「お母さんが言いました。逃げたら一つ、進めば二つ、手に入るって」
『
機動戦士ガンダム 水星の魔女』の主人公であり
同TVシリーズ初の女性主人公*1。
担当声優は
市ノ瀬加那
女史。
サンライズ作品では『境界戦機』の紫々部シオン、ガンダム関連では『水星の魔女』が放送開始する直前に発売されたゲーム、
『SDガンダム バトルアライアンス』に登場する仮想人格のサクラ・スラッシュを演じている。
余談だが『バトルアライアンス』では「名字がマーキュリーのライバルキャラにサクラが一時的に洗脳される」という展開があったため、
ユーザーの間でネタにされていたり
あと
セーラー戦士や『ガンダム・ザ・バトルマスター』シリーズの
登場人物とは無関係。
シン・セー開発公社CEOのプロスペラ・マーキュリーの娘であり、赤髪に褐色肌に太い麻呂眉と言った顔つきが特徴。
なお、正面向きのイラストでは分かりづらいが髪は結構長くて後ろで縛っている。
ファンからは
タヌキ顔と言われ、
二次創作でも彼女がタヌキ化したイラストも多く見られる。
おかげで「水星たぬき」と呼ばれた上、2022年の『仮面ライダーギーツ』の登場ライダーと合わせて「日曜日のたぬき」とも呼ばれたり
が、実際のモチーフはタヌキではなく
犬との事
*2(タヌキもイヌ科なので当たらずも遠からずではある)。
「タヌキ」のあだ名を付けられたように、単独の公式イラストを見るとややずんぐりした小柄な少女に見えるが、実際は
ガタイのいい長身女であり、
劇中に出てくる同世代女子連中では一番大柄(男子達と比べると互角からやや低め)である。
尤も件のイラストも良く見ると
頭身が高い(=身長が高い)のだが。
ちなみにスレッタの身長は170cmであり、TVシリーズの歴代主人公の中では
アムロ・レイ(『
逆シャア』時172cm)や
『
00』の刹那・F・セイエイ(『2nd』時175cm)、『AGE』のフリット・アスノ(成人~晩年189cm)のように後に身長が伸びたケースや、
『
∀ガンダム』のロラン・セアックや『Gのレコンギスタ』のベルリ・ゼナムのように身長が設定されていないケースを除けば、
「エアリアルは、たかがじゃありません!
私とずっと一緒に育った、私の家族なんです!」
幼い頃からの愛機であり"家族"であるガンダム・エアリアルのパイロット。
作中では人類の生存圏である事すら一般的に意識されなくなっている水星軌道上の出身であり、
故郷では若年ながらエアリアルを手足のように操り、資源採掘作業や人命救助に従事していた。
しかしそんな環境で育ったためか
他者とのコミュニケーションが苦手で、当初は同年代の子供が相手でもまともな会話ができていなかった
(ただし緊張しまくって適切な受け答えができずとも、会話自体には積極的に応じるし、
特にエアリアルの
パイロットとしての自身の実力への自信は凄まじく、そこに関する自己主張は実の所かなり強い)。
A.S.(アド・ステラ)122年、母プロスペラの推薦でモビルスーツ産業最大手のベネリットグループが運営する教育機関、
アスティカシア高等専門学園のパイロット科2年生として編入されるが、
編入初日に同作のもう1人の主人公であるミオリネ・レンブランが宇宙空間を漂流している場面に遭遇し、救出
(実際はミオリネが理事長でもある父親に反発し学園から逃走しようとした現場に通りがかっただけだった)。
善意からとはいえ自身の行動を邪魔されたミオリネからは責任を取るよう求められるわ、
彼女の婚約者である学園最強のパイロット
にしてヒロイン、グエル・ジェタークの横暴を止めようとして決闘に臨む事になるわと、
*3
スレッタ自身の夢見ていた平穏で楽しいそれとは無縁の波乱の学園生活をスタートさせてしまった
(なお、スレッタは水星ではエアリアルのライブラリに保存されていた古いアニメ等をよく鑑賞していたらしく、
学校やそこでの生活というものに対するイメージもここで形成されている。
「やりたいことリスト」を作るという形で学園生活へもかなりの期待があったようだが、
彼女自身はそれとは別に
水星に学校を作るという夢を持っている)。
そんな中で、グエルに並ぶ決闘委員会のトップであるシャディク・ゼネリやエラン・ケレスからの興味を買ったり、
ミオリネや地球出身の学生達と次第に打ち解け、彼女達と立ち上げた「株式会社ガンダム」の発展のために務めていくが、
同時に母プロスペラやミオリネの父、デリング・レンブランの陰謀に知らず知らずに巻き込まれていく……。
なお、アスティカシアの制服は本来緑色で初期に公開された番組キービジュアルでもスレッタはこれを着用しているが、
理事長の娘であるミオリネを花嫁とする権利、通称「ホルダー(
花婿)」の座を第1話で手に入れた事で、学園最強のパイロットの証である白色に変化している
(学生証を
操作する事で色が変化する素材らしい)。
「わたし、女子ですけど……?!」
「水星ってお固いのね。こっちじゃ全然ありよ」
この怒涛の展開から、シリーズ構成の大河内一楼氏がノベライズを担当した『少女革命ウテナ』に掛けて『少女革命スレッタ』というネタも生まれた。
余談だが「
GUND-ARM」の普及を目指してミオリネが設立した「株式会社ガンダム」のプロモーションビデオも作られており、
スレッタもそのPVに出演しているが肝心の内容は非常にツッコミどころ満載。
「乗って! 安心! 動いて! 安全!
飛べるぅ! 踊れるぅ! エアリアルぅ~!!」
+
|
と、一見おとぼけキャラのように見えたが……(『水星の魔女』第一期ネタバレ&グロ注意) |
「やめな…さいッッ!!」
スレッタ自身が明るく楽しいおとぼけキャラとしての気質を持っているのは事実ではある。
一方でプロスペラの復讐の道具として大きく偏った教育を受けていたことが窺える描写も散見され、本作の第一期の最終回は、
その明るさの象徴とも言える「逃げれば一つ、進めば二つ」の言葉によって、
殺し合いに否定的だったはずのスレッタがミオリネ(とその父デリング)をもう殺されるという土壇場の状況で、 二人を救うために生身のテロリスト(銃で武装はして発砲寸前だった)をエアリアルの掌で叩き潰して殺害。 …は不可抗力として、殺人を犯した罪悪感を感じさせない「明るい笑顔」で血塗れた手をミオリネに差し出すという姿で締め括られた。
この展開はミオリネのみならず視聴者にも大きな衝撃を与えたのは言うまでも無い。
そのため、殺人への忌避感ゼロだった 前作主人公でさえ「自分が人殺しである事を自覚していただけスレッタよりマトモ」と言われる事態に。
また、事を起こした後笑っているという共通点から、
『Ζガンダム』の主人公カミーユ・ビダンが第1話にて生身の人間にガンダムMK-IIのバルカンを撃ったシーンが挙げられるが、
こちらは殺意は一切無い威嚇行為であり、スレッタとは全くベクトルの違う行動である
(カミーユはプチモビの大会で優勝する程の操縦技術を持っているため、絶対に当てないという自信と腕があった。……十分問題行動だけど)。
また、『水星の魔女』第1期放送開始の同年に放映された『ククルス・ドアンの島』では、
『1st』の主人公アムロ・レイが 民間人を守るために生身のジオン兵をガンダムで踏み潰している。
しかし、アムロはこの際苦渋に満ちた表情を浮かべるというスレッタと真逆の様子を見せており、「アムロですら苦悩したのに」と比較される事態にもなった
(アムロはMS戦においてコクピット狙いの非情な戦闘スタイルを取っているが、
生身の人間に対してはTVアニメ版『1st』にてMSでジオン兵を殺さないように立ち回った事もあり、
世界線が違うとはいえこの時は緊急的な対応を取っていたと見るのが自然である)。
あと、『水星の魔女』とコラボしたとあるスナック菓子のフレーバーが作風の影響で
ヤバい方向で考察される羽目になってしまい
、仕入れた店が阿鼻叫喚に
「助けに来たよ!ミオリネさん!」
「……なんで笑ってるの? 人殺し……!!」
そして第2期16話では前述の件でミオリネから謝罪されるも「お母さんは間違っていなかった」と答えた事で、
驚愕した彼女に「母親が言うなら水星に学校を作る夢もガンダムで人を救う夢も捨てられるのか」と詰め寄られるが、
スレッタは迷いを見せながらも「お母さんが言うならそうします」「お母さんはいつも正しいのですから」と答えてしまう。
プロスペラの操り人形と化している事実を知ったミオリネは愕然とし、紆余曲折の果てにある決断をする遠因となる…。
|
ちなみにTVシリーズのガンダムとしては初の放送期間にニコニコでの配信も行われている。
配信から1週間限定で無料視聴可能であった。
外部出演としては前述した『バトルアライアンス』でDLCとして参戦。
残念ながらサクラとの絡みは無かったが
MUGENにおけるスレッタ・マーキュリー
希望vs絶望シリーズの作者であるhumi氏により、
エアリアルに搭乗してではなくスレッタ本人がMUGEN入りを果たした。
同作で生身でMUGEN入り出来そうなキャラは他にいるのだが……
まあ原作からガチガチに素手で戦える事で有名な方々はともかく、
ロボットアニメのパイロットが生身で戦うのはMUGENでは日常茶飯事だけど
……しかしその実態は、
「スレッタ・ワスレッタ」と言うスレッタの皮を被った何かである。
自らの周りに白い何かが囲み相手を攻撃したり、
「やめな…さいッッ!!」と言いながら相手を叩き潰したり、
グエルを召喚したりと実にやりたい放題のカオスキャラ。
ランクは氏恒例の狂キャラ。
「スレッタ、忘れった」
(※第10話にてとっさに放った迷言)
なお、宇宙世紀にも「ズゴックE」を「凄くいい」に聞き間違えた奴がいる
出場大会
*1
TVシリーズ以外の映像作品では『MS IGLOO2 重力戦線』第3話や『
機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER』、
映像作品以外だと漫画『エコール・デュ・シエル』や、ゲーム『バトルオペレーション コードフェアリー』等の前例はある。
なお、よく誤解されるが『機動戦士ガンダム0080』の主人公はガンダムNT-1のパイロットであるクリスチーナ・マッケンジーではなく、
ジオン新兵のバーナード・ワイズマン…ですらなく、
一般市民の少年アルフレッド・イズルハである
(要は
こいつと同類。サブタイトルの『ポケットの中の戦争』も、「ポケットに兵器の玩具を入れてるような子供から見た戦争」ということである。
一応、アル・バーニィ・クリスの「ABCトリオ」全員を主人公とする意見もなくはないが)。
また、声も子役時代の
浪川大輔氏が演じているため(『Gジェネ』では
女性声優が代役しているが)、
「映像作品で初の女性声優が演じた主人公」でさえもない(それだと該当するのは
『∀』のロラン)。
ちなみに
「非主人公含めてのガンダムパイロットの女性」であれば、制作順では第二作目『
機動戦士Ζガンダム』にて、
ガンダムMk-IIのテストパイロットであるエマ・シーンが登場するため意外に古くから存在する
(ただし、宇宙世紀内での時系列では前述のクリスに加え『第08MS小隊』のカレン・ジョシュワが先。
また正パイロットに限らなければ『1stガンダム』でセイラ・マスがガンダムを操縦したことがあり、
それを理由に初代格ゲー版では
リュウに対する
ケンに相当するキャラとして「セイラ専用ガンダム」が登場している。
しかもアムロ用より強いとか。まぁ初代『ストII』でもケンの方が強かったし…)。
*2
なお、バンダイナムコのプラモオリジナルメカ少女シリーズである『30ミニッツシスターズ』にルルチェと言う褐色娘がおり、
こちらはデザイナー自身がタヌキがモチーフと明言している(同梱の強化パーツに狸耳と(
徳利型の)尻尾がある)。
そしてFigure-rise Standard版スレッタは、関節部を30MSから流用した事から30MSとの互換性があり、
発売直後はルルチェ用水着(バンドゥビキニ)ボディにスレッタの頭を載せる遊びで
ネットがにぎわった。
更には花嫁であるミオリネの方もFigure-rise Standard版がリリースされ、30MSのティアーシャとの互換性からか
スク水姿にされた。
そして(先輩であるリシェッタやティアーシャを差し置いて)ルルチェ用の第二の水着ボディが発売される事が発表され、
それが
白スクだった事もあり「ホルダー(スレッタ)用か?」と言われたりしている。
基本的にティアーシャ用スク水ボディの色替えではあるが、ティアーシャ(とミオリネ)が貧乳な事もあり胸部パーツが変更されている
*3
アスティカシア高等専門学園は経営戦略科・パイロット科・メカニック科の三つの学科を持つ教育機関であるが、
入学にはベネリットグループ傘下の企業による推薦が必須であるなどその実態は
私塾に近い(スレッタ自身もグループ下位とはいえ社長令嬢である)。
そして学園内では生徒間のトラブルを解決する手段として
モビルスーツを用いての決闘が公式に行われている。
この決闘はモビルスーツの性能やパイロットの技量を競うのみならず、裏工作すら黙認されるという決して公正とは言い難い物だが、
そもそも
「結果のみが真実」という大前提の下、言い訳は不可能となっている。逆に言うと権力者側が負けても結果は覆せない。
しかし、上記のデリングはエアリアルが「呪いのモビルスーツ」と呼ばれ、
開発・運用が禁止されているGUNDフォーマット搭載型MS「GUND-ARM」である事を理由に、
第一話で行われたグエルとの決闘の結果を認めず、審議会にてミオリネから
「ダブスタクソ親父」と痛罵される事となる
(デリングは元々は軍人であり、かつて無人機を主力とした大規模な戦争に参加した経験から、
「兵器はあくまでも人殺しの道具であり、
使用者の命を危険に晒すようなものは必要無い」
「
戦争とは人と人の命の奪い合いこそが最低限の作法」
という思想を掲げており、それを基にガンダムの存在を認めない方針を取っている)。
また「ビーム兵器まで使った決闘って
余裕で死人がでるよね?」はよくあるツッコミ
(
ガンダムファイターの方は不慮の事故による死傷者の発生も織り込み済みだが)。
一応は学園で運用されているモビルスーツは軍用機とは異なる弱装出力のビームを使用しており、
小説版や第2期等ではコクピットや機関部への意図的な攻撃を不可能とするシステムがモビルスーツ側に組み込まれている事や、
そうした重要部分には低出力のビームが貫通できないだけの防御を施す等の
安全規定がある事が明示されている。
しかしそれでも機体がバラバラになって大破するような描写は珍しくない。
劇中で死者が出ていないのは、偏に決闘の参加者達が一線を超えないように配慮している部分が大きく、やはり危険な催しには違いないのだろう。
そして第2期開始早々、学園に潜入したテロリストが実戦仕様のガンダムや無人兵器による無差別攻撃を行った結果、
実際に死人が出た事で、
モビルスーツは人殺しの道具でもあるという現実が学生達に突き付けられてしまった
(生徒の中にはショックのあまりモビルスーツや決闘への忌避感を示す者や退学者も現れ、
ガンダムへの恐怖からスレッタや地球寮の生徒すらテロリストの一員と見なし、学園から追放しようとする者まで続出した)。
最終更新:2023年06月02日 13:13