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*'''GRAN TURISMO''' 【ぐらんつーりすも】 |ジャンル|リアルドライビングシミュレータ|&amazon(B000069SQ1)| |対応機種|プレイステーション|~| |メディア|CD-ROM 1枚|~| |発売元|ソニー・コンピュータエンタテインメント|~| |開発元|ソニー・コンピュータエンタテインメント&br()ポリフォニー・デジタル&br()サイバーヘッド|~| |発売日|1997年12月23日|~| |定価|5,800円(税抜)|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |>|>|CENTER:''[[グランツーリスモシリーズリンク>グランツーリスモシリーズ]]''| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が1997年12月に発売した3Dレースゲーム。通称は『GT』。~ 収録車両は100車種146グレード。パッケージに使用された車両は「トヨタ スープラ(JZA80)」と「日産 スカイライン GT-R(R33)」。 開発は以前『モータートゥーン・グランプリ』シリーズを手掛けた山内一典氏率いる、SCE内部の「Poly's Entertainment」チーム(現ポリフォニー・デジタル)が担当。((実際は前述にもあるようにサイバーヘッド(旧・アルシスソフトウェア)が当時開発中だった『オメガブースト』に関わっていた一部の人員を半ば強制的にプロジェクトから切り離し、そのメンバーが本作の開発に参加することとなった。))~ 山内氏は次世代ゲーム機で様々な新機軸のゲームが出現する中、当時のレースゲームの「『ゲーム』として「デフォルメしたレース」を表現する」という立場に不満を持ち、~ 徹底してモータースポーツの再現を追求したリアル志向のレースゲーム「リアルドライビングシミュレーター」として、5年もの歳月をかけて本作を誕生させた。 「リアリティ」を追求したレースゲームは本作が初めてという訳ではないのだが((セガの『バーチャレーシング』『セガラリーチャンピオンシップ』等。ただしこれらはゲームでの3D技術に進化の比重が置かれており、車の挙動には脚色も混じっている))、当時としては珍しい環境マッピングの搭載、専用物理エンジンによる非常にリアルなマシンの挙動、~ 多数の実在車種を登場させた本作は国内だけでも250万本、世界的には1000万本以上の大ヒットを記録し、「GTの登場がレースゲームの在り方を一変させた」とも言われるまでの作品となった。 ---- **特徴・評価点 ''「リアル」な挙動'' -独自開発された物理エンジン((質量・速度・摩擦・風に関する古典力学的現象のシミュレート・演算を行うソフトウェアの事。自動車ではカーブでの遠心力や路面のグリップ力の演算も必要となる。))により、車の挙動は現実の物理現象を比較的忠実に再現している。 --従来のレースゲームでは、事前に車種毎のプログラムを組んで疑似的に車の挙動を再現していた((端的に言うなら「それっぽく車体を傾けて挙動を重くしていた」。))のだが、本作はそれ以上、97年当時において最も「リアルな挙動」を獲得する事に成功した。 ---ただし、''細かい点では実際とは異なる「ゲームらしい部分」はもちろん存在する。''例えばレース中に他の車や壁に接触してもペナルティやダメージが発生しないのは他のレースゲーム同様。 --同ハードで発売されたナムコの『[[リッジレーサー>リッジレーサー (PS)]]』は大ジャンプや無茶なドリフト等、リアリティ無視の爽快感がウリの作品だったが、本作ではそんな芸当はできない。~ アクセル全開でコーナー突入は当然不可能であり、更にブレーキやアクセル操作も雑な操作ではタイヤのグリップを狂わせてしまいコースアウト、場合によってはスピンしてしまう。 --本作の登場は所謂PCゲームのみの存在であった「リアル系レースゲーム」というジャンルを家庭用ゲーム機たるPlaystation系列で確立する事となり、後発の作品群にも少なからず影響を与える事となった。 ''「リアル」の車'' -登場する車は全て実在するもので、その数なんと100種以上。「実車を操作できる」という事も当時は珍しかったのだが、その圧倒的な収録数はユーザーの度肝を抜いた。~ トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、三菱自動車、富士重工、ゼネラルモーターズ、クライスラー、アストンマーティン・ラゴンダ、TVRと契約、ゲーム制作面でも連携している。 --厳密にはこれらのメーカー直属のチューニングメーカーや、タイヤメーカーのブリヂストン、オイルメーカーのカストロールも協力している。 --前述した専用物理エンジンに車の寸法・重量等の性能を入力すれば、それぞれのデータ毎にほぼ現実に近い挙動が簡単に再現できる仕様になっており、収録車数増加に一役買った。~ 車のセッティング内容も多岐に渡り、ギア比やブレーキの利き方、サスペンション等数値による細かい設定が可能。空力等、素人目には分からない部分の違いも再現されている。 -車のモデリングはもちろん、エンジン音等も緻密な取材によって「グレード・年式の差」も再現されており、ほぼ全ての車に全4ページの解説テキストも用意されている。 --特にTVRは当時、他のレースゲームには殆ど登場しておらず((あったとしても『Test Drive 4』といった海外製のゲームにしか登場していなかった。))、グリフィスに至ってはゲーム初登場であった。 --国産車種中心のラインナップとなっているが、作品の大ヒットに伴い「この作品で日本国内専売のスポーツカーは世界的な知名度を上げた」とまで言われた((アメリカが舞台のカーアクション映画『ワイルド・スピード』では改造車の車内で本作をプレイしているシーンが存在し、続編『ワイルド・スピードX2』では日本国内専売車種だった『日産 スカイライン GT-R(R34)』『三菱 ランサーエボリューションVII』が主役車両として抜擢されていた。))。 --一部レースを優勝した際に入手できるプライズカーは、非純正のカラー・ホイール((ボディカラーは黄・オレンジ・金・アクアブルー・青緑・濃紫・薄紫、ホイールカラーは金・赤等、派手なものが多い。「レーシングモディファイ」を行ってもこれらのカラーは維持される。))・エアロパーツを纏ったものがあるが、一部は当時のチューンドカー((「日産 180SX」に「日産 シルビア(S13)」のフロントパーツを付けた「シルエイティ」(詳細は「余談」欄にて)、「スプーン シビック」を意識した黄色ボディに黒いボンネット&ホイールの「ホンダ シビック タイプR(EK9)」、漫画『頭文字D』及び同作の作者の愛車を意識した白/黒ツートンに黒いホイールの「トヨタ スプリンタートレノ(AE86)」。いずれも『グランツーリスモ4』でモデルとなった車が収録されている。))がモデルとなっている。 -厳密な意味では「架空車」といえるマシンも幾つか存在しており、そうしたマシンの大半には解説テキストが用意されていない。 --市販車をレースカーに改造する特別チューニング「レーシングモディファイ」(以下「RM」)もそのひとつなのだが、そのデザインの大半には他にモデル(元ネタ)が存在する。 ---例えば、国産車種は全日本GT選手権・全日本ツーリングカー選手権・スーパー耐久・メーカー系ワンメイクレース・世界ラリー選手権(WRC)・国内ラリーの参戦車、~ 海外車種はル・マン24時間耐久レース等のFIA-GT(BPR-GT含む)・SCCA(アメリカのツーリングカーレース)・全日本GT選手権の参戦車が主なモデルとなっている。 ---現在でも有名なものから、知ってる人は思わず「あっ!」と声を上げるであろうマニアックなものもあり、相当な拘りを感じ取れる部分である。 --スポーツカーをル・マン24時間耐久レースに対応するように大幅に改造した「LMエディション」は、約半分ほどがモデルの無い架空のレースカーとなっている。 ---なお、ピュアレーシングカーやRM施工車はカテゴリーが「レーシングカー」となり、一部のレース(レーシングスペシャルモデル不可のイベント)に参加が出来なくなる((レーシングカー不可のレースは次作以降でも多いが、逆にレーシングカーのみ参加可能なレースは『2』の各ワンメイクレース(RACING STYLE)と『3』の「フォーミュラGT」くらいしかない。))。 ''「リアル」を求めた映像'' -美術面でもハード性能をフルに引き出してリアリティが追求されている。中でも当時まだ珍しかった「環境マッピング技術」が特徴的。 --「環境マッピング」とは、車体に光沢をつけ、表面には用意された周囲の背景反射や影を映り込ませる技術。これによって視覚的にも現実感がより伝わりやすくなっている。~ 元々レベルの高いポリゴンとテクスチャーと合わさって、ただでさえレベルの高かったグラフィック描写がより美しいものとなり、ユーザーから絶賛された。 ---更には「映像でのみ車両のホイールが逆回転に見える現象」である「ワゴンホイール効果」も再現されている。 -11種あるコースは山間部や森林を切り開いたような様々な本格サーキットコースから、高速道路と周辺道路をサーキットとしたテクニカルコースも用意されている。 --景観もPS1のゲームにしては非常にリアルで、コーナー距離標識や縁石は勿論、観客席・トンネル・橋・ビル・スポンサー看板等の巨大建造物、木々や街頭も描写されている。 --レース後のリプレイ映像のカメラワークも洗練されている点も特徴。どんな走り方でも格好良く見えてしまうほどで、この点も幾多の車好きを魅了した。 - 下記の「クイックアーケード」をクリアすると、「GT HIFI」なる隠しモードが出現する。 --オブジェクトを大量削減した特定の3コースしか走れないが、FPSが通常の30fpsから倍の60fpsに向上すると言う、据え置き機では珍しいベンチマーク的なモードである。 ''楽しくシビアなカーライフを体感'' -ゲームモードは「クイックアーケード」と今シリーズのメインモードである「グランツーリスモ」の2つ。 --「''クイックアーケード''」はあらかじめ用意された車と8つのコース(デフォルト4+隠し4)を選んで、手軽にカーレースを楽しむモード。 ---海外車種は初期選択できないが、初期開放の4コースで優勝すると開放される隠し4コースで優勝すると、それぞれ開放されていく。 --「''グランツーリスモ''」は一人のレーサーとして、車購入・モータースポーツライセンス取得から始まり、最終的に「グランツーリスモ ワールドカップ」優勝を目指すモード。 ---車とライセンスを取得→レースで勝利して賞金やプレゼントカーを獲得→そのお金で車の売買や車のセットアップ・チューニングを行っていく…という循環が基本システムなのだが、~ 車の売買では「お金が無い序盤は中古車を買った方が得」「車の売却時、車と同じメーカーのディーラーに持ち込むと買い取り価格が上乗せされる」等の妙にリアルな描写も再現されている。 ---ライセンス試験のスタート前には、車の基本動作・駆動方式の違い・レースに必要な技術が説明される。これらを一つずつ身につけないと本作を十二分に楽しむことはできないだろう。 ---このモードのレースでは「本戦」の前にコースを1周し、ゴールしたタイムで本戦でのグリッド順(スタート位置)を決める「予選」が行われる。~ 予選の参加は自由で、予選を飛ばしていきなり本戦に行くことも可能だが、その場合は当然ながら最下位スタートとなる((なお、予選でポールポジジョン(1位)を獲得するとボーナス賞金を入手できるが、この要素は本作のみとなっている。))。 -これらの''「プレイヤーがゲームを楽しみながら、現実でも通じうるドライビング技術を段階的に学べる」というゲームデザインは以降のシリーズでも徹底される''事となる。 ''非常に評価の高いBGM'' -オープニング・エンディング・レース・オプションBGMの作曲は、F1中継の「TRUTH」やゲームでは『[[アークザラッド]]』でお馴染みの「T-SQUARE」の安藤まさひろ氏が担当((氏のBGMの殆どは96年に発売された同氏のアルバム『ANDY'S』からの流用や、インストゥルメンタルアレンジ版となっている。))。 --OP曲の『Moon Over The Castle』はシンセサイザーから静かに始まり、オーケストラとロックが組み合わさった熱い曲調となる名曲で、それにCG&ゲーム映像を合わせた構成は特に印象に残るだろう。~ 全5曲のレースBGMもロックやフュージョンを押し出した激しめなものがメインだが、サックスをメインとした落ち着いた曲の『Freedom To Win』もあり、その何れもが高く評価されている。 ---『Moon Over The Castle』はシリーズのテーマソングとなり、作品毎にアレンジがなされたものが日本版のオープニング曲として『[[5>グランツーリスモ5]]』まで使用され続けた。 -オプションを除く全メニューBGM作曲はジャズ作曲をメインとする大平勇氏が担当。落ち着いたもの・ピアノを強調した陽気なもの・ロック調のものと、その場面にピッタリとマッチしたBGMとなっている。 -''これらのBGMは後のシリーズでも再アレンジ・流用という形で登場し続けている。''特に2名が本格的な作曲を行った最後の作品である『[[4>グランツーリスモ4]]』は、新曲の他に今作のBGMのアレンジ版が新録されている。 ---- **問題点 -とにかく「リアリティ」を追い求めた結果、あらゆる面で難易度が高い。 --操作・レース・カスタマイズ・セッティング・ライセンス…いずれにおいてもハードルは相応に高い。レースゲーム初心者は購入に覚悟が必要。 ---特にライセンス試験の難易度は、2018年現在でも「シリーズトップの難しさ」と悪名高く、「最低ランクのブロンズを取るだけでも苦行」とさえ言われるレベルである。~ 国内B級3つ目が初心者の心をへし折り、中級者は国内A級の3つ目で行き詰まり、国際A級の7つ目は数多のプレイヤーに絶望を与えた。 --その割に挙動の再現度にはまだまだ及ばない点が見られる。恐らくは第1作目から敷居を高くしすぎると受け入れられない、売れないという商業的な側面もあるものと思われる。 ---チューニングを全て行うと「300キロ前後でコーナー進入、アクセルオフ&ドリフトで曲がる」等、結果的には遅いながらもそれこそ『リッジレーサー』と見間違う走りも可能。 --ついでに言えば車の売却手順も「マイホームのガレージで売却したい車に乗り換え、ディーラーまで持ち込む」といささか煩わしい。 ---続編以降は乗車の是非に関わらず、ガレージ画面から一定の値段で売却できる様に簡易化されている。 -「実車」に拘っている為か、ライセンス許可が下りた自動車会社のスポーティな車種ばかりが登場している。 --『[[2>グランツーリスモ2]]』以降は大半のメーカーで一般車も収録され「『現実の愛車』と『夢の愛車』を一緒に楽しめる」と話題を博す事となるが、第1作目である今作の時点ではそれがかなり希薄である。~ 明らかな大衆車かつスポーツグレード自体の設定が無い車は「マツダ デミオ」のみ、「パッと見はスポーティな車だがレース向きではないグレード」も極僅か((具体的には「日産 シルビアと180SXの非ターボ(NA)車」「ホンダ CR-XのVXiとVGi」「三菱 ギャラン VR-G」。これらは車重にパワーが負け気味で、純正状態では「データ数値の割に遅い」と感じやすい。))しかなく、続編以降と比べると明らかに少ない。 ---一応、デミオには純正チューンドカーの「A-spec」、その他の車もよりパワーのある上位グレードが登場しているので、車種「だけ」に拘るならばそちらを用いることをお勧めする。 --もう一つの不満点であった参加メーカーの少なさも、続編毎に用品系スポンサーともに数が増えていき、『5』では遂にスーパーカーメーカーが大量収録((フェラーリ、マセラティ、ランボルギーニ、マクラーレン、ブガッティが追加。))されるまでになった((各メーカーとの連携範囲も本作での「車の名前や形の使用許可」程度から、続編毎に「車の図面データの提供」→「3DCADデータの提供」、「入門レースの公式シミュレーターとして使用」「PDIがエアロパーツをデザイン」や、「R35型GT-RやC7型コルベット、F82型M4など新車発表の場として使う」、「PDIから依頼されて車を制作」などと拡大されていくこととなる。))。 -コースは全て架空のもので、その点でのリアリティが薄い。 --今作時点では一部コースのレイアウトが実在するものに似ている((「グランバレー・イーストセクション」「ハイスピードリンク」の2コースが、実在する「富士スピードウェイ」(2003年までのレイアウト)に似ている。特に後者は高速主体のコースである点も似ている。))程度である。この点は『2』でリアルサーキットが1つ登場、『4』以降で大量に追加されていく事となる。 ---山内氏は『4』にて「''(当時は)シミュレーションエンジンの再現度の関係で、タイムが現実と同じぐらいにならないから入れたくなかった''」と、これまた拘りを感じさせる理由((同時に「『2』のラグナ・セカは北米市場からの実在コース要望があまりにも強かったので、仕方なく入れた」とも発言している。))を明かしている。 -''ゲーム開始時のオートロード機能が無い''為、注意しないとロード前のデータで上書きしてしまう危険がある。 --グランツーリスモモードとアーケードモードのセーブデータが連動しており、両方共いっぺんにせーブロードされる仕様もこの現象を起こしやすい。~ 例えば初日はアーケード、次の日にグランツーリスモをプレーした際、2日目に一度ロードしないでセーブした場合、アーケードのデータはまっさらな物が上書きされてしまう。 ---この点は『2』でオートロード機能が付いて解決した。 -CPUに関する細かな調整不足が見受けられる。 --CPUの車両はいかなる状況でもコースの決められたラインを走行するようになっている。 ---これの何が問題かと言えば、例えプレイヤーの車が車線上にいようと必ずラインを厳守して走行する為、後ろからドカドカ体当たりしてくる((こちらが体当たりを行っても、CPUには一定の補正が働いているようで、あまり効力はない。))ため、非常に鬱陶しい。~ これはレースゲームでは頻発する問題であり、別のゲームでは「イン側後方のCPU車に自車のリアサイドを押され、強制的にスピンをさせられる」等が散見される。 --CPUの速さも妙におかしいものがある。 ---例えば、イベント「ノーマルカー世界一」の予選では、「ホンダ NSX」より「スバル インプレッサ」の方が1秒以上早いのだが、いざレースを開始するとNSXの方が3秒以上速くなる。~ 「日米スポーツカー選手権」のハイスピードリングも同様で、高速コースでありながら大馬力の「ダッジ バイパーRM」より、高速コースは苦手な「インプレッサ RM」の方が遥かに速い。~ 更には「GT WORLD CUP」や耐久レースの「グランバレー300km」では「日産 プリメーラ RM」が明らかに格上である「インプレッサ ラリーエディション」よりも速いという事もある。 -一部でバグがある。 --一部の四輪駆動車の駆動形式が前輪駆動とミスプログラムされている。 --具体的には「三菱 ランサーエボリューション」「トヨタ セリカ GT-FOUR」「日産 パルサーGTi-R」と言った車がこれに該当する。 ---「ベースとなった車の駆動方式に影響されている」「データ製作時にベース車から駆動方式の変更を忘れた」等様々な説があるが、ベースモデルが未収録の車までバグがある理由は謎である。 --もっとも、セリカとランエボについては裏を返せば「事実上AクラスのFF車」として取り扱うことのできる個性付けととることもできる。当時はハイパワーなFF車にとぼしく、280馬力のFF車はトヨタ・エスティマとホンダ・インスパイアくらいと非レース向け車だけだったので、そのあたりから考えると敢えてのゲームバランス調整という可能性もある。 --これに関連しているのか、''日本版においては四輪駆動車を壁に密着させて横滑りさせると途方も無いスピードが出るバグがある。''~ 1998年に出た海外版では修正されているが、体験版においては同様の事態が起こっていた。 #region(参考画像及び参考動画) #image(1004km/h.jpg,width=400,height=300) 本家 #video(https://www.youtube.com/watch?v=gHSKcxUga_0) #video(https://www.youtube.com/watch?v=jKj5M0sytJw) 海外版の体験版 #video(https://www.youtube.com/watch?v=WUln7bm6-a4) #endregion ---- **総評 「記念すべき第1作目」だけでは済まない、まさに「リアル系レースゲームの先駆け」「日本を代表するゲームの一つ」としてゲーム史に名を残す名作。~ 車好きのスタッフ・各メーカー・現役レーサーが協力し、徹底して作り上げられたリアリティのある内容は他のゲームの追随を許さず、まさに一種の仮想現実を作り出し、~ 車や背景の美しさには車好きでない人々も驚愕、ゲーム部分でもモータースポーツの面白さを伝えた一方、現実での「難しさ」までも再現した点は賛否両論であった。~ しかしそのクオリティや内容は、20年を経た現在から見れば粗はあるがそれでも高く評価できるもので、車とゲームが好きならば一度はプレイしてみて欲しい良作である。 ---- **余談 -「グランツーリスモ(Gran Turismo:イタリア語)」、通称「GT」とは自動車の1カテゴリ。~ もともとの定義は「セダンかクーペタイプで、出力の大きめなエンジンを搭載し、快適なキャビンと大旅行に十分なラケッジスペースを備えている」というものである。~ 最近では曖昧となっており、「典型的なスポーツカーからは外されるタイプの車」「普通のファミリーカーよりはスポーティな車」という認識が一般的なものとなっている。 -テレビCMも非常に力が入っており、数パターンの全く異なるCMが製作された。内容も当時のSCEらしい風変わりで妙にインパクトがある、かつ色々な意味で豪華なものが多かった。 --内容は第1弾が「サラリーマンの何気ない日常((深夜に自宅の鍵を捻る、薄暗い喫茶店で腕時計を見る、トンネル内にある給水機のペダルを踏むの3パターン。))を車の操作に見立て、エンジン音が流れて驚愕する」、第2弾が「何故かサーキットの道路ど真ん中に立っている一軒家の玄関に大量の実車が突っ込む」、~ 第3弾が「制作に協力した国産自動車会社6社の本物の営業担当者が集合。それぞれ自社の車(実車)を売り込み、GTでもその車で遊ぶ」というもので、第3弾は特に印象に残りやすく、有名でもあろう。 ---以降のシリーズのCMでも、実車とゲーム画面を組み合わせた派手なものが主流となっている。 -「シルエイティ」の存在について。 --多数の実在車種が登場する中、この車は「日産180SXに同社のS13シルビアのフロントを合体させた改造車」である為か、ゲーム上の扱い的には一般車ながら日産ディーラーには登場しない。~ 当時はプレゼントカーを筆頭に「車種説明が一切無い車種」があり、この車もその対象だった為、漫画「頭文字D」や改造車雑誌を読み漁っていた人でなければ分かりにくい謎の車種であった。 --一応「シルエイティ」の商標は日産が取得済で、本作発売後には名古屋のチューナーが製作した車両を日産が委託販売する形で「新車の『日産・シルエイティ』」が500台限定で販売された。 ---こちらは本作や『2』でのそれとは外見が大きく異なるが、メーカー純正車両ということもあり『4』以降の作品ではこちらが「1998年式 日産・シルエイティ」として収録されている。 -1998年に発売された海外版は上記のバグ修正のほか、様々な変更がなされている。 --一番目立つ点は全BGMの変更。メニュー系は海外のSCEスタッフによるデジタルBGM、レースBGMは各アーティストのライセンス曲となっている。 --他にもUIの全体的な手直し((タイトル画面の時点から、「クイックアーケード」が「アーケード」、「グランツーリスモ」が「シミュレーション」にモード名が変更されている。))、ホンダ車が海外ブランドの「アキュラ」メインに、「アーケード」限定で「1967年式 シボレー コルベット」「1998年式 マツダ ロードスター」が追加されている。
*'''GRAN TURISMO''' 【ぐらんつーりすも】 |ジャンル|リアルドライビングシミュレータ|&amazon(B000069SQ1)| |対応機種|プレイステーション|~| |メディア|CD-ROM 1枚|~| |発売元|ソニー・コンピュータエンタテインメント|~| |開発元|ソニー・コンピュータエンタテインメント&br()ポリフォニー・デジタル&br()サイバーヘッド|~| |発売日|1997年12月23日|~| |定価|5,800円(税抜)|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |>|>|CENTER:''[[グランツーリスモシリーズリンク>グランツーリスモシリーズ]]''| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が1997年12月に発売した3Dレースゲーム。通称は『GT』。~ 収録車両は100車種146グレード。パッケージに使用された車両は「トヨタ スープラ(JZA80)」と「日産 スカイライン GT-R(R33)」。 開発は以前『モータートゥーン・グランプリ』シリーズを手掛けた山内一典氏率いる、SCE内部の「Poly's Entertainment」チーム(現ポリフォニー・デジタル)が担当。((実際は前述にもあるようにサイバーヘッド(旧・アルシスソフトウェア)が当時開発中だった『オメガブースト』に関わっていた一部の人員を半ば強制的にプロジェクトから切り離し、そのメンバーが本作の開発に参加することとなった。))~ 山内氏は次世代ゲーム機で様々な新機軸のゲームが出現する中、当時のレースゲームの「『ゲーム』として「デフォルメしたレース」を表現する」という立場に不満を持ち、~ 徹底してモータースポーツの再現を追求したリアル志向のレースゲーム「リアルドライビングシミュレーター」として、5年もの歳月をかけて本作を誕生させた。 「リアリティ」を追求したレースゲームは本作が初めてという訳ではないのだが((セガの『バーチャレーシング』『セガラリーチャンピオンシップ』等。ただしこれらはゲームでの3D技術に進化の比重が置かれており、車の挙動には脚色も混じっている))、当時としては珍しい環境マッピングの搭載、専用物理エンジンによる非常にリアルなマシンの挙動、~ 多数の実在車種を登場させた本作は国内だけでも250万本、世界的には1000万本以上の大ヒットを記録し、「GTの登場がレースゲームの在り方を一変させた」とも言われるまでの作品となった。 ---- **特徴・評価点 ''「リアル」な挙動'' -独自開発された物理エンジン((質量・速度・摩擦・風に関する古典力学的現象のシミュレート・演算を行うソフトウェアの事。自動車ではカーブでの遠心力や路面のグリップ力の演算も必要となる。))により、車の挙動は現実の物理現象を比較的忠実に再現している。 --従来のレースゲームでは、事前に車種毎のプログラムを組んで疑似的に車の挙動を再現していた((端的に言うなら「それっぽく車体を傾けて挙動を重くしていた」。))のだが、本作はそれ以上、97年当時において最も「リアルな挙動」を獲得する事に成功した。 --同ハードで発売されたナムコの『[[リッジレーサー>リッジレーサー (PS)]]』は大ジャンプや無茶なドリフト等、リアリティ無視の爽快感がウリの作品だったが、本作ではそんな芸当はできない。~ アクセル全開でコーナー突入は当然不可能であり、更にブレーキやアクセル操作も雑な操作ではタイヤのグリップを狂わせてしまいコースアウト、場合によってはスピンしてしまう。 --本作の登場は所謂PCゲームのみの存在であった「リアル系レースゲーム」というジャンルを家庭用ゲーム機たるPlaystation系列で確立する事となり、後発の作品群にも少なからず影響を与える事となった。 ''「リアル」の車'' -登場する車は全て実在するもので、その数なんと100種以上。「実車を操作できる」という事も当時は珍しかったのだが、その圧倒的な収録数はユーザーの度肝を抜いた。~ トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、三菱自動車、富士重工、ゼネラルモーターズ、クライスラー、アストンマーティン・ラゴンダ、TVRと契約、ゲーム制作面でも連携している。 --厳密にはこれらのメーカー直属のチューニングメーカーや、タイヤメーカーのブリヂストン、オイルメーカーのカストロールも協力している。 --前述した専用物理エンジンに車の寸法・重量等の性能を入力すれば、それぞれのデータ毎にほぼ現実に近い挙動が簡単に再現できる仕様になっており、収録車数増加に一役買った。~ 車のセッティング内容も多岐に渡り、ギア比やブレーキの利き方、サスペンション等数値による細かい設定が可能。空力等、素人目には分からない部分の違いも再現されている。 -車のモデリングはもちろん、エンジン音等も緻密な取材によって「グレード・年式の差」も再現されており、ほぼ全ての車に全4ページの解説テキストも用意されている。 --特にTVRは当時、他のレースゲームには殆ど登場しておらず((あったとしても『Test Drive 4』といった海外製のゲームにしか登場していなかった。))、グリフィスに至ってはゲーム初登場であった。 --国産車種中心のラインナップとなっているが、作品の大ヒットに伴い「この作品で日本国内専売のスポーツカーは世界的な知名度を上げた」とまで言われた((アメリカが舞台のカーアクション映画『ワイルド・スピード』では改造車の車内で本作をプレイしているシーンが存在し、続編『ワイルド・スピードX2』では日本国内専売車種だった『日産 スカイライン GT-R(R34)』『三菱 ランサーエボリューションVII』が主役車両として抜擢されていた。))。 --一部レースを優勝した際に入手できるプライズカーは、非純正のカラー・ホイール((ボディカラーは黄・オレンジ・金・アクアブルー・青緑・濃紫・薄紫、ホイールカラーは金・赤等、派手なものが多い。「レーシングモディファイ」を行ってもこれらのカラーは維持される。))・エアロパーツを纏ったものがあるが、一部は当時のチューンドカー((「日産 180SX」に「日産 シルビア(S13)」のフロントパーツを付けた「シルエイティ」(詳細は「余談」欄にて)、「スプーン シビック」を意識した黄色ボディに黒いボンネット&ホイールの「ホンダ シビック タイプR(EK9)」、漫画『頭文字D』及び同作の作者の愛車を意識した白/黒ツートンに黒いホイールの「トヨタ スプリンタートレノ(AE86)」。いずれも『グランツーリスモ4』でモデルとなった車が収録されている。))がモデルとなっている。 -厳密な意味では「架空車」といえるマシンも幾つか存在しており、そうしたマシンの大半には解説テキストが用意されていない。 --市販車をレースカーに改造する特別チューニング「レーシングモディファイ」(以下「RM」)もそのひとつなのだが、そのデザインの大半には他にモデル(元ネタ)が存在する。 ---例えば、国産車種は全日本GT選手権・全日本ツーリングカー選手権・スーパー耐久・メーカー系ワンメイクレース・世界ラリー選手権(WRC)・国内ラリーの参戦車、~ 海外車種はル・マン24時間耐久レース等のFIA-GT(BPR-GT含む)・SCCA(アメリカのツーリングカーレース)・全日本GT選手権の参戦車が主なモデルとなっている。 ---現在でも有名なものから、知ってる人は思わず「あっ!」と声を上げるであろうマニアックなものもあり、相当な拘りを感じ取れる部分である。 --スポーツカーをル・マン24時間耐久レースに対応するように大幅に改造した「LMエディション」は、約半分ほどがモデルの無い架空のレースカーとなっている。 ---なお、ピュアレーシングカーやRM施工車はカテゴリーが「レーシングカー」となり、一部のレース(レーシングスペシャルモデル不可のイベント)に参加が出来なくなる((レーシングカー不可のレースは次作以降でも多いが、逆にレーシングカーのみ参加可能なレースは『2』の各ワンメイクレース(RACING STYLE)と『3』の「フォーミュラGT」くらいしかない。))。 ''「リアル」を求めた映像'' -美術面でもハード性能をフルに引き出してリアリティが追求されている。中でも当時まだ珍しかった「環境マッピング技術」が特徴的。 --「環境マッピング」とは、車体に光沢をつけ、表面には用意された周囲の背景反射や影を映り込ませる技術。これによって視覚的にも現実感がより伝わりやすくなっている。~ 元々レベルの高いポリゴンとテクスチャーと合わさって、ただでさえレベルの高かったグラフィック描写がより美しいものとなり、ユーザーから絶賛された。 ---更には「映像でのみ車両のホイールが逆回転に見える現象」である「ワゴンホイール効果」も再現されている。 -11種あるコースは山間部や森林を切り開いたような様々な本格サーキットコースから、高速道路と周辺道路をサーキットとしたテクニカルコースも用意されている。 --景観もPS1のゲームにしては非常にリアルで、コーナー距離標識や縁石は勿論、観客席・トンネル・橋・ビル・スポンサー看板等の巨大建造物、木々や街頭も描写されている。 --レース後のリプレイ映像のカメラワークも洗練されている点も特徴。どんな走り方でも格好良く見えてしまうほどで、この点も幾多の車好きを魅了した。 - 下記の「クイックアーケード」をクリアすると、「GT HIFI」なる隠しモードが出現する。 --オブジェクトを大量削減した特定の3コースしか走れないが、FPSが通常の30fpsから倍の60fpsに向上すると言う、据え置き機では珍しいベンチマーク的なモードである。 ''楽しくシビアなカーライフを体感'' -ゲームモードは「クイックアーケード」と今シリーズのメインモードである「グランツーリスモ」の2つ。 --「''クイックアーケード''」はあらかじめ用意された車と8つのコース(デフォルト4+隠し4)を選んで、手軽にカーレースを楽しむモード。 ---海外車種は初期選択できないが、初期開放の4コースで優勝すると開放される隠し4コースで優勝すると、それぞれ開放されていく。 --「''グランツーリスモ''」は一人のレーサーとして、車購入・モータースポーツライセンス取得から始まり、最終的に「グランツーリスモ ワールドカップ」優勝を目指すモード。 ---車とライセンスを取得→レースで勝利して賞金やプレゼントカーを獲得→そのお金で車の売買や車のセットアップ・チューニングを行っていく…という循環が基本システムなのだが、~ 車の売買では「お金が無い序盤は中古車を買った方が得」「車の売却時、車と同じメーカーのディーラーに持ち込むと買い取り価格が上乗せされる」等の妙にリアルな描写も再現されている。 ---ライセンス試験のスタート前には、車の基本動作・駆動方式の違い・レースに必要な技術が説明される。これらを一つずつ身につけないと本作を十二分に楽しむことはできないだろう。 ---このモードのレースでは「本戦」の前にコースを1周し、ゴールしたタイムで本戦でのグリッド順(スタート位置)を決める「予選」が行われる。~ 予選の参加は自由で、予選を飛ばしていきなり本戦に行くことも可能だが、その場合は当然ながら最下位スタートとなる((なお、予選でポールポジジョン(1位)を獲得するとボーナス賞金を入手できるが、この要素は本作のみとなっている。))。 -これらの''「プレイヤーがゲームを楽しみながら、現実でも通じうるドライビング技術を段階的に学べる」というゲームデザインは以降のシリーズでも徹底される''事となる。 ''非常に評価の高いBGM'' -オープニング・エンディング・レース・オプションBGMの作曲は、F1中継の「TRUTH」やゲームでは『[[アークザラッド]]』でお馴染みの「T-SQUARE」の安藤まさひろ氏が担当((氏のBGMの殆どは96年に発売された同氏のアルバム『ANDY'S』からの流用や、インストゥルメンタルアレンジ版となっている。))。 --OP曲の『Moon Over The Castle』はシンセサイザーから静かに始まり、オーケストラとロックが組み合わさった熱い曲調となる名曲で、それにCG&ゲーム映像を合わせた構成は特に印象に残るだろう。~ 全5曲のレースBGMもロックやフュージョンを押し出した激しめなものがメインだが、サックスをメインとした落ち着いた曲の『Freedom To Win』もあり、その何れもが高く評価されている。 ---『Moon Over The Castle』はシリーズのテーマソングとなり、作品毎にアレンジがなされたものが日本版のオープニング曲として『[[5>グランツーリスモ5]]』まで使用され続けた。 -オプションを除く全メニューBGM作曲はジャズ作曲をメインとする大平勇氏が担当。落ち着いたもの・ピアノを強調した陽気なもの・ロック調のものと、その場面にピッタリとマッチしたBGMとなっている。 -''これらのBGMは後のシリーズでも再アレンジ・流用という形で登場し続けている。''特に2名が本格的な作曲を行った最後の作品である『[[4>グランツーリスモ4]]』は、新曲の他に今作のBGMのアレンジ版が新録されている。 ---- **問題点 -とにかく「リアリティ」を追い求めた結果、あらゆる面で難易度が高い。 --操作・レース・カスタマイズ・セッティング・ライセンス…いずれにおいてもハードルは相応に高い。レースゲーム初心者は購入に覚悟が必要。 ---特にライセンス試験の難易度は、2018年現在でも「シリーズトップの難しさ」と悪名高く、「最低ランクのブロンズを取るだけでも苦行」とさえ言われるレベルである。~ 国内B級3つ目が初心者の心をへし折り、中級者は国内A級の3つ目で行き詰まり、国際A級の7つ目は数多のプレイヤーに絶望を与えた。 --その割に挙動の再現度にはまだまだ及ばない点が見られる。恐らくは第1作目から敷居を高くしすぎると受け入れられない、売れないという商業的な側面もあるものと思われる。 ---チューニングを全て行うと「300キロ前後でコーナー進入、アクセルオフ&ドリフトで曲がる」等、結果的には遅いながらもそれこそ『リッジレーサー』と見間違う走りも可能。 --ついでに言えば車の売却手順も「マイホームのガレージで売却したい車に乗り換え、ディーラーまで持ち込む」といささか煩わしい。 ---続編以降は乗車の是非に関わらず、ガレージ画面から一定の値段で売却できる様に簡易化されている。 -「実車」に拘っている為か、ライセンス許可が下りた自動車会社のスポーティな車種ばかりが登場している。 --『[[2>グランツーリスモ2]]』以降は大半のメーカーで一般車も収録され「『現実の愛車』と『夢の愛車』を一緒に楽しめる」と話題を博す事となるが、第1作目である今作の時点ではそれがかなり希薄である。~ 明らかな大衆車かつスポーツグレード自体の設定が無い車は「マツダ デミオ」のみ、「パッと見はスポーティな車だがレース向きではないグレード」も極僅か((具体的には「日産 シルビアと180SXの非ターボ(NA)車」「ホンダ CR-XのVXiとVGi」「三菱 ギャラン VR-G」。これらは車重にパワーが負け気味で、純正状態では「データ数値の割に遅い」と感じやすい。))しかなく、続編以降と比べると明らかに少ない。 ---一応、デミオには純正チューンドカーの「A-spec」、その他の車もよりパワーのある上位グレードが登場しているので、車種「だけ」に拘るならばそちらを用いることをお勧めする。 --もう一つの不満点であった参加メーカーの少なさも、続編毎に用品系スポンサーともに数が増えていき、『5』では遂にスーパーカーメーカーが大量収録((フェラーリ、マセラティ、ランボルギーニ、マクラーレン、ブガッティが追加。))されるまでになった((各メーカーとの連携範囲も本作での「車の名前や形の使用許可」程度から、続編毎に「車の図面データの提供」→「3DCADデータの提供」、「入門レースの公式シミュレーターとして使用」「PDIがエアロパーツをデザイン」や、「R35型GT-RやC7型コルベット、F82型M4など新車発表の場として使う」、「PDIから依頼されて車を制作」などと拡大されていくこととなる。))。 -コースは全て架空のもので、その点でのリアリティが薄い。 --今作時点では一部コースのレイアウトが実在するものに似ている((「グランバレー・イーストセクション」「ハイスピードリンク」の2コースが、実在する「富士スピードウェイ」(2003年までのレイアウト)に似ている。特に後者は高速主体のコースである点も似ている。))程度である。この点は『2』でリアルサーキットが1つ登場、『4』以降で大量に追加されていく事となる。 ---山内氏は『4』にて「''(当時は)シミュレーションエンジンの再現度の関係で、タイムが現実と同じぐらいにならないから入れたくなかった''」と、これまた拘りを感じさせる理由((同時に「『2』のラグナ・セカは北米市場からの実在コース要望があまりにも強かったので、仕方なく入れた」とも発言している。))を明かしている。 -''ゲーム開始時のオートロード機能が無い''為、注意しないとロード前のデータで上書きしてしまう危険がある。 --グランツーリスモモードとアーケードモードのセーブデータが連動しており、両方共いっぺんにせーブロードされる仕様もこの現象を起こしやすい。~ 例えば初日はアーケード、次の日にグランツーリスモをプレーした際、2日目に一度ロードしないでセーブした場合、アーケードのデータはまっさらな物が上書きされてしまう。 ---この点は『2』でオートロード機能が付いて解決した。 -CPUに関する細かな調整不足が見受けられる。 --CPUの車両はいかなる状況でもコースの決められたラインを走行するようになっている。 ---これの何が問題かと言えば、例えプレイヤーの車が車線上にいようと必ずラインを厳守して走行する為、後ろからドカドカ体当たりしてくる((こちらが体当たりを行っても、CPUには一定の補正が働いているようで、あまり効力はない。))ため、非常に鬱陶しい。~ これはレースゲームでは頻発する問題であり、別のゲームでは「イン側後方のCPU車に自車のリアサイドを押され、強制的にスピンをさせられる」等が散見される。 --CPUの速さも妙におかしいものがある。 ---例えば、イベント「ノーマルカー世界一」の予選では、「ホンダ NSX」より「スバル インプレッサ」の方が1秒以上早いのだが、いざレースを開始するとNSXの方が3秒以上速くなる。~ 「日米スポーツカー選手権」のハイスピードリングも同様で、高速コースでありながら大馬力の「ダッジ バイパーRM」より、高速コースは苦手な「インプレッサ RM」の方が遥かに速い。~ 更には「GT WORLD CUP」や耐久レースの「グランバレー300km」では「日産 プリメーラ RM」が明らかに格上である「インプレッサ ラリーエディション」よりも速いという事もある。 -一部でバグがある。 --一部の四輪駆動車の駆動形式が前輪駆動とミスプログラムされている。 --具体的には「三菱 ランサーエボリューション」「トヨタ セリカ GT-FOUR」「日産 パルサーGTi-R」と言った車がこれに該当する。 ---「ベースとなった車の駆動方式に影響されている」「データ製作時にベース車から駆動方式の変更を忘れた」等様々な説があるが、ベースモデルが未収録の車までバグがある理由は謎である。 --もっとも、セリカとランエボについては裏を返せば「事実上AクラスのFF車」として取り扱うことのできる個性付けととることもできる。当時はハイパワーなFF車にとぼしく、280馬力のFF車はトヨタ・エスティマとホンダ・インスパイアくらいと非レース向け車だけだったので、そのあたりから考えると敢えてのゲームバランス調整という可能性もある。 --これに関連しているのか、''日本版においては四輪駆動車を壁に密着させて横滑りさせると途方も無いスピードが出るバグがある。''~ 1998年に出た海外版では修正されているが、体験版においては同様の事態が起こっていた。 #region(参考画像及び参考動画) #image(1004km/h.jpg,width=400,height=300) 本家 #video(https://www.youtube.com/watch?v=gHSKcxUga_0) #video(https://www.youtube.com/watch?v=jKj5M0sytJw) 海外版の体験版 #video(https://www.youtube.com/watch?v=WUln7bm6-a4) #endregion ---- **総評 「記念すべき第1作目」だけでは済まない、まさに「リアル系レースゲームの先駆け」「日本を代表するゲームの一つ」としてゲーム史に名を残す名作。~ 車好きのスタッフ・各メーカー・現役レーサーが協力し、徹底して作り上げられたリアリティのある内容は他のゲームの追随を許さず、まさに一種の仮想現実を作り出し、~ 車や背景の美しさには車好きでない人々も驚愕、ゲーム部分でもモータースポーツの面白さを伝えた一方、現実での「難しさ」までも再現した点は賛否両論であった。~ しかしそのクオリティや内容は、20年を経た現在から見れば粗はあるがそれでも高く評価できるもので、車とゲームが好きならば一度はプレイしてみて欲しい良作である。 ---- **余談 -「グランツーリスモ(Gran Turismo:イタリア語)」、通称「GT」とは自動車の1カテゴリ。~ もともとの定義は「セダンかクーペタイプで、出力の大きめなエンジンを搭載し、快適なキャビンと大旅行に十分なラケッジスペースを備えている」というものである。~ 最近では曖昧となっており、「典型的なスポーツカーからは外されるタイプの車」「普通のファミリーカーよりはスポーティな車」という認識が一般的なものとなっている。 -テレビCMも非常に力が入っており、数パターンの全く異なるCMが製作された。内容も当時のSCEらしい風変わりで妙にインパクトがある、かつ色々な意味で豪華なものが多かった。 --内容は第1弾が「サラリーマンの何気ない日常((深夜に自宅の鍵を捻る、薄暗い喫茶店で腕時計を見る、トンネル内にある給水機のペダルを踏むの3パターン。))を車の操作に見立て、エンジン音が流れて驚愕する」、第2弾が「何故かサーキットの道路ど真ん中に立っている一軒家の玄関に大量の実車が突っ込む」、~ 第3弾が「制作に協力した国産自動車会社6社の本物の営業担当者が集合。それぞれ自社の車(実車)を売り込み、GTでもその車で遊ぶ」というもので、第3弾は特に印象に残りやすく、有名でもあろう。 ---以降のシリーズのCMでも、実車とゲーム画面を組み合わせた派手なものが主流となっている。 -「シルエイティ」の存在について。 --多数の実在車種が登場する中、この車は「日産180SXに同社のS13シルビアのフロントを合体させた改造車」である為か、ゲーム上の扱い的には一般車ながら日産ディーラーには登場しない。~ 当時はプレゼントカーを筆頭に「車種説明が一切無い車種」があり、この車もその対象だった為、漫画「頭文字D」や改造車雑誌を読み漁っていた人でなければ分かりにくい謎の車種であった。 --一応「シルエイティ」の商標は日産が取得済で、本作発売後には名古屋のチューナーが製作した車両を日産が委託販売する形で「新車の『日産・シルエイティ』」が500台限定で販売された。 ---こちらは本作や『2』でのそれとは外見が大きく異なるが、メーカー純正車両ということもあり『4』以降の作品ではこちらが「1998年式 日産・シルエイティ」として収録されている。 -1998年に発売された海外版は上記のバグ修正のほか、様々な変更がなされている。 --一番目立つ点は全BGMの変更。メニュー系は海外のSCEスタッフによるデジタルBGM、レースBGMは各アーティストのライセンス曲となっている。 --他にもUIの全体的な手直し((タイトル画面の時点から、「クイックアーケード」が「アーケード」、「グランツーリスモ」が「シミュレーション」にモード名が変更されている。))、ホンダ車が海外ブランドの「アキュラ」メインに、「アーケード」限定で「1967年式 シボレー コルベット」「1998年式 マツダ ロードスター」が追加されている。

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