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オリビアのミステリー - (2018/10/11 (木) 19:57:42) の編集履歴(バックアップ)


オリビアのミステリー

【おりびあのみすてりー】

ジャンル パズル
対応機種 スーパーファミコン
発売元 アルトロン
発売日 1994年2月4日
定価 9,800円(税別)
判定 バカゲー
ゲームバランスが不安定
ポイント 謎世界観と超展開の連続
絵がヘタクソ
序盤から飛ばしている難易度
にもかかわらずイマイチ分からんヒント


概要

アルトロンから販売された「うごく絵」シリーズのVer1.0。往年の名作『キネティックコネクション』*1と類似した、動く絵柄が特徴のジグソーパズルゲーム。
パズルゲームには珍しいストーリー性を伴った作品で、珍奇で独特なシナリオのバカゲーとして知られている。

後に1.1(PC98『オリビアのミステリー』)や2.0(SFC『アリョール』)が販売された。


ストーリー

世界中が水不足に喘ぐ中、主人公の青年は壊れた給水塔を直すために塔へ昇っていくも既に手遅れで、水は空になっていた。
塔を降りてサーカスのバイトに勤しんでいた折、研究都市を擁するとある国の皇帝の娘が、
父が国民から搾取した水を拒み続ける内に徐々に衰弱しているとの噂を耳にした青年は、
特にたいした理由もなく娘を救うため、水を追い求めて世界をまたに駆けた奇想天外な冒険へ旅立つのだった。


システム

  • 前述の通り、基本的なシステム面や操作やピースの数などは『きね子』を踏まえている。
    • 本作ならではの特徴として、幾何学模様が多かった同作と異なり、ストーリー性のある1枚絵を組み立てる。
      • ステージ開始前に、ストーリーがテロップで表示されるようになっており、組み立てるパズルは語られるストーリーの内容にそったものになっている。ステージの進行に伴いストーリーも進んでいく。
  • 本作は全18面構成のマルチエンディング制となっている。
    • グッド、ノーマル、バッドの3段階のエンディングが用意されており、17面までのクリア時間によって最終面のストーリーと絵の内容が変化する。

バカゲー要素

シナリオ

  • 説明書に載っている世界観説明が、なんとも日本語的に錯綜している。
    • “「皇帝の娘を助けなければならない」そう、勝手に信じ込んだ男が、世界の果てへと旅に出る”。
      これだけだと「何だ、ギャグのつもりか」と言うだけの序文だが、その次に冗長な本文(プレイヤーが男と共に冒険する、と言う意味合いの文章が言い回しを変えて連続する)が続き、最後は何の脈絡も無く、“すべては、あの夏の日のやっかいな事件から始まったのです。”と妙に丁寧に閉じられる。
  • ゲーム中に出るストーリーはそれ以上に錯綜している。
    • 例えば水道管が破損したくだりでは「とてもたいへんなことだから、だれかがなんとかするだろうと思った」と言う平易さ。
      子供向けに易しくしているのか?と思いきや「したがって」「~である」のように堅い文体が混ざり合い、更に(上記のストーリーにも見られる)「含みを持たせた煽り文」がいい具合に挿入される。
  • さらにテキストの数割が冗語表現や反復法(のようなもの)を用いている。
    以下は2面のテキストの引用である。なお漢字・ひらがなはゲーム画面に即している。
    だれもが「なんとかしなければならない」と思った。
    しかし、だれもが「なんとかなるだろう」とも思った。
    ほうっておけばたいへんなことになるかもしれないが、
    どうしていいかわからないし、だいいちなんとかするにしてもめんどうだ。
    とてもたいへんなことだから、だれかがなんとかするだろうと思った。
    しかしそんなことをかんがえている間にも水はなくなっていってしまう。
    私はついにビルのカベを登ってパイプのバルブをしめにいくことにした。
    
  • 上述のストーリーの項目を読んで察した人もいるかもしれないが、ストーリーは超展開に次ぐ超展開の連続で、世界や星をまたにかけた大冒険が繰り広げられる。
    以下の文章は、あるステージで倒れた皇帝の娘のために、大陸を駆け抜け薬を取って来る場面の引用なのだが…
    しかし、やっとかえっておどろいた。
    人々は娘が死んだはなしをしているではないか。
    あわててちかくの人にきいてみると、
    皇帝の娘はもうきょういっぱいもたないだろうということであった。
    こまった。
    
    やむをえず、うまを1ぴきかりて研究都市へはしることにする。
    むりにたのんで、いちばんはやいうまをかりた。
    が、さすが、いちばんはやいうまである。
    のるまえにはしっていってしまった。
    
  • 「こまった」の一言で済まされているが、次のステージではこんな調子である。
    なんてことだ。おいかけてるうちに研究都市についてしまった。
    なんのためにうまをかりたんか、ようわからん。
    
  • あえてよく言えば平易で分かりやすいと言うべきか。
    • これが洋ゲーだったら翻訳の都合とも思えるが、このゲームを作ったアルトロンはれっきとした日本のメーカーである。
      ただ文体はヘンテコだが、話の筋じたいは奇想天外かつ、どこか牧歌的でもあり、中々楽しめる。バッドエンドは悲しい…
  • 劇中テキストはこちらで見ることができる。
  • ちなみに、オリビアという名前は作中では登場せず、説明書に(なぜか)存在する英文版部分で「Princess Olivia.」と書かれていることにより、これで初めてパッケージやゲーム中に登場する女性がオリビア(=皇帝の娘)だとわかる。

問題点

難易度の高さ

  • パズルの絵柄がアニメーション画像となっているのがこのゲームの特徴だが、似たような色のピースが非常に多い。
    • 特にステージ開幕直後は「画面中に散らばった各ピースがそれぞれ上下左右に蠢いている」という状態なので、最初の1手に手をつけるハードルがいきなり高い。
    • 『きね子』同様にピースの上下左右はランダムで反転しているし、キャンバスの縁も無地、ピースの形は全て同じと、ジグソーパズルゲームとしてはヒントがかなり少ない。「端や四つ角から片づける」というアナログジグソーパズルの定石は通じない。
    • 格子状に並ぶ窓、青空、コピペで描かれた群衆など、一部の絵柄はシステムとの相性が非常によくない。
  • 全く同じ絵柄、同じ動きをするダミーピースが含まれている事があり、ダミーピースをキャンバスに正しい向きではめ込むと消滅してしまう。
    本物と見分ける方法はなく、実際にはめるまでわからない。
    • ただし、それによってはめ込む際の正しい向きが確定するため、一応、攻略のヒントとして使える。
  • 完成図が無いため、完成するまでどんな絵かわからない。
    • ただでさえ組み立て始めるまでが鬼門なのに、まずどんな絵が仕上がるのかがわからないというのは厳しすぎる。これのおかげで上下左右が逆転している事に気づかないまま組み進めてしまうケースが初見ではちょくちょく起こる。
    • 幸い、塗りのグラデーションやアニメーションの動き方などで推測は可能である。
    • なお完成図は左右反転していてもOK。基本的に絵の左右は見分けがつかない*2ため、順当な措置であろう。このため攻略記事等で原画の鏡像を掲載している例が多々見られる。

ストーリーテロップが読みづらい

  • 本文中では必要最低限の漢字しか使われておらずひらがなの量が多いにも拘らず、分かち書き*3されていないため文章が詰まっており、改行も段落ごとにしかされていないため非常に読み辛い。
    • その上、スクロール形式で文章が一気に流れていくのでゆっくり読む暇がない上に、文章がスクロールアウトする前に画面がブラックアウトしてしまうので、手中して目で追わないと全文を読みきれない。
      この仕様のおかげで、ただでさえ電波的で理解し難いストーリーが余計に分かり辛くなっている。ストーリー自体がおまけのようなものとはいえ、ストーリー性を打ち出した作品でこれでは困る。
    • おまけに テロップのスキップ・早送りは不可。 プレイする度にテロップが終わるまで待たなくてはならない。

絵がヘタ

  • パッケージ絵で薄々気がついた人も多いだろうが、パズルの絵柄全般……特に人物の顔の線が歪んでおり、無駄に難易度を上げる要因となっている。
    • 入れ違えによる線の歪みを画風と誤認して放置するケースが頻発する。「絵が完成したのにGOODが出ない……」と首をひねるのはお約束。
    • パッケージには「皇帝の娘」の立ち絵が描かれているが、この絵も正直なところあまり上手では無い。体のラインからかろうじて女性とわかるものの、やたらゴツイし顔も歪んでいる。
      • これはパッケージだけではなく劇中のパズルの絵に出てくる彼女もそうで、彼女が出てくるステージ10冒頭モノローグでは 「おもってたよりずっとこがらで、きゃしゃなかんじさえする。」 といわれているのだが、絵を見ると身長は主人公と変わらない*4うえ、肩幅が広く腕も太い。主人公はどれだけガタイのいい奴を思い浮かべていたのか?
  • 完成させて現れる絵の内容や構図そのものもやたら珍奇でよくわからないものが大多数を占めている。
    • 「意味も無く傘を左右に振る男たち」とか「水道局の窓をよじ登る主人公」とか「空を飛ぶ機械」などはまだしも、「予想天気図の映ったテレビ」だの、「後ろ手に縛り上げられ猿ぐつわをされてイモムシのように地面を這いつくばる男」だの、「アトミック水汲み機」だの、「チェーンソーを持った看護婦」だの、完成図がないというハンデを乗り越え苦労して完成させてもイマイチ達成感が湧き難いものばかりである
    • ちなみにパッケージ裏では「物語を読んでイメージをふくらまそう!」という旨の文が書かれており、ストーリー文がヒントの役割という位置づけになっていると思われるのだが、こんな珍妙な情景を的確に思い浮かべろという方が無理難題だろう。ただでさえ肝心のストーリー自体がよくわからん上に読み辛いのに……。

ゲームバランス

  • 本作はゲームバランスにもやや問題がある。
    • 最初に待ち受けるステージ1は特有のヘンテコなストーリーや謎テイストのイラストに頭を傾げるかも知れないが、このゲームではまだまだ小手調べの部類。
      しかし、次のステージ2のビルの壁登りのシーンになると似たような絵柄の窓のピースが大量に出現し、本作を始めたばかりの入門者はここで早くも躓く事になる。
      • また、壁を登る主人公がメインにもかかわらず、主人公を絵の端に配置するのが正解という妙な構図になっている。そのため、絵の中心に主人公を配置しているといつまでたってもクリアができない。
    • 一方、その次のステージ3は(本作の基準で言えば)平均的な難易度で、前のステージと比較してグッと楽に感じる事が多い。
    • ゲームを進めてしばらくした後に待ち受けるステージ14は、全18ステージ中の後半に相当する為、位置自体は妥当であるが、少し前のステージ12同様にピースの数が6×8と前半ステージと比較して格段に増加し、イラスト内容も市松模様の床がスペースハリアーの様に3Dスクロールしている上に、床の色が白と青の2色しか無くピース毎の区別が非常に見分けづらいという鬼仕様のため、本作随一の鬼畜ステージとして語り草になっている。
    • しかし、上記のステージ14の前には、全体的に見ても低難易度なステージ13があり、ステージ15以降も後半ステージらしく難易度が高めのイラストが続くが、ステージ14と比較して簡単に解ける物が多く、終盤の展開に拍子抜けしてしまったプレイヤーも多いだろう。
    • なお、本作はステージ17に到達するまでに経過した時間によってエンディングが分岐するのだが、上記の鬼畜ステージの存在やヒントの少なさゆえ、初プレーではほぼ間違いなくバッドエンドを拝む事になるだろう。所要時間が非常に厳しいため、グッドエンディングを見るには少ない時間でステージクリア→パスワードを保存してクリア時間が遅くなったらその都度やり直すという緻密なプレイが必須。

評価点

  • ストーリー性を加味した作風
    • もくもくと組み立てるだけなく、まず最初にストーリーを掲示してそれに沿った内容の絵を組み立てていくというのは、発想としてはおもしろい。上記の珍妙なストーリーも、空想科学冒険漫画的な趣があり、へんてこだが味わい深い。
      • それだけに、ストーリー文が読みづらいのがおしいところ。
  • アニメーション全般は滑らかであり、馬の走行フォームなども正しく描かれている。
  • エンディング分岐を脇においておけば制限時間は実質的にないので、いくらでも試行錯誤できる。
  • BGMは、ステージごとに専用の曲が用意されている。
    • チープな音質ながらもクラシカルな曲調で場の雰囲気にほどよく調和する曲が多く評価はいい。
    • ただし、ステージ1の曲のベースラインが思いきりずれていたり、ステージ6の曲でパートごとの旋律が時間経過と共にズレてきたり、その他の曲にも音程がずれていたり音色がおかしくなる箇所があったりする。これはアルトロン製のサウンドドライバに問題があったためだという。

総評

ジグソーパズルにおいて、完成図の存在がいかに大事かを教えてくれるソフトである。これが無いというだけで、本作の難易度は不必要に引き上げられている。
のみならず、作品全体に渡って散見されるアラの多さからして、本作はハッキリ「完成度が低い」と言えよう。

しかし、シュールで破天荒なストーリー、ヘンテコな日本語の文体、意外と場に合ったBGM、そしてナチュラルにヘタっぴな絵柄には、牧歌的でどこか不思議な味わいがあり、粗探ししたらキリがないというツッコみどころの多さと相まって本作をバカゲーたらしめている。

些細なヒントから正解を掘り起こさなければならないため攻略は困難を極めるが、程度の差こそあれ、ジグソーパズルとは元々そういうゲームである。
本作はその最低限の要素をきっちりとキープしているため、不親切な点は多かれど、クソゲーでは決してない。
実際「動く絵を使ったジグソーパズル」という骨組みの部分は面白く、魅力的とも言える。
ただ、そのゲームを遊ばせる環境が、90年代半ばに発表された作品としては劣悪だっただけである。

同コンセプトの「キネティックコネクション」のファンや、こうした怪作とも言える作風が好きなパズルゲームファンにおススメしておきたい。


その後の展開

  • 続編『うごく絵Ver.2.0 アリョール』も日本語として変なテキストや相変わらず女性に見えないヒロインなどおかしいところはあるが、パズルゲームとしては前作より相当改善されており凡作に仕上がっている。
    • プレイ前に完成図が出る、ピースが長方形ではない、1ステージ中3回まで完成図を見られるヒント機能、対戦モードの搭載など、本作の問題点・不満点の多くが改善されている。
      • 画力がかなり向上し(相対的にだが)、「アトミック水くみ機」や「チェーンソー看護婦」のような珍奇なマシーンや人物も無くなった。
        人によっては寂しく思うかもしれないが…
    • 2人の犯罪者が主役のストーリーは一見の価値があるような、ないような。また、メッセージの早送り&スクロール速度調整やスキップなども可能になった。
    • 一方で、タイムアウトによるゲームオーバーが起きるようになり、そこにピース形の変化(毎回変化する上に細かい)という要素が加わり、かえって厳しくなった部分もある。
      • このため、ステージ17は、最小ピース+ピース変化+全体的に赤く、メリハリのない色合いの殺人コンボに上記仕様が加わり、前作の鬼畜ステージ14を上回る難易度と化している。
        ただ、上述の通りヒント機能があるので、それを駆使すれば決して無理ゲーというわけではない。
    • パッケージ裏で謎の存在感を放つ「パズル博士」は、アリョールのパッケージ裏にはいない。

余談

  • パッケージ裏で、エンディングステージのひとつが堂々とネタバレ掲載されている。
  • 2016年1月に放映された『ゲームセンターCX』の第212回放送にて本ゲームが取り上げられている。
    • 同番組のメインパーソナリティである有野課長こと有野晋哉(よゐこ)が挑戦し、スタッフらの協力を得ながらゲームを進めていったものの、結果は規定時間を大幅に超過する形でのバッドエンドとなってしまった。