シャイニング・フォースIII
シナリオ1 王都の巨神 / シナリオ2 狙われた神子 / シナリオ3 氷壁の邪神宮
【しゃいにんぐふぉーすすりー しなりおわん おうとのきょしん】
【しゃいにんぐふぉーすすりー しなりおつー ねらわれたみこ】
【しゃいにんぐふぉーすすりー しなりおすりー ひょうへきのじゃしんきゅう】
ジャンル
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シミュレーションRPG
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対応機種
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セガサターン
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発売元
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セガ・エンタープライゼス
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開発元
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キャメロット
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定価
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(3作とも)4,800円
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判定
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なし
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ポイント
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シリーズ集大成、セーブ引継ぎ有りの三部作 『ホーリィアーク』ベースにキャメロット色を加えたシナリオ
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備考
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ソフト付属の応募券送付でプレミアムディスクが貰えるキャンペーンあり
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シナリオ1:1997年12月11日発売
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シナリオ2:1998年4月29日発売
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シナリオ3:1998年9月23日発売
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シャイニングシリーズ
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概要
「フォースシリーズ」の流れをくむSRPGであり、外伝系を除くと3作目にあたる。当初から全3部作でのリリースが決定されていて、「シンクロニシティ・システム」(後述)により各シナリオが連動する作りになっている。
物語としては、「シャイニングシリーズ」の前作である『シャイニング・ザ・ホーリィアーク』(「フォースシリーズ」ではなく、ジャンルはRPG)の続編であり、同作品の約10年後の世界を舞台とする。
なお、同作品では主人公の1人「ジュリアン」が、一般市民役として登場していた。
プラットフォームがセガサターンに移行し、マップや戦闘シーンには当時の流行りだった3DCGが用いられている。
キャラクターデザインは山之内真と梶山浩の2名。BGMは桜庭統が担当している。
キャラデザについては両名とも自分の作風をいじらず、ありのままの個性が発揮されている。それらが同じ作品内にしれっと同居していて、初見では何かと驚かされる。
※左が山之内氏デザイン、右が梶山氏デザインのキャラクター。 顔パーツのバランスなどに作風の違いが出ている。
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特徴
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ベースのシステムは過去のフォースシリーズの形式を踏襲している。転職や成長率などの仕様は『フォース2』に近い。
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移動コストや戦闘結果に用いる計算式が大きく変わっていたり、確率で発動する「反撃」や「必殺技」などの要素は増えたりしたが、基本的にはほぼ同じといっていい。
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3部作ラストの『シナリオ3』では最上級職が登場し、各キャラクターにもう一度転職の機会ができた。
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武器種が大幅に増加。剣・槍・斧・弓といった大区分から更に細かくカテゴリがある。
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例えば剣系は、ソード・レイピア・ブレード・ナイフの4種。ソードは性能に安定感があり、レイピアは素早さパラメータボーナス付き、ブレードは必殺技の威力が高く、ナイフは1~2マスの射程を持つ。
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3部作はすべて1本のソフトとして独立しているが、それぞれに別の主人公が存在し、同一時間軸のストーリーを異なる視点で追っていく。時には別のシナリオの主人公同士が同じ場所に居合わせたり、ある主人公の行動が別のシナリオに影響を与えたりする。このシナリオ間のつながりを「シンクロニシティ・システム」と呼ぶ。
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後発のシナリオでは先発のシナリオのセーブデータを引き継ぎ、育成したキャラクターデータやシンクロニシティのフラグ情報などを継承できる。
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本システムによる他シナリオへの影響は、アイテムの入手や仲間になるキャラクターの変化などが中心であり、ストーリーが大幅に変わるような事はない。
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協力して同じ敵を倒したり、アイテムや魔法で回復したりすると、味方キャラクター間に友情が芽生え、隣接した際に支援効果が発生する。効果の種類は兵種によって様々。
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友情レベルは4段階あり、それぞれ「友情関係」「信頼関係」「以心伝心」「
ラブラブ
」。段階が上がるほど効果量も増え、4段階目では1マス離れた場所でも支援効果が届く。
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戦闘でキャラクターが倒されてしまうと友情レベルが下がる。敗北数カウントを除けば、シリーズ初の死亡ペナルティである。
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二つ以上の場所で戦闘を同時進行させる「二元中継マップ戦闘」が導入された。
評価点
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シリーズのいい所を継承しつつ、細かい部分に調整が加わる事で完成度が上がっている。
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本作のゲームバランスも、無難にして安定感のあるいつものフォースシリーズそのもの。慣れればリターンを縛っても充分クリアできる良調整である。
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ダメージ量や必殺率・回避率に影響を及ぼす「武器(種族)相性」、元々のユニット固有値に加え装備品によって調整もできる「属性耐性」、一つの武器系統を習熟するほど戦闘に有利な補正のかかる「武器熟練度」などといった要素が追加。これらは、特徴に挙げた「武器種の増加」と程よい相乗効果を発揮する。
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過去作で冷遇傾向にあった攻撃魔法の利用価値も上がった。
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魔法に関しては追加装備で行使可能になる魔法もあるほか、装備による魔法威力の上方修正やキャラクター固有の魔法修正も加味されるので、魔法の威力強化がレベルアップによる新魔法の習得以外手段のなかったフォースシリーズ過去作に比べるとかなり改善されている。
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必殺技演出などが増え、映像面が強化された。必殺技と魔法にはボイスも付き、戦闘の彩りはより華やかに。
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友情支援システムは公式設定やストーリー展開と全く無関係に成立する。気に入ったキャラ同士でコンビを組ませて戦わせるといったキャラへの思い入れをシステム側が掬い上げてくれるため、入れ込んで遊ぶ層には好評。
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既婚者OK、同性OK、人外OK、ロボットOKの超フリーダムな交友関係が繰り広げられる様はある意味ギャグの領域である。いろいろな種族のキャラが出てくるというシリーズの特徴が、意外な方向に進化を遂げた。
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その反面、素早さの順に行動が固定されるシステム上、特定の組み合わせを狙うのがやや面倒という欠点もある。
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また、友情支援効果を得るためにはどうしても密集する陣形になるため範囲魔法を喰らいやすいという点にも留意する必要があるため、その点も踏まえての戦略や戦術を立てる必要性も出てくることになる。
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桜庭統氏によるBGMは非常に評価が高い。
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共和国・帝国・傭兵といった各陣営ごとにテーマ曲が存在し、戦闘シーンでも共通したメロディが用いられておりとても効果的に使われている。
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また転職すると戦闘BGMも変化するというギミックも。
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ワルキューレ・レインブラッドなどといった強敵にもテーマ曲が存在し、その登場を強く印象づけてくれる。
問題点
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変化する地形やダメージゾーンといったギミック付き戦闘マップの一部は、演出等が長くダレる。二元中継マップもダルさが勝る事が多い。
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シナリオ進行によってはNPCが仲間に加わるが、射程内に敵が入ると問答無用で突撃するなど、AIの頭が絶望的に悪い。
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クラスチェンジを行うとキャラクターの顔グラフィックが一新される。基本的には嬉しい要素のはずだが、その一部に問題がある。
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『シナリオ2』のキャラクターたちは下級職から上級職に転職しても細かいパーツ換えや色違い程度の差でしかなく、『シナリオ1』のキャラクターと比べて冷遇されている。
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最上級職へ転職した際のグラフィックのクオリティがバラつき過ぎている。美化する者、劣化する者、(マイナス方向に)壮絶な変貌を遂げる者…その悲喜こもごもは、ファンの間でも語り草となった。
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ショップでの買い物の終わり際に、ランダムで店主に呼び止められて「超掘り出し物」を見せてもらえるというシステムが『ホーリィアーク』から続投しているが、「フォースシリーズ」は同じ町に長く留まらないのでシステムとの相性が悪い。取りこぼしを防ぐには店主とのムダな会話を繰り返すハメになる。
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本シリーズではよくある事だが、キャラクターの心情面の掘り下げはかなりあっさりしている。
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中でも、『シナリオ3』終盤での恋愛絡みのエピソードは、描写不足もあって感情移入しにくいとの意見が多い。
シナリオについて
『ホーリィアーク』の設定を引き継いだ路線のシナリオであり、「イノベータ」「ヒュードル」といった共通のキーワードも登場する。
古くからその地方を支配していた「帝国」と、独立戦争を経て帝国から分離する形で建国した「共和国」の2国間を中心に、第三勢力である怪しげな宗教集団や中立の商業国家などを交えたスケールの大きい物語が展開。『シナリオ1』は共和国の若き軍人シンビオス、『シナリオ2』は帝国の第3王子メディオン、『シナリオ3』はいずれの集団にも帰属しない流れ者の傭兵ジュリアンが主人公である。
ゲーム開始当初は2大国間の情勢が不安定な状況で始まり、そこに付け込んで謎の宗教軍が暗躍するシナリオ運びとなっている。水面下で政治的思惑の交差する中、立場の異なる主人公たちそれぞれの視点から事件を追っていき、最後には互いに力を合わせて元凶の1つであるヒュードルを打ち倒す。
本作のシナリオ面は、『ホーリィアーク』ゆずりの複雑な背景設定とお堅い雰囲気、キャメロット制RPGに多く見られる不思議な日本語センスのテキスト、シリーズにしばしば見られるおちゃらけギャグなどの混じり合った、一種独特の仕上がりとなっている。
また全三部作というボリュームもあって、人名・地名・背景設定など固有名詞の数がとにかく多い。まだ物語に慣れていない『シナリオ1』の冒頭イベントから繰り広げられる、多数のキャラクターによる固有名詞全開トークの乗りに初回からついていけるプレイヤーは稀である。
3部作の功罪
評価点
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シンクロニシティ・システムの分岐フラグが良い影響と悪い影響のどちらに働くかを渦中に読みきるのは難しく、次のシナリオをプレイする際にはそれなりのサプライズがあった。おおまかには成功した部類に入るだろう。
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『シナリオ3』の中盤に、各シナリオの主人公が勢ぞろいして修羅場を打開するイベントシーンがある。2つのシナリオをクリアしてきたプレイヤーの中には、ここが一番盛り上がるとする人も。
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リリースを重ねるごとに細かくシステム改善・機能追加がなされている。
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例えば、『シナリオ2』から自軍の拠点に「人名事典」が設置された。固有名詞の多さや話の複雑さから、特に初周では物語の全貌が把握しにくいという評判を受けての追加要素と思われる。
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『シナリオ1』にあった「そのキャラで初めて友情支援4レベルが成立すると、他のキャラクターとの友情レベルが下がる現象」なども修正された。
問題点
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SRPGとしては太っ腹な回復魔法であるオーラLv4(味方全体全回復)のコストバランスが、『シナリオ3』で崩れてしまう。僧侶系ユニットの最大MPが、最上級職の追加により大幅に引き上げられる事が主な原因。
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シナリオの絡みの都合上、出入りの激しい味方キャラクターがいる(『シナリオ2』の
伝書鳩鳥人ゼロ)。彼の所属する軍で空を飛べるユニットは彼1人しかいないので、その育成が面倒になるというのは辛い。
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フォースシリーズの主人公は伝統的に「…」以外喋らないが、本作では他シナリオで登場する場合は普通にセリフが表示される(「喋らない」のではなく、「表示されない」だけだった)。これには「結局わかってしまうのだったら表示しないようにする意味がない、全編セリフ付きにしてくれて良かった」との批判があった。
賛否両論点
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個々のシナリオは単独のソフトとして充分なボリュームがあり、各シナリオ間のつながりも楽しめる事を考えると単純に超大作を遊べると解釈できる。作品自体を気に入った人にとっては嬉しいが、逆に「長すぎる」「3本分の値段を考慮すると高い」ともとれる。
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ほぼ5ヶ月おきというリリース間隔を長いととるか短いととるかは人それぞれ。
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『シナリオ1』時点ではシリーズの伝統に則ってカメラ位置が味方キャラの斜め後ろに置かれていたが、『シナリオ2』以降、キャラの前面に回り込むカメラワークも増えた。
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しかしこの変更により、それまで目立たなかった『シナリオ1』キャラの戦闘用ポリゴンモデルの粗(顔テクスチャなど)が際立つようになった。カメラ自体は改良点なのだが、仇にもなってしまう結果に。
総評
人によっては十分なほどの良作だが、大ボリューム三部作という構成をどう見るか次第でもある。
ゲーム自体は非常にとっつきやすく、フォースシリーズの集大成として細かい部分まで行き届いた出来である。システムもSRPGの中では簡潔な方であり、難易度も人を選ばない万人向けのもの。つまりプレイにあたってのセオリーを習得しやすい訳だが、早い段階でゲームに慣れてしまい後半のプレイが惰性に陥りやすいという欠点もある。
各シナリオがゲームソフトとして独立しているとはいえストーリーはつながっているので、本作をプレイするならばできれば3本すべて制覇するのが望ましい。しかしそのモチベーションが最後まで持続するかどうか、ここが人による。
本来評価点でもある大ボリュームという特徴は、個人的な合う・合わないの差をよりハッキリさせる方向に働く。本作に対し「こういう人にお勧め」とはっきり割り切るのは難しく、良くも悪くもプレイヤーの好みが最終的な評価を左右する事になるだろう。
その他
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『シナリオ2』の出荷本数は『シナリオ1』よりも絞られていたのか、微妙なプレミアがついてしまった。また海外では、シナリオ1のみ発売。
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3作すべて購入して説明書に付いている応募券をハガキに添付しメーカーに送ると、戦闘シーン用のポリゴンモデル鑑賞モードやシナリオ3のバックアップデータ作成、エキストラバトルなどを収録した「プレミアムディスク」が貰えるというキャンペーンが行われていた。
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ちなみにこのエキストラバトルでは、最上級職への転職時に作画崩壊を起こした一部キャラの顔グラフィックが直っている。
左が最上級職転職前で、右が転職後。
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プレミアムディスクではこのように直された。
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その後の展開
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本作でははっきりと描かずに思わせぶりなままで終わるエピソードが、エンディングを始め、いくつか見受けられる。しかし、結局本作の設定を引き継ぐ後続作品は出ないまま、シャイニングシリーズはPS2系列で方向性を新たにした展開が進められていった。
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また「SRPG系のシリーズ作品」というくくりでも、本作以降は長らくご無沙汰する事となる。
最終更新:2025年05月04日 14:18