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オリビアのミステリー - (2017/03/22 (水) 19:43:46) のソース

*オリビアのミステリー
【おりびあのみすてりー】
|ジャンル|パズル|&image(olivia.jpg,height=150)|
|対応機種|スーパーファミコン|~|
|発売元|アルトロン|~|
|発売日|1994年2月4日|~|
|定価|9,800円(税別)|~|
|判定|BGCOLOR(MistyRose):''バカゲー''|~|
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#contents
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**概要
アルトロンから販売された「うごく絵」シリーズのVer1.0。往年の名作『キネティックコネクション』((元はMSX2でリリースされたものがオリジナルで、ディスクシステム版『きね子』はタイトル変更移植作にあたる))と類似した、動く絵柄が特徴のジグソーパズルゲーム。~
パズルゲームには珍しいストーリー性を伴った作品で、珍奇で独特なシナリオのバカゲーとして知られている。

後に1.1(PC98『オリビアのミステリー』)や2.0(SFC『アリョール』)が販売された。
//98版は1.5じゃなく、「ウゴクエVer1.1」らしい。詳細は誰も知らないようだが…

**システム
-前述の通り、基本的なシステム面や操作やピースの数などは『きね子』を踏まえている。
--本作ならではの特徴として、幾何学模様が多かった同作と異なり、ストーリー性のある1枚絵を組み立てる。
---ステージ開始前に、ストーリーがテロップで表示されるようになっており、組み立てるパズルは語られるストーリーの内容にそったものになっている。ステージの進行に伴いストーリーも進んでいく。

-アニメは一定パターンを繰り返すだけなので、『きね子』ほど難易度は高くないが、本作はクリア時間によってエンディングが分岐する((最終一つ前の面までをクリアする時間によってグッド、ノーマル、バッドの3段階のエンディングが用意されており、最終面の絵の内容も変化する。もちろんかかった時間が少ないほど良いエンディングに辿り着けるようになっている。))。

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**バカゲー要素
***シナリオ
-説明書に載っている世界観説明が、なんとも日本語的に錯綜している。
--“「皇帝の娘を助けなければならない」そう、勝手に信じ込んだ男が、世界の果てへと旅に出る”。~
これだけだと「何だ、ギャグのつもりか」と言うだけの序文だが、その次に冗長な本文(プレイヤーが男と共に冒険する、と言う意味合いの文章が言い回しを変えて連続する)が続き、最後は何の脈絡も無く、“すべては、あの夏の日のやっかいな事件から始まったのです。”と妙に丁寧に閉じられる。 

-ゲーム中に出るストーリーはそれ以上に錯綜している。
--例えば水道管が破損したくだりでは「とてもたいへんなことだから、だれかがなんとかするだろうと思った」と言う平易さ。~
子供向けに易しくしているのか?と思いきや「したがって」「~である」のように堅い文体が混ざり合い、更に(上記のストーリーにも見られる)「含みを持たせた煽り文」がいい具合に挿入される。
//加えて漢字と平仮名のバランスが異常に悪く、どんなストーリーなのか理解しにくい。
//--また、これら文章が画面いっぱいにノンストップに表示され、''流れきらないうちに消える''ため、ますます読みにくさに拍車をかけている。

-さらにテキストの数割が冗語表現や反復法(のようなもの)を用いている。~
以下は2面のテキストの引用である。なお漢字・ひらがなはゲーム画面に即している。
 だれもが「なんとかしなければならない」と思った。
 しかし、だれもが「なんとかなるだろう」とも思った。
 ほうっておけばたいへんなことになるかもしれないが、
 どうしていいかわからないし、だいいちなんとかするにしてもめんどうだ。
 とてもたいへんなことだから、だれかがなんとかするだろうと思った。
 しかしそんなことをかんがえている間にも水はなくなっていってしまう。
 私はついにビルのカベを登ってパイプのバルブをしめにいくことにした。

-ストーリーは超展開に次ぐ超展開の連続で、世界や星をまたにかけた大冒険が繰り広げられる。~
以下の文章は、あるステージで倒れた皇帝の娘のために、大陸を駆け抜け薬を取って来る場面の引用なのだが…
 しかし、やっとかえっておどろいた。
 人々は娘が死んだはなしをしているではないか。
 あわててちかくの人にきいてみると、
 皇帝の娘はもうきょういっぱいもたないだろうということであった。
 こまった。
 
 やむをえず、うまを1ぴきかりて研究都市へはしることにする。
 むりにたのんで、いちばんはやいうまをかりた。
 が、さすが、いちばんはやいうまである。
 のるまえにはしっていってしまった。

-「こまった」の一言で済まされているが、次のステージではこんな調子である。
 なんてことだ。おいかけてるうちに研究都市についてしまった。
 なんのためにうまをかりたんか、ようわからん。

-あえてよく言えば平易で分かりやすいと言うべきか。
--これが洋ゲーだったら翻訳の都合とも思えるが、このゲームを作ったアルトロンはれっきとした日本のメーカーである。

-ただ、文体はヘンテコだが、話の筋じたいは奇想天外かつ、どこか牧歌的でもあり、中々楽しめる。バッドエンドは悲しい…

-劇中テキストは[[こちら>http://www4.airnet.ne.jp/isobe/game/olitxt.html]]で見ることができる。
//--この事態は、付属している説明書の後半が''英文の説明書を丸々載せている''ということから察せられる。
//英語版が出てないことと、スタッフロールから、日本の作品と考えられる。あとネタかどうかようわからんが機械翻訳だと関西弁とか出んし、当時の機械翻訳はもっと精度低いはず

-ちなみに、オリビアという名前は作中では登場せず、説明書に(なぜか)存在する英文版部分で「Princess Olivia.」と書かれていることにより、これで初めてパッケージやゲーム中に登場する女性がオリビアだとわかる。

**問題点
''難易度の高さ''
-パズルの絵柄がアニメーション画像となっているのがこのゲームの特徴だが、似たような色のピースが非常に多い。
--特にステージ開幕直後は「画面中に散らばった各ピースがそれぞれ上下左右に蠢いている」という状態なので、最初の1手に手をつけるハードルがいきなり高い。
--『きね子』同様にピースの上下左右はランダムで反転しているし、ステージ2のように同じ窓が並ぶ絵など、基本的なステージでも慣れを要する。更にキャンバスの縁も無地、ピースの形は全て同じと、ジグソーパズルゲームとしてはヒントがかなり少ない。
---「端や四つ角から片づける」というアナログジグソーパズルの定石は通じない。

-全く同じ絵柄、同じ動きをするダミーピースが含まれている事があり、ダミーピースをキャンバスに正しい向きではめ込むと消滅してしまう。
--本物と見分ける方法はなく、実際にはめるまでわからない。
---ただし、それによって「はめ込む際の正しい向き」が確定するため、一応攻略のヒントとして使える。

-完成図が無いため、完成するまでどんな絵かわからない。
--ただでさえ組み立て始めるまでが鬼門なのに、まずどんな絵が仕上がるのかがわからないというのは厳しすぎる。これのおかげで左右が逆転している事に気づかないまま組み進めてしまうケースが初見ではちょくちょく起こる。
--幸い、塗りにグラデーションがかけてある、アニメーションの動き方から推測できるなどで推測は可能である。

''絵がヘタ''
-箱絵のオリビア姫で薄々気がついた人も多いだろうが、特に人物の顔の線は歪んでいて、無駄に難易度を上げる要因となっている。
--パッケージには「皇帝の娘」の立ち絵が描かれているが、この絵も正直なところあまり上手では無く、ヘタをするとそもそも女性にも見えない(体型からは女性と分かるが「皇帝の娘」にしてはごつく見えることも否めない。)。

-完成させて現れる絵の内容や構図そのものも上記のストーリー文の内容に忠実に沿いつつ、やたら珍奇でよくわからないものが大多数を占めている。
--「意味も無く傘を左右に振る男たち」「給水塔の窓をよじ登る主人公」「空を飛ぶ機械」とかはまだいい方で、「予想天気図の映ったテレビ」だの「後ろ手に猿ぐつわをされてイモムシのように這いつくばる男」だの「チェーンソーを持った看護婦」だのの意味不明なものが多く、完成図がないというハンデを乗り越え苦労して完成させてもイマイチ達成感が湧き難いものばかりである
//--多数登場するオリジナルメカも''完成しても何だかよくわからず''、いまいち達成感に欠ける。
//---意味も無く傘を左右に振る男たちや「空を飛ぶ機械」ならまだしも、''「アトミック水汲み機」''が完成しても反応に困る。


''ゲームバランス''
-作中でも最高難度のステージ12と14の間に全体的に見ても低難易度のステージ13があるなど、ゲームバランスにもやや問題がある。

''ストーリーテロップが読みづらい''
-本文中では必要最低限の漢字しか使われておらずひらがなの量が多いにも拘らず、分かち書き((単語もしくは文節を適度に区切り、空白を入れる。ひらがなしか使えないファミコン時代では可読性を高めるために必須な書き方である))されていないため文章が詰まっており、改行も段落ごとにしかされていないため非常に読みづらい。
--その上、ボタンによるページ送り形式ではなくスクロール形式で文章が一気に流れていくのでゆっくり読む暇がない上に、文章がスクロールアウトする前に画面がブラックアウトしてしまうので、注力して目で追わないと全文を読みきれない。この仕様のおかげで、ただでさえ電波的で理解し難いストーリーが余計に分かり辛くなっている。あくまでストーリーはおまけとはいえ、ストーリー性を打ち出した作品でこれではさすがに酷い。
---おまけに&bold(){テロップのスキップは不可。}プレイする度にテロップが終わるまで待たなくてはならない。

**評価点
-全体的にアニメーションは滑らかであり、馬の走行フォームなども正しく描かれている。

-ステージクリア後は額縁の下に「GOOD」と表示されるのだが、コマ落ちしたかのような変な動きをする。~
全体的な雰囲気もあって非常にシュール。

-BGMは、ステージごとに専用の曲が用意されている。
--チープな音質ながらもクラシカルな曲調で場の雰囲気にほどよく調和する曲が多く評価はいい。
--ただし、ステージ1の曲のベースラインが思いきりずれていたり、ステージ6の曲でパートごとの旋律が時間経過と共にズレてくる。その他の曲にも音程がずれていたり音色がおかしくなる箇所があったりするが、これはサウンドドライバに問題があったためだという。
---作曲者は「サマーカーニバル烈火」「相撲ファイター東海道場所」を手がけた塩田信之氏。氏のブログでは、サウンドドライバの問題にまつわる裏事情と、FM音源で作曲されたBGMのプロトタイプが「本来こうなるはずだった」と題して公開されている。

-基本的に、エンディング分岐を考えなければ、制限時間はないので、いくらでも試行錯誤できる。

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**総評
ジグソーパズルにおいて、完成図の存在がいかに大事かを教えてくれるソフトである。これが無いというだけで、本作の難易度は不必要に引き上げられている。~
のみならず、作品全体に渡って散見されるアラの多さからして、本作はハッキリ「完成度が低い」と言えよう。

しかし、シュールで破天荒なストーリー、ヘンテコな日本語の文体、意外と場に合ったBGM、そしてナチュラルにヘタっぴな絵柄には、牧歌的でどこか不思議な味わいがあり、粗探ししたらキリがないという突っ込みどころの多さと相まって本作をバカゲーたらしめている。

些細なヒントから正解を掘り起こさなければならないため攻略は困難を極めるが、程度の差こそあれ、ジグソーパズルとは元々そういうゲームである。~
本作はその最低限の要素をきっちりとキープしているため、不親切な点はあれど、クソゲーでは決してない。~
実際「動く絵を使ったジグソーパズル」という骨組みの部分は面白く、魅力的とも言える。~
ただ、そのゲームを遊ばせる環境が、90年代半ばに発表された作品としては劣悪だっただけである。~

同コンセプトの「きね子」ファンで、更にこうした怪作とも言える作風が好きなパズルゲームファンにおススメしておきたい。

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**その後の展開
-続編『うごく絵Ver.2.0 アリョール』も日本語として変なテキストや相変わらず女性に見えないヒロインなどおかしいところはあるが、パズルゲームとしては前作より相当改善されており凡作に仕上がっている。
--プレイ前に完成図が出る、ピースが長方形ではない、1ステージ中3回まで完成図を見られるヒント機能、対戦モードの搭載など、本作の問題点・不満点の多くが改善されている。
---画力がかなり向上し(相対的にだが)、「アトミック水くみ機」や「チェーンソー看護婦」のような珍奇なマシーンや人物も無くなった。~
人によっては寂しく思うかもしれないが…
--2人の犯罪者が主役のストーリーは一見の価値があるような、ないような。また、メッセージの早送り&遅送りやスキップなども可能になった。
--一方で、タイムアウトによるゲームオーバーができ、そこにピース形の変化(毎回変化する上に細かい)という要素が加わり、かえって厳しくなった部分もある。
---このため、ステージ17は、最小ピース+ピース変化+全体的に赤く、メリハリのない色合いの殺人コンボに上記仕様が加わり、前作の鬼畜ステージ13を上回る難易度と化している。~
ただ、上述の通りヒント機能があるので、それを駆使すれば決して無理ゲーというわけではない。
--パッケージ裏で謎の存在感を放つ「パズル博士」は、アリョールのパッケージ裏にはいない。

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**余談
-パッケージ裏で、エンディングステージのひとつが堂々とネタバレ掲載されている。

//-なお、このゲームのイラスト・グラフィックがこんなことになったのは、「''グラフィッカーが全員辞めてしまったためプログラマーが絵を描いたから''」だと言われている。~
//真偽は不明だが、説得力はある。
//真偽不明なら噂でしかないのでCO

-2016年1月に放映された『ゲームセンターCX』の第212回放送にて本ゲームが取り上げられている。
--同番組のメインパーソナリティである有野課長こと有野晋哉(よゐこ)が挑戦し、スタッフらの協力を得ながらゲームを進めていったものの結果は規定時間を大幅に超過する形でのバッドエンドとなってしまった。