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ライフ イズ ストレンジ - (2017/09/01 (金) 17:17:44) のソース

*Life is Strange
【らいふ いず すとれんじ】
|ジャンル|アドベンチャーゲーム|&amazon(B0194BFW3A)|
|対応機種|Windows Vista~8.1(Steam)&br;プレイステーション4&br;プレイステーション3&br;XboxOne&br;Xbox360&br;(プレイステーション4以外はDL版のみ)|~|
|発売元|スクウェア・エニックス|~|
|開発元|DONTNOD|~|
|発売日|【Win】2015年1月30日&br;【PS4/PS3】2016年3月3日|~|
|定価|【Win】エピソード1のみ:498円 → 無料&br;全エピソードパック:1,980円&br;【PS4/PS3】4,800円(税8%込)|~|
|レーティング|CERO:D(17才以上対象)|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|
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#contents(fromhere)
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**概要
アメリカの片田舎を舞台に、不意に「時間を巻き戻す」力を手に入れた少女マックスが、親友のクロエと一緒に街に隠された秘密を探っていく…という、DONTNOD社(フランス)の製作による探索型アドベンチャーゲーム。

いわゆる「インタラクティブムービー(プレイする映画)」と呼ばれる系統の作品の一つであり、3Dのムービーシーンと3Dのキャラ操作シーンが完全にシームレスに継続されている。日本語ローカライズは非常に丁寧に作られており、字幕だけでなく吹き替えにも対応している。

海外で発売された時にはエピソード分割形式として数ヶ月おきに新しいエピソードが配信されていく形式だったが、日本語版では完結までの全5エピソードセットで販売された。~
英語版が先行販売されていたWin版はPS4/PS3版発売と同時に無料の日本語DLCが追加配信され、その後2016年7月22日よりエピソード1のみ無料配信となり、バラ売りが廃止され全エピソードセット販売のみとなった。Xbox2機種は国内未発売。

**ストーリー
マックスは写真家を目指す19歳の女学生。今までは家族とともにシアトルに住んでいたが、進学のためについ最近になって生まれ故郷の田舎町「アルカディア・ベイ」へと帰ってきて一人暮らしをしている。~
最初は新生活に胸を膨らませていたマックスだったが、スクールカーストの洗礼を受けて孤立化を深めていき、鬱屈する毎日の中でやる気を失いかけていた。

そんなある日、授業の最中に巨大な竜巻が街を破壊する夢を見る。そのあとの放課後、トイレの中でクラスメートの男子がどこかから連れてきていた女子を拳銃で撃ち殺すというシーンを目撃。パニックになった瞬間、マックスは突然自分が教室に戻ってさっきまで受けていた授業をもう一度聞いていることに気づく。何と、マックスはどういうわけか「数分間だけ時間を巻き戻す」力に目覚めていた。

その力を使ってトイレで殺されるはずだった少女の命を救ったのだが、その少女はマックスの幼馴染だったクロエだった。~
マックスが時間操作の力を持つこと、その力で自分を救ってくれたことを聞かされたクロエは、その力を使って自分がやることの手伝いをして欲しいと言ってくる。~
クロエのやりたいこととは、親友であるレイチェルの捜索。軽い探偵ごっこのつもりでその話に乗ったマックスだったが、次第にこの田舎町が隠し続けている暗部に触れることになる。

**システム
-時間の巻き戻し
--自由に動ける探索パートであれば、「時間を巻き戻す」ことで、マックス本人以外の状況を少し前のものに戻すことができる。
--時間の巻き戻しはRトリガーを押しっぱなしにすることで行われる。押している間は周囲の光景が高速で逆回し再生されていくので、時間の逆流を止めたいところでトリガーを放すと、その状況から「やり直し」になる。
--時間を巻き戻しても「マックスが今立っている場所」は変わらない。目標地点に移動してから巻き戻すことで、周囲に対しては瞬間移動やテレポートと同じ結果になる。
---警報付きの扉を開け、扉の向こうに移動してから、警報が作動する前の時間に巻き戻して安全に侵入を果たす、といった使い方がある。
--また、マックスが入手した情報やアイテムは、それらを入手する前まで時間を巻き戻しても保持される。この仕様を利用するシーンも多い。
--落下物の下敷きになりかける、追跡者に発見される、同行しているキーパーソンが死ぬなどの致命的な状況に陥ると、画面がモノクロ表示で停止し、巻き戻し以外の操作はできなくなる。
---このため、ゲームオーバーはない。
--ゲーム上の制限はあり、シーンをまたいでの巻き戻しは不可能。
-タイムリープ
--ストーリーを進めると、写真を媒介として、その写真が撮られた時空に戻る能力が発現する。実行できるシーンは決まっており、任意に使うことはできない。
--「巻き戻し」では打開できない状況を変えるためのストーリーギミックとして使われている。
-マックスの日記
--本作の操作キャラクターであるマックスは独自のキャラクターでありプレイヤーの分身ではない。マックスはプレイヤーにも秘密を隠していることがあり、そういうことを知るためにプレイヤーはいつでもマックスの日記を見ることができる。
--巻き戻しによって歴史改変が起こることがある。何が改変されたかは「プレイヤーが操作しているマックス」もわからないのだが、日記は「歴史改変の影響を受けたマックス」がつけているので、日記を見返すことで初めて改変事象が何なのかを知ることがある。
--さらに日記には、ヒント機能として「これから何をすべきか」が書かれた付箋が添付される。

**評価点
-シンプルな操作
--基本的な操作方法は主人公のマックスをアナログスティックで動かして気になるところの前に立てば「見る」「話す」などの状況に対応したコマンドが出るというクラシカルなもので、ジャンプしたり銃を撃ったりといったアクション要素は皆無。
---ただ「誰かに見つからないように動け」といった行動を要求されるときはある。
--基本操作が限定されているからこそ、「時間の巻き戻し」をどのタイミングで活用するかという判断でゲーム性を生み出している
--本作のように映画的な演出を意識した探索型AVG(いわゆる「インタラクティブムービー」と呼ばれるゲーム)では、プレイヤーがストーリーに介入できる手段にクイックタイムイベント(以下QTE)を用いるのが定番だが、本作にはQTEは一切ない。QTEは物語への没入感がそがれるから苦手という人でも十分に楽しめるだろう。
-「アメリカの高校を舞台にした青春ドラマ(ゾンビなし)」
--アメリカの学園青春モノはTVドラマでは日本でもおなじみの分野だが、ゲームの世界ではなぜかほとんど扱われていなかった。その希少性だけでも一見の価値はあるだろう。
--登場キャラクターたちはストーリーに直接絡まない脇役も細かい設定がされていて、話したり絡んだりするだけでも学園モノの雰囲気が味わえる。
---各キャラには好感度的なフラグがあり、マックスがどういう形でクラスメートと接してきたかで後々の彼ら彼女らの言動に変化が出るという、学園モノのゲームでは定番のギミックもある。
--メインキャラクターであるマックスとクロエの友情ガールズストーリーは秀逸の出来。
---「これなんて百合ゲーだよ」という揶揄は日本だからでなく原語版の時点で言われている。
---「百合」発言は、マックスとのあまりの親密さに照れたクロエからも飛び出すほど。
--学内派閥やスクールカースト、いじめ、ドラッグとセックス、自殺などの、アメリカの学校における現実の問題も数多く盛り込まれている。
---ただし、全年齢対象のジュブナイル作品なので、ゴアや性的な行為の直接表現はない。日本語化の際の規制は、壁のラクガキの卑猥な図柄が一部差し替えられた程度。英語でのスラングも、性的なものについては比較的おとなしい。
-実在アート等の小ネタ
--写真家、画家、ミュージシャンといった実在アーティストの名前や作品が会話に登場したり、壁のポスターなどの小物に実在アートのオマージュがあったりする。有名どころも多く、現実世界の住人であるプレイヤーの感情移入を深めてくれる。
--日本に関する言及が多く、「AKIRA」や「ファイナルファンタジー」、「バトルロワイヤル」、「戦国自衛隊」といった実在の邦画の名前が飛び出したりする。日本人プレイヤーをにやりとさせてくれる要素である。
---特に「ニンジャ」というワードはスタッフの気に入りのようで、作中で何度も使われる。

**賛否両論点
-ジャンルについて
--本作はあくまで「アメリカの高校を舞台にした青春ドラマ(ゾンビなし)」を描く作品である。タイムリープのSF要素や、行方不明のレイチェルを探すという探偵モノ要素はその「青春ドラマ」を盛り上げる重要なスパイスであっても、ストーリー上のメインディッシュとなる要素ではない。
--そのため、SFや推理モノとしての盛り上がりを過剰に期待してゲームをプレイすると、多少の消化不良感が出てくることもある。

-シナリオの展開が基本的に一つしかない
--マックスの選択や時間の巻き戻しによって様々な登場人物が影響を受け、その人物との信頼関係のような枝葉の部分では差が生まれるが、物語の大きな流れは変わらない。どんな事件が起き、どんな流れで真相が明らかになるかは固定されており、エンディングはそれまでに何をしていようが2種類で固定。
--制作スタッフ陣が、様々なシナリオを用意してバラエティ豊かな展開にするよりも、一つのしっかりしたテーマを届けたかった、という旨を各種インタビューで語っており、ルート分岐やマルチエンディングの要素が薄いのは意図的な仕様である。しかし、せっかくの時間改変ものなのだから、それまでのプレイ内容を踏まえてシナリオやエンディングがもっと大きく変化していくゲームであってほしかったという声もある。

-グラフィック
--発売時期を考えると、質が高いとは言えない。
--人物モデルは人形っぽさが残るレベルで、特に顔は、光の加減や角度によっては不気味に見えることもある。髪がなびくなどの表現にも至っていない。
---人物の表情は動くのだが、主人公マックスを筆頭に、目線を動かすと不穏な印象の三白眼になってしまうキャラが複数いる。顔のアップが多いため惜しい。
---なお、マックスの顔モデルには目の下に赤いシャドウが付けられているが、それが濃いため泣き腫らしたような顔に見えるシーンが多い。
--3Dモデルが最高級のものではないという程度で、画面全体で見れば調和が取れており、極端に質が悪いと言うほどではないのだが。

-クロエのキャラクター
--主人公の親友のクロエはやんちゃで、思春期真っ最中な少女で、喜怒哀楽が激しいキャラである。
--その為マックスに悪態をついたり、未来を見てきたマックスの言う事を聞かないなどプレイヤーを苛立たせるシーンが多い。クロエの説得という選択も多い。

-コストパフォーマンスについて
--この作品はエンディングまで10~15時間程度で終わり、周回要素もほぼなく、トロフィー収集もわりとあっさりできる。そのため、価格帯に対するコストパフォーマンスが悪いという意見も聞かれる。
--しかし、実は北米版ではダウンロード専売タイトルで、エピソード1つにつき4.99ドル,全エピソードのセットが19.99ドルという定価設定であった。そのため、実際は価格帯にマッチしたボリュームの作品なのである。日本語版が高くなっているのは、丁寧なローカライズの裏返しでもある。
---なお、SteamでWin版をダウンロード購入した場合は北米単価を元にした価格(1980円)で買えるうえに、プレイステーション版と同じ日本語環境が無料で提供されたりもするのだが…(さらにSteamでは頻繁にセールを行っているためこれより安く買える機会もある) そのあたりも賛否両論点になっていたりする。

-和文フォントが丸文字風
--文字表示を日本語にすると、全てではないがフォントが丸文字風のものになる。主人公が女子学生ということでフォント選択の意図は分かるものの、グラフィックやストーリーにマッチしているかは意見の分かれるところ。
--言語環境を英語にすると、マックスを含む大半の登場人物がかなり下品なスラングや罵言を連発する。日本語音声と字幕は和らげた表現になっているが、英語音声+日本語字幕でプレイしていると、フォントへの違和感が強まるかも知れない。

-(Windows版のみ)マウス操作がやや直感的ではない
--本作はキーボード&マウスでも操作できるのだが、コントローラでの操作を推奨しているためか、マウス操作があまり最適化されていない。
--例として、物を調べるのにいちいち「左クリックで物を選び(視点固定)→コマンドの文字(見る・取る、等)へカーソルをドラッグして選択する」という形式。操作に関する詳しい説明も特に無いため、一部では「マウス操作だとアイテムが調べられない」等と戸惑うケースも散見された。
--なお、Win版のゲームコントローラはXInput形式のみ対応しているため、対応したコントローラ(Xbox360コントローラ等)を用意するか、それが無い場合は変換ソフトが必要。

*問題点
-最終章とエンディング
--エンディングは2種類あるのだが、これは最終章であるエピソード5の終盤での選択によってのみ分岐するだけである、なのでキャラクターが死亡させようが、生かそうがエンディングは''それまでのプレイ内容は影響しない。((せいぜいクロエの好感度によってマックスがクロエにキスするかしないかが変わる程度))
--さらに、両エンディングは''どちらを選んでもハッピーエンドとは言えないもの''で、消化不良な感じも残る。
--前述の一つのストーリーを届けたかったという意図は分かる物の、キャラを死亡させない選択をするなど努力したプレイヤーにご褒美のような物がないのは残念な作りである。
--また、最終章はそれまでとかなり雰囲気が変わり、タイムリープ能力の乱用が急激に現実を悪化させ、悪夢のような精神世界に放り込まれるというサイコホラー調のものになる。クライマックスを盛り上げる手法として理解はできるが、ストーリーの辻褄が合わせづらく、唐突な展開ではある。
--このため、終盤を補完して真エンドにたどり着ける追加要素を望む声も大きい。

-時間操作能力の説明不足
--能力が使えるようになった原因などは解明されないままである。
--また、鼻血を出したり頭痛に襲われたりと、能力を使うことでマックスの体に強い負担が掛かる描写が繰り返されるが、作中で破綻することはない。

-巻き戻しに付随するバグ
--「巻き戻し」によりリアルタイムでイベントを遡るシステムであるせいか、変なタイミングで巻き戻すとイベントが妙な所で中断されることがあり、本来なら進めないはずの地形に嵌ってしまったり、イベントが進行しなくなってしまう場合がある。

**総評
時間の「巻き戻し」をプレイヤーに実際に体感させるという、その一点を中核にして、シンプルな操作性でストレスの少ないストーリー体験を実現させた秀作。~
探索型アドベンチャーゲームとしては難易度は高くなく、誰でもプレイできる。

プレイ時間は10~15時間で周回要素もないのでボリューム感のある大作というわけではないのだが、それこそ「プレイする映画」の感覚で週末に浸ってみるのもよいのではないだろうか。

**余談
-Win版で日本語DLCを適用すると、日本の多くのゲームの形式に合わせ、決定ボタンとキャンセルボタンの位置が元の英語版から逆転する。
--一応、ゲームフォルダの「\Life Is Strange\LifeIsStrangeGame\CookedPCConsoleFinal」内にあるファイル「TX_CERO_SF.upk」を削除かリネーム等で読み込ませないようにするとボタン配置が英語版と同じになる(ついでに副作用としてCERO用表現規制も解除されてしまう)。

-続編として『Life is Strange: Before the Storm』の英語版が2017年9月1日発売。日本版の発売は現在未定。