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フロントミッション フィフス ~スカーズ・オブ・ザ・ウォー~ - (2017/06/22 (木) 15:18:53) のソース

*FRONT MISSION5 ~Scars of the War~
【ふろんとみっしょんふぃふす すかーずおぶざうぉー】
|ジャンル|シミュレーションRPG|&amazon(B00065G7MY)|
|対応機種|プレイステーション2|~|
|発売・開発元|スクウェア・エニックス|~|
|発売日|2005年12月29日|~|
|価格|6,800円(税抜)|~|
|廉価版|アルティメットヒッツ&br()2006年10月5日/2,940円(税込)|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|
|>|>|CENTER:[[''フロントミッションシリーズリンク''>フロントミッションシリーズ]]|

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#contents(fromhere)
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**ストーリー
21世紀初頭、共同体化の波が世界各地に押し寄せる。そして20年余りの時を経て、南北アメリカ大陸が統一された「ニューコンチネント合衆国(U.S.N.)」と、日本、オセアニア、東南アジア諸国による「オシアナ共同連合(O.C.U.)」という二大勢力が誕生し、世界再編に大きな影響力を持つこととなった。~
その中で、アクチュエーターを用いた二脚歩行兵器「WAW(ヴァンダー・ヴァーゲン)」が登場し、性能を期待される。そして後にコスト削減のため、機体各部のパーツやコンピューターの換装を可能にした新規格が採用され、"ヴァンツァー"こと「WAP(ヴァンダー・パンツァー)」が実用化された。

時に、2070年。物語は、1995年に太平洋上に隆起が確認され、2060年にUSNとOCU両国が入植を開始した太平洋の「ハフマン島」から始まる。~
その日、幼き日のウォルター・フェンは新しい自転車に乗り、親友のランディ・オニールとグレン・デュバルの元へ急いでいた。しかし突然始まった戦闘――第一次ハフマン紛争は、3人の家族を奪い、ウォルターとグレンの肉体にも生涯残る傷を負わせる。~
2年間続いたこの領土紛争は、島中央のメール川より東側をUSNが、西側をOCUが統治することで停戦に至った。ハフマンは二大勢力が唯一陸上で国境線を接する緊張地帯となり、ウォルターとランディはUSN、グレンはOCUの施設へと、それぞれ引き離されてしまったのだ。~

2086年。孤児院を出て陸軍に入隊したウォルターとランディはとある暴動鎮圧任務で窮地に陥るが、OCU軍のヴァンツァー乗りとなっていたグレンに救われる。~
グレンに影響された2人はそれから3年をかけてヴァンツァーの搭乗員資格を取得し、機甲部隊へ転科する。だが時を同じくして、USNとOCUの緊張は再び高まっていた。~
やがて1つの事件を切っ掛けに、第二次ハフマン紛争が勃発する。敵味方に分かれてしまった仲良し3人組は最前線で再び出会い、それでも友情を確かめようとするのだが……。

これは、20余年に渡って最前線を駆けつづけたUSN軍人、ウォルター・フェンの苦悩と郷愁の念を綴った戦記である。

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**概要
スクウェア・エニックスの人気シミュレーションRPG『フロントミッションシリーズ』のナンバリング第5作にしてシリーズ10周年記念作品。10年の節目の作品と言う事で、ストーリーは従来のように時系列の横軸(一時代の出来事)を抜き出すのではなく、1ST~3の時代を駆け抜けた1人の兵士の物語を辿っていく、時系列の縦軸を追っていく内容となった(因みに時系列は[[1ST>フロントミッション]]⇒4⇒2⇒3の順となる)。

バトルシステムは前作『フロントミッション4』から導入された「リンクシステム」を改良して採用、機体カスタマイズ面では『フロントミッション3』の改造システムが復活、ミニゲームのアリーナモードの復活などシステム・シナリオの両面で歴代作品を総括した、シリーズの集大成的な内容となっている。

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**特徴・評価点~見込みのあるクソ虫ども~
***より洗練されたシステムによる戦略性の高いSLGバトル
-まずバトルの根幹を成すリンクシステムについて説明。前作である『4』から導入されたバトルシステムで''自操作ユニットの攻撃後(又は攻撃を受けた際)に、事前に設定した「リンク」に応じて他の味方ユニットが、APを消費して続けて攻撃を仕掛ける''というもの。過去のシリーズでは余りがちであったAPを有効活用するためのシステムであり無論敵にも適用されている為、所謂「単騎無双プレイ」に歯止めをかける役割もしている。
-リンク使用が前提の難易度となっているため、使用しない縛りプレイの難易度はかなり高い。
-『4』のリンク設定はインターミッションで専用メニューを開き、攻勢・守勢時のリンク行動をそれぞれ設定する必要がある等やや煩わしい面があったが、本作では各装備武器タイプに対応した''「リンクスキル」をセットするだけで発動する''ようになり使い勝手が向上した。
-''射線''と''流れ弾''の概念を導入。射線上に敵を巻き込めば流れ弾は当たるし、見方がいれば誤射となる。回避が起きるのはターゲットにされた機体のみなので、巻き込まれた機体は一切回避行動はしない。
--替わって、前作にあったマップの高低差や機体の向きによる命中率補正は廃止されている。また手装備武器の弾薬が無限になった。
-パイロット育成面では取得スキルに大きく関わる''「ジョブ」''の概念を導入。これにより各パイロットの個性が明確化し部隊編成の方針が立て易くなった。
-メインキャラクター以外にスカウト機能によって隊員を増やすことができ、中には特定の条件を踏まないとスカウトできないパイロットがいる。

***魅力的なキャラクター達と演出によるドラマティックなストーリー
-シリーズ時系列の縦軸を追いつつ第2次ハフマン紛争(=『1ST』時代)の負の遺産であるBD(バイオニューラル・デバイス)の派生技術「S型デバイス」を巡る悲劇を描いたストーリーは歴代でも高評価を得ている。
--その一方でアドベンチャーパートでの兵士や士官達のサブテキストは、シナリオライターの悪乗り全開のギャグテイストが満載。このコントラストも魅力の一つであり、ことテキスト面の面白さにおいてはFMシリーズ一とも評されている。
--本作のシナリオ担当は『[[ポポロクロイス物語II]]』などでも高評価を得ていた三枝浩行。その悲劇とギャグが交錯する独特のテイストは後に参加する『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』シリーズで更に爆発する事になる。
-シリーズの歴史と共に成長していく主人公・''ウォルター''をはじめ、幼馴染にして年下の鬼上司ヒロインの''リン''、よくあるタイプのコメディリリーフと思いきやストーリー半ばで悲惨な死を遂げる悪友''ランディ''(愛称・チョコバー)、かつての親友にして悲劇のライバル・''グレン''、絵に描いたような面白外人キャラ・''エドワード''、飄々としながらもその内に暗くも熱い情念を秘めたヒゲダルマこと''へクター''など物語を彩るキャラクター達もバラエティ豊かでかつ魅力的。
--特にリンは作中のツン・デレ落差の激しさが多くのプレイヤーの心を射止め''「FMシリーズ一の萌えヒロイン」''とも評され、彼女がしきりに口にする''「クソ虫」''と言うフレーズは一時期ファンの間で流行した。
--アドベンチャーパートに登場するスカウト対象の兵士達も個性派揃い。ボイスが無い分テキスト面で主張しまくってくれる。
-キャラクターボイスには森川智之・本田貴子・大川透・谷口節・立木文彦・銀河万丈などアニメや洋画吹き替えで活躍する著名声優を多数起用。所謂「棒読み」は一切存在しない。
-また、演出面では『3』と同じく、ストーリームービーデモの多くがリアルタイムポリゴン方式となっており、''セットアップした機体がそのままムービーに反映される''ようになっている。グラフィックの向上やパーツ数の増加に伴ってよく映えるようになり、シリアスなシーンに敢えてネタ的なセットアップを被せたり、2週目には強機体で違和感を出すという楽しみ方も可能に。

***サバイバルシミュレーター
-本作のもう一つの目玉と言っても過言ではないミニゲーム。(実際、発売後10年を経過してもプレイ報告が上がっている)プレイヤーはユニット1機のみを操作し、''ランダム生成によるフロア(ノーマル・50階、2周目ハード・100階)をアイテム(パーツや武器)の入ったコンテナを回収しながら、限られたリソースを活用してクリアしていく''と言う、所謂ローグライクゲームである。ゲームオーバー(ギブアップ)せずに全フロア踏破した際、''得たアイテムのうち数種類をそのまま本編に持ち帰るかRP(改造の際に必要なポイント)に変換するかを選択''して清算される。
--階層を増す毎に敵が強くなる上50階と100階には強力なボスユニットが待ち構えているため、得たアイテムで装備を整え、敵との戦いでパイロットレベルを上げるといったユニット強化も必要。敵からもコンテナを手に入れられるので、よりよいアイテムを手に入れるには積極的に戦っていく必要がある。
--配置コンテナの中身の善し悪しもあって運任せ思えるが、コンテナの性質、敵の挙動、独自の成長ルールなどサバイバルシミュレーターのローカルルールを把握していれば決して難しいものではない。また、中間セーブも条件つきで可能であり、それ以降のフロアではギブアップしても戦利品を持ち帰れるアイテムがランダムで手に入る救済措置も用意されている。
-ゲーム終盤においてRPを取得できる唯一の手段であり、ハードモードから潜れる51階以降はショップで購入できないレアなパーツ・武器が次々と登場するため機体カスタマイズを極めるためにはプレイ必須であるが、''「欲しいアイテムのためについ潜ってしまう」その中毒性の高さ''から本編以上に嵌るプレイヤーが続出した。
--後に携帯アプリで展開された外伝作品『フロントミッション2089-II』でも同様のシステムのシミュレーターが採用されており、その好評の程が伺える。

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**問題点~クソの役にも立たないクソ部隊のクソ虫ども~
***過去作品との設定の矛盾
-本作において最も挙げられる問題点である。前述の本作独自のストーリーコンセプトを目指した結果、''「その時代に存在しない筈の機体が登場する」''といった過去のシリーズ作品との設定的矛盾が生じる事となった。
--代表的な矛盾点としては''WAPメーカーの一社であるイグチ社製のWAP「強盾」が『1ST』の時代に既に登場している''というものがある。同機体の初出は『3』(『1ST』から約30年後)であり『1ST』の時点では機体はおろか、イグチ自体WAP開発に参入すらしていない筈であった。
--ただ、制作側もこのような矛盾はある程度自覚していたようで、発売間もない時期にスタッフの一人が''「開発の都合でやむをえなかった」''と弁明している。本作の初回限定版に強盾の3Dモデルの同梱が決まっていた事もあり登場機体の中から強盾を外せなかったという事情や、本作と同時期に展開していた『フロントミッションオンライン』との並行開発で人員やスケジュールを満足に割けない状況での制作等といった制作上での悪条件が重なった結果とも言える。
--また本作にはスカウト可能なパイロットとして前作『4』の主人公・ダリルが登場するが、彼を部隊に加えても作中で語られる『4』のストーリーに変化が起こっていない事からプレイヤーの中には本作をパラレルワールドとして割り切る向きもある。
---ちなみに彼のみパイロット詰所でも固有のセリフを話し、ステータス画面のグラフィックも異なる他、サバイバルシミュレーターで彼を選択すると初期武器が変更されるフィーチャーも存在する。

***アリーナモードの問題
-本作のアリーナは試合中はプレイヤーが介入できないAI戦闘仕様である。''「EMPバックパックを装備していると、使用武器を設定していてもバックパックしか使わなくなる」''などAIがひたすらアホ。3対3の対戦などは最早金を賭ける所ではなくなる。
--ただし、これを逆手に取った資金稼ぎ方法も存在する。
-歴代作品のキャラが対戦用キャラとして登場するという趣向が盛り込まれたが、当時のキャライラストを採用せず新規描き起こしだった上「キャラがどれも似ていない」と不評であった。名前だけで楽しもう。
--『1ST』~『3』までのキャラデザインは外注イラストレーター(順に天野喜孝、末弥純、山田章博)の起用であり、当時のグラフィックを使うと各デザイナーへの使用料の発生に対するコストダウン策とも考えられる。なお『4』以降のキャラデザインは同社社員である直良祐佑。

***旧作ファンとの埋まらぬ溝
-『4』から続く課題であるが旧作からプレイヤーの中には「リンク前提バランスなので敵が固い」「攻めがちまちましていて爽快感に欠ける」等といった理由でリンクシステムそのものに難色を示す向きも少なくない。『3』~『4』間でのシリーズ中断の間でシステムを大幅刷新したが故のプレイヤー間の溝と言える。
--『4』以降MAPが広大になり、その分サクサク進められないという声もある。
-ジョブによって習得できるスキルが決まっており、適性ジョブでなければ覚えられないスキルもあるため、『4』以前のような自由度がなくなったと見る向きもある。

***装備の編重
-シリーズ通しての問題だが、結局は同じ装備になってしまい、アレンジを加えようとすると難易度が格段に上がる。
--支援バックパックの使いづらさ。
--EMP系統の使いづらさ。
--オートリペアの強さ
--シールドの不便さ

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**総評
-一部に旧作ファンの不満を生むも、シリーズ中でも良質のストーリーと適度な難易度により現在ではフロントミッション入門編としては最適の1作として認識されている。またプロデューサーの土田俊郎は後のゲーム雑誌インタビューで「本作から女性ファンが増えた」とも語っている。
-なお、海外版制作はフォースの北米版のセールスが振るわなかったために見送られ本作はFMシリーズでは唯一海外版がリリースされていない。
--日本版を買った海外プレイヤーにも本作の評価は概ね好評で移植希望の声も少なくない。

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