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Half-Life - (2014/06/06 (金) 00:07:55) の編集履歴(バックアップ)


HλLF-LIFE

【はーふらいふ】

ジャンル FPS
対応機種 Windows
メディア CD-ROM
発売元 エレクトロニック・アーツ
開発元 Valve Software
発売日 1998年11月19日
定価 $9.99 USD(Steam)
配信 Steamにてオンライン販売中
分類 良作


ニューメキシコ州ブラック・メサ ブラック・メサ研究施設
対象:ゴードン・フリーマン 男(27歳)
学歴:マサチューセッツ工科大学(MIT)理論物理学博士課程修了
役職:研究員
所属:特異物質研究所
通関許可:第3級
管理保証人:機密
緊急時優先任務:自由対応


ブラック・メサの山岳地帯をくりぬいた巨大研究所。ゴードン・フリーマンのそこでの初仕事は、特異物質分析実験の実行役だった。
特殊防護服を着用して装置を動かすゴードンだったが、突如として装置は暴走。ゴードンは異次元の世界を垣間見る。
現実世界に帰還したゴードンが目の当たりにしたのは、半壊した研究施設と、異次元から現れ、人間を襲うエイリアンの群れであった。

ゴードンは生き残りの研究員や警備員と協力して地上を目指そうとするが、地上からは事件のもみ消しのために海兵隊と、大統領直属の暗殺部隊が送り込まれてくる。
地下研究施設で繰り広げられる三つ巴の地獄のサバイバル。果たしてゴードンはこの悪夢と混乱から生き延びることが出来るのか。そしてゲーム中に何度か目撃することになる、スーツケースを持った謎の男は何者なのか……?



目次


『HλLF-LIFE』という作品

それまでのFPSは、群がる敵をひたすらにやっつけてステージをクリアしていく、シンプルなドンパチシューティングものが主流であり、全てだった。
しかし『HλLF-LIFE』は違った。ユーザーをゲームに引き込むための徹底したこだわりをもって世に出たこのValveの処女作は、50以上もの賞を受賞し、総出荷本数800万本を数える大ヒットとなる。
その最大の要因は、FPSに明確なドラマ性と論理的なパズル要素を盛り込み、単なるガンアクションだったFPSをアクションアドベンチャーへ進化させたところにあった。
勿論、ガンアクション部分も十分に高品質で、更にMOD(Modification)による高い拡張性は幾多の「二次創作ゲーム」を生み出すに至った。

FPSの歴史は本作が発売される「前」と「後」で区別されるようになったほどの、まさにSTG史に残る傑作。
それが『HλLF-LIFE』なのである。


基本システム

  • オーソドックスなライフ+ダメージ軽減のアーマー式。それぞれの上限は100%。
    • ライフは救急パックを、スーツは充電パックを取ることで回復する(現在のFPSではライフ自動回復制が主流となったが)。
  • 武器は格闘用のバールの他に、ハンドガン、ライフル、重火器、トラップ用爆弾、SF風武器、小型エイリアンを用いた生体兵器などと、バリエーション豊か。
    • 大抵の武器には「セカンダリショット」というサブ攻撃機能が備わっている(サブマシンガンならグレネード発射、ショットガンなら2点バーストといった具合)。様々な使い分けが楽しめる。
  • ストーリーは、全てゴードン(プレイヤー)の主観視点を通して進行する。
    • ゴードンは一言も喋らず、プレイヤーの操作によって周囲の人々の反応も変化する。「ゴードン=プレイヤー」という図式が強く打ち出されているのが特徴。
    • イベントムービーも一切なく、全てがリアルタイムデモとして進行する。アドベンチャーゲーム的な感覚が没入感を高める。
  • いつでもどこでも任意にセーブ・ロードが可能。クイックセーブ・ロード機能も実装しているのでトライ&エラーがやりやすい。オートセーブ機能も実装されている。

評価点

ドラマチックアドベンチャーFPS

  • ムービーを介することなく、その全てをゴードンの視点を通してプレイヤーに認識させるデザイン、及びその完成度は素晴らしいの一言。
    • 冒頭、ゴードンが地下トラムで職場へ出勤するところから始まる。普通のゲームならばその光景をムービーとして見せる所だが、本作はいきなりトラムに乗るゴードンの視点から始まり、トラム内を(プレイヤーの任意で)動き回って、外で動いている人物や機械を自分で窓から目撃しながら到着まで過ごす。初っ端から否が応にもゲーム世界へ引き込み、没入させる工夫が成されている。
    • 徹底してリアルタイム・主観視点に拘る(というか一人称以外の視点は存在しない)ことで、予期せぬ爆発・崩落する通路・吹き出す水・遠くから聞こえる叫び声や発砲音といった、ともすれば「ごく当たり前」と切り捨てられそうな演出が一気に現実味を帯びてくる。それまでのゲームでは考えられないことであった。
    • 水中をリアルに泳ぐアクションも実装されており、余り潜りすぎていると窒息状態も発生する。
  • 先に進むにはアクションだけでなく、謎解きが求められるのも特徴。その謎解きも「論理・解法の筋道」を考えて作られており、理不尽なトラップは存在しない。
    • 例えば「スイッチを押せばダメージ床が消える」というところを「水たまりに千切れたケーブルが接触して漏電しているので、電気の元栓を切らなければいけない」と表現しているように、全ての謎には原因と解決法が明確に設定されている。
      • そうした所には踏み台用の動かせる箱が置いてあったり「感電注意」といった張り紙があるため、直感的に解決法を導くことが出来る。
    • 取得するアイテムについても、ただ無造作に落ちているのではなく、保管庫や輸送ケースの傍に置いてある、あるいは死体から分捕るというように「そこにそれがあるのは何故か」という疑問が出ないように配置されている。
      • 格闘武器として"ナイフ"でも"ハンマー"でも"バット"でもなく、よりにもよって実用本位の"バール"(しかも偶然落ちていた)がチョイスされている点も見逃せない。これはゴードンのトレードマークとなり次回作でも愛用することになる。
  • リアリティを出す要素の一つとして、素晴らしい音響効果を外すことは出来ない。
    • 足音は地面の材質によって変わり、閉所では音が反響する(細かい所では薬莢の落下音も違う!)。立体音響によって、音で異常や敵の存在・位置を知ることが出来る点も見(聞き?)逃せない。
    • 劇中ゴードンが着用する安全服・HEVスーツは、着用者の体調をチェックして自動的に応急処置を行う機能が搭載されている。特徴的な電子音声のアナウンスはどこか中毒性があり、プレイヤーとゴードンとの一体感をより高める。
    • BGMは垂れ流しではなく、要所要所に差し掛かると挿入される。この映画的な演出の出来も良い。

良好なステージ・レベルデザイン

  • 「一介の研究者が念力を使うエイリアンやプロの軍人と戦う」というストーリーを踏まえて、難易度は高めに設定されている。回復アイテムは少ないし、序盤は弾薬不足に神経を使う。しかし、落ち着いてトライ&エラーを繰り返せば誰でも必ずクリアできる理想的な調整が行われており、ストーリー・演出とゲーム性が巧みなバランスでブレンドされている。
    • 基本的に一本道の本作だが、「敵の無限湧き」や「大軍を全滅させないと先に進めない」シーンは存在しない。仕掛け爆弾を仕掛けておびき寄せてもいいし、逃げたいなら逃げればいい。真正面から戦うだけではないステージデザインが行われている。
    • 難易度は3段階から選択でき、更にゲーム本編から独立したチュートリアルモードも実装されており、初心者への配慮も怠っていない。またチュートリアルは緊急時のための脱出・戦闘講習という体裁を取っているので、民間人であるフリーマンが「なぜ敵と渡り合えるのか」という疑問への回答の1つにもなっている。
  • グラフィック面から見ても、ステージのデザインは多彩。無機質な研究所、狭く暗いダクト、湿った雰囲気の下水処理施設、FPSのため高所恐怖症のプレイヤーにはつらい(?)断崖絶壁と、先へ進むにつれて新たな発見が待っている。
    • これらのステージは全てシームレスに繋げられており、あたかも自ら冒険しているような感覚が味わえる。
  • この手の3Dゲームで怖いのは「ハマり(進むことも戻ることも出来なくなる状態)」だが、極力そうならないようにする配慮が行われている。
    • 警備員や研究者の協力、またはとある装置が必要となる場面では、彼らが死亡する、装置が破壊される等すると自動的にミスになるようになっている。
    • ほとんどのスイッチは押すと何らかの反応が返ってくる=フェイクが存在しないので迷いづらい。「指定の順番通りに操作しないと失敗する」場面も存在しない。
  • 敵のデザインも千差万別で、様々な攻撃方法を引っさげて向かってくる。「敵によって対応を変える」ことが重要となり、戦略性の向上に寄与している。

出来の良いAI

  • 敵味方問わず、全てのNPCは同年代のゲームから頭抜けた精度のAIを持っている。
    • プレイヤーについてくる味方はまずスタックしない。狭い通路では率先してどいてくれるなど、遊ぶうえでストレッサーにならない工夫が施されている。またAI自ら状況を判断し援護も行ってくれる。
    • 敵海兵隊のAIは特に俊逸。プレイヤーが反撃すれば一時後退し、弾込めも安全な場所で行う。障害物越しに手榴弾を投げ込んでくるし、回り込みや挟み撃ちといった高等戦術も駆使する厄介な相手だ。また音にも反応するので、逆にこれを利用した戦い方をプレイヤーが編み出すことも可能。
      • 敵兵士とエイリアンが遭遇した場合、彼らは勝手に(イベントではなくリアルタイムで)戦い始める。漁夫の利を狙うもよし、逃走するもよしである。

高い拡張性

  • CD-ROMにはマップ作成機能(というより、本作のゲームデザイン機能そのもの)が標準搭載されており、MOD製作が非常に行いやすい。
    • これを使用して多彩な独自シナリオやマップが製作された。あるモノは3Dパズル、あるモノはゾンビゲーム、あるモノは陣地争奪ゲーム……。時には「あるMODを目当てに本作を購入する」というケースも出るほどに広範囲の人気を博したのである。
    • 特に特殊部隊員とテロリストの戦闘を題材にした『カウンターストライク』は対戦FPSとして高い評価を獲得し、遂にはスピンオフ作品として商品化・シリーズ化され「MODの歴史を変えた」とまで評されるようになった。

その他

  • グラフィックの描写は非常に細かい。蛇口をひねると水が出るなど、簡単な仕掛けも随所に用意されている。
    • 自販機のボタンを押すと出てくるジュースを取得すれば、体力をわずかながら回復させることが出来る。
    • 弾痕や衝突痕は消えずに残り続ける。これを目印に利用するのもよい。
  • 上述したAIの他にも、味方NPCの動きはよく作りこまれている。劇中多彩なモーションを見せる彼らに注目するのも面白い。

難点

  • シームレスデザインの弊害として、道を進んでいくと突然「ロード中」の表示が出てフリーズし、数秒後に操作再開、という形式がとられている。うまく区切りとなる部分で仕切られてはいるのだが、せっかく盛り上がった気分に水を差された気持ちになることもしばしば。
    • 最大の問題はBGMがぶつ切りになってしまうところ。音楽がかかるタイミング、BGMそのものの質両方が高い完成度を誇るだけに、この点は非常に惜しい。
  • リアルタイム描写の都合上、明確なデモシーンが存在しない本作では銃を撃つ必要が無い部分が定期的に発生する。2回目以降のプレイではストレッサーとなりがち。
  • 難易度が高いことは前述したが、本作の場合、純粋な戦闘(これも十分難しいが)よりも操作の面で難易度が上昇している面がある。この点で「ひたすら銃撃戦を楽しみたい!!」という人には向かず、戦闘・対戦主体のMODが多く作られた要因になっている。
    • ゲームが後半に向かうにつれ、プレイヤーの死因は転落死や障害への接触死が多数を占めるようになる。独特の挙動で精密操作を要求される場面が増えるためで、この部分は難易度選択も関係ないため、純粋にアクションゲーム的な操作技術の勝負となってしまう。ただこれは上述のように、小まめにセーブ機能を使ってトライ&エラーで少しずつ進めていくことで攻略が可能。
    • マップが広くギミックも細かいため、長時間遊んで疲れてくると次の目的地をなかなか見つけられず、「詰んだ」と誤認するケースもある。
  • 時たま、ゴードンがその場から動けなくなる不具合が発生する。大抵はしゃがむと動き出せるが、たまにそれでも動かず、ロードを余儀なくされる場合も。
  • やたらと弾のブレが激しいサブマシンガン、「スコープが無いスナイパーライフル」として使える精密遠距離射撃が可能なハンドガン、何故かズーム機能搭載&マガジン式のクロスボウなど、冷静に考えると各武器には突っ込みどころが見えてくる。
  • ゲーム自体の問題点ではないが、現在のところ日本語版は存在せず、有志が作成した日本語字幕挿入MODに頼る必要がある。MOD導入自体はそれほど難しくないので、是非尻込みせずにプレイして頂きたい。
    • 筆者の64bit対応OS環境では問題なく適用できたが、これが適用できなかったという報告も存在する。64bit機を使っている人は念のため各自で調べてみてほしい。
  • SFホラー映画的な本作はグロ要素が結構高めで、過激な暴力表現や不気味なクリーチャーのビジュアルが存在する。1998年の3Dゲームなのでさすがに現在ほどのリアルさはないが、苦手な方は一応注意。

まとめ

以上、評価点の項で書き並べた要素が寄り集まって単なる「FPS」ではなく、非常に没入感の高い「物語」が形作られている点こそが本作の最大の特徴である。
スーツアナウンスを小耳にはさんで研究所を進み、バールで南京錠やダクトカバーをこじ開け、襲いくる海兵隊やエイリアンを迎え撃ち、時には頭をひねって道を探す。「映画的」という表現が陳腐に感じられるほどの演出力、そしてプレイヤーを「その気」にさせるゲームデザインは、それまでのゲームとは一線も二線も画した画期的なものだったのだ。