*Life Is Strange 【らいふ いず すとれんじ】 |ジャンル|アドベンチャーゲーム|&amazon(B0194BFW3A)| |対応機種|Windows Vista~8.1&br;プレイステーション4&br;プレイステーション3&br;XboxOne&br;Xbox360&br;(プレイステーション4版ではパッケージ販売あり、それ以外はDL版のみ)|~| |発売元|スクウェア・エニックス|~| |開発元|DONTNOD|~| |発売日|【Win】2015年1月30日&br;【PS4/PS3】2016年3月3日|~| |定価|【Win】1,980円((全エピソード購入時の価格。))&br;【PS4/PS3】4,800円(税8%込)|~| |レーティング|CERO:D(17才以上対象)|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| **概要 アメリカの片田舎を舞台に、ひょんなことからタイムリープの力を手に入れた少女マックスが、親友のクロエと一緒に街に隠された秘密を探っていく…という、DONTNOD社(フランス)の製作による探索型アドベンチャーゲーム。 いわゆる「インタラクティブムービー(プレイする映画)」と呼ばれる系統の作品の一つであり、3Dのムービーシーンと3Dのキャラ操作シーンが完全にシームレスに継続されている。日本語ローカライズは非常に丁寧に作られており、字幕だけでなく吹き替えにも対応している。 海外で発売された時にはエピソード分割形式として数ヶ月おきに新しいエピソードが配信されていく形式だったが、日本語版では完結までの全5エピソードセットで販売された。~ 英語版が先行販売されていたWin版はPS4/PS3版発売と同時に無料DLCで日本語が追加された。Xbox2機種は国内未発売。 **ストーリー マックスは写真家を目指す19歳の女学生。今までは家族とともにシアトルに住んでいたが、進学のためについ最近になって生まれ故郷の田舎町「アルカディア・ベイ」へと帰ってきて一人暮らしをしている。~ 最初は新生活に胸を膨らませていたマックスだったが、スクールカーストの洗礼を受けて孤立化を深めていき、鬱屈する毎日の中でやる気を失いかけていた。 そんなある日、授業の最中に巨大な竜巻が街を破壊する夢を見る。そのあとの放課後、トイレの中でクラスメートの男子がどこかから連れてきていた女子を拳銃で撃ち殺すというシーンを目撃。パニックになった瞬間、マックスは突然自分が教室に戻ってさっきまで受けていた授業をもう一度聞いていることに気づく。何と、マックスはどういうわけか「数分間だけ時間を戻す」というタイムリープの力に目覚めていた。 その力を使ってトイレで殺されるはずだった少女の命を救ったのだが、その少女はマックスの幼馴染だったクロエだった。~ マックスがタイムリープの力を持つこと、その力で自分を救ってくれたことを聞かされたクロエは、その力を使って自分がやることの手伝いをして欲しいと言ってくる。~ クロエのやりたいこととは、親友であるレイチェルの捜索。軽い探偵ごっこのつもりでその話に乗ったマックスだったが、次第にこの田舎町が隠し続けている暗部に触れることになる。 **システム -時間の巻き戻し --いついかなる時でも、タイムリープ能力を使って「少し前の状況」に戻ることができる。 --時間の巻き戻しはRトリガーを押しっぱなしにすることで行われる。押している間は周囲の光景が高速で逆回し再生されていくので、時間の逆流を止めたいところでトリガーを放すと、その状況から「やり直し」になる。 --本作は映画的なシーン単位で物語が構成されており、例えば「食事のシーン」や「車で移動しているシーン」など。そして巻き戻し能力でも無限に前の場面に戻れる訳ではなく、「そのシーンが始まった時」より前には戻れない。 --時間を巻き戻しても「マックスが今立っている場所」は変わらない。それを利用することでいわゆる瞬間移動に近いことが可能。 --また、マックスが入手したアイテムは、それを入手するより前に時間を巻き戻しても消えない。これの活用もゲームクリアのために必須なことである。 -マックスの日記 --本作の操作キャラクターであるマックスは独自のキャラクターでありプレイヤーの分身ではない。マックスはプレイヤーにも秘密を隠していることがあり、そういうことを知るためにプレイヤーはいつでもマックスの日記を見ることができる。 --巻き戻しによって歴史改変が起こることがある。何が改変されたかは「プレイヤーが操作しているマックス」もわからないのだが、日記は「歴史改変の影響を受けたマックス」がつけているので、日記を見返すことで初めて改変事象が何なのかを知ることがある。 --さらに日記にはご親切にも「これから何をすべきか」がスケジュール帳の形で書かれているので、ヒント機能にもなっている。 **評価点 -シンプルな操作 --基本的な操作方法は主人公のマックスをアナログスティックで動かして気になるところの前に立てば「見る」「話す」などの状況に対応したコマンドが出るというクラシカルなもので、ジャンプしたり銃を撃ったりといったアクション要素は皆無。 ---ただ「誰かに見つからないように動け」といった行動を要求されるときはある。 --基本操作が限定されているからこそ、「時間の巻き戻し」をどのタイミングで活用するかという判断でゲーム性を生み出している --本作のように映画的な演出を意識した探索型AVG(いわゆる「インタラクティブムービー」と呼ばれるゲーム)では、プレイヤーがストーリーに介入できる手段にクイックタイムイベント(以下QTE)を用いるのが定番だが、本作にはQTEは一切ない。QTEは物語への没入感がそがれるから苦手という人でも十分に楽しめるだろう。 -「アメリカの高校を舞台にした青春ドラマ(ゾンビなし)」 --アメリカの学園青春モノはTVドラマでは日本でもおなじみの分野だが、ゲームの世界ではなぜかほとんど扱われていなかった。その希少性だけでも一見の価値はあるだろう。 --登場キャラクターたちはストーリーに直接絡まない脇役も細かい設定がされていて、話したり絡んだりするだけでも学園モノの雰囲気が味わえる。 ---各キャラには好感度的なフラグがあり、マックスがどういう形でクラスメートと接してきたかで後々の彼ら彼女らの言動に変化が出るという、学園モノのゲームでは定番のギミックもある。 --メインキャラクターであるマックスとクロエの友情ガールズストーリーは秀逸の出来。 ---「これなんて百合ゲーだよ」という揶揄は日本だからでなく原語版の時点で言われている。 --学内派閥やスクールカースト、いじめ、ドラッグ、自殺などアメリカのリアルな学校での問題も数多く盛り込まれている。 ---ただし、あくまで全年齢対象のジュブナイル作品なので、表現としては直接的ではなく暗喩的になっている。なお、日本語化の際に規制されたのは壁のラクガキの卑猥な図柄が一部差し替えられた程度で、直接的な表現を避けているのは原語版でも同じようなものである。 **賛否両論点 -ジャンルについて --本作はあくまで「アメリカの高校を舞台にした青春ドラマ(ゾンビなし)」を描く作品である。タイムリープのSF要素や、行方不明のレイチェルを探すという探偵モノ要素はその「青春ドラマ」を盛り上げる重要なスパイスであっても、ストーリー上のメインディッシュとなる要素ではない。 --そのため、SFや推理モノとしての盛り上がりを過剰に期待してゲームをプレイすると、多少の消化不良感が出てくることもある。 -シナリオの展開が基本的に一つしかない --どういうプレイをしようが大きな物語の流れは変わらないが、マックスの選択や時間の巻き戻しによって様々な登場人物が影響を受け、マックスへの反応が変化していく。 --一応、エンディングは二種類あるのだが、これは最終章であるエピソード5の終盤での選択によってのみ分岐し、それまでのプレイ内容は影響しない。 --本作は制作スタッフ陣が、様々なシナリオを用意してバラエティ豊かな展開にするよりも、一つのしっかりしたテーマを届けたかった、という旨を各種インタビューで語っており、ルート分岐やマルチエンディングの要素が薄いのは意図的な仕様である。しかし、せっかくの時間改変ものなのだから、それまでのプレイ内容を踏まえてシナリオやエンディングがもっと大きく変化していくゲームであってほしかったという声もある。 -コストパフォーマンスについて --この作品はエンディングまで10~15時間程度で終わり、周回要素もほぼなく、トロフィー収集もわりとあっさりできる。そのため、価格帯に対するコストパフォーマンスが悪いという意見も聞かれる。 --しかし、実は北米版ではダウンロード専売タイトルで、エピソード1つにつき4.99ドル,全エピソードのセットが19.99ドルという定価設定であった。そのため、実際は価格帯にマッチしたボリュームの作品なのである。日本語版が高くなっているのは、丁寧なローカライズの裏返しでもある。 ---なお、SteamでWin版をダウンロード購入した場合は北米単価を元にした価格(1980円)で買えるうえに、プレイステーション版と同じ日本語環境が無料で提供されたりもするのだが… そのあたりも賛否両論点になっていたりする。 **総評 時間の「巻き戻し」をプレイヤーに実際に体感させるという、その一点を中核にして、シンプルな操作性でストレスの少ないストーリー体験を実現させた秀作。~ 探索型アドベンチャーゲームとしては難易度は高くなく、誰でもプレイできる。 プレイ時間は10~15時間で周回要素もないのでボリューム感のある大作というわけではないのだが、それこそ「プレイする映画」の感覚で週末に浸ってみるのもよいのではないだろうか。