「この俺が ぬるま湯に浸かった国民の目を覚まさせてやる!」
アメリカのコロラド州出身の上院議員にして、作中の二年後の2020年の次期アメリカ合衆国大統領候補である。
大学時代に
アメフトリーダーを務めていた事でとてもガタイが良く、卒業後は海軍を経て政治家になるまでに至った。
作中における全ての黒幕であり、表向きは前述の通り大統領有力候補になるだけの莫大な民衆の支持を受けているが、
その裏では
「テクムセ作戦」という危険な計画のために暗躍していた。
この計画の全容は、大量のストリート・チルドレンを騙して脳を摘出して改造、
彼らをVR訓練によって軍用サイボーグとして大量生産し、世界中の武装組織を介して出荷。
そしてパキスタンに首脳会談に向かった合衆国大統領を反政府組織の仕業に見せかけて暗殺し、
これをきっかけにアメリカ政府によるパキスタン反政府軍のクーデター鎮圧、そこから反米テロ組織掃討作戦へと一気に持ち込み、
出荷した少年兵サイボーグを初めとして振りまいた火種を燃やし、一気に戦火を拡大させようというもの。
『MGR』の世界においては本家シリーズの黒幕であった「愛国者達」によって統制された戦争による経済活動、
通称
「戦争ビジネス」によって世界が動いている状態であった。
ソリッド・スネークやオタコン達の奮闘により「愛国者達」は倒れ、戦争ビジネスは規模こそ縮小したものの、
そのノウハウが根付き過ぎていた結果なおも継続し続けていた。
アームストロングは今一度戦火を広げて大々的な戦争経済を復活させ、それによって莫大な利益を得る事で、
- テロ組織という悪を敵にする事でアメリカ国民の愛国心を強く煽り、アメリカ国民であるという事に誇りを持てるようになる
- 戦争経済によって得た利益によってアメリカは経済不況を脱する事が出来る
- 精神的にも経済的にも改善される事で「強いアメリカ」を取り戻す事が出来る
と称している。……正に狂気としか言いようがない計画である。
とはいえ思想は過激で脳筋極まりなくても所詮はただの後方で色々策謀する政治家。
搭乗している新兵器
メタルギア・エクセルサス
*2を倒す事で決着が付くと思われたが……?
+
|
上院議員を舐めんじゃねえ!
|
エクセルサスが破壊され、操縦席から現れたアームストロングはご立腹の表情と共に突如として 「俺が直接ぶちのめしてやる」と宣言しつつ、
高らかに四股を踏んだかと思うとその残骸の電力エネルギーを吸収して さらに強靭な肉体へと変貌。
しかしそうは言っても相手は所詮生身、直前までエクセルサスをサイボーグの圧倒的な力でねじ伏せていた事もあり、
雷電もアームストロングの様子が多少変わった程度では大した事はできないだろうと高を括っていた。
しかし……
「行くぞ!」
「武器も持たずに…!」
「ぬぁぁぁっ!」
「ぐおぁっ!?」
アームストロングはサイボーグであるはずの雷電を タックル一発でいとも容易く吹き飛ばしたのだ。
そしてその後も、両腕で雷電を軽々と拘束した上で空高くぶん投げて落ちてきた所を蹴り飛ばしたり、
彼の武器である高周波ブレードを「ナマクラが!」と吐き捨てて、いとも簡単にへし折ったりと、
明らかに雷電を 上回るパワーとスピード、そして防御力で圧倒、
しまいには、エクセルサスの甲板に倒れた雷電の上に跨り、拳で甲板に埋め込んだ上で、
最後の一撃で エクセルサスの残骸をバラバラにするといった、意味不明なまでの強さを見せ付け、
話の流れ的にもエクセルサスがラスボスだと思っていたプレイヤーの度肝を抜いたのであった。
???「甘く見ていた…。このゲームで本当に厄介なのは、メタルギアの方ではなかった…。真に恐ろしいのはこの上院議員の方だった!」
「確かに国民の誇りも 強いアメリカもくだらねえ
俺が目指すのは真の自由だ」
先述したテクムセ作戦云々の目的は、実の所表向きの理由であり、
アームストロングにとっての戦争経済はあくまでも大統領になるための手段であって目的ではなく、
彼自身は上述したような中途半端な愛国心など持ち合わせておらず、戦争経済、即ちビジネスのための闘争を唾棄すべきものと認識していた。
彼が目指す真の自由とは 「誰もが力を行使できる自由」。
彼の言葉を借りて言うなら 「西部開拓時代の混沌とした古き良きアメリカ」「気に入らない奴を力ある者がぶん殴れる社会」である。
よく言えば社会のしがらみからの解放だが、 完全なる弱肉強食、即ち国家・法・社会、それら全てによる庇護が失われた、
ただただ暴力だけで全てが決定され弱者は捨て置かれる世紀末世界に他ならない。
冒頭の「ぬるま湯に浸かった国民の目を目覚めさせる」という台詞も、
国民全員が己の生き残りと野心のためだけに戦う事を強要しようというとんでもないもの。
雷電としても彼の抱く思想について思う所が無いわけではなかったのだが *1、
彼が理想とする国家は、力を振るう強者のために弱者が犠牲となって成り立つ社会であり、
かつて「身寄りの無い少年兵」という「虐げられた弱者」であった雷電にとっては到底受け入れられるものではなかった。
「何が弱者だ! お前は力で敵を黙らせ生き延びてきた人間だ!
わかるはずだ 俺の理想が!」
「…次はお前を黙らせる」
「来るがいい。」
アームストロングの強さの正体、それは 肉体のほぼ全てをナノマシンに置換したサイボーグというもの。
要するに 彼女みたいな身体をしているといえば想像しやすいだろうか。
あらゆる衝撃に対応して瞬時に 肉体を黒く硬化させ防御する能力や、
エネルギーを吸収しパワーアップする能力など、ナノマシンを利用した特殊能力を持ち合わせており、
見た目は人間そっくりだが、覚醒時にはやわなサイボーグ如きでは太刀打ちできないほどの強度と能力を内蔵する事に成功している。
ただ、このナノマシンを本格起動させるには大量の電力が必要であり、
大破したエクセルサスや大型車両10台に匹敵する電力を吸収しなければならないという弱点は一応存在している。
ちなみに硬化能力といったナノマシンを使わない部分、要するにフィジカルの強さに当たる部分は、
アームストロング本人由来のものだったりする。 今更だがお前のような上院議員がいるか
その強さは演出にだけに留まらず、最初に行われる前哨戦では技は少ないものの、
通常の格闘攻撃ですら、威力はエクセルサスの攻撃を上回っており、
最大強化の雷電でも数発受ければよくて瀕死、悪ければ死亡するレベル。
さらにシノギ(MGRでのガードのようなもの)不能な広範囲を吹き飛ばす衝撃波を使ってきたりと、
前哨戦だからといっても全く油断できない。
そんな相手とまずは挨拶だと言わんばかりに、ほぼ負けイベントな戦闘を通常状態と刀を折られた素手状態で二度も行わされる。
しかも今まで使ってきた高周波ブレードによる斬撃を何発も喰らっても全く怯まない上に、
雷電が全電力をフル活用した渾身の オラオラを喰らっても殆どダメージ負わなかったりと、恐ろしい防御力も見せ付けてくる。
本番では、前哨戦で使った技の強化版を使ってきたり、地面をひび割れさせて火柱を噴き出させたり
決められた方向に斬らないと阻止困難なエクセルサスの残骸投擲(食らったらほぼ即死)といった、まさに 力こそパワーと言わんばかりの攻撃を放ってくる。
防御面でもライフゲージが通常の2倍(200%)ある上に、イベントを経て強い武器で挑む戦いとはいえ、
1%減らすだけでも数発斬る必要があるなど、あくまでもその硬さは折り紙つき。
オマケに体力が減ってくると背面のナノマシンによる体力回復も行ってくる。
最終的にウルフを通して亡きサムから託された強力な高周波ブレードを得た雷電との長期戦の末に、
自らの硬化能力にも徐々に不具合が生じていき、ラストは雷電に 斬奪で 心臓をぶっこ抜かれ敗北。
しかし、野望を潰された事は無念に思っていたが「気に入らない奴をぶん殴る」という自らの理想を最高の次元で経験出来た事に心底満足し、
雷電に自らの夢を託しながら安らかな笑顔で息を引き取った。
その死に様は下記の最期の言葉通り雷電自身に伸びた影、即ち 「もう一人の自分」そのものだった……。
「嬉しいね… お前は… もう一人の…俺だ…」
「スーツ姿の野太いおっさんが操る巨大ロボットを倒したと思ったら、出てきた操縦士のおっさんが巨大ロボットよりもずっと強かった」
というシュール極まりないシチュエーションと、そんな濃ゆいビジュアルに全く負けないぶっ飛んだ過激派思想と恐るべき行動力を持ち合わせるという、
何から何までインパクトの塊のようなキャラクターであり、MGSシリーズの中でもかなりの異色作である本作においても、
設定的にもゲーム難度的にも 「巨大ロボットに乗ってる癖に降りて直接殴り合いした方が強い」というか、
「ひょっとしてギャグでやってるのか!?」と思わざるを得ない事を本気でやってしまうその姿は、一度見たら絶対に忘れられないだろう。
これらの要素もあってかネットでは 「史上最強の上院議員」「超院議員」などと呼ばれる事も。
…… DIO様もびっくりである。上院議員だけに。 また、その性質から某国の元大統領を連想する人も
本編以外では、本編前のジェットストリーム・サムがデスペラード社に加わるまでの物語である、DLC「JETSTREAM」にも登場。
このストーリーでは、日本文化好きのキャラクターが多い本作では珍しく、その文化自体を嫌っている様子が描かれており、
特に桜を 「花が咲いてからたった一週間で散る弱弱しいもの」「儚い美などと理解し難い」と毛嫌いし、
終いには彼と共謀していたワールド・マーシャル社が接待用に作った日本庭園のレプリカの桜(ご丁寧にレプリカでありながら花びらが散る)を目にして、
「あいつ(庭園の責任者)はサイボーグにして前線行きだな」と半ギレ気味に自身の部下であるモンスーンに語っていた
(なお、これを聞いていたモンスーンはドン引きしていた)。
ただし戦闘前に四股を踏んでいるあたり SUMOUパワーはリスペクトしている模様。
「言っただろう 面接してやると」
そしてラストでは、ワールド・マーシャル社を打ち倒さんとするサムに興味を持ち、
屋上にて「面接」と称し、プレイヤーの前に再びラスボスとして立ち塞がる。これがほんとの圧迫面接
本編でやってきた攻撃は殆ど使ってくるのだが、残骸投擲がモンスーンが使ってきた車両投擲にランクダウンしてたり、
体力が100%に下げれられていたり、回復を使ってこないなど、完全に本気じゃない描写がちらほら見られる。
眼鏡もとってないし…いやあんな激しい動きについてくる眼鏡もすごいんだが
代わりに新技として炎を纏った高速追尾タックルを使用してくるようになった。
このタックルが本編以上に厄介でホーミングしてくる上にものすごく速い。
タックルは最大7回まで連続で繰り出してくるのだが、たまにフェイントがかかることも。
特に最高難度だと一発で即死するほどの威力になっているため、このタックルを避けきれずに面接落ちになったサムは数知れず。
手を抜いているとは言え、居合で思いっきり斬られても立ち上がり、サムをうんざりさせるほどの強さを見せつけるが、
最終的に、硬化のスピードを見切ったサムに爆薬を利用した高速の居合切りで右腕を斬り飛ばされる。
が、斬られた直後に踏ん張り、切り口を硬化し槍のようにして逆にサムの右肩を刺し貫いてカウンターという荒業を披露。
サムの利き腕と心をへし折った上で仲間に勧誘し、その後本編のChapter-0へと繋がっていく。
斬られた右腕?くっつけたら治りましたが何か?
一見すると「 出るゲームを間違えてるんじゃないのか」と思ってしまいかねないものの、
抱いている理想の形がぶっ飛びすぎているだけで、愛国者達とそれを取り巻く社会を倒すために尽力したスネーク達のように、
「政府や誰かの道具ではなく、自身の理想のために忠を尽くす」という思想は歴代の『MGS』シリーズのキャラクターに共通する点も多い。
彼が目指した「ビジネスでない闘争に満ちた、戦士が自由に生きられる世界」はアウターヘブンを全人類に拡大したようなものだろう。 はた迷惑すぎる
「『MGS』のキャラクターにしてはぶっ飛びすぎている」というよりは 「『MGS』のキャラクター性を極限までぶっ飛ばしたような男」と称する声も多い。
前述の通り、その最期も雷電が「力で自分を黙らせた」事によって「自分の理想を実現させてくれた」という満足感を覚えながら逝くという、
結局最後まで彼自身の思想を否定し切れずに終わる一種の勝ち逃げにすら見える程堂々としたものであった。
そしてエピローグにおいても、雷電が彼の思想に賛同するような発言 *3をし、そのミームを受け継いだ事が示唆されている。
そのあまりにも強烈なキャラクター性のおかげで、外伝作品のキャラでありながら、
本家『MGS』シリーズのキャラクターと比べても負けない認知度を誇る。
+
|
ちょっとネタバレを含んだ余談 |
ここまで書いた通り、インパクトの塊そのものともいえるアームストロングだが、実際の本編での登場シーンはかなり少ない。
というかほぼ最後にしか出番がない。
というのも、アームストロングが初登場するシーンは、Chapter-2で潜入した研究所の警備サイボーグの視覚ログのムービーなのだが、
この時点では後ろ姿が少し映るだけ、かつちょっとしかセリフを喋らない。
しかもその時は大抵、Chapter-0で煮え湯を飲まされたデスペラード社の幹部であるサンダウナーの巨体の方に目が行きがちなので、
真面目に印象に残らなかった人が多かったのではなかろうか。
一応その後のボス戦後に通信でアームストロングに関する情報が出てくるが、明かされる正体が政治家という事もあり、
サイボーグが跋扈する本作において、たかが政治家程度がどうにかできるわけがないと早々に考えてしまうのも致し方ない事だろう。
さらに、そこからしばらくはデスペラード社とワールド・マーシャル社を相手取って怨敵をばったばったと倒していくのだが、
その間はアームストロングに関する情報は一切出てこない。
そう、このアームストロング、Chapter-2の情報以降、最終章でエクセルサスから出てくるまで情報がマジで一切出てこないのだ。
なので、デスペラード社幹部を全員バラバラにし、ジェットストリーム・サムとの決着を付けた最終章直前の時点で大抵のプレイヤーは、
「あと誰がいたっけ…?」となる状況が出来上がってたりする。
……とか思ってた所に最終章にてデカいメカであるエクセルサスが出てくるわけだが、
そのコックピットが開いてこのスーツのおっさんが出てきた時、殆どのプレイヤーはこう思った事だろう。
「誰だお前!?」と。
その後エクセルサスを圧倒し、「後は政治家のおっさんが相手か…楽勝だろ」なんて思ってた所に、
急にサイボーグなぞ知った事かと暴れ出すアームストロングのインパクトたるや、と言った所である。
このようにラスボスとしてのインパクトに対してストーリーにおける情報の秘匿具合に妙に気合が入っており、
それがラスボスとして登場した時のインパクトをより強くしているのだと言えるだろう。
おまけにエクセルサス戦前の無線ではアームストロングを軽く見ている会話が結構あったり、
アームストロング自身もエクセルサス戦中だとやたら小物臭い物言いをしたりするといった念の入りようである。
このギャップこそが一度見たら忘れられない上院議員と言われる所以なのだろう。
|
登場シーン(25:31~)
|
アームストロング戦(11:33~)本編は20:54から
|
採用試験(33:03~)
|
|
余談だが先述の通り、石塚氏はオーキド博士を演じていたのだが、氏の急逝に伴い雷電役の 堀内賢雄氏が後任に。
上記の最期の台詞も相まって、 「ミームを継承した」とネタにされていた。
|
MUGENにおけるアームストロング上院議員
フレイザードや
ワッカ、『
マッスルボマー』キャラ等の製作者であるですからー氏によるものが存在。
よりにもよって雷電を差し置いて、この男が先にMUGEN入りするとは誰が予想しただろうか
スプライトは
同氏製作の他のキャラと同様自作の3Dモデルが使われている。
性能は見た目通りのパワーキャラで、ライフが1500と通常より高い上に攻撃中アーマーも持っており、
全力でぶん殴る「ハンマーブロウ」や移動投げの「リフティングバット」、衝撃波を放つ「ショックウェーブ」など豪快で、
超必殺技もそのラウンド中永続的に自己強化しつつ超強力な必殺技を解禁、発動時にも広範囲に衝撃波を放つ3ゲージ強化技「バーニングモード」、
バーニングモード中限定の巨大な残骸(ですからー氏曰く「二分で描いた」)を投げ付ける2ゲージ技「スクラップランチャー」、
同じくバーニングモード中限定の炎を纏って即死級のタックルを3連続で繰り出す3ゲージ技「ボルケーノ・イラプション」等、
実にパワフルなものが揃っている。
AIはデフォルトで搭載済み。
コンフィグではAIレベルの他、起き上がり無敵の設定、アーマーを切ったり逆に投げ無敵の常時ハイパーアーマーに変更する、
バーニングモードを使用可能・使用不可・常時バーニングモードから選択するなど出来る。
各必殺技の性能も相まって、まさしく史上最強の上院議員の名に恥じない強さを誇る。
2022年8月24日にはホルン氏による外部AIも公開された。
恒例のコンボ・立ち回り・反応・ガードレベルに加え、ホールドブロックの頻度や対人向けの行動(曰く「面接」)をするか否かを設定可能。
想定ランクは強~凶上位との事。
ただしデフォルトではアーマーOFFの弱体化調整がされており、
アーマー設定やバーニングモード設定を変更すればより高いランクにも対応可能で、最高設定は狂中位と言った所。
「俺が当選したら腐った社会をぶっ潰してやる!」
出場大会
*1
『MGR』における雷電は「マヴェリック・セキュリティ・コンサルティング」という民間軍事会社に勤めており、
その戦闘技量を活かして要人警護等の仕事をしていた。
そして我流の剣術を習得していく中で日本の武道「活人剣」に感銘を受け、一人の悪人を斬る事で多くの命を救う「一殺多生」の信念の元に戦い続けていた。
しかし、彼は少年時代「シアーズプログラム」と呼ばれる過酷な少年兵訓練プログラムによって生まれた最高傑作であり、
敵兵からは「ジャック・ザ・リッパー」「白い悪魔」と呼ばれた恐るべき少年兵であった。
彼が初めて主役を務めた『MGS2』ではその過去の記憶をナノマシンによって封じられていたのだが、
記憶が無いにもかかわらず「人を殺す時、まるでゲームをプレイしているかのような現実感の無い喜びを覚える事がある」という感覚に苦しめられていた。
結局ナンバリングシリーズ中に彼はその問題に答えを出す事が出来なかったのだが、
『MGR』にて敵対勢力「デスペラード社」との戦いの中で己の信念を揺るがすような出来事に何度も出くわし続けた結果、
「平和な世に馴染めず戦いに戻って来てしまった己と向き合うのを恐れ、戦場で人を殺す自分を肯定するために活人剣というお題目を利用していただけ」
「今まで見て見ぬふりをしていただけで、自分の中には人を殺す事に喜びを覚え、戦いの中でしか己の存在意義を見出せないどうしようもない性がある」
という己の心の弱さを認め「ジャック・ザ・リッパー」である自分を受け入れたのだった。
そんな経緯があるからこそ、戦いの中で生きる自分を否定しなくなった雷電にとって、スティーブンの語る「真の自由」は全く的外れな物でもない。
そして見方を変えると、子供の頃からどんな苦境も己の強さだけで乗り越えてきた雷電の生き方は、正にスティーヴンの理想を体現したものでもあった。
……これらの経緯だけ見ると、『MGR』の雷電は「開き直って快楽殺人鬼となり、嬉々としてサイボーグ兵を殺すようになった」ようにも見えてしまうが、
そんな事は決してなく、むしろ殺人衝動を抱く自分と向き合い、逃げるのをやめた事で、
「どれだけ己が汚れようが全力で剣を振るい弱き人々を助ける」という覚悟を決めるようになり、
活人剣の本来あるべき姿を体現できるようになったのである。
*2
メタルギアシリーズを製造してきたアームズテックセキュリティ社により作られた大型多脚歩行戦車。
「核搭載二足歩行型戦車」というメタルギア本来の定義からは外れた存在であるが、
本来の定義を守っているメタルギアの方が少ないが故に商業戦略的に「メタルギア」の名を冠されている。
『MGR』の世界では数年前に愛国者達が消えたことでそれまで秘匿・統制されていたサイボーグ技術が世間一般に幅広く浸透しており、
戦場は、文字通り等身大サイズでありながら、戦車並かそれ以上の出力に加えて高い機動力と柔軟な思考が可能な強力なサイボーグ兵が跋扈するようになり、
かつては戦車よりも実働数が多いとされていたアームズテックの主力製品であるメタルギアやAI兵器は戦場で居場所を失いつつあった。
そこで
「サイボーグ兵では到底太刀打ちできないほどにデカく強いメタルギアを作ればいいじゃないか」という開き直った大艦巨砲主義的発想で、
既存のメタルギアをはるかに上回る
巨体と出力と強力な武装を持つ巨大メカとして開発されたのが本機である。
当然市場からは「こんな派手すぎる兵器で市街戦なんてできるのか?」と難色を示されるが、アームズテックのお題目としては、
「これだけデカい兵器が歩いてきたら遠くからでも分かる。戦闘意思の無い民間人はすぐ逃げるだろうから空爆よりは被害が少なく済む。
逃げずに戦闘意思を見せる奴は敵兵なんだから構わず踏み付けてしまえばいい」
という
そもそも民家を踏み潰しながら戦う事を前提にしているというあんまりにもあんまりな兵器である。
ただし、雷電の仲間のドクトルも
「派遣された米兵が死ねば大騒ぎだが誤爆で民間人が死んだぐらいじゃニュースにもならないからな」
と冷ややかな理解を示している。
流石に兵器としてトンデモ過ぎるため、果たして本当に需要があるのかと疑問視されていたが、
「テクムセ作戦」の全容が明らかになった事で、非対称戦争を超えた大規模な戦争ビジネスに向けての新商品として生み出されたのだと推測された。
巨大高周波ブレードとプラズマ砲を二対ずつ備えており、懐に潜られたらそもそも踏み潰してしまう……という巨体を生かした戦いをしてくる。
……これ自体も強力な兵器なのだが、真に強力なのは(物理的な意味で)エクセルサスの中に乗っている男であった。
*3
「弱者が犠牲になる戦争経済の需要を縮小するためにはどうしたらいいか?」という会話の中で、
「需要をなくすためにはやはり
奴のように…」と発言している。
具体的にどうするかはぼかされているが、戦争経済を煽るテクムセ作戦や弱者を犠牲にする世界の実現を目指すわけでは無論ないだろう。
やはり
「気に入らない奴は己の力で黙らせる」というアームストロングの行動原理を指すと思われる。
そして雷電にとっての「気に入らない奴」とは「弱者を食い物にする強者」、まさしくアームストロングのような存在である。
雷電の作中最後のセリフは
「俺は俺の闘争を続けさせてもらう」。
ミームを受け継ぎつつもその存在は否定し、アームストロングと対極に弱者のために戦い続ける決心を顕わにした発言で作品を締め括った。
なお「奴」という言及の仕方なのでアームストロングに限らない可能性はある。
その場合の最有力候補はやはり作中で因縁深きジェットストリーム・サム(本名:サムエル・ホドリゲス)だろう。
彼は本編開始前に十数年ほどに渡って幾つもの犯罪組織を単身で潰してきた経歴を持ち、その理由は復讐とも単に強者を求めてとも言われているが、
ある意味「もう一人の雷電」という位置付けにある。
そのため「サムのようにたった一人であろうと戦い続ける決心をした」という解釈もできる。
最終更新:2024年10月01日 21:41