「ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣 - (2020/12/14 (月) 15:29:13) の編集履歴(バックアップ)


ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣

【ふぁいあーえむぶれむ あんこくりゅうとひかりのつるぎ】

ジャンル シミュレーションRPG

対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 任天堂
開発元 インテリジェントシステムズ
発売日 1990年4月20日
定価 6,000円(税別)
プレイ人数 1人
セーブデータ 2個(バッテリーバックアップ)
レーティング CERO:A(全年齢対象)
※バーチャルコンソール版より付加
配信 バーチャルコンソール
【Wii】2009年10月20日/514Wiiポイント(税10%込)
【3DS】2012年8月1日/524円(税10%込)
【WiiU】2014年6月4日/524円(税10%込)
判定 良作
ポイント FEシリーズの記念すべき第1作目
シミュレーションRPGの草分け
予測性の高さと運否天賦が共存したシステム
本格的な戦争を描いたシナリオ
「手駒」ではなく「人物」として描かれたユニット
ファイアーエムブレムシリーズ関連作品リンク


概要

現在でもシリーズ作品が発売され続けている人気シミュレーションRPG『ファイアーエムブレム』シリーズの記念すべき第1作目にして、シミュレーションRPGのデファクトスタンダードを確立したマイルストーン的作品。
ウォー・シミュレーションとファンタジーRPGのエレメントを見事に融和しながらもそのどちらにも属さない本作独自の要素を多数含み、後に数多く発売される事になるフォロワー作品群とも一線を画した存在感を常に発揮しつづけている。


特徴

シミュレーションRPGを確立

  • 本作は日本で広く受け入れられている、タクティクスタイプのSLG(特に『ファミコンウォーズ』)をベースにシステムを構成している。
    • ウルティマなどのタクティカルコンバットのRPGと、ベースとしたウォーゲームの融合と言えるシステム。
    • ユニット毎に独立したキャラクター性を与えるユニークなシステムを採用。
      • さすがに容量の問題で今作の時点では敵ボスの殆どと一部の味方キャラは使い回しやコンパチではあるものの、味方キャラ数十名全員(および敵将や一部の主要キャラ)は個別の顔グラフィックと固有の名前をもっている。
      • 名もなき一般兵を金銭で事務的に雇用するのではなく、固有キャラ達が自らの意思で仲間となるため、愛着も湧きやすい。
    • 更には装備、アイテム、店、宝箱など、よりRPGライクな要素を取り入れた。
    • 戦略、育成、収集というかつて個別に提供されていた要素を破綻なく一つの作品に纏め上げ、かつシミュレーションの持つ無骨さを抑えとっつきやすさを損なわず作り上げるという偉業を成し遂げた。
  • 本作以降、シミュレーションRPGという複合ジャンルは一つの様式として確立され、『ラングリッサー』『シャイニングフォース』『スーパーロボット大戦』など数多くの有名作品シリーズが登場する事になる。
    • RPG要素をもったSLGは、それまでにも『ボコスカウォーズ』(83年)に始まり、『シルバーゴースト(ファーストクィーンシリーズ)』(88年)、『半熟英雄』(88年)などがあった。しかしいずれもリアルタイムストラテジー制を採用していたためか、自シリーズを超えてのジャンルとしての広がりはほとんど見せていない。

キャラクターの死

  • 本作が他のSLG作品ともっとも色彩を異にする要素として有名なのが「キャラクターの死」である。
    • 原則として、本シリーズで ユニットのHPが0になるということは、そのキャラクターは死亡となり永遠に失われる 事を意味する。
      • ゲーム終盤では、あるレアアイテムを入手することで「一人だけ」生き返るチャンスが与えられるのだが、この救済処置はまたプレイヤーに一層悩ましい選択を迫る要素として印象深い。
  • 一方仲間になるキャラクターは有限であり、死亡したからといってプレイヤーの都合で補充することは不可能。
    • 加入方法にしても自動で仲間になってくれるユニットはまれであり、大半は村の訪問や敵として出てくるユニットを説得する必要があるという厄介なものである。
      • さらに村に関しては村を破壊する盗賊もセットで出てくるので進軍を早める必要に迫られるうえに、説得に関しても説得要員と加入キャラの双方が倒されないようにする配慮等が求められるため、相当骨が折れるアクションとなる。
  • そして強力なキャラクターや愛着のあるキャラクターを失う事は戦力的にも精神的にも重大な喪失となる。
    • 盗賊・僧侶など戦略上貴重なユニットや、特定キャラを味方に引き入れるための説得役(顕著なのがヒロインのシーダ)が死んでしまうと、後のマップでもれなく苦労を強いられることになる。
    • このことが、たとえ有利な戦況であっても迂闊なゴリ押しや油断が文字通りの命取りになるという緊迫感を生み出している。類似のゲームの中でも採用例の少ない、本シリーズを象徴するシステムと言える。
  • 主人公マルスが死亡するとゲームオーバーになる。
    • この場合「きろくしたところからはじめますか?」というメッセージが出て、「はい」を選ぶと章の最初からやり直せるが、「いいえ」を選ぶとタイトル画面に戻される。また、セーブデータがないと「きろくがありませんぞ!」というメッセージが出て、強制的にタイトル画面に戻される。
      • 後の作品『外伝』や『紋章の謎』もほぼ同じだが、リメイク版ではそれが撤廃された。

リセットは最後の手段

  • いかに死のリアリティを論じてもあくまでコンピュータゲームであるため「リセットしてやり直す」という手段で復活できてしまうのは本作も例外ではないが、本シリーズにおいて「やり直しの効く」形でのセーブは基本的に章をクリアした時のみに限られている。
    • キャラクター死亡などの損失を「なかった事」にするためにはそれなりに長いやり直しのリスクを覚悟させる。
  • 章の途中でも「中断セーブ」機能があるためプレイ時間の点での心配は必要ない。
    • ただしこれはロードした時点で消去される、あくまで「中断」用のデータであり、失敗のやり直しには使えないのである。この仕組みが本作独自のシステムを形骸化させず程よい緊張感を保っている。
      • なお3DS版以降のVCなどには他の3DSVCタイトルと同様に「まるごとバックアップ」「いつでもセーブ」機能が付与されている。これは上記のキャラの死やリセットのデメリットすら掻き消して形骸化させてしまう反則ものの機能であり、本来の楽しみを損なう危険性が他のVCタイトルよりも極めて高い。もちろん使用するもしないもプレイヤーの自由であるが、ご利用は計画的に。

シンプルでわかりやすい計算式

  • 一般的なRPGはプレイヤーに見えない所でランダム値を含めた複雑な計算処理を仕込んでおり、事前にダメージなどの具体的数値を知るのが難しいケースが多い。
  • しかし本作の計算式は、攻撃力-防御力=ダメージなどといったシンプルな式で統一されており、プレイヤーが事前に1ポイント単位で被害計算をしてユニットを配置できるという予測性の高いシステムになっている。
    • ランダム要素は「必殺の一撃」と命中率で残されているため完全固定ではないが、キャラクターの死亡リスクの重大さを緻密な計算で出来る限り低減させるという、従来ウォーシミュレーションにもありそうで見られなかった本作独特のゲーム性を生み出している。
    • 俗に言う「アルテリオス計算式」を採用しているゲームシリーズの中では、進捗によってバランスが崩れるということが少ない部類に入る
+ 「暗黒竜と光の剣」における全ての計算式
ダメージ 物理:力+武器攻撃力-守備力
魔法:魔法攻撃力-魔法防御
攻撃速度 素早さ-武器の重さ 攻撃速度が高い方は2回攻撃。
必殺率 {(技+運)/2+武器必殺率}/2 端数切り捨て
必殺回避率 無し
命中率 物理:武器命中率+技
魔法:魔法命中率
回避率 物理:地形効果+素早さ-武器の重さ
魔法:運

成長は神に祈れ

  • 本シリーズの特徴としてはもうひとつ、「成長がレベルアップ毎にランダムで決定される」という点もある。
    • レベルアップごとに各パラメーターが+1上昇する確率はキャラクター・パラメータ毎に設定されており、たとえ現在値が低くても補正(低いと伸びやすい、等)は一切行われない。
      • そのためプレイごとにキャラクターのステータスは大きく変動することもあるため、成長具合に合わせたアドリブ戦略がプレイヤーに求められることになる。
      • 本来伸びやすいはずのキャラも運が悪いと弱いままの場合もあり、そのような状態をキャラクターが「へたれた」と表現し、泣く泣く二軍落ちなど哀愁の漂う扱いを受けることも…。
    • 「初期値は強いが絶望的に成長しない」という老騎士ジェイガンなど、個性的な成長率を持つキャラクターはネタとしてよく話題に上ったりもする(説明書でも「個性」としている)。
      • 本作ではキャラクターの個性を、役割とパラメータの両面で表現しているが、成長率にランダム性が絡むこともあり、まさに人生における悲哀をリアルに表現しているともいえる。
    • 能力値を上げられるドーピングアイテムも存在するが、入手数は少ない。
      • 本作では後半の秘密の店で購入可能だが、やりすぎはゲームバランス崩壊をもたらす危険もあるので自己責任で。

このシステムにより、キャラクターが数値で段階的に強くなるだけの単なる「駒」ではない「血の通った人間」であるという点をうまく表現し、感情移入度の向上にも繋がっている。

本作独自の仕様

後のシリーズから入ると戸惑うこともあるぐらいに、現在のシリーズには受け継がれていない要素が多々ある。

+ 独自の要素
  • 出撃数は固定。定員割れしていない限り、出撃人数を埋めなければならない。
  • 魔法、杖の威力が固定。魔道士の力は無意味(そもそも力の成長率自体が一人を除いて0%)で、威力は魔道書のみで決定される。
    • 魔法は命中率も魔道書ごとに固定で地形効果も無視し、魔法の回避に影響する「運」は敵には設定されていないため命中率は完全に一定。
      • 命中100の魔法は敵に使った場合確実に命中する。
  • 攻撃速度(速さ-武器重量)の差が1でも上回っていれば追撃となるため、敵も味方も追撃がとても発生しやすい。
    • この事もあって、移植作品より速さのパラメータが高く、軽い武器の魔道書を扱う「司祭」ユニットが強い。
  • 魔法防御はレベルが上がっても全く上昇しない。
    • 一時的に魔法防御を上げるアイテムかドーピングアイテムを使わなければ上がらず、敵の魔法防御も一律0。
  • 壊れた武器が即座に消滅する。また持ち物は4つまでしか持てないうえに武器と道具の分類もないため、持ち物欄のやりくりが大変である。
    • GBAソフト『封印の剣』の発売までは本作のみの特徴だった。
  • 主人公マルスの専用武器が相応に強い。他では通常キャラにも使える強力な高ランク武器が存在している。
    • ラスボス特効のファルシオンだけでなく、最強ランクの剣「メリクル(メリクルレイピア)」もマルス専用。いずれも武器としての性能が良いだけでなく、非常に優れた特殊能力も備えている。
    • その陰に隠れて目立たないが市販されている専用剣「レイピア」も、アーマー・騎兵に特効があり若干必殺も出やすくなるため大変役に立つ。
  • 直接戦闘に参加しない特殊ユニットは、後続作品と比べて非常に育てにくい(育てる必要がないとも言う)。
    • 鍵系アイテムを使いこなせる「盗賊」ユニットは、戦闘においては「素早いのでやや死ににくい」程度の存在。
    • 本作における僧侶の鍛え方は敵の攻撃に耐えることのみ。そして打たれ弱いので育て方のコツを掴めるか次第で大きくレベル差がつく。
      • オマケに回復系クラスの該当者は成長する能力値が限定されているキャラが多い。育成やクラスチェンジを諦め、後方支援に専念させるのも方法の1つである。
  • 成長率を底上げする措置がほとんどなく、最高までレベルを上げてもパラメータにデコボコができやすい。
    • さらにクラスチェンジは上位クラスの下限値を下回るパラメーターが底上げされるだけ。クラスの基底パラメーター自体はシリーズでも高めだが、成長率の高いキャラではそのありがたみを実感しづらい。
  • 一度行動したら即待機状態になってしまうため、2人以上のユニットと持ち物を交換できない。
  • 盗賊は盗賊専用アイテムの「とうぞくのカギ」を使わなければ扉・跳ね橋を開けることができず、使用回数も限られている。
    • 一方で宝箱はノーコストで開けることができる。
      • トラキア776』以降「とうぞくのカギ」が復活したが、そちらでは宝箱を空ける際にも消費されてしまう。盗賊に「盗む」コマンドが追加されたためか?
  • 敵盗賊ユニットに宝を盗まれると取り返す手段がない。
    • さらに敵に何を盗まれたかも一切表示されない。
  • 竜石に強度が存在せず、無制限に使用できる。
  • 闘技場
    • マップ上の敵を倒さずに経験値を入手するための施設。対戦相手と戦い、勝てば経験値と賞金を得られるが、負ければそのキャラは死んでしまう。
    • 本作では恐ろしい事に対戦中のキャンセルが不可。10ターン経過で決着が付かない場合のみ引き分けになる。
    • 武器の持ち込みが可能。星のオーブがあれば強度も減らさずにすむ。
    • 自軍ユニットが魔道士、相手がアーチャーだった場合は、ノーダメージで完勝出来る。
    • 逆に自軍の弓兵全般の相手が、必殺率つきの武器を持っている相手が多いため、育成しにくい。

評価点

高い自由度

  • 上手くプレイしていけば、最終的に数十名に渡る仲間キャラからお気に入りのキャラクターを使える。SRPGならではの利点である。
    • 一定のレベルまで育てたキャラクターにアイテムを与えることで上級クラスにチェンジできる(ただし上級職が存在しないクラスも多い)。それまで弱かったユニットが大化けするケースもあり、より育成に熱が入る。
      • 仲間キャラに関しても「雑兵」、「主力」、「目立ちにくいが実は高成長率を持つダークホース」、「序盤は強いが成長しない」と言った特徴を持ち、大抵のプレイヤーのお眼鏡に適うキャラが居る。
    • 普通の攻略なら主力になりえないようなユニットばかりをあえて使う一種の「縛りプレイ」にも対応できる。
  • シナリオを手早くクリアするだけなら説得や村の訪問を行わないといったプレイも可能。
    • 主力ユニットを選別し、そのユニットを集中して育てる方が効率は良いため、必要なキャラ・アイテムの入手できない村や、育成予定の無いキャラは見殺しにしてしまう方がクリアは楽である。(モラル面を無視すればの話だが)。
      • 終盤では、その特色を最大限に引き出した展開となっている。
        + 最終戦
      • ラスボスは主人公専用の武器のみが弱点である。それを手に入れてラスボスに振るい打ち倒す事が、終盤シナリオの中枢に据えられることになる。
        だが本作は専用武器入手イベントを放ったらかして進行し、最大限に鍛え上げた他のキャラクターを投入し強引に装甲を突破して打ち倒してしまう事ができる、数少ないシリーズ作の一つとなっている。
        • もちろんファルシオンも強力な仲間も用意せず進行するとあっさり「詰み」状態となってしまうため、この自由度と手詰まりを同時に迫るバランス感覚はなかなか他作品に見られない独自の感性といえる。
        • ちなみに本作のラスボスの装甲を打ち破れる武器は攻撃力16以上の直接武器のみ。(マルス専用2種・デビル系2種・槍1種・竜石1種)間接攻撃を封じる為に魔法系、シューター、弓兵などは最終戦闘に参加できない。
          • また、剣士が持てる武器の最大攻撃力は17で、最大攻撃力が20の斧や槍と比べてダメージが小さく、運が悪ければ反動ダメージがあるデビルソードなのでラスボス討伐には向かない。やり込み派のMブレマーや傭兵のキャラに深い思い入れがある人ならいいかもしれないが。

かつてない壮大なテーマ性

  • ウォーシミュレーションの様式を取り入れる事により必然的に多数対多数のシチュエーションが生まれるため、それまでコンピュータゲームが限定的にしか描く事が出来なかった「戦争」というテーマを正面から描ききった壮大なシナリオを描くことに成功している。
    • 本作はファンタジーRPG調ではあるが一般的な中世ファンタジー寄りの世界観ではなく、古代ギリシャ・ローマ時代に通じる乱世的な世界観で表現されており、いわゆる倒すべき対象としてのモンスターはほとんど登場しない。
      竜に変身する古の種族こそ終盤の強敵を主に登場するが、戦いの対象はあくまで人間であり、国家間の戦争が舞台の、いわゆる「戦記物」的な世界観を構築しているのである。
    • 大小10国にわたる国家が登場し、侵略、同盟、裏切りなどそれぞれの思惑で動いており、そのなかで繰り広げられる緻密な人間関係や愛憎、悲劇などの壮大なドラマはシリーズを象徴する要素として語られる。この要素は続編作品においてもさらに先鋭化された形で受け継がれている。
  • シナリオが「戦記物」であり単純な勧善懲悪ではないため不本意ながらも敵側に与しているキャラクターも多いのだが、時にはプレイヤーからの人気が高く根は悪人ではないキャラクターとも敵対しなければならない。
    • その敵将をなんとか説得しようと努力した人も多かった。このころはSRPGというジャンルも情報網も未発達のうえ、寝返りキャラも多く、儚い望みを抱いてしまうプレイヤーも多かった。しかも質の悪いことに、顔グラの出来が今作髄一で、余計仲間に出来るのではないかと思わせてしまった。
      • 彼が敵将として立ちはだかる面はプレイヤーの進め方が中途半端だと詰むばかりか最初からやり直しかねない本作屈指の難関面*1という事もあり、苦戦した記憶も含めて彼の存在が印象に残るのだろう。
      • しかも『外伝』と『紋章の謎』第2部にそれらしい人物が登場する為、ファンによる論争が起き易い。

賛否両論点

  • 各ショップ、キャラの成長率や加入時期と条件、敵配置が不規則かつ事前情報が乏しい事や前、後述の仕様も重なりプレイ方法や各マップの予備知識なしで攻略していくのが困難。
    • 今作は販売品のバラつきが厳しいのでそれを見越した補給も必要になる。困難な武器の補給と供給、育てるキャラクターの厳選、各マップの構成を睨んだ攻略の確立、そう言う意味でも「手強いシミュレーション」としての面白さもあるので賛否が分かれるが。
      • 流石に問題になったためか次回作以降は輸送隊や成長率の緩急を無くす、事前に情報や予言などで対策が立てやすくなるなどの措置がとられるようになった。
        ただし個性が薄くなったり、戦略よりもキャラゲー感が強調されていく事に否定的なプレイヤーもいる。
  • 魔法上級クラス「司祭」の強さがバランス崩壊気味。
    • 魔法クラスなのに守備力の基礎値が8もあって、ナイトよりも固い。また素早さの基礎値が14もあり、勇者やスナイパーと同じ。
      • 魔法書は剣や弓よりも軽いものが多いので追撃が発生しやすく、近距離・遠距離両方に対応できる。さらに杖も使える。
      • 味方ユニットとして早めにウェンデルとボアが加入する。ウェンデルは普通に成長するし、ボアはあまり成長しないが初期値のままでも十分な強さを持つ。マリクやリンダのような専用魔法はないが、命中100のトロンが使えるので問題ない。
    • 終盤になれば敵にも司祭が登場するが、その頃にはこちらも十分強くなっているので対等に渡り合える。
      • それでも素早いので追撃がやりにくく、しかも固い。軽い武器だと2回当てても倒せず、銀系武器だと重くて追撃できず、どうやっても一度の戦闘で倒せないなんてこともザラ。
    • ちなみに司祭のグラフィックは敵味方・男女兼用で、フードをかぶりいかにも怪しげな恰好をしている。このせいで味方キャラ(特に女性)を司祭にクラスチェンジするのをためらうプレイヤーもいる。

問題点

  • 基本的な難易度が高い上に一度死んだキャラクターは生き返らないため、有用なユニットを失ったまま迂闊に攻略を進めてしまうと詰んでしまう場合がある。
    • そして今作は敵の必殺率を軽減できず、必殺死が起きやすい。特に必殺値加算の武器を持った敵も少なくないため、ことさらに運の要素を排除しきれなくなってくる。
      • MAP8を例に上げると、ここは必殺率加算の武器を持っている雑魚敵が多くいる為、普通に育成しても必殺の一撃にやられることが多く、序盤の難関マップになっている。
    • 上記の通りマップ単位のセーブで後戻りできない仕様上、情報の聞き漏らしやアイテムの買い逃しといった凡ミスが後で大きく響く。
  • 加えて、育成失敗による詰み要素。
    • 本作はキャラクターによってレベルアップ時の各パラメータ上昇の確率が異なるのであるが、これが非常に極端である。弱いキャラは本当に弱い。そして確率はゲーム内で確認できない。もし本作に不慣れなプレイヤーが弱いキャラを育てる事を選びゲームを進めた場合、稼ぎ手段が限られている本作では先のマップで手も足も出なくなってしまう可能性が相当に高い。攻略本なしでの初見プレイは相当にきつい。
      • その上、強いキャラであってもパラメータ上昇はあくまで確率である。とんでもなく弱く仕上がってしまう事が当然あり得る。
    • 本作はマップ途中での任意セーブができない(状況を保存して再開する機能はあるが、再開時にそのデータは消去されてしまう)。間違って死んでしまうと、リセットしてマップ開始時からプレイし直すよりなく、本作の稼ぎは非常にリスクが高い。
      • 一応隠しショップで育成アイテムを購入可能であるがそもそもが隠しショップな上に、育成アイテムは高額であるためこれを多量に購入するにも多くの稼ぎが必要である。
    • いちおうクラスチェンジができるクラスの場合、上級職の最低保証値までの若干の底上げがなされるという救いがある。だがそれも非常に心許ない数値である。加えて、主人公を含む多くのクラスにおいて、そもそもクラスチェンジ自体ができない(むしろクラスチェンジできないクラスの方が多い)。
      • これは前述した最低保証値までの底上げ以前の問題として、総合レベルが大幅に減少しているため根本的に弱い*2。クラスチェンジできないクラスを育成すれば他のキャラは育たず、これも詰みに繋がる。こう言ったクラスは殆どが趣味として用いるべきものであり、ゲームクリアには不利である。
  • 出撃画面でアイテムの受け渡しが出来ない。
    • マップに預かり所はあるが、手数料がかかる上、1ターンに1人しか入れない。
      • そのため、この頃の移動力の高い飛行ユニットは補給係としての役割もあった。
        また、説得などで加入した(今後使用予定のない)ユニット等に補給させるプレイヤーもいた。
    • 出撃させないユニットに持たせた荷物が死蔵状態になるのを防ぐには、マップをクリアする前に荷物整理を済ませておくことが求められる。
  • アイテムの管理が面倒。
    • 先述のとおりアイテムのカテゴリ分けもなく、1人4つまでしかアイテムを所持できない。特攻武器を使い分ける場合や、魔道書と杖を使い分ける司祭はアイテムを圧迫しやすい。
    • アイテムの受け渡しが隣のユニットに「わたす」しかなく、相手から受け取ったり同時に交換できない。
      • そのためアイテムを整理するには最低1人はアイテム欄に空きがあるユニットを用意して1人ずつ順番にアイテムを渡していくしかない。
      • 能力上昇アイテム、クラスチェンジアイテムを使いたいときも同様の手順を繰り返すしかない。
    • アイテム欄が埋まった状態で新たにアイテムを取得すると「あずける」か「なにかすてる」かを選択する。
      • 「あずける」の場合、今入手したアイテムを預けることしかできない。すでに所持していたアイテムを預けて新しいアイテムを手元に残すという選択肢がない。
      • 「なにかすてる」の場合、すでに所持していたアイテムと今入手したアイテムの中から捨てるものを選べるのだが…。
  • ゲーム中では武器の攻撃力、命中率、重さ等がわからない。
    • 特に重さがわからない点は、「攻撃速度が1でも上回れば追撃が発生する仕様」と相まって致命的なものとなっているため、思わぬ追撃をくらって死亡することも。
      • 敵の移動範囲の確認ができないので、待ち伏せ戦法を取る際の陣取りが難しい。本作より1年程後の発売だが、同じFCの『第2次スーパーロボット大戦』ではユニットの移動範囲が確認できたので不可能ではないはずなのだが。
    • ただし、ゲーム中では確認できないものの、実はゲームに登場する大抵の武器のデータや、ユニットの移動コストは取扱説明書で確認できる。
  • ユニットのパラメーター画面で攻撃力(力+武器攻撃力)と攻撃速度(速さ-武器重量)が表示されない。
    • 武器の性能を知らないと実際に攻撃を与えて(受けて)みないとわからない。
    • 戦闘時の画面も命中率・攻撃力・守備力が棒グラフで表されるのみで、具体的な数字が表示されない。
  • 個々のキャラクターの扱いはまだぞんざい。
    • 登場~死亡まで終始無言のものや、同じ顔の色違い(場合によっては色も同じ)のグラフィックのキャラクターが何人もいる。エンディングの後日談も何人か使いまわされている。
    • また、パオラとカチュアの髪形が入れ替わっているなど、イメージイラストと顔グラフィックが一致しないキャラクターも多い。
      • ただし、これに関してはイメージイラストのイラストレーターによるアレンジ・勘違いもある他、後のシリーズにも何作かあてはまるものがある。
    • 容量的な問題もあっただろうが、地味なキャラクターにも意外ときちんとファンはついていて、これを残念に思う人は多かった。
      • また、後半加入する専用クラスのキャラが「同じクラスのキャラが敵将として多数出ており、説明書では敵専用のクラスとして説明されている」「顔グラがこれまで出てきた敵将たちのマイナーチェンジである」「説得方法もヒントが無い」「一部の武器が使用不能」など、明らかに扱いが悪い。
  • レベルアップでの能力成長時の乱数の偏りが激しい。
    • 本来連続的な生成に適さない乱数生成法が使われているため、前後の結果に対して似通った結果が出る。能力上昇率80%くらいでも上がらないときはなかなか上がらないが、一方で上がる際には「力と技・技と武器レベルが連動して上がる」「守備が伸びるとHPが成長しない」などの規則性が強い。
    • 続編の『紋章の謎』でも同様に、成長が偏る現象が見られた。ただし、偏り方はだいぶ異なっている。
  • COM敵の移動時にもいちいちカーソルが動き、少しテンポを崩す。
    • 『ファミコンウォーズ』の仕様流用によるものであろうか。
  • 敵の成長率がまだ設定されておらず、一定の規則に従って成長するのだが、その上昇が「2レベルごとにHP+3(闘技場の敵はHP+2)、その他のパラメーター+1」と大味で、大半の味方の成長率よりも高い。
    • ちなみに寝返りキャラも、容量圧縮のためか敵のパラメーターを流用している。そのため前述のあるキャラが仲間に出来ないとにわかに判別が付きづらい一因となっている。

バグ

  • マップクリア後に次のマップを連続してプレイすると、NPCタイプの影武者バグユニットがでる事がある*3
    • 敵軍はこの影武者をこちら側のユニットと認識するが攻撃できない。影武者の出現する位置は、以前のマップで出した自軍ユニットの座標と対応している。敵のユニットの上に置けるが、その敵ユニットが行動した時点で影武者効果が無くなる。実プレイでの応用は難しいが、TASでは前のマップのユニット位置を調整することで敵の行動を抑えるなど、最大限に利用されている。
    • ISのプログラマー、成広通氏によると「FCのメモリでは足りないため、ゲームカセットのメモリも使用している」とのこと。製作陣がこのことを見落としており、メモリの初期化が不完全だった可能性がある。
      • ちなみにFCのメモリだけでなくゲームカセットのメモリも使用しているのは今作のベースとなった『ファミコンウォーズ』からの仕様。また、『外伝』では、システム上マップが続くことが無くなったためか、このバグは発生していない。
  • マムクート(バヌトゥ、チキ)というユニットにクラスチェンジアイテムを使うと防御力を上げる事が出来る。
    • 実際には有り得ない20超えも可能だが、99を超えると実際の値がマイナスになっていくので、やりすぎに注意。
      • ちなみにこの2名はバグなしだと装備品のボーナスで表示よりも防御力が上がる代わりに、守備の成長率が0%である。
  • ペガサスナイト3姉妹が、闘技場でもトライアングルアタックが出来る裏技がある。
    • しかも最低2人でも実行可能。
  • 一時的に魔法防御が上がった状態でドーピングアイテムの「まよけ」を使うと、魔法防御の上昇が永続化する上に「まよけ」も残る。

総評

本作の確立したシミュレーションRPGの様式は多数のフォロワー作品、続編、リメイクを生み出しゲーム業界に新たな新風を巻き起こした存在と言える作品である。
そうした革新性の一方で、発売当初の本作の評価は芳しくなかったが、一部のファンから根強い支持を獲得し、彼らによる口コミにより評価が高まった。
実際に、本作の生みの親の加賀昭三氏のインタビューでは、「発売当初は不評で値崩れが激しかったが、評価が変わったのは発売から半年後くらいで、一部のライターが取り上げてくれた事と、初期からのファンが熱心に布教活動をしてくれたおかげ」だと述べている。

そして、続編3作目の『ファイアーエムブレム 紋章の謎』でシリーズが大成。
「シミュレーションRPGの礎となった名作」であると同時に、「名作はけして埋もれない」ことを証明した一作である。

初代作ゆえにシステム周りに不親切な面が目立ち、全体的な難易度の高さもあってややプレイのハードルは高いが、シリーズの、そして"シミュレーションRPG"の原点に触れるつもりで本作を手に取ってみるのもいいだろう。


余談

  • 本作はやたらと発売延期が多い。
  • 『ゲーム中のユニットに扮したプロの声楽家団体「二期会」のメンバーがファイアーエムブレムのテーマを歌詞付きで歌い上げる』という非常にインパクトの強いCMが有名。
    • その歌詞はファイアーエムブレムのゲーム性を表したコミカルなもの。
    • このCMは原点回帰を意識して作られた『ファイアーエムブレム 封印の剣』でもセルフオマージュとして全く同じ形のものが使われた。
  • 小学館の公式ガイドブックでは、プロ棋士・神吉宏充、東京芸術大学講師・石原恒和、漫画家・しりあがり寿がコラムを執筆しているほど、濃い内容だった。
    • このうちの石原恒和氏は、後にエイプ・クリーチャーズ社長・株式会社ポケモン社長としてゲーム開発に携わることとなる。
  • 後のファイアーエムブレムシリーズやSLG等で見られるテンプレキャラもこの時に確立されている。
    • 具体例を上げると「初期能力が高いが成長率が鈍いジェイガン*4」、「主人公にお付きの赤緑騎士(カイン&アベル)」、「渋くて最後まで頼れるオグマ」、「キルソード*5持ちのクールな剣士・ナバール*6」、「肩書に反して実力が伴わなかったジョルジュ*7」、「行動パターンがネタにされたマチス*8」、「カミュなど『戦いたくない&仲間にできそうでできない敵』キャラ*9」等である。
  • サブタイトルは発売直前になって決まったものらしく、ゲームのタイトル画面はもちろん、説明書にも『暗黒竜と光の剣』の表記は出てこない。また、パッケージでも漫画でよく使われる古印体である。
    • のちにリメイク版で『ひかりのつるぎ』と読み仮名が判明したが、『紋章の謎』の説明書では『ひかりのけん』とふりがなが振られている。
  • 本作は仕事の余暇として作られた作品であり、シナリオを担当した加賀氏以外のスタッフはほぼアルバイトで賄われていたらしい。完成までに3年程度かかったとか。
    • その中で、音楽担当の辻横(当時は馬場)由佳氏はISに就職したため、以降のFEシリーズに毎作関わっている。『トラキア』までシナリオやディレクターを務めた加賀氏が後年独立したため、シリーズ全作に関わっているのは辻横氏だけであり、FEシリーズのスタッフの移り変わりが激しいことが分かる。
    • また、ISのプログラマーの成広通氏も、本作ではスペシャルサンクスに名前が載っているのみだが、後にFEのプロデューサーとしてシリーズに深く関わることになる(本格的なシリーズ参加は『紋章の謎』以降)。
  • 2019年3月13日にNintendo Switchのオムニバスソフト『ファミリーコンピュータ Nintendo Switch Online?』に本作が追加された。
    • また、30周年を迎えた2020年4月20日には、18章途中から始まる「トライアングルアタックバージョン」と、最終章である25章から始まる「クライマックスバージョン」という2種類のスペシャルバージョンも配信された。
  • 2020年12月4日、日本での発売から30年以上の時を経て、本作が海外向けにローカライズされてNintendo Switchで発売される予定。タイトルは『Fire Emblem: Shadow Dragon & the Blade of Light』。
    • 途中セーブ機能やゲームスピードアップなどの便利機能が搭載されているが、言語に日本語も存在している為、日本国内での発売予定は未定。
  • 1993年12月3日には本作とは似て非なるシミュレーションRPG『機装ルーガ』が発売された。
    • こちらは任天堂製ではなく、工画堂スタジオからPCエンジンで発売され、味方ユニットロストの概念が廃止、レベルアップは鉱石による武具開発、3対3のネオティカルバトル、豪華声優陣によるキャラクターボイス対応、全7章、勝利条件が敵拠点制圧と敵将撃破の2種類、敗北条件が味方の本拠地制圧、各章の幕間に挿入されるビジュアルシーンなど違う点がある。
      • ただし、1995年6月にPCエンジンで発売された続編『機装ルーガII』から前作の要素が引き継がれ、レベルアップの概念が導入されたが、逆に味方ユニットロストの概念が導入されてしまい、難易度が高くなった。