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伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠 - (2020/02/03 (月) 16:30:30) のソース

*伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠
【いせしまみすてりーあんない いつわりのくろしんじゅ】

|ジャンル|ファミコン風アドベンチャー|~|~|
|対応機種|Nintendo Switch(DL専売)&brプレイステーション4(DL専売) &br Windows(Steam)|~|~|
|発売元|フライハイワークス|~|~|
|開発元|ハッピーミール&brエスカドラ(PS4、Windows)|~|~|
|発売日|【Switch】2019年1月24日&br【PS4】2019年6月20日&br【Steam】2019年7月25日|~|~|
|定価|1,000円|~|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|~|
//配信専用でamazonに画像は無いため後日画像直接アップロードで対応予定です。
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#contents(fromhere)
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**概要
「ファミコン風アドベンチャー」という公式のジャンル名の通り、ファミコン時代のテキストアドベンチャーを再現したレトロ風ゲーム。~

特にキャラクターデザインは『[[北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ]]』のFC版と同じ荒井清和氏が担当している他、『オホーツクに消ゆ』や『[[ポートピア>ポートピア連続殺人事件]]』、『[[ファミコン探偵倶楽部>ファミコン探偵倶楽部シリーズ]]』などの往年のファミコン名作ADVのさまざまなネタを拾っており、それらが好きな人にはたまらないゲームとなっている。~

内容としては完全なオリジナルで、ファミコン時代の名作ADVに対するリスペクトを込めて作られたゲームである。

この記事では今作がオマージュしているオホーツクなどのいくつかの既存ゲームを「オマージュ元」と表記する。

**ストーリー
東京上野の公園で発見された名も無き変死体。~
事故と事件の両面から捜査が進む中、刑事であるアナタと後輩のケンはたった一つの遺留品から、黒真珠「蒼月」の疑惑へと辿り着く。~
だがそれは、伊勢志摩を舞台にした悲しい連続殺人事件の幕開けに過ぎなかった……。~
(ゲーム内収録の説明書のプロローグより)

**特徴
//頻繁な改行は控えて。文節がブツ切れになってモニターによっては非常に読み辛くなります。
-プレイヤー(主人公)が「きけ」「しらべろ」「みせろ」などの命令を出し、それを後輩刑事のケンが実行して、その結果報告を返してくるので次の命令を繰り返すのが捜査の流れである。
--ただし、「ばしょいどう」「きけ」「しらべろ」などのコマンドの他に「サスペンス禁断のアイテム!?」(公式HPより)として~
スマホを使って捜査を進めることができる。~
ただしスマホと言っても連絡先を知っている相手に電話やSMSでやりとりする「れんらく」、証拠写真を撮りたい時に使う「カメラ」や、断片的な情報だけを得た時にそれを検索して調べる「けんさく」気分転換に遊びたい時に「ゲーム」などのあくまで選択肢の一つに過ぎず、それをやっても意味が無い時にスマホを使ってもケンに呆れられるだけである。
--「ゲーム」はミニゲームで遊んで気分転換するだけであり、いくらやっても捜査のヒントなどはもらえない。

-概要の通り、オホーツクなどのオマージュ元のゲームを2019年に新作として作ってみた、というのが売りの作品である。~
開発元社長の「できればROM化したい」との考えに基づき、ゲーム内のサウンドやドット絵はファミコン規格に則った上で厳密に表現されている。
--ただしすべてがファミコン並というわけではなく、ファミコン当時の文字サイズを再現した'''ドットバイドット表示'''と、ドットバイドット表示では字が小さくて辛い人には専用の大フォントで文字を描いた'''拡大表示'''を自由に切り替えできる。
--Switch本体の+ボタンを押すとオプション項目が現れ、前述の文字表示などを切り替えできる上にオプションから取り扱い説明書を開くことができる。

-この説明書もあえてファミコン時代を再現しようとしており、表示の体裁がファミコンの紙説明書のそれになっている。~
更には「''ダウンロード専売''」であり、ソフト内部に収められた「''電子説明書''」でありながら
--「この取扱説明書は大切に保管してください」「故障の原因になるので端子部に指を触れないでください」~
「ソフト交換をする際は電源を必ずお切りください」…などの文言が踊っている。
--さらに「大事な情報はここにメモれ」とメモ帖として使えるページもある。''電子説明書なので書き込みはできない''のだが。((もちろん電子説明書であってもプレイヤーが紙に印刷すればそういう用法もできる上に、公式が限定グッズとして電子説明書を印刷して紙の説明書にできるキットを出してはいる。))
//複数機種でのリリースにより、任天堂スイッチ専用ではなくなったので文章を一部変更

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**評価点
-昔懐かしい雰囲気の徹底的な再現
--ファミコン時代のADVの雰囲気の再現にはこだわっておりそれらを髣髴とさせるシナリオ構成や小ネタをちりばめている。
---「同じ反応しか返さなくなるまでコマンド総当たり」「3D迷路」「温泉で美女の肌を見るための駆け引き」など、お約束要素がきっちり入っている。
--旅情サスペンス2時間ドラマをイメージして作ったと公式が発言しているが、シナリオの流れも近い。

-プレイ時間はエンディングまで長く見積もっても4、5時間程度だが価格を考えれば相応と言える。


**賛否両論点
//-良くも悪くもファミコン時代を再現している
//--ゲーム中にニンテンドースイッチの+ボタンを押すとオプションや説明書が出るのだが、''ゲーム内ではそれを教える情報は出ない。''しかも公式が「ファミコンには+ボタンはないので、当時の雰囲気を壊さぬようゲーム中にそういう表記を入れなかった」という趣旨のコメントをしているため''あえて説明書等の出し方を入れなかった''ということになる。
//---ファミコンでいえばスタートボタンに当たる位置にあるのが+ボタンなので、適当に押して気が付くプレイヤーが大半と思われるが、当時の雰囲気の再現のために、ゲームを故意に不便にしているのである。
//故意に不便にしている点については問題点に重複しているためそちらへ移動。

-昔のファミコンゲームかつ当時の小学生向けと考えれば気にならないが、2019年に作られたいい年をした大人が遊ぶゲームとしてみると、リアリティの観点からツッコミどころが多い。
--主人公とケンは「上野で発見された謎の死体の身元確認のために伊勢志摩地方に捜査に来た東京の刑事」である。にもかかわらず伊勢志摩で捜査中に発見した第二、第三の死体についての捜査も''当然のようにそのまま行う''。~
東京の死体と伊勢の死体は関連があったのだが、それが確認できる前に当たり前のように主人公たちが調査し、「明日は〇〇に聞き込みをしよう」などの捜査の方針もほぼ二人だけで%%晩酌しながら%%行う。
---実際は東京の警察にも三重県警にもちゃんと連絡を通している描写があり勝手に捜査しているわけではないのだが、それにしても主人公たちのスタンドプレーがひどい。

#region(終盤のネタバレ)
-悪人に誘拐されたある人物を救うため、主人公とケンの二人は救出に向かうのだが、現地の警察に応援を頼める状況だったのに、地理に明るくない東京の刑事''二人だけで''向かっている。
--しかも現地に着いた瞬間にスマホの電池が切れて連絡不能になったが、そこで出直すでもなく公衆電話などから警察に連絡するでもなくそのまま少数で現場に潜入している。
//仮にここで最初から警官を大勢引き連れていれば事態の悪化を防げていた可能性があった。
//ゲーム展開上の流れなんだし、仮定の話をしてもしょうがない。
#endregion()
このように''今の視点でみれば''ツッコミどころが多い作品だが、オマージュ元も似たようなものなので当時を知るプレイヤーであれば受け入れられる余地はあるものの、新規プレイヤーからすれば白けてしまう可能性も無きにしも非ず。~
//ちなみにネタ元のオホーツクでは「被害者の身元がわからないため、死体の写真で聞き込みをする」というとんでもない行為を平然と行い、見せられた相手も突っ込まなかったのだが、本作では流石に登場キャラの大半から「なんてものを見せるんだ!」とツッコミが入るようになっている。

**問題点
-ストーリー分岐も無い一本道の物語
--当時のコマンド選択型ADVの再現なので当然といえば当然だが、コマンドを総当たりすれば簡単に解けてしまうというゲーム構造上の欠点はそのまま受け継がれている。
--また、自分で推理して正しい犯人やトリックを当てるゲーム性重視の作風ではなく、『[[ファミコン探偵倶楽部>ファミコン探偵倶楽部シリーズ]]』シリーズのように物語を読み進めていくタイプに属している。よってゲームのタイトルは「ミステリー案内」だが自分で考えて謎を解く要素はほぼゼロ。
---ストーリーも一本道で分岐することもなく、横道に逸れて珍しいメッセージを見ることもできるがそんなサブイベントも多くないため、淡々と物語を読み進めていくだけになりがち。
--それらはオマージュ元もほとんどの作品は同じようなものなのだが、オマージュ元にあった「『しらべろ』で画面上にカーソルを動かして何かがある位置を探してクリックして発見する謎解きギミック」は''今作には無い。''((厳密に言えばカーソルを動かして背景上で決定するイベントはあるのだが、特定のイベントのみのギミックであって謎解きには関わらない))なので数が少ない選択肢を総当たりするだけでエンディングまで進むため、迷路を考えても詰まる要因が無い。

-ファミコン時代の不便さまで律義に再現している。
--文章を読んでいくADVなのに文字表示速度を変更できなかったり、コマンドを選択したときのレスポンスが遅めになっていたりと、後述のスタートボタンの件もそうだが、UIやレスポンスの処理がわざとファミコンに寄せられている。既読文章の再確認なども不可能。
---ただし中断と再開はパスワードではなくセーブ&ロードがそこそこの速度でできる上に、最低限イライラせずに済む程度の遅さに調整されているので、昔のゲームの雰囲気を味わうつもりで遊ぶくらいのつもりであれば許容範囲ではある。
--上述の通り、Switch版では+ボタンを押すとオプションや説明書が出るのだが、''ゲーム内ではそれを教える情報は出ない。''~
しかも公式が「ファミコンには+ボタンはないので、当時の雰囲気を壊さぬようゲーム中にそういう表記を入れなかった」という趣旨のコメントをしているため''あえて説明書等の出し方を入れなかった''ということになる。
---ファミコンでいえばスタートボタンに当たる位置にあるのが+ボタンなので、適当に押して気が付くプレイヤーが大半と思われるが、当時の雰囲気の再現のために、ゲームを故意に不便にしているのである。~
前述の通り、ファミコンROMとの互換性を考慮しているため細かい所までに拘りぬきたいという志しは理解できるものだが、上述の処理速度なども含め、プレイヤーの快適性まで犠牲にするという姿勢については評価が分かれる。
//そこまで拘りたいのであれば、忠実再現優先か利便性優先かをオプション設定で選択できるようにすれば済む話しである。
//--インタビューで「黒真珠はファミコンとの互換を取ることにこだわり過ぎて非効率な処理をしていたことがあったが、次回作ではファミコン互換を目指しつつも開発効率を向上させたい」という趣旨の発言をしており、その勢いでプレイアビリティも向上できればよいのだが…。


-セーブが1箇所しかできない。
--こちらも意図的なものだそうだ。セーブを残したい場所を複数用意してどこで残すか葛藤する楽しみをさせたかったとのこと。

-TVモードやテーブルモードで遊ぶ場合、Joy-Conを2本持ちで設定していても、起動時に自動的に横持ちに変更されてしまう。
--2本持ちで遊びたい場合、起動後にHOMEメニューを呼び出して設定しなおす必要がある。
--このことに関する説明はないため、理解していないと思うように操作ができず戸惑う可能性がある。

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**総評
評価点・賛否両論点・問題点の内容のほとんどが「昔の名作を再現するためにこだわったこと」に起因しているためオマージュ元の作品に思い入れがあるかどうかで今作を楽しめるかが決まってしまう。~
現代のADV好きの視点でみれば一本道の物語を読んでいくだけのゲームと見られるのも仕方ない内容であり、その物語も突っ込みどころが多く、UIの面でもファミコン再現を拘るあまりに不便な点が存在している。

賛否あれどそれだけのこだわりを持って作られただけあって、古き良きファミコンADVの雰囲気はよくできている。言ってみれば『古き良き時代のADVの香りを懐かしむ「雰囲気ゲー」』とでも言えるだろうか。~
オマージュ元のゲームのような作品をもう一度遊んでみたいという欲求は%%価格分は%%答えてくれるので、当時のADVの作風のファンや、レトロ風テキストADVに興味のある人間は遊んでみても悪くないだろう。

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**余談
-[[オホーツクに消ゆ>北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ]]では堀井雄二たちが取材のために北海道両行へ行った逸話が有名だが、今作でもスタッフたちが伊勢志摩地方を巡ってロケハンしており、作中で主人公とケンがしている%%観光と食レポ%%捜査のリアリティに一役買っている。

-本作は2011年頃から開発内容が中止や練り直しを繰り返しており、スマホアプリ→3DS→Switchとハードも紆余曲折の上で現在の形で発売した。
--スマホアプリ時代は「肥後連環殺人 迷宮のブロードウェイ」という名前であったり、出雲地方を舞台にする案もあったのだが、前述のロケハンの際に肥後(熊本)や出雲(島根)よりは伊勢志摩地方の方が開発会社のある東京から近くて有利という理由で決まったそうである。

-ほぼ2、3人で開発しており開発資金の捻出のために他の仕事もしていたことからどんどん開発期間が延びてしまったという。
--「''こういうのはズルズル引きずるとロクなことにならない。支援するからさっくりと完成させるべきだ''」というフライハイワークスの黄社長の支援があって完成にこぎつけたとのこと。

-プロの歌手や声優の手によるテーマ曲が二曲収録されているが、前述の通りこのゲームはファミコンと同等の規格で作られているためゲーム内ではいわゆるファミコン音源で曲が流れるのみである。特定の操作でカラオケモードにすることもできる。
--ただし電子説明書を起動するとその中で''歌入りテーマ曲がしっかりと流れる''ので聞きたい方はそちらからどうぞ。

-作中に「(有)トライアンツ」と言うブラック企業が登場するが、''この会社は実在している''。ハッピーミールの関社長曰く、現実のトライアンツはゲーム内とは異なりホワイト企業らしい。主にスマホアプリの開発を手掛けている会社である。
--トライアンツは本作を開発したハッピーミールと同じ場所に事務所を構えており、その縁で友情出演が実現したようだ。

-2019年6月に続編製作の開発費を募るためのクラウドファンディングを開始し即日で目標額(300万)を達成、翌月に追加目的の「Switch版のパッケージ販売(500万)」も達成した。
--「秋田・男鹿ミステリー案内 凍える銀鈴花」というタイトルで2020年夏リリースを目指すらしい。今後の動向を待ちたい。

-2019年6月20日にはPS4版の配信が開始され、さらに開発元であるハッピーミールの関社長のTwitterにて、PC移植版が2019年7月25日にSteamにて配信されたことが報じられた。((当初は2019年7月23日の予定だったがフライハイワークス側のトラブルで延期された。))
--尚、PS4版、Windows版の移植は『R-Type Dimensions EX』(Switch/PS4/Steam)や『ロードランナー・レガシー』(Switch/Steam)などを手掛けたエスカドラが担当している。
--続いて2019年10月25日にDMM GAMESでも配信が開始された。(但し、PCのみでスマホ・タブレットには非対応)