懲悪の物語になっていないのがポイント。話してみると決して悪い連中ばかりでは無いのだが、それでも自分達の正義を押し通す為には戦って倒さなければならない…これによりキャラに感情移入しやすくなり、物語に「深み」が増しているのである。 -オリジナルキャラのロウガ、ソニア、ファイアスの追加 --ロウガは元々MD版『II』の皇帝ベルンハルトのデザインとして作られた物が没になった物を、本作において新規キャラ用として採用された物なんだそうな。 --ソニアはロウガの父違いの妹で、人間と魔族の混血の少女。人間たちに迫害された恨みから闇の軍勢に加わっているという経歴を持つ。 --ファイアスは元々小説版『II』に登場したオリジナルキャラで、エルウィンの家族を殺した仇でもある。本作でも光輝ルートにおいて、闇の軍勢の一員としてエルウィンの前に立ちはだかる。 -大幅に見直されたゲームバランス --MD版『II』はバランス的には結構シビアであり、難易度は高めで万人向けとは言えない作品だったのだが、本作では光輝ルートにおいてはかなり簡単に進めるようになった。 --とはいえ簡単になったからと言って、何も考えずにゴリ押し出来る程甘くはないのだが。 --新たに追加された帝国、闇、独立ルートは難易度が高く万人向けとは言えないが、シナリオセレクトモードがあるのでクリアだけならそれほど苦労はしない。この辺は後述の問題点で解説していく。 **問題点 -敵軍行動時の処理速度が遅い --これはSFCというハードの性能上仕方が無い事ではあるのだが、とにかく敵の行動ターンの時に敵軍の思考速度、処理速度が遅いのである。 --具体的には''「ユニット1つ動かすだけで3秒以上かかるなんて事はザラ」''というレベル。たった3秒?と思うかもしれないが、本作のように1つのステージで大量のユニットが存在するゲームにおいては致命的な遅さだと言える。塵も積もれば山となるのだ。 --FX版では大幅に改善されており、かなり快適に遊べるようになっている。 //バーチャルコンソール版は持っていないので未確認。知ってる方は改善の有無を追記お願いします。 -新キャラのファイアスの扱いについて --小説版『II』では女性だったのだが、何故か本作では男性になっている。小説版を知っている人の中には違和感を感じた人も多い事だろう。 --また顔グラフィックも新規に用意された物ではなく、汎用敵ユニットのバンパイアロードからそっくりそのまま流用した物である。 --しかもファイアス自身も思わせぶりで登場した割には、光輝ルートの中盤で少し出番があるだけで、あっさりと退場してしまう。他のルートでは登場すらしないのである。 --折角小説版から逆移植したキャラなだけに、このモブ同然の扱いはあまりにも勿体無い。光輝ルートでのエルウィンとの因縁だけでなく、エルウィンが闇の軍勢に加担した際の2人の確執といった物語を、もっと壮大に描けなかった物だろうか。 -一度でも撃破された味方ユニットの後味の悪いバッドエンディング --本作では味方ユニットが撃破されても、ゲーム進行の上では特にペナルティは無いのだが、一度でも撃破された味方ユニットはエンディングでの後日談が酷い有様になる。 --全てのステージで撤退即ゲームオーバーになるエルウィンは絶対にバッドエンドにならないのだが、他のキャラだと全員が死亡、行方不明といった後味の悪い後日談が描かれてしまう。 --これは『I』では存在しなかった問題点であり、『III』の追加シナリオにおいてエルウィンがこの問題点をレディンに指摘された際に「それだけ俺たちの方が凝ってるって事だろうが」と文句を言うシーンがあるのだが、力の入れる場所を間違えているのではないだろうか。 --これによって''「エルウィン以外は別に撃破されても特にペナルティは無いが、絶対に誰1人として撃破が許されない」''というおかしな状況になってしまっているのである。その為注意していないと撃破された事に気付かないまま、エンディングを迎えてしまった…という事も充分有り得る。 --そしてそのキャラの撤退数は、''エンディングまで一切確認する事が出来ない。''さらに撤退したままセーブしてしまうと、''そのセーブデータでは二度と撤退数をリセット出来ない''ので取り返しが付かない事態に。後味の悪い後日談が気に入らなければ、ゲームを最初からやり直すしかない。 -光輝ルート以外での難易度の高さ --前述の通り光輝ルートではMD版『II』と比較して、かなり難易度が低く抑えられているのだが、他の3つのルートでは一転してSLG初心者お断りの厳しい難易度になる。 --シナリオセレクトモードを駆使すれば無双は容易なのだが、使わずにまともに進めようとした場合、いきなり帝国軍の最初のシナリオから敵の強さが急激に跳ね上がるのである。SRPGに慣れていない人だと、ここで詰まってしまう人も多いのではないだろうか。特に独立軍はシリーズ屈指の高難易度。 --決して理不尽過ぎる難易度ではなく、どの勢力でも戦力のバランスを考えてきちんと計画的にキャラを育成し、きちんと戦略を立てて戦えば必ず勝てるという絶妙なバランスに調整されているのだが、折角マルチシナリオを売りにしているのだから、全ての勢力で万人向けに遊べるようにしても良かったのではないだろうか。 **総評 -難易度はともかくシステムとしては既に完成されていたMD版『II』を、さらに遊びやすく進化させた名作。 -前述の通り光輝以外のルートでの尖った難易度は人を選ぶかもしれないが、それでも特に目立ったバグも無く、シナリオも非常に秀逸。 -現在はバーチャルコンソールで安価で配信されているので、興味を持った方は遊んでみては如何だろうか。 &br; ---- *デア ラングリッサーFX 【であらんぐりっさー えふえっくす】 |ジャンル|シミュレーションRPG|&amazon(B00015HNOK,image);| |対応機種|PC-FX|~| |発売元|日本電気ホームエレクトロニクス|~| |開発元|メサイヤ(日本コンピュータシステム)&br;プログラム: :クロストーク|~| |発売日|1996年4月26日|~| |定価|7,800円(税別)|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良移植''|~| |ポイント|SFC版からさらに大幅進化|~| **概要(FX) -SFC版をPC-FXに移植した作品。 -当時PSやSSが既に台頭していた中で、両者と比較して敢えて普及率が低いFXでの移植となった。 -しかしその優れた完成度は、まさに正当進化とも言える程の代物になっている。 **評価点(FX) -アニメーションが大量に追加 --PSやSSに比べて唯一勝っていると言われている、FXのアニメ描写機能を最大限に活かした、とても出来のよいアニメが要所で流れるようになった。 -豪華声優陣による熱演 --エルウィン役に草尾毅氏、ヘイン役に山口勝平氏、リアナ役に國府田マリ子氏など、全てのメインキャラに非常に豪華な顔ぶれが揃っている。 --あまり出番のない追加キャラのファイアスにも、ちゃんと声が当てられている程。担当声優は沼田祐介氏。 --しかも「キャラのイメージに声が合っていない」「声優の演技が棒読み」というケースが全く見受けられない。余程念入りにオーディションでの検証を行ったのだろう。 --魔法を使う際の掛け声にすら、メインキャラほぼ全員分の声が入っている程。 -CD音源を活かしたBGMの大幅アレンジ --メディアがCD-ROMになった事で、楽器による「生の演奏」をBGMとして使う事が可能となった。そのBGMのアレンジがとても素晴らしく、聴いていて全く違和感が無い。 --生演奏の収録故にどうしても曲がループせずに途中で途切れてしまうのだが、これは仕方が無いとしか言えないだろう。 -処理速度の大幅な改善 --これがSFC版からの最大の改善点だと言っても過言ではない。 --SFC版では敵軍フェイズの時に、敵のユニットが1つ動くだけで3秒近くかかっていたのが、本作ではほぼ一瞬で動くようになり、非常にテンポ良く遊べるようになった。その処理速度はまさに「爆速」と言っても差し支えない程。 --SFC版をやり込んだ人たちの中には、あまりの速さに驚いた人も多いのではないだろうか。 -光輝ルートにおいて、リアナとシェリーがエルウィンに告白するイベントが追加された --ただし『III』以降の作品と違い、エルウィンと結ばれるのはリアナだけなのだが…。 **問題点(FX) -セーブデータの作成に、FX本体の容量を全て使ってしまう --その為他のゲームのセーブデータを作りたい場合は、別売りのメモリーユニットを用意しなければならない。 -追加シナリオが一切無い --前述のリアナとシェリーの告白イベント以外は、シナリオ面においてはほぼSFC版のベタ移植に過ぎないのである。 --これは容量的にかなり厳しいと思われ、仕方が無かったのかもしれないが…。 **総評(FX) -まさに正当進化と言っても差支えが無い、良移植のお手本とも言うべき作品。 -特に目立ったバグも無く、文句無しに名作と呼ぶに相応しい作品であり、今でも本作を「シリーズ最高傑作」と称する人までいる程。 -当時の電撃PCエンジンにおいて大々的に宣伝され、PSやSSに押され苦戦していたPC-FXを多少は盛り上げたとされ、本作の為だけに本体を買ったという人も多いようだが、残念ながらFXを爆発的に普及させるまでには至らなかった。 -これはFXの作品全てに言える事なのだが、大手量販店でしかまともに販売されず、小さな店舗では取り扱ってすら貰えなかったというケースが後を絶たなかった。まさに歴史の陰に埋もれた惜しい作品だとしか言いようが無い。 -現在はゲームアーカイブスやバーチャルコンソールでも配信されていないので、本作を遊びたければ入手困難だが本体とソフトを探すしかない。 **その後の展開(FX) -後に『I』とのカップリング移植を果たしたPS版が『ラングリッサーI&II』というタイトルで発売されたのだが、こちらはFX版と比較して大幅な劣化移植となってしまった。 --FX版をやり込んだ人たちから「PS版はゴミ」「FX本体を買ってでもFX版を遊べ」とまで言われてしまう程。 **余談(FX) -本作の製作が発表された当時は、レディン役に堀川亮(現:堀川りょう)氏、ジークハルト役に江原正士氏が起用される事が大々的に発表されたのだが、結局両者共に声無しキャラに変更になってしまった。 --メーカーからの公式発表は無いが、元々両者共にほとんど出番が無い上に、FX版はかなり限界まで容量を使い切ってしまっているという事情から、止むを得ず声無しキャラにしたと思われる。