シャイニング・ザ・ホーリィアーク
【しゃいにんぐ・ざ・ほーりぃあーく】
ジャンル
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RPG
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対応機種
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セガサターン
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発売元
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セガ・エンタープライゼス
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開発元
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ソニック
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発売日
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1996年12月20日
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定価
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5,800円
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判定
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なし
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ポイント
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ライト派3DダンジョンRPG
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シャイニングシリーズ
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概要
「シャイニング」シリーズの一作。
初代『シャイニング&ザ・ダクネス』以来久しぶりの3DダンジョンRPGであり、その後継作に近い位置付けになる。
世界の創造主が地上に遣わした、憑依したものに超人的な能力を与える「スピリット」を巡る物語。過去シリーズでおなじみのパルメキア大陸の一地方である、エンリッチ王国を舞台とする。
キャラクターデザインは山之内真、BGMは桜庭統が担当している。
システム
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町やダンジョンはすべて3Dで描かれていて、十字キーの左右で旋回、上で前進という操作スタイルをとっている。
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場所の移動は、ワールドマップで行き先を指定して行う。快適。
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ダンジョンは謎解き要素を含む構造になっている。高低差や立体交差などもありマップは割りと複雑だが、オートマッピング機能付き。
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カニ歩き、後ろ歩き、ダッシュといった特殊移動が実装されていて、(多少イメージが悪いかもしれないが)移動しやすい。また、これらを駆使しないと解けない仕掛けなどもある。
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戦闘
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基本的にはごくごくベーシックな「剣と魔法」の、ランダムエンカウント方式・ターン制戦闘のRPG。
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エンカウント時のモンスター登場演出中に、「ピクシーアタック」で先制攻撃を行う事ができる。迎撃に成功すると、ヒットさせたピクシーの人数に応じて経験値やお金、アイテムドロップ率などにボーナス補正が加わる。
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ピクシーたちは上・下・左・右・前の5方向に対応していて、LRで選択し、ボタンで発射する。5種族がそれぞれ10匹ずつ、各地の宝箱などに隠されている。冒険の助けとして非常に有効なので、隠しアイテム探しに自然と熱が入る。
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通常攻撃の際に確率で必殺技が発動する事があり、ダメージ値が増えたり、睡眠などの追加効果がついたりする。任意発動はできないが、レベルアップや装備で発動率を高める事はできる。
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主人公パーティの初期メンバー三人は、序盤のイベントで「倒されても死なない体」になる。倒されても戦闘が終わればHP1で復活するため、全滅しにくい。
評価点
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本作のエンカウント率は高く強い雑魚も多いが、理解しやすくメリットも大きいピクシーアタックがそのストレスを緩和してくれる。ピクシー集めという収集欲につながる点も良かった。
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エンカウント演出も含め、敵味方ともよく動く。見ていて楽しい。
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天井から降ってくる、地面から湧いてくる、突然目の前に現れるなど、演出としての面白さとピクシーでの迎撃システムがほどよく調和している。
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メインとなるダンジョン攻略は、場所ごとの特色を押さえた丁寧なグラフィックと歯応えのある難易度が評価されている。
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中盤以降はダンジョンごとに特徴的な仕掛けがあり、「ダッシュで破壊できる障害物」や「天地が逆転する廊下」などを利用した謎解きが用意されている。また「亀に騎乗して地下湖を移動する」、「高速で疾走するトロッコ」、「複数階を突き抜けて落下していく落とし穴」など、一人称視点ならではの迫力満点な演出が各ダンジョンに用意されている。
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序盤で訪れることになる洋館風のダンジョンはやたらとグロいモンスター、魔法エフェクトのおどろおどろしさもあって、本格的ホラー風の雰囲気は年少プレイヤーにはやや辛い。
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仲間に個性があり、適材適所に使い分ける楽しさがある
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今作のパーティは8人。大雑把に分けると魔法戦士、戦士、魔術師の3タイプだが、戦士系の二人を除いた仲間はそれぞれ個性的な魔法を覚えていく。
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戦闘中にいつでもメンバーの入れ替えもできるので、「脳筋系のモンスターが三体出てきたので、魔術師と入れ替えて防御魔法をかけてもらう」、「HPが少なってきたので、壁役のメンバーと入れ替えて持ちこたえる」など、シンプルながら戦略性があり、共闘感が強い。
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一度も戦闘に出していない控えのメンバーにも経験値が入るので、装備さえ揃えていれば咄嗟に活躍できることも、ゲームバランスにマッチしている。
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戦闘で全滅しても、所持金を減らされて教会に戻されるだけ。今作は街以外ではセーブすることができず、ボス戦も唐突に始まるが、この仕様のおかげでわりと安心にダンジョン探索ができる。ちなみに仲間の復活に必要なゴールド(お金)も稼ぎやすい。
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モンスターにはレアドロップアイテムが設定されており、宝箱や店売り、鍛冶では手に入らない強力な武器を見つけたときの喜びは大きい。
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変拍子も多数織り込んだプログレッシヴ・ロックのBGMの評価は高い。特に、ゲーム中一番長い時間を費やす事になるダンジョンの曲の種類が豊富なのは嬉しい。
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ゲーム後半に行く事になる「まどろみの塔」のBGMは、『ダクネス』のダンジョンBGMのイントロなどを引用しつつ大胆なアレンジを加えたもの。外壁もなんとなく似たような感じの色をしていて、同作品を知るファンにとっては嬉しいサプライズだった。
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オートマッピングの使い心地が良い。常時表示させることはできないが、スタートボタンひとつで呼び出せるうえ、一度足を踏み入れた場所の隅々まで自動的に塗りつぶしてくれる。
問題点
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戦闘のバランスの取り方が雑。
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魔法や特殊攻撃(ブレス)には属性の概念がなく、統括的な「魔法耐性」「ブレス耐性」のパラメータのみにダメージ値が左右される。炎や氷など種類は多くても、単に見た目が違うだけ。威力の差も微々たるものである。
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攻撃魔法の威力自体も低い。本作の魔法は広範囲攻撃ばかり豊富に揃っているのだが、後半は「HPが高く少数(1~2匹)で出る敵」が増えるため、単体に対する火力で劣ると活躍しにくくなってしまう。その魔法を主体にして戦うキャラが後半戦近くに加入するというタイミングもいかがなものか。
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同シリーズの『外伝』や『2』から定番入りした、味方の守備力と素早さを同時に上昇させる補助魔法「サポート」は、低コスト・重ね掛け可能・ターン経過での解除なしと、RPG戦闘の補助効果としてはかなり破格。味方全員がほぼ確実に先手を取れるアドバンテージは圧倒的で、全般的にボス戦闘が楽。
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補助魔法、回復魔法が充実していない序盤はそれなりにレベルアップ作業をしていないと苦労する場面も多々存在する。特に序盤のボス二連戦はかなりキツい。反対にゲーム終盤になると、混乱魔法や即死魔法で雑魚敵を一方的に殲滅する事ができるようになり、経験値が高いこともあってレベルアップ作業も楽になる。
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味方・敵の攻撃優先対象が現在HPが低いキャラか瀕死のキャラとなっている。
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弱いところを的確に潰してくるAI設定をされているため、こちらはオーバーキルになりやすく、相手からは倒されやすく立て直しが面倒となっている。
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戦闘中のエフェクトが長め
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雑魚敵も撃ってくる全体攻撃は演出が長く、後述の処理落ちもあり、戦闘がダラダラ長引くことが多い。同時期に発売された某学園ジュブナイルほどではないが・・・。
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オート戦闘が使いづらい
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戦闘中、仲間のAIにおまかせする事ができるが、「ガンガンいこうぜ」や「じゅもんつかうな」と言った指示を出すことはできない。AIは殲滅か回復しか考えていないので、格下のモンスター一匹に高レベルの全体魔法を使うなど、とても任せられない。
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ただし、回復に関しては「ダメージを受けて減ったら回復」と必ず後攻回復を行うAIになっているので被ダメージが高い敵には有効になる。
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仲間キャラクターの性能に若干の格差がある。
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女魔術師「メロディ」は回復、蘇生、補助、攻撃魔法と満遍なく覚えていくので、非常に有能。さらに最序盤に仲間になるので成長が早い。終盤になるとMP自動回復効果付きの専用装備も手に入り、パーティの大黒柱に成長していく。
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同じく最序盤に仲間になる忍者「ローディ」は、バッドステータスを与える魔法の使い手で、雑魚戦にはかなり活躍できるが、攻撃力は低く、バッドステータスが通じないボス戦では活躍しづらいという極端な性能。
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中盤で加入する魔術師「フォルテ」は装備が貧弱なうえに覚えてる魔法にもあまり目ぼしいものが無く、敵からリンチに遭いすぐさま死体になることが多い。ただしレベルが上っていくと即死魔法を覚えるので、雑魚殲滅要員として活躍できなくもないが、MPの燃費はあまりよろしくない。
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ドラゴン戦士の「バッソ」は通常攻撃こそ高火力だが、魔法が一切覚えられず、素早さが低いので、会心の一撃が出やすい装備を手に入れるまではかなり微妙な性能。しかもバッソの特徴である攻撃力、高HPは最終的には主人公や、同じ戦士系キャラで最強武器が簡単に手に入る「ドイル」(こちらは一応隠しキャラ扱い)に追いつかれる。
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とはいえ、主人公とバッソ、ドイルは物理攻撃性能に優れているので、魔術師キャラに補助魔法を重ねがけしてもらうながらガンガン殴りまくる戦法は有用。
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バッソとともに登場するパラディン「リサ」は回復魔法に優れたアタッカーだが、最序盤の主人公たちに絡むイベントがあるだけで、あとは仲間になる時ぐらいしか喋らない。性能は悪くないのにストーリー上の扱いが非常に悪く、はっきり言って空気。
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ランダム要素の多さ
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冒険中に「ミスリル」というアイテムを手に入れ、村の鍛冶屋に渡せば、有料で強力な装備に作り変えてもらえる。何が出来上がるのかは5種類からランダムに選ばれるので、装備性能の格差を考えると厳選(リセマラ)が必須。最終盤まで活躍できる準最強装備があれば、呪われた装備が出来上がることも・・・。
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ちなみに「ミスリル」は有限。数に余裕は無いので、最大限に活かしたければ攻略本の情報は必須。
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街の道具屋には「掘り出し物」という強力な武具が買えるのだが、掘り出し物の在庫の有無もまたランダム。
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一部のピクシーを始めとする隠しアイテムの隠し方がやや理不尽。大半は墓などのシンボルがあったり通路の突き当たりだったりとなんとか目安はあるが、通路の壁(ノーヒント)だの床の上(ノーヒント)だのは対処に困る。
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ただしピクシーの総数は多くないので、常に気を配りながら探索すれば大半は見つかる。
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アイテム関連のUIはやや出来が悪い
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今作は「ウィザードリィ」や「ドラゴンクエスト」シリーズのように各キャラがそれぞれにアイテムを持ち歩くスタイルだが、アイテム一覧画面はアイコンで表現されているため、慣れるまでは目当ての物を見つけづらい。また、並び替えることもできない。
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ダンジョン内の謎解きに必要なキーアイテムは、使い終えても手元に残る仕様のため、アイテムの所持上限を圧迫する。ドラクエの「ふくろ」や、倉庫に該当するシステムも用意されていない。
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二度と使わないキーアイテムであれば、店で売却すれば良いが、買い戻すのにお金がかかる。
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ダンジョンにショートカット的な抜け道が一切無い。後半になればなるほど面倒で複雑なフロアが増えていくが、一旦街に戻ると最初から登り直さないといけないので、やる気を削がれる(ただし作動させた仕掛けはそのまま)
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ちなみに一方通行だが、ダンジョンの入口にワープする魔法があるので、帰り道は楽。
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処理落ちはわりと目立つ方。処理落ちする戦闘=ピクシーが当てやすいのがせめてもの救い。
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やりこみ要素が少ない。
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アイテムコンプリート、ピクシーコンプリートぐらいしかやることはない。ただしクリアまで35時間~40時間程度かかるので、ボリューム自体が少ないわけではない。
シナリオについて
本作のシナリオは、強大な力を持つ正の超人「イノベータ」と負の超人「ヒュードル」を中心に描かれる。
そして、この世界の生命すべてのパワーバランスを司る創造主や、そうして作られた世界の行く末を監視する存在などが絡み合い、新シリーズ独特の複雑な世界観を構成している。
ただしそういった背景設定は、主人公一行の物語の中に自然と織り込まれるのではなく、知識として教科書的に与えられることが多い。そのため、「固有名詞が多くて話が理解しにくい」「町人の会話がお堅い」といった印象を受けやすいのが難点か。
また主人公たちは世界情勢などの予備知識を備えた状態でゲームがスタートするので、「開始早々会話に付いていけない」と感じるプレイヤーも多いだろう。
総評
地味。普通。第一印象はどうしてもそうなってしまうし、実際のところもかなりのスロースターターである。
しかし3DダンジョンRPGにつきものの「難しい」「めんどくさい」「薄暗くて不気味なダンジョンシーンが延々と続く」といったイメージとは違い、本作は極めてプレイしやすいライトな作りになっている。こういったゲームは潜在需要に対して弾数が少なかったためか、意外にもプレイヤー満足度はなかなか高い。
主観視点で3Dマップを探索しながらいろいろな方向からモンスターが出現するエンカウント演出は「お化け屋敷的」と称される事もあり、ゲームとしては問題なく面白い。BGMのノリも良く、気持ちよくダンジョン攻略ができる。しかし、SRPGシャイニングのルールをそのままRPGに落とし込んだような素直すぎる一面が見られるなど、完成度が高いとまでは言い切れない。
レベルを上げて、装備を整えて、ダンジョンに出かけて謎解きをする…そんな普通さにこそ価値のあるゲームである。
余談
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後に発売される『シャイニング・フォースIII』では、本作の設定を下敷きとしたストーリーが展開される。本作で脇役として登場した少年が主人公を務めたり、逆に本作の主人公の名前やその後の消息についてちらりと話が出たりする。
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ゲームバランスが崩壊する裏技的アイテムが存在する。ゲーム中必ず一度は手にする品なので、初回プレイ時は情報を仕入れてしまわないよう注意されたし。
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BGMの人気は高いが、サウンドトラックはアレンジアルバムしか出ていない。
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当初サウンドテストの存在も確認できず、ネット上に「クリア後に裏技でサウンドテストができる」という噂が流れた事もあったが、2014年になって主人公にある名前を入力することで出現することが判明した(参考)。
最終更新:2022年10月16日 07:06