サウス・バニング

登録日:2024/11/17 Sun 14:35:23
更新日:2025/01/07 Tue 15:22:11
所要時間:約 4 分で読めます





サウス・バニングとは、機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORYの登場人物である。
CV:菅原正志



【概要】

地球連邦軍に所属するMSパイロットで階級は大尉。39歳。精悍なオーラを放ってはいるが顔が老け込みすぎて39歳にも見えない。
一年戦争時はベルナルド・モンシアアルファ・A・ベイト、チャップ・アデルらと不死身の第四小隊として活躍していた。
戦争が終わった後はトリントン基地にてモビルスーツ隊の隊長になり、新人パイロットの育成や新型MSの性能評価試験に精を出していた。

コウ・ウラキチャック・キースらに厳しく接するが、あくまで教官としての範疇であり理不尽に怒る事はなく、実際は彼らに期待をしていた。
その為か新人達からは慕われており、バニングも彼らを気遣いつつも鍛え上げていた。
新人達だけでなく荒くれの第四小隊からも慕われているが、同時に恐れられており、アルビオンの通信士ウィリアムに「バニング大尉は非常に怒っている」と言われただけでモンシアは思いっきり狼狽していた。
しかし常に怒っていただけでなく「REBELLION」では彼らに対し「憎しみだけで戦うな」と都度言っていたようだ。

パイロットとしての腕は一流であり、シーマ・ガラハウとも互角に渡り合うほど。
宇宙用に調整されていない1号機で飛び出しシーマに狙われて危機に陥っていたコウを救ったほか、後述する機密文書の回収時シーマに奇襲を受けた時も即座に対応し、その場は一応危機を脱して見せた。
ちなみに敵には容赦はせず、小説版ではデラーズ・フリートに対して「狂ってやがる…」と呟くが、一方で偶然見つけた敵兵の遺体は宇宙葬に流してやったりと、たとえ相手がジオンでも死者を大事にする一面も持っている。

これだけ挙げると「厳しくも優しく、強い父親のような存在」と思われ、実際にはそうなのだが
実はバニングさん、同僚に「スケベ野郎」と揶揄されるほど女性にだらしない。
流石にモンシアやベイトのようにどストレートにセクハラをかましはしないが、任務中なのに美女に見とれたり若い女性を「両手に華」で「持って帰って」きたりと結構遊んでいる節はある。
後に失踪したコウを捜索するという真面目な場面でもモブ女の尻を見てニヤケたりしている。さすがモンシアの上官
その為か妻とは別居中である。*1バニングは女遊びをしながらも彼女のスナップを持ち歩いている他、心の底ではよりを戻したいと思っているが…。


【来歴】

前述の通りトリントン基地で新人を鍛え上げつつもMSの性能評価試験をするという、忙しくも充実した時間を送っていた。
だがそこでガンダム試作2号機強奪事件が発生。
臨時に編成された追撃部隊の指揮を執り、初の実戦や長時間の極限状態で疲弊していたコウとキースを精神的に支えつつも追い縋るが逃走を許してしまう。
その追跡の為にアルビオンに乗船、更に偶然にも厄介払い助っ人としてやってきたモンシア達不死身の第四小隊の面々と再会し、彼らと共にデラーズ・フリートを追いかけることとなる。

が、当初は戦闘でひしゃげたコックピットハッチに足を挟まれた影響で負傷したこともありMSには乗らず、艦橋からの指示に徹する傍らキースの慣熟訓練の指導をし、現場指揮官はモンシアらに任せていた。
このときの彼は問題児ばかりの不死身の第四小隊とヒヨッコであるコウとキース、更にすげぇ厳しい上官エイパー・シナプスの板挟みになっており「誰が一番暴れたいのか分かってんのか!」と叫ぶ等、中間管理職の哀愁が漂っていた。
しかしコウの危機に際し、まだ傷が完治していないのに無理を推して出撃、それ以降MSパイロットとして復帰した。

その後もパイロットとして活躍するも、レッドアウトを起こしたりどこか年齢に対する肉体の衰えや「ロートル」という描写もされていた。
やがて何度目かの戦いの際に部下に出し抜かれ、それを見て成長を喜ぶと共に自分の限界を察する。
そしてバニングは…

  • この戦いが終わったら引退することを決意する
  • 別居中の妻から手紙が届く
  • 戦闘後「少し弾を食らったが大丈夫だ」と言う

と…嫌な予感をさせるイベントを立て続けに起こす*2
そんなこんなで敵兵士の遺体から機密文書を入手。
こうして無事に戦闘を乗り越えて帰還する最中、彼はその文書を閲覧し、星の屑作戦の重大な機密が記されていることを知るが……




突如乗機のジム・カスタムが被弾箇所から爆発。

そのまま制御を失って無造作に吹き飛んでいき、サウス・バニングは遥か彼方で爆炎と共に宇宙に消えた。


吹き飛んでいく機体を見てコウは「大尉、あきらめないで!」と懇願するように呼び掛けていたが、最初の爆発の時点で既にコックピットは血濡れになっており、小説版ではこれで即死していたことが明言されている*3



そのあまりにも呆気ない死はアルビオンクルーのほとんどがショックを受け…やがて皮肉にも彼の死が団結を深めていくこととなる。
ベイトは隊長の自覚が生まれ協調性が増し、モンシアは味方に対する問題行動がなくなり、アデルも最後まで戦い抜いた。
そして鍛え上げたコウやキースはエースとして成長していく。
また、整備班の中には「自分たちの整備不良が原因ではないか」と心を痛める者も出ていたが、モーラが𠮟咤激励することで立ち直らせている。
一方でバニングの死の遠因となった被弾をさせたのはシーマであったため、アルビオンクルーからの恨みを一身に買うことになってしまい、終盤で連邦側に寝返ったシーマ艦隊が味方であるはずのアルビオンによって殲滅させられてしまうという負の遺産も残してしまった。

敵の攻撃を受けてそのまま爆散するわけでもなく、安心しきった後に時間差で爆死するというバニングの死に様は、戦争にドラマティックさなどはなく、そして誰が死ぬかわからないということを直に表現したシビアな描写と言えるだろう…。

漫画『0083 REBELLION』では、暗礁宙域で遭遇したケリィ・レズナーのヴァル・ヴァロと交戦するがクローにコックピットを掻き切られ戦死。
OVA版と違ってバニングを殺した存在が明確になっている一方で終盤その仇であるケリィ本人がアルビオンに加勢した際彼をバニングの仇と憎んでいたモンシアは一応味方であるにもかかわらずケリィ(とついでにウラキ)を殺そうとしたが失敗に終わっている。
逆にシーマはバニングの死に一切関わっていないので終盤でアルビオン側と共闘できている。

勿論、以降の歴史には登場しない。
仮に生き残ったとしても、やはり表舞台に現れることは無く、妻と共に余生を過ごしていただろう。


【主なセリフ】


「戦いはお前達がいつまでもピーピーやかましいヒヨッコかどうかで決まる!」
ガトーに奪われた2号機を追撃する際に。
部下を叱咤し、気を引き締めさせる一言。

「だから俺がいる」
初陣で「自分が何をしたらいいか分からなくなってしまって」と零すコウに対して。
シンプルながらカッコイイ一言。上官の鑑である。
しかし同時期に別動隊のカレント隊長が「バニングのスケベ野郎に手柄を渡すもんかい」と零しており、決して完璧超人というわけではないことが仄めかされている

「誰が一番暴れたいのか分かってんのか…バカヤロ──ッ!!」
アルビオンクルーが諍いを起こしシナプス艦長からも管理責任を問われた後、一人になった際に。
中間管理職は大変である。

「そういう時は身を隠すんだ!」
敵を見失って狼狽えていたゲルググMに対し、教官らしい指導をしながらも容赦なく撃墜。
後の時代でも指摘している通り、戦闘中に足を止めるのは自殺行為である。

「ウラキ、キース。お前たちはもう一人前なんだ。後はそれが実感できるかだが、そこまでは教えられん」
実戦を経て成長し、模擬戦でも自分と渡り合えるまでになった二人を褒める。
感動的なシーンだが、同時に彼が役目を終えつつあることが示唆され死亡フラグの危険度も目に見えて跳ね上がっている。

「これはすごい!敵の配置が一目瞭然だ!」
着艦前に機密の文書の内容が気になって確認する場面。ここまで続いた死亡フラグラッシュのまさにダメ押しである。
敵の手の内が分かっている状況では緊張感が生まれないため、もうバニングは助からないことを視聴者に確信させてしまう。
逆に、万が一これで生還して文書共有に成功していた日には歴史のターニングポイントになっていたことだろう。


【外伝作品等の扱い】

コミックボンボン増刊号で連載された加登屋みつるの漫画版でも登場するが、部下のモンシアが隊長役を務めるためか生存はするがフェードアウトする。代わりにモンシアが死ぬ。

スーパーロボット大戦シリーズでは第◯次シリーズでは未登場であり、ワンダースワンのCOMPACTで初登場した。
以降も0083が参戦する場合はコウとセットで仲間になることが多い。代わりにキースが省かれる事が多くなった。
基本的には厳しくも優しい現場指揮官としての役割が多く、人情味を出すことも。
また大体の作品で死亡しない。
総指揮官として活躍するブライト・ノア、MS隊長としての実力が未知数のためにまとめ役として描写されにくいアムロ・レイと違って「リーダー」「頼れる父親」として新人パイロットと接する事が多く印象に残りやすい。
が、αにて友達以上恋人未満な男女だらけで編成した哨戒任務を出した結果、女性陣が軒並み攫われるという大惨事を起こした事がある*4。バニング大尉ェ…
反面、不死身の第四小隊の部下達とは意外と絡みが薄かったりする。
能力的には流石に主人公らには届かないものの優秀である他、貴重な特殊能力「ガッツ」やベテランらしく周囲の味方を強化する「指揮官」技能やEN消費を節約する「ベテラン」等の技能を持っている。
精神コマンドは「てかげん」「集中」を毎回覚えている他、「魂」「激励」等有用なものを持っていることもある。…よりにもよって「誘爆」を覚えた事もあるバニングは誘爆した方でさせる方じゃねーから!とツッコんだプレイヤーも多いと思われる
そしてイメージ通り技量は高めであり、いぶし銀の活躍が期待できる。
ジム・カスタムではAポータブル以外では力不足なため、彼をスタメンにする際は余ったガンダムタイプを宛てがうといいだろう。
強制出撃の際にはガンダム試作1号機Fbやコウを差し置いてガンダム試作3号機に乗ってたりすることもあったり。
第3次スーパーロボット大戦α~終焉の銀河へ~では準主役級の扱いを受けており、ラスボスに対する台詞もあったりする。*5

Another Century's Episode 2ではアルビオン隊に合流した直後の戦闘で負傷してしまい、パイロットとしては戦線離脱。
以後はパイロット達の指揮官として行動することになる。
そのため戦闘には参加できないが出番自体は非常に多く、ストーリー上の台詞も豊富。

アーケードゲームの機動戦士ガンダム 戦場の絆の初代では、連邦側のオペレーター役として声だけ登場していた。(ジオン側はガトー)
最初のほうこそプレイヤーを「ヒヨッコ共」や「お前達」と呼んでやや厳しめの言葉を掛けるが、「レーダーをよく見るんだ」や「貴様の甘えで船が沈む。いいな。」、「落ち着け!」等上官らしい叱咤やアドバイスをかけてくれる。
そして階級が上がっていくと、「あとで飯でも食うか」や「帰ったら美味い酒を奢ってやる」とか「ようし、給料をタダ取りすんなよ!」等、態度も軟化していく様子も見られる。
さらに当人が大尉ということからプレイヤーが少佐以上になると敬語で接してくれるようになる。
「進路クリアー、御武運を!!」や「この戦い、勝てると信じてます」等、原作では聞くことの出来ない台詞を言ってくれるので、バニングファン必聴。

ガンダムVSシリーズにおいては無印EXVSでバトルナビとして登場
以降は搭乗機が量産機という事もあり、基本的にコウのアシストとしてのみ参戦していたが、
量産機の参戦が多いGANDAM VERSUSではジム・カスタムにて満を持してのプレイアブル化を果たしている。
アムロやトラヴィスとは連邦繋がりか豊富な専用会話が有るが、部下のコウには話かけるのみで掛け合い無し。※同作におけるコウに台詞の新録が無かったためと思われる。

【余談】

CVを務めた菅原正志氏は不死身の第四小隊担当声優では(鬼籍に入ったベイト役戸谷氏の代役である今村氏を除けば)一番若かったりする。

実は39歳という年齢はガンダムシリーズのメインの登場人物においてはなかなか高齢な設定である。
というのもMSとは違うかもしれないが、自衛隊の戦闘機のパイロットは40歳が関門と言われ、大体30代後半でエリミネート(パイロットとしてはお役御免)するという。
以降は腕利きであればアグレッサーやブルーインパルス、そうでなくても航空管制官などの地上任務に関わるという。
そう考えるとバニングの年齢はパイロットとしての限界が近いという、ある意味ではリアルな設定。

なのだが、ご存じの通り宇宙世紀においてMSが連邦に来たのは0079後半であり、その時バニングは30代後半に差し掛かっている。
常識的に考えたら年齢的に直ぐにお役御免になる人間をMSパイロットにするのはあまり考えにくくはある。
が、連邦の状況的に猫の手も借りたい状況であったのだろう…
いずれにしても、そこから配置転換し即エースパイロットになったのは間違いなく才能があったと言えよう。

と言いつつも後の宇宙世紀には50代や60代のパイロットも多く登場し、彼らはバニングのような不調を訴えてる事はあまり無い。
作劇上の都合と言えばそれまでだが、例を挙げると16歳から40年近く戦い続けて今度こそ引退とボヤく52歳とか確認されている限りではグリプス戦役から40年近くMSに乗り続けたベテランとか1年戦争から木星戦役が終わってしばらくするまでずっとパイロットなんかも存在しており、それを考慮すればバニングの引退は早すぎるくらいとすら言える。
とはいえ彼らは10代、20代の頃からMSを駆っており、そういう意味では30代後半からMSパイロットとなったバニングはなかなか特殊ケースと言える。ゆえにバニングの不調は「体がMSに完全に順応する前に体力的な限界が出始めた」というのが落とし所だろうか。
他に理由を考えるとすれば「MSの操縦の負担が技術革新で良くなり高齢でも負担が感じなくなったが、バニングの時代ではまだその辺りの技術が育っていなかった」「バニングがMSに乗り始めたのは上述のように遅めであり、それまで乗っていた戦闘機などの負担が来た」「怪我や疲れが溜まっているところで部下が成長したので、まだ体が動くうちに引退を決意した」辺りだろうか。





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最終更新:2025年01月07日 15:22

*1 別居の理由は実は不明だが、大方バニングの女癖のせいなのだろうとファンからは予測されている

*2 前期OPからの使い回しカットの多い後期OPにもわざわざバニングの姿だけを省かれた全員集合カットが新しく描かれており、下手をすると本編を見る前から彼の運命を悟ってしまう。

*3 更に一か所のかすり傷が爆発に繋がっていく様子が事細かく描写されており、損傷した部位の奥から発生した火花が推進剤に引火して最初の爆発がコックピット付近で発生(これでバニングが即死)、制御を失ったのは爆発の衝撃で制御回路が無茶苦茶に接続されてしまった事が原因としている

*4 女主人公でやった場合のみ、主人公が誘拐されない。代わりに男が1人誘拐されるけど。

*5 メタ的なことを言えば同作に新規出演したマクロス7のレイ・ラブロックと声優が同じなため、そのついで録りができたのも大きかったのだろう