弁慶外伝 沙の章

【べんけいがいでん すなのしょう】

ジャンル ロールプレイング
対応機種 スーパーファミコン
発売・開発元 サン電子
発売日 1992年12月11日
定価 8,800円
判定 なし
ポイント 中国にまで広がった舞台
まさかの弁慶NPC化
消化不良なストーリー・エンカウント率の問題は相変わらず
またちがう次元にとばされたにょーひ!
弁慶外伝シリーズ
弁慶外伝 / 弁慶外伝 沙の章


概要

1989年にPCエンジンで発売された『弁慶外伝』の約80年後を舞台にした続編。 林省寺やかすみの砦など前作をプレイした人には懐かしいエリアも登場する。


プロローグ

鎌倉に都が開かれて八十二年。最大の国難が日本を襲った。
中国大陸全土の統一を目論む最強の大国「元」の蒙古軍襲来。
軍船九百隻、兵力三万三千の圧倒的な武力で守備隊を打ち破り九州・博多を制圧した。
しかしその時、突然吹き荒れた暴風によって蒙古軍は壊滅的な打撃を受け撤退を強いられた。(文永の役)
「元」の皇帝フビライ・カンはこの嵐が強力な古代の呪法である事を察し
配下の四界将・呪魂(ジュゴン)を日本に送った。
これを知った将軍・時宗は呪魂の率いる呪界衆を迎え撃つべく全国の法力者に発令した。
だが呪界衆は時宗の思惑を超えて遥かに手強く、多くの法力者達が次々に倒されていった。
闇の世界で動く者達の血みどろの死闘がここに始まった。


システム

  • 前作同様『ドラクエ』タイプのRPG。
    • 序盤は日本を駆け巡るが、中盤からは舞台が中国へと移る。
    • 戦闘は従来のウィンドウにメッセージを表示する他、動くキャラクターを表示させる形式のものが選択できる。
  • 戦闘中は攻撃・法術(魔法)・遁走(逃走)の等の他、様々なコマンドが使用出来る。
    • 「一斉」味方全員で一斉に1体を攻撃する。
    • 「守護」常由の他、一部の敵も使用してくる。味方が受けるダメージを全て肩代わりし、あらゆるダメージを軽減する。
    • 「剣技」常由が使用可能。法術を消費して敵全員を攻撃する。専用のBGMが流れる等演出が凝っているのだが…(後述の問題点参照)
  • 主人公(デフォルト名は「不動」)の性別を変更できるようになった。またパーティキャラの名前も変更可能。
    • 性別は男女で顔グラフィックが違う他、エンディングでの一枚絵と後日譚が異なる。
    • 名前はあらかじめ用意された漢字の他「作字」でドットによる手描きも可能。真面目な名前をつけるもよし、ネタに走るもよし。
  • 攻撃アイテム「式符」の存在。
    • 移動中に使用する事で、戦闘開始と同時に敵全体を攻撃してくれる。こちらのレベルに応じて使用できる枚数が変わり、多く消費するほど効果も強力になる。戦闘中も使用可能。
    • なお、式符はある場所で販売されている他、町や村の壺から回収できるものがある。
  • 弁慶のNPC化。
    • 本作の弁慶はゲームの中盤で加入するが、戦闘中は操作できずランダムで弁慶専用の武器を使用して攻撃をするNPCとなっている。
    • 弁慶専用の武器は道中で入手可能。
  • 全滅するとゲームオーバーとなり、ゲームを最初から始めるかデータを選択するかの画面に戻される。

評価点

  • BGMが良質。特にエンディングの曲は評価が高い。
    • 戦闘曲はいずれも良曲揃いな上に日本編と中国編で雑魚戦ボス戦で異なるなど、凝っている。裏技で前作の曲を流す事も出来る。
  • 戦闘面の改善
    • 戦闘のテンポが向上。
      • 文章が早く表示されるようになった。
      • 術も「単体の演出を一斉に表示する」事で前作の問題点を解消している。
    • 補助術も数ターン持続するようになった。
    • 敵も術のダメージに強い者、物理攻撃に強い者、すぐ逃げる者など個性付けがされて戦略性が増した。
      • 例えば「守護」持ちの敵がいる場合、普通にやり合うと時間がかかるのだが即死術である「灼解」「太極壊」を使用する事で楽に倒せる。
  • 敵も前作よりも個性派が増えた。
    • 「暗黒力士」「口裂け」「大鼠」等の見たまんまの敵もいれば「苦討牙(くとうが)」「狂奴(きょうど)」「マハーラン」等の意味不明な名前の敵もいる。
      • 「魔破羅邪(まはらじゃ)*1」「早流牙草(さるがそう)」「針魔王(はりまお)*2」「士牙羅鬼(しがらき)」といったヤケクソ当て字気味のネーミングセンスも健在。
    • 「踊り猫」や「魚頭」と言ったボーナス敵も出現するようになった。
      • 前者は仲間を呼び*3、後者は経験値が高いがすぐ逃げる『ドラクエ』のメタルスライムのような敵。
    • 四界将の一人・呪魂は序盤から主人公一行に襲い掛かり重要人物を殺害する等暗躍し、かなりキャラ立ちしている。

賛否両論点

  • 雑魚戦の戦闘バランス
    • 本作の雑魚戦は敵の特徴がわかれば楽に倒せてサクサク進める反面、慣れてしまうと作業のように感じてしまう人もいると思われる。
  • 隠しキャラクターである「へべ」の存在。
    • ある特定の地点に行くと『へべれけ』のへべが敵として出現し、倒せれば莫大な経験値をくれるボーナスキャラクターとなっている。
    • 一種のセルフパロディ・ファンサービスとも取れるが、本作の硬派な世界観には全くマッチしておらず、異物感が強い。
    • なお、へべは本作の説明書にもゲスト的に出演している。
  • NPCとなった弁慶
    • 本作の弁慶はプレイヤーは操作できず、あくまで「主人公達を見守る保護者」のような扱いである。
      • これに関しては「扱いが悪くなった」とする声と「戦士タイプである常由が割を食うよりはマシ」という意見もある。
    • とは言え、存在感が無いという事は無く会話やストーリーにはしっかりと絡む。
    • 本作の弁慶の扱いが批判されやすい理由は「戦鬼の異名をもって語られるほどの存在である割に、戦闘での貢献がイマイチ」という面にあるだろう。四界将戦やラスボス戦では高頻度で参戦してくれるが、通常戦での参戦は10回に1回程度であり、瀕死の仲間を守る等の行動も特にない。このため 味方の全滅を「これも修行だ」とばかりに見届けるだけの弁慶 というシュールな光景が多々発生する。

問題点

  • エンカウント率が高い。
    • 1歩2歩エンカはザラにある。エンカウントを抑制できる手段はあるものの、フィールドでしか使用できない。
  • シナリオの要求するフラグに一ヵ所理不尽なものがある。
    • 中国編中盤で敦煌の町長が倒れた後、その後どのようにフラグを立てるのかが非常にわかりにくい。
      + ネタバレ
    • 正解は「中国編の序盤に訪れた「達磨洞」で覚樹(羅覚)に会う」事。なお覚樹がここにいる事は少林寺で聞けるが、少林寺は達磨洞のすぐそばにあるためシナリオの進行的にはまず気づかない。つまりノーヒントかつ、このタイミングで達磨洞に行きつかなければならないのである。このイベントを起こさないと後々全く関連性のない別の地域で重要人物が出現せずにストーリーが進行しなくなる為、足止めを喰らうハメになる。
      • そもそもこの「覚樹に会う」イベントは時期的にあまり重要でない*4上に、フラグを要求するタイミングも脈絡がなくかなり唐突である。無理矢理イベントをねじ込むにしても町長が倒れた時点で達磨洞への誘導を促すセリフを喋るモブを敦煌に配置する等、もう少しやりようがあったのではないだろうか?
        • それとは別に、同時期に崑崙関係や四界将絡みのイベントが中途半端に存在するのがややこしく、そちらを先に進めなければならないのかと勘違いしやすい。かといってこれらのイベントを中途半端なまま放置して先の地域をくまなく探索しようものなら正解からは遠ざかる一方である*5
        • 本作で最も批判されやすい部分であり、ここでどうすればいいかわからず断念してしまったプレイヤーも多い。ちなみにこのイベントでは主人公と覚樹との一騎打ちがあるが、かなり手強い。初見ではまず負けると思われる。
  • 中国編に入ってから武器防具の購入に難儀する。
    • 武具の値段が序盤こそ銀500~600程度だが中盤でおよそ銀3000~4000、終盤で高いものでは銀9800するのに対し、戦闘で入手できる銀は敵一体につき0~30ぽっちしか得られない。多くて70ほど。とても稼ぐ気にならない。
    • とは言え本作の武具はダンジョンからも入手できる数が多く、よほど物臭なプレイヤーでもない限り必要分は購入せずとも工面出来る。
  • ストーリーが練りこみ不足。
    • 最序盤で最初のボスと戦った後「もう一度私と会う事になる」と言われるが、出番はこれっきりで物語からフェードアウトしてしまう。
      • あろうことか、後になっていつの間にか主人公が殺害した事が判明する。展開を端折り過ぎである。
    • 四界将も町人から「元々は人間だった」事を仄めかす台詞が聞けるが、それ以降は語られず真相は最後まで謎のままである。
  • 「戻れなくなる」問題。
    • 日本編終盤で呪魂を倒すと、何の予告も無しに下準備をする間もなく中国編に移り、日本には二度と戻れなくなる。僅かではあるが取り返しのつかない要素もある*6
    • 中国編終盤、ラストダンジョンに入ると出られなくなり、クリアしか道が無くなる*7
      • こちらは事前に弁慶が警告してくれる為、準備が出来るのが救い。
      • 前作にも言える事だが、買い物くらいは出来るようにして欲しかったものである(無料の回復&セーブ施設はある)。
  • パーティキャラの1人である常由がお荷物気味。
    • 術が使えない戦士タイプだが、攻撃力も不動や巳陰に比べ特別高いという事もなくボス戦ではアイテム係になりやすい。また、彼特有の剣技を使用する度にやや長めの演出が入るのでテンポが悪化する。中盤のイベントでしばらく離脱し、再加入時は離脱時のレベルで加入するのも逆風。

総評

戦闘テンポの向上、個性派揃いのキャラクター、中国にまで広がった舞台と全作から正統な進化を遂げたと言える。
とは言え、雑なストーリーや高エンカウント率、理不尽なフラグ要求等やはりまだまだ粗は見られる凡作止まりの作品である。

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最終更新:2024年02月01日 00:07

*1 余談だが、同社は1989年に同名のゲームをFCで開発・発売している。

*2 1960年代に放送された実写番組『怪傑ハリマオ』が元ネタと思われる

*3 説明書にも「踊り猫はうまく倒せ」と仲間を呼ばし続けて倒す事を遠回しに書いてある

*4 話しかけると問答無用で戦闘→戦闘に勝利→なぜ戦ったのかを問うと「歴史を見定める為」と抽象的な事を言い、終盤必須となる道具を渡されるだけ

*5 先の地域ではシンボルが存在しない隠し施設が存在するが、この仕様と相まって発見できなかったプレイヤーの方が少ないと思われる。

*6 ダンジョンから脱出できる「あやかしの鈴」や弁慶専用の武器など

*7 厳密にはラストダンジョン一つ前のダンジョンに入った時点。