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グローランサーIV Wayfarer of the time - (2020/06/28 (日) 20:28:45) のソース

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*グローランサーIV Wayfarer of the time
【ぐろーらんさーふぉーうぇいふぇあーおぶざたいむ】
|ジャンル|ノンストップドラマチックRPG|#amazon(B0000VEKH8)|
|対応機種|プレイステーション2|~|
|メディア|DVD-ROM 1枚|~|
|発売元|アトラス|~|
|開発元|キャリアソフト|~|
|発売日|2003年12月18日|~|
|定価|7,140円(税込)|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|
|>|>|CENTER:''[[グローランサーシリーズリンク>グローランサーシリーズ]]''|

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**ストーリー
はるか2000年前、人類は魔法と科学によって、高度な文明を築いていた。~
しかし、強大な力を持つ、天使との戦いによって、人類は滅亡寸前まで追い込まれてしまう。~

そして現在。~
人類は滅亡の危機から復興し、新たなる文明を築いていた。~
しかし、2000年前の“天使”との戦いで失われたものは多く、古代文明の魔法や科学の技術は、おとぎ話の世界のものとなってしまっていた。~
そして天使も“人類を滅ぼす存在”として伝承の中に残るだけとなった。~
そんな世界の中にある大陸の1つ、ノイエヴァール。~
この地の南方に位置するランプラスト島に外大陸からの侵略から島を守るために雇われたアルテン・シュヴァルト傭兵団。~
だが、突如現れた天使に襲撃を受け、戦場から逃げ出すこととなる。~
そして、大陸へ引き返した日の夜、天使の出現を確認した団長のディクセンは、団員の一人であるクレヴァニールに衝撃的な事実を告げる。~
「おまえこそが“天使を止めるためのカギ”だ」と。~
そこから物語りは大きく動き出す事になる。~
(公式サイトより抜粋)

**概要
「ノンストップドラマチックRPG」を掲げたストーリー、リアルタイムストラテジーのような戦闘などで人気を博したグローランサーシリーズの4作目。~
世界観を一新しており、前3作とは異なる世界観での物語となっている。~
キャッチコピーは「''進化するドラマチック''」。それが示すように、ストーリーを含めて様々な点が進化を遂げている。

**特徴
-一作目要素の復活
--移動画面がそのまま戦闘画面になる、自分の領地を持てる、など『I』で特徴的でありながら『II』『III』では廃止されていた要素が多く復活している。
--『I』で印象的だった休暇イベントも復活。
---『III』でも一応復活したが、アパートの仲間の部屋を尋ねてイベントを起こすだけなのであまり休んでいる感じはしなかった。今回はほぼ『I』のものに回帰している。
---『I』では話した仲間はすぐに移動してしまったり、日が変わる演出も無く城に行くだけだったりとどこか機械的な所があったが、本作では台詞後も雑談している演出が入り、一日終わる度に自室で休む必要が出た。テンポで言えばやや劣るが、休暇の雰囲気は強くなった。
--『III』のワールドマップとランダム生成ダンジョンは廃止。これらも『I』同様、フィールドは街やダンジョン間が地続きの形式に、ダンジョンもランダム性の無い普通のマップになった。
---戦闘中は周囲の敵が寄ってくるという『III』の要素は継承されている。

-使い魔の育成
--シリーズお馴染み主人公の代弁的な妖精キャラクター(本作では使い魔と呼ぶ)を、本作では容姿・性格の異なる3種類の中から選択する事ができる。
--ドールハウスと言うアイテムを使って筋力、知力、魅力などの能力を成長させる事が出来る。使い魔は戦闘には参加しないものの成長させればゲームを有利に進める能力を習得する事が出来る。育成にはミッションクリアや特定アイテムによるエネルギーの充填が必要。
---戦闘で役立つスキルの他、ダンジョンの未取得アイテム数確認、主人公の性格判定、仲間の好感度の表示などと言った能力もある。~
性格判定と好感度表示は『III』から追加されたが、特定の場所でしか聞けなかった。対して本作ではいつでも行う事ができる。
--使い魔のD-TP型とD-LM型はそれぞれ『I』と『III』に登場した妖精キャラに酷似した容姿であり、ファン心をくすぐるデザインとなっている((但し、D-LM型の選択には『III』のクリアデータが必要))。型番を見れば判る通り、D-TP型は『I』の「ティピ」、D-LM型は『III』の「ラミィ」がモデル。D-TP型に至ってはティピと声優まで同じである。D-LM型は担当声優こそ違うが外見はほぼラミィそのまま。
---D-LN型は一見オリジナルだが、実はイラストレーターが同じである『[[ラングリッサーIII]]』の「ルナ」がモデルである。
--タイプによってそれぞれ異なった休暇イベントが用意されており、エンディングも個別のものを迎える事が出来る。
--また、コスチュームチェンジも可能になった。タイプ毎に複数のコスチュームが用意され、中には過去作キャラの衣装もある。

-RMS(リアルタイムミッションクリアシステム)
--『グローランサーII』から採用されているシステム。イベント戦闘は「ミッション」として扱われ、敵の撃破やマップの離脱と言った勝利条件以外にもミッション毎に達成項目が設定されている。それらを完全に満たして勝利すると「Mission Complete」、完璧ではないが無難に満たした場合は「「Mission Clear」、条件がろくに達成できず辛うじて勝利した場合は「Mission Failed」と判定が下され、良い結果ほど経験値や報酬が良くなる。「Mission Complete」だと僅かながら仲間の好感度も上昇する。
---例えば民間人や友軍に被害を出さなかったか、撤退する敵を逃さず全滅させたか、宝箱を全て回収して勝利したか、など様々な条件がある。これらは勝敗条件一覧には表示されない。
--今回はミッション毎にタイマーが追加されている。戦闘開始と同時に+50からカウントダウンが始まり、最低の-50まで減少していく。このカウントが多い時ほど多くの経験値、良い報酬がもらえる為、早い段階で多くの敵を倒すのが望ましい。
---「Mission Complete」を貰うにはカウントが1以上でなければならない。-50まで下がってしまうと無条件で「Mission Failed」が確定する。
---タイマーの減少速度はミッションに応じて異なる。

-フェイトシステム
--本作で追加された「運命を変える」システム。ストーリー上で本来なら死亡したり不幸な人生を送るキャラクターを、条件を満たす事で救う事ができる。
--尚、フェイトに成功したキャラについては後から「もし運命が変わらなかったら?」と言う展開を見る事が出来る。

-難易度の上昇
--難易度が過去作と比べて高く、強力な魔法を使う相手には「魔法耐性アップ」で魔法のダメージを軽減する、敵が多い場合には「スリープ」で眠らせるなど、スキルを駆使しなければクリアが難しい難易度である。
---特に一周目に「Mission Complete」を全ての戦闘で取ろうとすると難易度が非常に高くなる。増援の沸く戦闘も多く、出現位置も挟み撃ちになるような増援や近接攻撃できない、もしくは大回りさせられる位置に魔術師や弓兵が複数出現したりと、初見では対応のしにくい嫌らしいものもある。慣れないうちは「Mission Failed」ばかりなんて事も。
--事前に対策を取ったか否かでガラリと難易度が変わるミッションも多い。中には予め対策を立てたり適切な行動を取らないと、何も出来ないままゲームオーバーになるような初見殺しのケースも。
--そしてこれはシリーズの伝統だが、イベント戦闘はストーリーの一部であるため、初見では何が起こるか分からない。得意の戦略・戦術が使えなくなることなど日常茶飯事なので、常に臨機応変な対応が求められる。
--但し、スキルの使い方が分かってくれば問題なくクリアできるため、決して理不尽な難易度ではない。

//協力魔法の仕様については特徴へ移動
-協力魔法
--『III』に引き続き基本的に1人では単体にしか魔法攻撃が出来ず、範囲指定の魔法については、単発の魔法2種類を二人で協力して発動させる必要がある。
---一例として「アイスバレット」と「ウィンドエッジ」を組み合わせると「ブリザード」になる。
--『II』『III』と同様、魔法にLV制を採用しているが、LV上昇の効果は威力上昇のみとなり、LVに関わらず消費MPは一定となった。
---過去作では、LV内で範囲魔法は威力と効果範囲を調整・単体魔法は威力と効果対象を調整(一例としてLV2の「アイスバレット」を1体に全て使用するか・2体にLV1ずつ振り分けるかの調整)が可能だったが、本作では不可能となった。
--1人で使用する魔法は(単体効果限定だが)射程は無限だが、協力魔法はほんの一部の協力魔法を除き、効果範囲と射程が限られている。(敵も同様)

-スキル習得方法の変更
--本作では魔石(前作までの精霊石)を装備して技能ポイントを稼ぐ事により、魔石に秘められたスキルを習得する事が出来る。
--前作まで同様キャラごとに習得可能なスキルは制限されており、全てのスキルは習得できない。主人公は「間接射程アップ」など本当にごく一部を除く全てが習得可能。

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**評価点
''戦闘システム''~
『III』までに完成度を高めて来たシステムは残っていた問題点がほぼ改善されており、同時に戦闘のテンポも上がっている。また『V』以降戦闘システムが一新されたため本作の戦闘システムは『I』から続くシステムの最終型と言う事ができ、シリーズでも『VI』と並んで高い評価を受けている。

-「リングウェポン」の付け替えが自由になった
--「リングウェポン」は『II』からお馴染みの、武器に変化する特殊なリング。武器として使用するだけではなく、これに魔石をはめこむことで魔法やスキルが使用可能になる。
--前作まで町の特定の場所でお金を払うことでしか付け替えが出来ないため、戦闘中で入手したリングも町に戻るまで装備できないという不便さがあったが、今作では通常の装備品同様いつでも付け替え可能になった。
---但し、初めて手に入れたリングはショップでの鑑定が必要である為、すぐに装備出来ない点は同じ。

-スキル習得方法の変更
--これにより育成の自由度が上がり戦略性も飛躍的に向上されている。
--また、前二作では魔石と技能習得は別々のため使わない魔石もあったが、本作では多くの魔石を使う機会が増えている。
---前作までは効果が便利な魔石を入手するとそれを終始つけっぱなしになる事もあったが、今回はスキル習得との兼ね合いもあり、装備魔石のスキルをマスターした時点で別の魔石に付け替えるプレイヤーが多い。

-協力魔法について
--後述のような問題はあれど、前作に比して協力魔法の種類が大幅に増えたこと等、一部は改善された。
---威力もLV1でも十分使える威力であり、メニュー画面で回復魔法や補助魔法を使用した場合は振り分けの手間がなく最大LVで発動するようにもなった。
--また、片方が詠唱中に倒されると協力魔法が使えなくなってしまう為、これを利用して、敵が強力な協力魔法を使用する前にこちらが単体に攻撃を集中させて敵の協力魔法を阻止する等の戦術的な楽しみはある。

''ストーリー面''
-「天使討伐」を目指すうちに「マーキュレイ王国」に力を貸す事になった主人公クレヴァニール達が「ヴァルカニア王国」や「デュルクハイム国」などとの戦争に身を投じ、世界の危機に立ち向かっていく。成り行きから戦争に巻き込まれ、やがてその戦争の裏で暗躍する黒幕と対決する流れはシリーズ恒例の王道戦記モノである。しかし従来よりも人間同士の戦争がクローズアップされている為、作中の死者はかなり多く、悲劇性は強い。
--全編を通して多くの「死」が描かれ、元々暗い展開の少なくない本シリーズでも特に悲壮な重いストーリーとなっている。序盤から村が丸ごと消されたり、人体実験で死にゆく仲間達を目の当たりにするなど容赦の無い展開が続き、最終盤の展開も熱さより切なさが際立つ。
--物語後半までの最大の敵にして討伐対象である「天使」は「かつて世界を恐怖に陥れた」「主人公とは浅からぬ因縁がある」「実は人間の手で作り出された存在」と、『I』のゲヴェルを彷彿させる設定を持つ。
---しかし大量虐殺を平然と行う非道ぶりを見せつける一方、そこに至ったのは悲痛な過去と苦悩を経た結果であり、同情するには非があり過ぎるにしても、ゲヴェルと違ってただの悪役では終わらない悲劇性を背負ったキャラとして描かれている。

-その為、王道ファンタジー的な化け物との戦闘が主軸に置かれた熱いストーリーだった『I』と比較すると若干の好みは分かれる。しかしその分、濃厚な人間ドラマを描けており、「ノンストップドラマチックRPG」に恥じないストーリーに仕上がっている。
--特に序盤から中盤にかけての「マーキュレイvsヴァルカニア」「ヴァルカニアvsデュルクハイム」「デュルクハイムvsイグレジアス」の4国による三面戦争は圧巻である。
---戦争はシリーズお馴染みの展開だが、過去作では「主人公が肩入れする国」vs「その敵国」の二国間の戦争がメインで、時折別の国を巻き込んで二面戦争に発展する程度だった。対して本作は各国に様々な思惑が渦巻き、それぞれの理由を以てそれぞれの敵国と対立する。戦記モノとしての複雑さ、完成度は『VI』まで出たシリーズ全体を見ても随一である。
--ヴァルカニア王国は歴代作品の「インペリアルナイツ」ポジションにあたる「ロイヤルガード」という1人で100を相手に出来る最強の騎士を複数人所有しており、戦術面での能力は非常に高い。
--イグレジアス王国は戦争開始時点でデュルクハイム国におされ気味であるが、「死翼傭兵団」と言うその世界で悪名高い傭兵団を雇い入れて戦線を押し返している。
--デュルクハイム国は、その二国を同時に相手にして「ルードヴィッヒ准将」や「ルーミス・リヒトマン大尉」の奇策によりその戦局を打開していき、彼らの昇進していく姿なども描かれている。
---民主主義国家というシリーズでは珍しい設定を採用しており、国民から選挙で選ばれた大統領が国家元首を務めている。それだけにきな臭い政治的な思惑の応酬も描かれ、この点でもこれまでのシリーズとは一味違う話運びを楽しめる。
--そして主人公達が手を貸す事になるマーキュレイ王国は人口も国土も軍事力もこれらの国には及ばないが、ある事件を機に同盟国であったヴァルカニア王国と事を構える結果となる。そこにヴァルカニアから離反したオーディネル独立領が同盟を結び、主人公達の協力も得て迫り来る強国と戦っていく。

-これら軍略の描写に関してはシリーズで最も優れていると言われている。
--手段を選ばない「ルードヴィッヒ」と人命を尊重する「ルーミス」は同じ軍に所属しながらも対比的に描かれており、特に「ルードヴィッヒ」はその知謀とカリスマ性からシリーズ最高の悪役との呼び声が高い。
--ロイヤルガードも最期まで忠を尽くして散る者も居れば、義によって国に反旗を翻す者も居たりと、それぞれの信念、生き様が色濃く描かれる。
--また、今回の主人公は度々使い魔の能力「遠見」で離れた場所の光景を見せられるのだが、これによって目まぐるしく動く世界情勢や幾重にも絡み合う思惑を間近で体験する事になる。まるで群像劇のような展開でプレイヤーを物語にグイグイ引き込んでいく。

-エンディングも、従来は基本的に「ラスボスを倒して世界が救われるハッピーエンド」だったのに対し、本作は丸く収まりつつも切なさの漂う結末となっている。
--しかしそれだけでは終わらず、最後はしっかりとハッピーエンドを迎えて後味よく終わらせてくれる。それに伴い、過去作ではあっさり目だったキャラ毎のエンディングも相応に濃くなっており、殆どのキャラに一枚絵付きの感動的な演出が盛り込まれている。
---尚、本編だけでは何故最後にハッピーエンドを迎えられたのかは一切不明であり、ファンディスク『グローランサーIV Return』で真相が明かされる。
--前作ではラストの一枚絵が無く冷遇気味だった男性キャラのEDも、しっかり一枚絵が用意されて作り込まれている。
--誰ともカップリングにならなかった場合は最後の最後まで切ないままで終わる。前作までと異なり、本作のソロエンドは実質バッドエンドなのである((一応、希望は残っていそうな結末ではあるものの、スタッフロール後の最後の一枚絵はとてもそうは思えないものであり、『Return』にてこの場合のエンディングは本当にバッドエンドだった事が明かされている。))。

''その他''
-ストーリー上の重要キャラやパーティメンバーだけでなく、サブキャラにも個性的なキャラが多い。
--『I』ではほぼ不可能だった複数キャラの同時攻略も可能であり、さらには攻略可能なサブキャラもいる。
--『III』では不可能だった妖精キャラの攻略も復活。『I』のように「一定以上蹴られる」と言ったとんでもない条件も無い。が…。

-豪華声優陣
--本シリーズらしく人気声優を多数起用している。パーティキャラだけでも浅野真澄、釘宮理恵、櫻井孝宏など。サブキャラも有名声優の面々が担当している。
--特にルードヴィッヒ役を担当した山崎たくみは、そのカリスマ性に違わない不敵な演技を全編を通して聴かせてくれる((氏によると「エロエロとちょっといやらしめに作ってみた」との事。))。
--上述したD-TP型役の豊口めぐみの他、『II』でウェイン役だった今井由香、ウォーマー役だった岡野浩介、『III』でシオン役だった子安武人と、過去作に出演していた声優も何人か出演している。

-マップの構成が『I』に近いものに戻されるなど、所々に『I』を意識した作風が見られ、『I』ファンでも安心して楽しめる内容となっている。
--闘技場やGLチップス等の寄り道要素も健在である。また、本作では『I』以来久しぶりに休暇システムが復活し、より仲間たちに感情移入しやすくなっている。
---GLチップスには『I』〜『IV』のキャラのシールが付いてくる。メインキャラの他、当時のイメージイラストなんてものも。
--自分の領地は人材を雇う事で発展していくのも『I』同様。『I』では休暇で遊びに行く行楽地という扱いだったが、今作では主人公の拠点として機能する。
--また、条件を満たすと『I』~『III』のキャラ(…を模したホムンクルス)と戦う事も可能。

-前二作(特に『II』)はボリューム不足が指摘される事が多かったが、本作は『I』に匹敵するボリュームを誇る。
--ちなみに『I』はCD-ROM2枚組、前二作はCD-ROM1枚、本作はDVD-ROM1枚である。

-演出の回帰と強化
--イベントスチル(一枚絵)、オープニングアニメなど、『I』にはあったのに前二作で廃されていた演出が再び採用された。
--オープニングアニメは本作の切ないシナリオを反映してか、曲も相俟ってどこか哀愁を帯びたものとなっている。主題歌はOP、ED共にメインヒロインのフレーネ役を務めた牧島有希が歌唱。
---アニメだけではなく、歌詞やキャスト名、曲名と言ったクレジットも表示され、本当のアニメ番組のような作りになっている。
---尚、サビの部分のアニメでかなり重要なシーンのネタバレをしている。これを見ただけでも本作のシナリオの切なさ、重苦しさが伝わるだろう。
--また、一部イベントにはCGムービーが用意されている。前作、前々作にも一部魔法演出にムービーはあったが、本作ではストーリーの演出にも用いられている。
--従来には無かった要素として、戦闘中は仲間達も指示に対して受け答えするようになった((『I』では妖精キャラのボイスのみ、『II』『III』では受け答え自体が無かった。))。また、好感度やステータス異常の有無、ストーリーの状況に応じて仲間達の態度も変わる演出も用意されている。

-ロード時間が非常に短い。

**賛否両論点
-協力魔法の使用が過去作よりも制限された事
--『I』や『II』では範囲魔法を1人で使用できたため、過去作をプレイしていると純粋に使いづらくなったと感じるプレイヤーもいる。
--一方、過去作の終盤において敵の数が多い場合、敵に範囲魔法を連発される前にこちらが連発して一掃するような大味なゲームバランスの原因にもなっていた為、これへの対処的な側面もあると思われる。
---実際、上記の通り、敵味方双方で同様のメリット・デメリットがあるため、ゲームバランスは取れている。

-ストーリーの暗さ
--人間同士の戦争をクローズアップしたストーリーであり、上述した通りそれが重厚なドラマを描けているのは確かだが、それ故にシリーズでも屈指の悲劇性と陰鬱さを誇り、好みが分かれるのも然りである。
--従来作では悪人以外のキャラの死が不可避という事はあまり多くは無かったが、今作では敵国の主要キャラは善人悪人問わず大抵死んでしまう。味方側の死者も少なくない。続編『グローランサーIV Return』の冒頭で主人公が「''俺の周りには死しか無かった気がする''」と回顧するほど。
---特に終盤、同じ軍で過ごして親交の深いルーミスと、主人公と同じ傭兵団で家族同然だったバウアーを倒さなければならない展開は本当にやるせない。
---ラストダンジョン前、使い魔が「世界の為に命を散らした人物」と「戦争が無ければ仲良くできた敵国の人物」の名前を挙げていくシーンは、戦争や天使との戦いで失われたものの多さを嫌と言うほど思い返させられるだろう。
--『III』の敵の辞世の句((ストーリー中に戦う人間タイプの敵全てに個別の台詞があり、それも「残された兄弟が…」だの「これでお父さんの所に行ける」だの生々しいものばかりという、やるせない演出だった。))は無くなったが、ストーリー中の描写はモブに至るまで濃くなっているのでどちらにせよ虚しい。
--それだけ、戦争の無情さ、悲惨さの表現としては申し分無いという事でもある。

**問題点
''シナリオ面''
-ルードヴィッヒが目立ちすぎる反面、本作のラスボスは影が薄い。
--作中で脚本家を自称し、「ゲームマスターは表に出てはいけない」といった発言をしているので、あくまで裏方に徹する主義なのだろうが、裏方に徹しすぎて印象が弱くなってしまった。
---設定的には諸悪の根源であり、重要キャラの殺害など、ラスボスとしての強さを遺憾なく発揮している等、少ない出番の割にインパクトは強い半面、遊んでいる(と評価される)行動が多い。それが主人公達に対処の隙を与える結果となっており、印象の薄さと併せてラスボスとしての評価を下げている。
--最終決戦もラスボスとの決着を付けるために戦いに向かうのではなく、「別の目的で向かった先で、それを阻止するべくラスボスが待ち受けていた」という形の為、その点でも印象が弱くなってしまっている。
---主人公達にも実際に最終決戦で相対するまでは「最大の敵」「諸悪の根源」とは認識されておらず、「謎の男」「正体や目的は分からないが恐ろしい敵」程度にしか思われていなかった。
--『I』のラスボスは設定、強大さ、恐ろしさ、存在感全てにおいて申し分無く、ラストバトルも非常に盛り上がったのに対し、『II』『III』のラスボスは所業こそ壮大だが設定も強さもいまいちラスボスらしさに欠け、ラストバトルもあまり盛り上がらなかった。
---対して本作はラスボスらしさに関しては十分なのだがこの通り印象が弱く、ラストバトルも敵の強大さの割に地味さが否めない。倒しても台詞が無くただ断末魔の叫びと共に消滅するだけなのでカタルシスも薄め。
--旧作のラスボスは初攻撃時に仲間キャラ全員に専用の台詞が用意されていたのだが、今作ではルードヴィッヒ戦でこそその演出がある一方でラスボスには無い。

-戦闘メンバーが増えるのが遅い。
--主人公を含め戦闘メンバーは最終的に8人になるが、うち4人で固定されたパーティーでストーリーの多くを進む事になる。
---ゲーム開始時からほぼずっと主人公と行動を共にする仲間が1人。序盤でもう1人仲間になるがすぐに外れ、本格的に冒険が始まる頃に2人加入し、その4人でそれからかなりの期間を冒険する。
---中盤を過ぎてようやく交代メンバーが2人増え、残り2人は後半~終盤に条件を満たすと仲間になる(うち1人は序盤で外れたキャラ)。
--ある程度のスキルを最初から覚えているとはいえ、有用なスキルを1から覚えさせる手間を考えると、それまでのメンバーを使う方が便利なのである。
---また、初期メンバーがパーティバランスも良い為、そのまま最後までクリアは十分可能。キャラの個性を度外視して単純に育成の手間だけで見れば、メンバー編成のメリットは薄い。
--一応、加入が遅い4人のうち3人はかなり早い段階からストーリーに絡む為、愛着は湧き易くはなっている。登場が遅い1人もこの中では最も早く仲間になる。

-レムスについて
--主人公の弟分である「レムス」の言動について批判が多い。
#region(エンディングでのレムスについて(ネタバレ有り))
--最後の戦いの後、主人公が消滅し人々から主人公に関しての記憶が消える事になる。そして月日が流れ戦いの記憶が消えた仲間達は何のために戦っていたのか談笑していたのだが、主人公の弟分であるレムスが「''きっと忘れてもいい事だったんですよ。''」と発言。
---主人公と一緒に過ごした時間が一番長いだけに余計に批判されやすい。確かに一緒にいた時間が長いレムスですら忘れてしまうくらい深刻な状況ではあるのだが、だとしても上記の台詞を言わせるのは行き過ぎだろう。
---またエンディングだけでなく普段の言動も(特に使い魔・天使関連で)他人への気遣いに欠けたものが多いことから暴言まとめコピペがつくられるほどであり、シリーズを代表する嫌われキャラの一人になってしまっている。
//--ただしPSP版では大幅に改善され&bold(){「綺麗なレムス」}とまで言われた。
//PSP版の方で記載。
#endregion

''システム面''
-(シリーズを通して言えることだが)セーブポイントが少ない。
--本作は戦闘難易度が高い分、連戦時など初見ではゲームオーバーになりやすい箇所が多く、結果的にシリーズ他作品と比べて指摘される事が多い。

-移動が不便。
--『I』と同様のフィールドマップでありながらフィールド上でセーブ不可、テレポートがないため、『I』より不便である。
---フィールドでセーブできないのは、『I』で起きていた詰み状態でもセーブできてしまった事への回避、戻れない所でセーブをしてしまう事により逃げ場がなく戦闘で詰んでしまう事の回避といった側面もあると思われる。
--テレポートの代替の移動手段として『III』の「トランスゲート」が設定を変えて登場するが、拠点と特定の場所を繋ぐというものなのでテレポートより大幅に制限されている。
---『III』と違って特定メンバーに起動させたりする必要は無いが、設置箇所は中盤までなかなか増えない。
---『III』同様、シナリオに絡んでくる(奇襲に使用する等)のであえて制限したのかもしれないが、ポイントを選択するだけの『II』、ワールドマップ方式の『III』は移動が簡単だったため、『I』の地続き方式に戻った事で結果的に不便さが増している。

-シリーズ恒例の冒頭のキャラメイク((いくつかのイベントで取った行動により主人公の初期パラメータを決定するシステム))が存在しない。
--インタビューによると『III』まで続けてきてマンネリ感があった為らしい。しかしやはり求める声が多かったのか次回作以降は復活し、いずれも『I』並に複雑な内容になっている。
--一応、使い魔については選択肢による簡単なキャラメイクが用意されている。

-育成が進むとキャラ個性が薄くなる
--どうしても汎用的に便利なスキルはある為、キャラに寄らずそれらを多用する事になりがち。
---とはいえ、主人公以外は習得不可能なスキルもあるし、よほど効率的にスキルを覚えさせるか、途中でスキル習得用の戦闘を繰り返しでもしない限り、ラスボス戦までに全スキル習得は難しい。
---また、能力値や武器の射程、待機時間もキャラクター毎に大きく異なり、リミットという各キャラ専用の特殊技も存在するので、スキルを覚えられる限り覚えても各種能力面でキャラクター毎の個性は残っている。


''協力魔法の問題''~
-いくつかの理由から味方側は協力魔法を使いづらい
--まずパーティメンバーが最大4人である為、協力魔法を使う為にその半数の2人を取られてしまうのが痛い。
---魔法の詠唱中は移動もできず防御力低下などのペナルティがある上に魔法の得意なキャラは防御力と体力が低いので、不意の後方からの奇襲等に弱く、かといって護衛に人数を割くと今度は攻め手に欠けてしまう。
--戦闘時のシチュエーションも協力魔法には向かい風になっている。
---今作は「少数精鋭の主人公パーティーが敵陣に潜入、奇襲、陽動をしかけるために時間経過で後方から敵援軍が現れる。」、「防衛戦で敵が挟み撃ちや多方向から攻めてくる」というシチュエーションが多く、退路や安全に詠唱できる場所を確保しにくく前後衛が機能しにくい戦闘が多々ある。さらには「奥に進むために複数のスイッチがある」、「護衛対象や部隊が複数存在する」など効率的に攻略するにはパーティを分断しなければならないものもあり、余計に足を止めて協力魔法を詠唱するより小回りの利く単体魔法と回復を行いつつ、孤立しないように移動する方が安全な事が多い
--こういった理由から味方側の協力魔法の使用頻度は低くなりがちで、強力なスキルが出揃う後半や力押しが出来てしまう2周目以降には出番がほとんどなくなってしまう。

-一方で敵は協力魔法を有効活用してくる為、不公平感が強い
--敵側は部隊単位で行動している事も多く、その人数を活かして前衛後衛をうまく機能させて協力魔法を使用してくる。
--更に終盤になると単独で協力魔法を放つ敵が当たり前のように出現する。
---一応、習得スキルが強力になっている頃なのでゲームバランス的には問題はないが、システム的な不公平感は拭いきれない。

-周回プレイ時には魔石を引き継げるが、協力魔法に必須の「協力」スキル習得の為の「友情の証」は引継ぎ不可能。
--入手にイベントが絡む為仕方ないとも言えるが、結果的に周回時に他のスキルに比べ習得が遅れてしまい、やはり出番が減ってしまう。
--最強魔法「ブラスト」習得の為の「マテリアルマスター」も引き継ぎ不可で、しかも入手は終盤に差し掛かる頃なのでブラストを用いた協力魔法も使う機会が限られてしまう。

''その他''~
-主人公の唇が紫色。
--主人公クレヴァニールは本シリーズの例に漏れずイケメンなのだが、何故か唇の色が紫である。一部のイベントCGではやたらと目立つ。「主人公はカッコイイけど唇が気持ち悪い」と言った意見もちらほらと。
--批判があった為かどうかは不明だが、OVAやPSP版のアニメムービーでは普通の色になっている。

-一部キャラの年齢の違和感。
--どう見ても老剣士で作中でも老人扱いされるのに40代半ばのヒエン。見た目が渋いおじさまなのに30代前半のミュンツァーと、設定年齢が妙に低いキャラがいる。ファンディスクのDVDで担当声優にも軽く突っ込まれたほど。
--作中で年齢について言及される事は無いので普通にプレイしている分には問題は無いのだが、意識すると少々気になってしまう。

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**総評
ストーリーは暗めだが概ね好評で、特に4面戦争状態の演出は評価が高く、シリーズでも『I』に次ぐ人気を誇る。~
また、戦闘システムも今までのシステムを昇華させた一つの完成形とも言える形であり、難易度が高めではあるものの、理不尽ではなくやり応えのあるバランスになっている。~
『I』~『III』は個別でも遊べるとはいえ世界観が繋がっていたのが本作では一新されており、シリーズ初見のプレイヤーにも勧めやすい作品になっているのもポイント。~
シリーズを『IV』から始めても良いだろう。

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**その後の展開
-2005年3月10日には本作のファンディスク『''グローランサーIV Return''』がPS2で発売された。
--ジャンルはADVで、本作のエンディングにおける謎((消滅したはずの主人公が一年後に帰還した件))を解き明かすシナリオの他、後日談や本編のサイドストーリーが描かれる。後日談はなんと本編の全エンディング分が用意されている(ただし、本編のクリアデータのコンバートが必要)。
---ちなみにこの作品ではクレヴァニールも普通に喋る(ボイスは後述のOVAのみで、ゲーム中はなし)。主人公らしい活躍は勿論、選択肢次第で情けない姿を晒したり、数々の後日談では色々な顔を見せてくれる。
--エンディング後を描くOVAとシリーズのカルトクイズも同時収録。
---OVAのスタッフロールは『I』~『III』のキャラが登場するものであり、シリーズファンには嬉しい演出になっている((ただ、時間の関係で登場キャラのバランスはやや悪い。『I』『II』キャラは相応に出る一方で『III』キャラは、最後の主人公集合を除くとなんとパーティーメンバーですらないオルフェウスたった一人。))。また、次回作の予告も兼ねており、ラストには『[[グローランサーV Generations]]』の主人公ゼオンシルトが登場し、その仲間達のシルエットが映し出されて終わる。
---カルトクイズも全問正解特典として『V』の簡単な予告が収録されている。但し、本当にカルトクイズなので((「○○にある家の屋根の色」など、普通なら気にも留めないような所まで聞かれる。))全問正解の難易度はかなり高い。
--尚、この作品にて実は『IV』の世界も『I』~『III』の世界と間接的にではあるが繋がりがあった事が明かされている((『I』『II』世界と『III』世界のように、『IV』世界もまたそれらの世界と時空を隔てた別世界であったという事。また、『I』『II』世界から『IV』世界に転移した人物が『IV』の物語にも大きな影響を与えている。))。その為、『IV』のみならず過去作(特に『III』)をプレイ済みだとより楽しめるだろう。

-2011年8月18日、『''グローランサーIV OVER RELOADED''』と題したPSP版が発売された。
--シナリオ・キャラクターなどが大量に追加されており、リメイク版と言っても過言ではない内容となっている。詳細は下記の通り。

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*グローランサーIV OVER RELOADED
【ぐろーらんさーふぉー おーばーりろーでっど】
|ジャンル|ノンストップドラマチックRPG|#amazon(B004ZWG91S)|
|対応機種|プレイステーション・ポータブル|~|
|メディア|UMD 1枚|~|
|発売元|アトラス|~|
|開発元|キャリアソフト|~|
|発売日|2011年8月18日|~|
|定価|6,279円(税込)|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|
|>|>|CENTER:''[[グローランサーシリーズリンク>グローランサーシリーズ]]''|

**概要(OR)
1作目に続くPSPリメイク版。基本は移植だが、追加シナリオ等をひっさげて大胆にリメイクされている。~
プロデューサーの高田慎二郎氏はインタビューにて、シリーズでは『I』と『IV』が気に入っていると答えており、高いポテンシャルを秘めた『IV』に特に思い入れがある様子を伺わせていた。~
しかし「『I』が一番面白い」と言う意見も多いのが悔しく、今回のリメイクは『IV』を「シリーズ最高傑作」と呼ばれる作品にしたいと言う願いを込めていたとの事である。~
その熱意が形になったように、シナリオ分岐の追加、新キャラの追加、EDを迎えられるキャラの増加等、全体的にボリュームアップしている。

**変更点
-シナリオ分岐が存在。
--PS2版のルートの他、新規シナリオのルート、仲間と決別し戦う事になるルートの合計三通りのルートが存在する。

-新規キャラとそれに伴うシナリオが追加された。
--使い魔は新たにD-MD型((モチーフは恐らく『ラングリッサーV』の「ラムダ」。「MD」なのはD-LM型と被るのを防ぐ為か。))を加えた4パターンに増え、PS2版では『III』のデータが必要だったD-LM型も最初から選択可能になっている。
--パーティーメンバーは新たに3人追加されている。

-新規アニメーションの追加。
--『V』以降のようにストーリーの随所にアニメムービーが挿入されるようになった。PS2版ではCGムービーや通常形式の会話で進んでいた既存の重要シーン等にも追加されている。
---CGムービーはアニメに差し変わったもの以外はそのまま。
--OP、EDの主題歌も新規のものが用意された。尚、OPアニメは作中のアニメを編集したもので、『V』『VI』と同じ形式に。

-一部キャラの声優変更。
--パーティーメンバーや主なメインキャラは続投しているが、使い魔はD-TP型を除いて一新されている。ミュンツァーやシドニーと言ったサブキャラも変更。
---但し、全体的にPS2版に近い声質の声優が起用されている為、PS2版プレイヤーでも違和感は少ない。
--担当声優の変わっていないキャラでも一部台詞は撮り直されている。使い魔の独り言も全て新録され、追加キャラとの会話も追加された。

-GLチップスの内容変更。
--PS2版では『I』~『IV』のキャラのシールが用意されていたが、今回は本作と直近の『I』PSP版のキャラのみとなっている。%%『V』『VI』のキャラを入れても良かったのでは。%%
--それに伴い、旧作キャラと戦えるエキシビションマッチにシールが必要無くなった。

-掲示板に貼られるレオナの落書きが描き直され、若干画力が上がっている。

**評価点(OR)
-シナリオ分岐の追加
--戦争をメインに描くだけに暗めのストーリーだったPS2版と比較すると、新規ルートは熱く希望の持てる展開が多く、『I』を彷彿させるストーリーになっている。
---原作では「どう足掻いても助けられない」「本来なら判り合えるはずなのに、立場の違いから倒さなければならない」と言ったキャラが多数存在したが、今回はその多くを救う事が可能になった。それに伴い、フェイトイベントも大幅増加。
---PS2版では倒さざるを得なかった敵国の人間達が生き残り、主人公達と共にラスボスに立ち向かっていくと言う王道ながら熱い展開も。
---『I』PSP版の追加ルートはあくまで新キャラのためのルートであって本来の展開からは完全に外れていたが、本作の新ルートは本筋を拡張して分岐を追加したものであるので、元々のストーリーの延長として楽しめる。
--決別ルートでは『II』の一部ルートのように味方同士での戦いが発生し、PS2版にはなかった独特の展開を楽しめる。
---通常ルートのようなキャラ別EDが存在しない代わりに、行動や選択肢によってEDが分岐する。
---PS2版でカリスマ性を発揮していた悪役・ルードヴィッヒもこちらのルートでは味方に。最終決戦は彼と共にラスボスに挑むと言う、PS2版からは想像も出来ないようなものになっている。
---主人公が野心に目覚め、血塗られた道を歩むと言う展開すら用意されている。
--勿論、PS2版のルートも収録されているので、そちらをプレイしたい人も安心。

-エンディングの大幅増加
--PS2版のEDは全て収録。それに多数の新規EDが追加され、総数40以上ものEDが用意されている。
---新規ルートではPS2版でEDが用意されていたキャラ全員分の新たなEDが用意され、更には新規キャラは勿論、アリシアやマギーなどPS2版ではEDが無かったサブキャラともEDが迎えられる。立ち絵がある女性キャラの殆どが攻略可能に。
---決別ルートは上記の通り、プレイヤーの行動でEDが分岐する。中にはルードヴィッヒ、ルーミス%%、デリンガー元大統領%%と言ったキャラのEDとも言えるものもあり、時には大団円とは程遠い思い掛けない結末を迎える事も。
---但し、PS2版準拠ルートでの追加EDはD-MD型のみ。
--EDリストも用意され、達成済みのEDが管理しやすくなった。EDにもそれぞれタイトルが付けられているので分かりやすい。中には妙にコメディチックなタイトルも。
--ラスボス撃破後はルートに関係なくセーブが可能になっており、データを残しておけばお気に入りのEDを好きなだけ鑑賞できる。

-新キャラがほぼ自然にストーリーに溶け込んでいる。
--普通であれば、既に一つの物語として成立しているシナリオに新キャラクターを追加すると、どうしても違和感を生じさせてしまうものだが、本作の場合は新規プレイヤーは勿論、PS2版経験者でも違和感をあまり感じない作りになっている。
--ストーリー中もほどよく存在感を示しており、空気化する事も悪目立ちする事も無い。
---トリシアはデュルクハイム関連のドラマ性の更なる強化に、メリーヌとシンシアの姉妹は後述の通りラスボスの存在感を高める事に貢献している。パメラは序盤は多少違和感はあるものの、中盤からは自然にストーリーに関わってくる。
---唯一の新男性キャラであるマグナスもヒエンやカーギルとの因縁などのシリアス要素は勿論、もみあげがトレードマーク、スイーツが好物、''女装イベントがある''、などと妙に濃いキャラになっており、存在感は強い。

-多くの既存キャラもストーリー中の出番が増え、より深い掘り下げが成されている。
--上記のようにPS2版では必ず死ぬキャラを助けられたり、新規シナリオにも深く絡んできたりと描写が更に濃くなっており、新キャラに喰われる事なく存在感をしっかり発揮している。
---一部は新規キャラ関連の設定が追加されている者もいるが、いずれも整合性が取れており、矛盾や違和感は殆ど無い。
---ある敵はPS2版では途中でフェードアウトし、決着は『Return』までお預けになったが、本作では本編中に倒す事が可能になった。
--クレヴァニールも「世界を守る為に命を削って戦う」と言った『I』のカーマインを彷彿させる姿や、1人だけで戦うミッション、アニメムービーでの描写などの主人公らしい見せ場が大幅に増えており、存在感を更に強めている。
---勿論本編では台詞は無いが、アニメムービー内では「くっ!」などと僅かに声を発するシーンがある((OVAでは高橋直純氏がクレヴァニール役を担当していたが、本作ではクレジット表記は無く不明。))。
---追加選択肢もどこかコミカルなものが少なくなく、時には『Return』で見せた茶目っ気を想起させる事も。%%同社の[[別シリーズ>女神転生シリーズ#id_c8e64bff]]の雰囲気にも近付いたような…。%%
---クレヴァニールの兄・ブリュンティールもストーリー途中で死亡する結末こそ変わらないが、新ルートでは大きな役割を果たし、更にはラストバトル後に…。
--PS2版では影の薄さを指摘されていたラスボスだが、新規ルートではイベントや関連キャラの追加によってラスボスらしさが大幅に増した。
---ストーリーの途中から悪の親玉としての姿もはっきり描かれるようになり、最終盤では自ら世界を危機に陥れるという実にラスボスらしい行動に出てくれる。
---上述した通り、PS2版ではラストダンジョンにもラスボスを倒しに行く訳ではなかったので印象を薄めていたが、新規ルート及び決別ルートではラストダンジョン、ラスボスはそのままに、最後はしっかり決着を付ける為に赴く展開になっている。
---PS2版では真の姿への変身を阻止し、不完全な姿である第二形態を倒して終了だったが、新規ルートでは真の姿である第三形態が登場し、ラスボスとしての風格は十分過ぎるものになった。
---『I』ではPSP版で新規ルートが追加された際、オリジナルのラスボスが新ラスボスにあっさり取って代わられる展開になっていたが、本作ではオリジナルのラスボスであるこの人物が全てのルートでラスボスの座を守り通している。
--他にも死翼傭兵団団長、ディライン、マウラー大尉などの脇役すらも出番が増えている。但し、立ち絵の無いキャラへの新規立ち絵追加は無い。%%『I』PSP版もチョイ役に追加されただけだったし%%
--レムス関連のイベントが改善されている。特にエンディングでの問題発言は全く逆の台詞に変更されており、ファンには「''綺麗なレムス''」とまで称された。

**賛否両論点(OR)
-シナリオ分岐が遅い。
--でかでかとシナリオ分岐や仲間との戦いを宣伝し、パッケージにも「オリジナルの展開を覆す複数の新規ストーリー」と書いてある割には共通ルートが長い。
--確かに「オリジナルの展開を覆す」は間違いではないし、共通ルートにも新規イベントは多いが、実際にシナリオが分岐するのは物語後半も過ぎる頃である。
--決別ルートへの分岐は更に遅く、しかもこちらは2周目以降でなければ選択できない。

**問題点(OR)
-使い魔が4体に増えたが、選択可能な名前は3種類のままで、新規の使い魔に当たる名前が存在しない。
--その為、4周して4体全員を選択すると必ず名前が被ってしまう。

-会話前に読み込みが発生すると口パクだけを見せられる。
--UMDによる読み込みの都合で、インストールしてもそこそこの頻度で発生する。

-仕方のない事だが、年月の経過によって声優の声質が若干変化している部分も。特に釘宮女史演じるレオナは既存と新規の差が激しい。
--上記の通り、オリジナルの台詞も一部新録されているのだが、演技のし方が変わっているケースもあり、新規プレイヤーは問題無くともPS2版をやり込んだ人には違和感を覚える部分も。
---例えばD-TP型の独り言は、PS2版では怒り気味に言っていた台詞がPSP版では優しく諭すような言い方に変わるなど、PS2版に比べるとかなり落ち着いた演技になっている。

-新規追加の戦闘メンバーの加入も遅い。
--オリジナルでもメンバーが増えるのが遅い問題があったが、追加された3人も全員序盤から登場する割には加入が遅い。
---早いキャラでも後半に差し掛かった頃、遅いキャラはラストダンジョン直前という遅さ。御蔭でそのキャラだけ休暇イベントが無い。
---ただしその一番加入の遅いキャラは決別ルートでも仲間になるので、2周目以降にこちらへ行けば活躍の機会は増える。
--また、その3人全員を使えるのは新規ルートのみで、他のルートでは死亡したり離脱するケースがあり、全員は揃わない。PS2版準拠ルートに至ってはオリジナルに忠実な為、誰も仲間にならない。

-さほど気にならない程度だが、画面表示の都合上キャラのドットが少し粗くなっている。

-ごく一部だが、新規イベントにおいてキャラのブレがある。
--フレーネは基本的に他人をさん付けで呼ぶのだが、新規イベントでは主人公を呼び捨てにしているシーンが多く存在する。
---二人の関係を考えれば、途中から呼び捨てに変わってもさほど不思議はないが、原作では常にさん付けだった上に新規イベントでも呼び捨てにするシーンとしないシーンが混同しており、不自然さが生じている。
--また、新規イベントには一部原作の設定を間違えている部分も。例えば大佐まで昇進したルーミスを「大尉」を呼んでいるシーンがある。しかも一ヶ所だけではなく、その場でルーミスについて発言するフレーネとトリシアが二人とも間違えている。
---デュルクハイムを離れて久しいフレーネはともかく、直前までデュルクハイム軍にいたトリシアが昇進を知らないはずがないので、シナリオ追加時のミスだろう。

-『II』も分岐のイベントはかなり強引な流れだったが、今作の決別ルートへ分岐する展開もやや不自然。
--相手側からの条件を呑んでそちらの勢力に移る訳だが、その条件というのがわざわざ悩むような美味しい条件とは言えない。実際、通常であれば条件を呑む選択肢は選べない。
---しかし仲間達は「どちらが良いとは言えない難しい選択」と悩んでしまうので、プレイヤーからすると少々頭に「?」が浮かぶ展開になっている。
--二周目からは相手側からの手紙を受け取る事でその選択肢が選べるようになるが、その手紙も主人公の気持ちが一気に傾くような内容とは言い難い。主人公に野心があるという流れならともかく、そうでないならあっさり流されたようにも見える。
--どちらにせよ決断を下した後は使い魔が「屋敷に戻って皆さんにお伝えしないといけませんね」と言うが、決別ルートに進んだ時以外では「皆さんにお伝えする」イベントは無く、普通に自室で休むとストーリーが進むだけ。あれだけ皆で悩んだのに事後は何も無く、違和感が否めない。

-PS2版準拠ルートの扱い。
--PS2版準拠ルートは本当にオリジナルに忠実であり、整合性を取る為の台詞などの必要最低限のイベントしか追加されていない。
--本作でイベントやEDが追加されたキャラも、こちらのルートに入った途端に追加イベントはほぼ全て消滅する為、それまでのイベント達成状況はほぼ無意味になる。
---EDが追加されたマギー、アリシア、シルヴァネールにはPS2版準拠ルート版EDは無く、分岐前に救出可能なミュンツァーを救出しても以後は一切登場しない。救出イベントが分岐後に追加されたアルフォンスは、こちらのルートでは手段があるにもかかわらず助けられない。
--PSP版追加キャラ5人については、1人は分岐の際に生死が分かれ、もう1人は設定上描写が不可欠な為か結末が描かれる。しかし残り3人に関しては分岐後はそのままフェードアウトし、最初からいなかったかの如く触れられないまま終わってしまう。
---確かにPS2版では影も形も無かったキャラ達だが、PSP版では序盤からがっつり本筋に関わっている為、いくらPS2版準拠の展開に進んだからと言って何の描写も説明も無く消えるのは流石に違和感がある。
#region(その一方で…)
--こちらのルートでも決別ルートへの分岐イベントは入る。
--しかしこの際の相手側からの申し出とは新規ルートの展開だからこそ意味があるものであり、PS2版準拠ルートで提案されても仕方ない話なのである((デュルクハイム側に渡ってすぐに召喚師を処刑するという非情な段取りなら意味は無くも無いが…。しかし大統領であるルードヴィッヒ自身も召喚師である為、それが通る事は無いだろう。))。
---にもかかわらず、仲間達は新規ルート同様に大真面目に悩み、決断を委ねてくる。しかし当然ながらこの場合は申し出を受けて決別ルートに移る事はできない。何の為に挿入したのだろうか。
#endregion

-その他
--贅沢な望みではあるが、PS2版のオープニングアニメは未収録。主題歌もOP、ED共に同様。
--セーブの際にPS2版では使い魔の音声が入る演出があったが、PSPの仕様ではセーブ方式が固定なので無くなっている。仕方ない話だが、PS2版に慣れていた人は少し寂しいかも。

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**総評(OR)
主にシナリオ面でボリュームアップし、元々がシリーズ内でも長い方だったシナリオが更に増量された、正に『OVER RELOADED』な内容である。~
レムス等の一部不評だった箇所のシナリオが修正された他、新規ルートはPS2版で助けられなかった人も助けられるようになり、全体的に大団円のルートとなっている。~
また、仲間と袂を分かつシナリオもシナリオの方向性ががらっと変わるため、なかなか面白いルートになっている。~
元々シリーズでは評価が高い方だったシナリオが大幅に拡張されているので、高田氏が目指した通り、人によっては『I』を超えるシリーズ最高傑作にも成り得るだろう。~
~
今GL4をプレイするならシナリオの追加されたPSP版をお勧めする。~
ただし、『グローランサーIV Return』に繋がるシナリオはPS2版のルートのみであるため、新規追加ルートが気に入った上でプレイする場合には、繋がりに少々困るかもしれない。~
また、『Return』で後日談を見るにはPS2版のクリアデータが必要という点も注意。
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**余談(OR)
-本作の発表当初のタイトルは『グローランサーIV OVER LOAD(オーバーロード)』だった。
--しかし新規要素を盛り込んだ新生作であるという想いや気合いが伝わらないと判断された為、『OVER RELOADED』へと変更されたと言う。