究極ハリキリスタジアム
【きゅうきょくはりきりすたじあむ】
ジャンル
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スポーツ(野球)
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売元
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タイトー
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開発元
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ナウプロダクション タイトー
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発売日
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1988年6月28日
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1988年12月16日('88選手新データバージョン)
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プレイ人数
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1~2人
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記録方式
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バッテリーバックアップ パスワード(60文字)
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定価
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5,500円
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判定
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良作
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ポイント
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第3のファミコン野球シリーズ ホームラン競争 アイドル球団 多彩なイベント
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究極ハリキリスタジアムシリーズ
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概要
野球ゲームブームの時代に投入された正統派の野球ゲーム。
野球ゲームとしての根本的な操作性は『ファミスタ』に倣っており、大多数がファミスタ経験者だったことから非常にとっつきやすかった。
それに様々な要素が追加され中でも目玉は試合ごとに付与されるポイントを用いた育成システムで、そのチームで対戦もできるシステムは非常に画期的で斬新なシステムだった。
1試合の中でも様々なイベントが発生し、まさしく「ファミスタのグレードアップ版」と言っても差し支えないほどであった。
また『燃えプロ』のようなピッチャーからの視点も取り入れられている。
通称『ハリスタ』として『ファミスタ』『燃えプロ』に続く第3の野球ゲームのとしてゲーム雑誌で取り上げられた。
収録されているチームは当時のセ・パ12球団と主に80年代当時のアイドルの名前が並ぶ女の子チーム「アイドール(I)」の計13球団。
プロ野球モデルの選手名は改変されている。
特徴及び評価点
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扱い慣れた基本操作
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投球、送球、バッティング、走塁などの主だった操作方法は野球ブームの火付け役『ファミスタ』とほぼ同じ。
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ただし対CPUの守備時に限り、ピッチャーの後ろ側からの視点でプレーする。
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操作とは違うがリーグ戦の方式も1P時のリーグ戦も他の12チームと1試合ずつ戦うファミスタ同様セントライト方式のような形。
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12チームに全勝すると優勝となり胴上げが見られる。ファミスタと違って負けてもゲームオーバーにはならず再戦できる(即強制再戦ではなく対戦候補から消えないだけ)。
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守備をセミオートに出来る
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ファミスタでは守備はマニュアルですべて自分でやらなくてはならなかったが、本作ではオートにする事でCPUが自動で守備をしてくれる上に必要に応じてプレイヤーの入力も受け付ける所謂「セミオート形式」を採用している。
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初心者では瞬時に打球の位置を予測して動くのが難しい為、ある程度補助してくれるオート操作は親切設計といえる。
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ファインプレー
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ジャンピングキャッチやダイビングキャッチといったファインプレーがありそれにより普通では取れないような打球を取ることができる。また送球時にも回転スローという大技がある。
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ポール直撃ホームランも搭載。しかも専用のSEまで用意されている。
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独特な牽制時のアクション。
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ファミスタにせよ、燃えプロにせよ守備時のアングルに移行するだけだったが本作では専用のアクションが用意されており、カメラアングルが動き、ズームアップのように展開されるダイナミックなものになっている。
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これは後述のCMでも見ることができた。
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オーダーが変更できる。
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試合前にオーダーを好きなように変更できる。ただし代打に入っているのをスタメンにはできない。
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選手の調子が存在する
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オーダーでは好調、不調の選手がアイコンで表示される。
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現在でもよく見られる「選手名の横に顔のマークのアイコンで好調、不調を表現する」手法をとったのはおそらく本作が初。
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投球数カウント
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ピッチャーの投球数が可視化され、スタミナの残り具合を把握しやすい。
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最大250球までで251球目になると「つかれた」という表示になるちょっとしたネタも仕込まれている。
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様々なイベント
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それまでの野球ゲームになかった様々なイベントで試合を盛り上げる。
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試合後にはテレビの野球中継のように実況と解説が総評を述べ、試合中のワンシーンのリプレイが見られる(ホームランがあった場合は決勝ホームランの再現が、なかった場合は適当な三振シーンが流れる)。
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試合中にもリリーフや代打を出されると、実況席に移り野球中継のような解説が入る。リリーフの場合、リリーフカーも見られる。
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実際のプロ野球の試合で時折見かけるデッドボール絡みの乱闘。
乱闘が始まると打者が投手に向かっていき、周りを両チームの選手が囲むという実際の乱闘に似た演出となり、どちらかの選手が倒れると救急スタッフが出てくるという凝りよう
A・Bボタン連打でリアルに戦うことができる。打者の方が「ぶつけられたため怒っている」ということでアドバンテージがある。反面ピッチャー側は不利だが隠しコマンドで謝って乱闘を回避するという裏技がある。
リアルタイムでの優劣はまったくわからないので、お互いに全力で連打する必要がある。
この結果は試合にも影響を及ぼし打者が勝てばピッチャーは退場(交代)を余儀なくされる。ピッチャーが勝てば打者は普通に一塁に出るが足が極端に遅くなる。
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「イベント」とはちょっと違うが、隠しコマンドでキャッチャーが「ドンマイ」と励ますことでピッチャーのスタミナが少し回復する。
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育成要素と必殺技
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試合終了時にポイントが付与され、選手を強化することができる。
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ピッチャーは「速球」「体力(スタミナ)」「変化」、野手は「投力(肩)」「打力」「走力」。これを自分好みに振り分けできる。
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ピッチャーのみだが速球派投手なら速球力最大で「火の玉ボール」、変化球派投手なら変化力最大で「分身魔球」という必殺技が使えるようになる。
「火の玉ボール」は隠しデータの耐久度の高いバット持ち打者以外は当ててもバットをへし折られてストライクになる。
「分身魔球」は発生すると必ず空振りを奪える。
無敵のように思えるが、使える球数がだいぶ限られるので、バランスブレイカーになるほどではない。
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試合後にパスワードを表示することで強化度合いを次回以降のプレイに引き継ぐことができる。
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2P対戦時はそのパスワードを入れることでお互いに育成したチーム同士で試合ができる。
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ホームラン競争
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現実でもオールスターの余興として行われる「ホームラン競争」をファミコン野球ゲームとしては初導入。
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2P対戦も可能でミニゲーム感覚で短時間でも楽しめる。
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厳密に打球が処理されるわけではなく(打っても守備画面に切り替わらない)、ジャストミートすれば大体ホームランになる為、テンポがいい。
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試合同様に終了時に実況と解説が総評を述べる。ただバリエーションが少ないので物足りない感もあるが。
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アイドル球団「アイドール(Iチーム)」
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「こいすみ(小泉今日子)」「ゆき(斉藤由貴)」「みほ(中山美穂)」など当時のアイドルの名前がズラリとならんでいる。中には「まとんな(マドンナ)」「ひばり(美空ひばり)」といった大年のアイドル枠や海外枠も混じっているが…
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一芸に秀でた選手も多いがそこそこの強さを持っている。
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「なんの(南野陽子)」「ごくみ(後藤久美子)」88年バージョンで登場する「のりぴ(酒井法子)」といった馴染みのあるニックネームが使われている選手もいる。
問題点
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球場が狭い
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球場自体がかなり狭くなっており、慣れた者同士ではスリーベースヒットが絶望的なほどに出ない。
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外野に飛球が上がるとかなり高確率でホームランになり実際の野球でよくある外野フライが少なく、またタッチアップも非常にしにくい。
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長すぎるパスワード
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細かい上に選手分のステータスがあるので致し方ないが使われている文字の種類が多い上に60文字というのは当時でも非常に長い。
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1人プレーをしている場合ならバックアップでパスワードが保存され、それが入った状態になり即再スタートできるが育成したチーム同士で2P対戦したいならその長文パスワードが必要。当時はスクショもデジカメもスマホもなかった時代。
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「B」のチームが紛らわしい
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現実の日本プロ野球同様に頭文字が「B」のチームが、『近鉄バファローズ』をモデルにした『ババロアーズ(Ba)』、『阪急ブレーブス』をモデルにしたチーム『ブレーメンズ(Bu)』と2つあるため小文字で2文字目を付加しているのだが、実在ではブレーブスは「B」のみで、バファローズが「Bu」であるため紛らわしい。
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『中日ドラゴンズ』をモデルとする「ドラポンズ(D)」には「りむら(仁村)」が2人(実の兄弟で、前年まで巨人に在籍していた兄の仁村薫と、デビューから中日に在籍していた弟の仁村徹)いるのだが、苗字のみの同じ表記のためどちらを指しているのかわかりにくい。スタメンでセカンドになっているのが徹、代打にいるのが薫。
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この後発売される野球ゲームでは、区別するため名前の1文字などが付加されている。
総評
野球ゲームとしてはユーザーに最も馴染みのあるファミスタシリーズをベースに、選手の育成要素という現在の野球ゲームの基礎を築いたと言える功績は大きい。
また、パスワード入力という手間はかかるが育成したチーム同士の対戦ができることで対戦の幅を広くしただけでなく、やり込みの価値を高めた。
それまでの野球ゲームはただ淡々と野球をしていた淡泊さが否めなかったが、様々なイベントを取り入れることで、単調さを緩和している。
手慣れた操作性によるシンプルさに様々なイベントや育成要素が加わり煩雑にならないバランスに纏められている。
全体的に、それまでの『ファミスタ』の順当な発展形と言えるだろう。
その後の展開
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同じ年の12月16日に、選手データを1988年終了時ベースに入れ替えた「'88選手新データバージョン」を発売。
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有名な所としては上述の近鉄がモデルの「ババロアーズ(Ba)」から「ていひる(ディック・デービル)」が抜け「ぶらい(ラルフ・ブライアント)」が入っている。
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「アイドール」の選手も5人入れ替わっている(上記の年長者2人は据え置き)。
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翌年7月には正式な続編となる『究極ハリキリスタジアム平成元年版』を発売。
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育成システムが引き継がれて2リーグ制やペナントなど基本的にはグレードアップ版だが、残念ながらいろいろと粗が多いものになっている。
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当初はシリーズ最終作ということだったが結局最終作にはならなかった(『究極ハリキリスタジアムIII』が1991年3月に発売)。
余談
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ファインプレーや乱闘、育成したチームでの対戦などCMでも謳われており、当時は野球ゲームブーム真っ只中ということもあって、その充実した内容がストレートに伝わるものだった。
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当時野球ゲームブーム真っ盛りでゲーム誌でも話題性が高かったこともあってか、裏技も盛んに掲載された。
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そして当時のゲーム誌の代表格だった『ファミリーコンピュータMAGAZINE』の名物「ウソテク」のネタにも使われた(1988年14号)。
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しかもそのネタも本作の目玉要素の1つ「アイドール」の選手を使ったもので、エースピッチャー「ゆき」で三振を取って「OUT」表示が出る前にIIコンマイクに叫ぶと、彼女が帽子を脱いでマウンドで歌いだすというもの。
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対COM戦でプレイヤー側が8点差以上の大差をつけられて負けているとスタンドがガラガラになる。
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また、これだけでなく「Bu」「F」「H」「O」「Ba」この5球団間での試合だと、なんと最初からガラガラになる(対COM戦のみ)。つまりこれは「当時最強だった『西武ライオンズ(L)』を除くパ・リーグ5球団」ということであり、当時のパ・リーグの人気のなさを揶揄しているようであった。
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『ファミスタ』『燃えプロ』とも前年作まで実名が使われていた(文字数制限による可能な範囲で)が、本シリーズは1988年に誕生したこともあり実名が使われたのが非常に遅く、1993年12月3日発売のスーパーファミコンソフト『スーパー究極ハリキリスタジアム』まで使われることがなかった。
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「ロッテオリオンズ」(ゲームでは「オロロンズ(0チーム)」)の愛甲猛だけ「あいこう」とそのままになっているのは、恐らくチェック漏れと思われる。
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「スラローム(Sチーム)」(ヤクルトスワローズがモデル)の代打には「なかしま(長嶋一茂)」がおり、彼を代打で出すと長嶋茂雄似の解説者が感慨深そうなコメントを出すという演出が存在する。
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そしてなんと「ガリバーズ(Gチーム)」(巨人軍がモデル)にはその本人「なかしま(長嶋茂雄)」まで代打でいたりする。だが、こちらは代打に出しても実況席にいる本人はこれといって特別なことは言わず他の選手と同じコメントしかしない。
また同じチームには初代ファミスタ同様に王貞治(本作では「おふ」)までいる。
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11月に発売されたタイトーのボードゲーム『たけしの戦国風雲児』では、関西地区でたけしに会うと「こうしえんで はりきりすたじあむを やろーぜ」と誘われて、元気が出て体力がマックスまで回復するイベントがある。
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映画『サマータイムマシン・ブルース』には本作のカートリッジが登場する。しかし、主に投げつけられるだけで、実際のゲームをプレイする場面は無い。
最終更新:2023年11月12日 17:26