抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか?

【ぬきげーみたいなしまにすんでるわたしはどうすりゃいいですか】

ジャンル ビッチなんかに絶対負けたりしないスタイリッシュ逃亡&バトルADV

対応機種 Windows 7/8.1/10
発売・開発元 Qruppo
発売日 【限定版】2018年7月27日
【通常版】2018年8月31日
定価 【限定版】9,800円(税別)
【通常版】8,800円(税別)
配信 FANZA:2018年10月5日/8,580円
レーティング アダルトゲーム
判定 良作
ポイント タイトル通り抜きゲーみたいな設定・世界観
シナリオ面は意外と真面目&シリアス
タイトルから誤解されやすいが「抜きゲー」ではない
Qruppo作品
ぬきたし / ぬきたし2 / ヘンタイ・プリズン


概要

アダルトゲームメーカーQruppoの処女作。
タイトルの「貧乳」は「わたし」と読む。公式の略称は『ぬきたし』。

タイトルにある「抜きゲー」とはエロに比重を置いたエロゲーのこと。
このジャンルにおいては「極端な男女比」「エロパワーで何でも解決」といったエロシーンに持ち込むためのぶっ飛んだ設定等も多い。


ストーリー

青藍島…ここは通称『ドスケベ条例』によって変態的交尾が許可されている楽園(パラダイス)。
そこに転校してきた主人公『橘淳之介(たちばなじゅんのすけ)』は、誇り高き童貞であると同時に、骨の髄まで処女厨であった。

だがドスケベ条例は彼の通うことになった水乃月学園も例外でなく、「セックスしないことは校則違反!そして同時に条例違反!即逮捕・即尺八・即プレイ!」
規律を絶対遵守させる生徒会と風紀委員会、通称"SS"の魔の手から、淳之介は逃れられるのか……!?

仲間と共に童貞を死守せよ!淳之介の戦いが今はじまる!

(公式サイトより引用)


SHOの恐怖による支配、そして同調圧力の蔓延する青藍島。
しかしそこにもたしかに、セックスに恐怖する人間たちは存在していた。
同性が好きで、兄以外の異性を受け入れられない妹。
ビッチだと勘違いされているギャル同級生。
ロリだと思われてセックスの相手にもされない先輩。
自分の体型を晒すことに抵抗のある少女。
そして自分のある一部にコンプレックスを持った少年。

そんな少女たちを主人公―橘淳之介は密かに糾合していき、
反交尾勢力を標榜する秘密結社"NLNS"を結成する。

彼らに基地を提供し、資金を渡す"謎の老人"が出した条件はただ一つ。
「とある少女を見つけ、保護すること」
その少女こそが、青藍島、ドスケベ条例を崩壊させるための鍵だという―

ならば、やるべきことはひとつ。SHOを欺いて貞操を守り抜き、件の少女を探し出す。そして―

「―この俺が、ドスケベ条例をぶっ潰す!」

(公式サイトより引用)


特徴

  • 基本的なシステムはよくあるノベルゲームとほぼ同じ。
    • 序盤から中盤にかけて、それぞれのヒロインのルート分岐の選択肢が一箇所あるが、それ以外は一本道。

登場人物

  • 橘淳之介
    • 本作の主人公。誇り高き童貞を自負した処女厨であり、過去の様々な経験から非処女を嫌っている。
  • 橘麻沙音
    • 主人公の妹。同性が好きであり、中でもギャルが好み。
  • 渡会ヒナミ
    • 外見がロリにしか見えないせいで、周りから全く見向きもされない少女。背が低いため、常にパイプ椅子を持ち歩いている。
  • 片桐奈々瀬
    • ギャルっぽい見た目から学園ではビッチだと思われており、それを利用してエッチから逃げ続けている。
  • 畔美岬
    • 存在感の薄い文学少女。清楚っぽい印象だが、実は登場人物の中でも屈指のボケキャラ。

評価点

  • ぶっ飛んだ世界観・設定
    • 清々しいほど、エロに全振りしたといっても過言ではないほど、ドスケベな世界観は、本作の魅力の一つ。
    • 敵対勢力がエッチを推奨しているという設定でそこら中にドスケベのためのアダルトグッズが設置・販売されている。
      • どこでも尻壁プレイが楽しめる「尻壁オブジェ」、体に文字を書くとその場所が性的に欲情する「催淫ペン」といった謎技術で作られたアダルトグッズもいくつか登場する。
    • 主人公たちが使う武器やアイテムは敵の持ち物検査を欺くためにアダルトグッズを催しているという設定になっている。冒頭でバイブ片手に戦闘が行われるシーンは説明なしの初見では困惑必須であろう。
    • 上記のような常にエロと隣り合わせな世界観・設定なのでエッチシーンへの導入が非常にスムーズに感じられる。
      • 「日常生活の中にエロが入る」というより、「エロの中で日常生活が行われる」といった感じなので、いきなりエロいシーンに入っても違和感を感じさせない。世界観が強烈すぎて感覚がマヒしているともいえるが。
    • 他にも「ギロチンの刑」のシーンも語り草。
      • 設定上は「条例に違反した人物を強制的に性行為させる公開処刑」であり、これだけ聞くとかなり残酷な行為なのだが、股を広げた状態で縛られた女性の下に男性が寝そべって配置されているという絵面のせいでどう見てもギャグにしか見えない。いわゆるシリアスな笑いである。
  • ぶっ飛んでいる割には練られている設定面
    • 一見、何も考えずにエロに特化したような作風ではあるが、設定面は練られており、一定の説得力がある。これが本作を単なるバカゲー・抜きゲーに終わらせない魅力となっている。
    • 一例を挙げると、性病や妊娠の徹底的な対策が行われている、ドスケベ条例は過疎化した島を復興させるために作られたため支持を得ている、など。
    • ドスケベ条例はエッチな行為なら何でもよいというわけでもなく、危険な性行為は相手との合意が必要、条例対象年齢未満のロリやショタに手を出すのはご法度など、一定の良識があるものとなっている。近親同士のエッチはセーフらしいなど、疑問が残るところはあるが。
      • その一方で、身体的なコンプレックスによりエッチをしたくない人や同性愛者などのマイノリティーのことが考えられていないなど、同調圧力による迫害が起きている問題点も描写される。これらが主人公たちがドスケベ条例から逃げつつも戦う理由となっている。
    • ストーリーの後半で第三勢力としてヤクザが関わってくるが、その理由は青藍島のドスケベ条例のせいで本島の性産業に影響が出ており、ヤクザのシノギを妨害しているという説得力のあるもの。
  • 自重しないパロディネタ
    • パロディ元は2010年代の直近の作品から、昔ながらの有名作品、ネットスラングまで幅広いが、多くの日本人が知っている著名な作品が元ネタである場合が殆ど。
    • チャプターごとのタイトルは大抵は何かしらのパロディネタとなっている。
    • ただし、世界観に準じてパロディネタの多くは下ネタに関連付けられてしまっている(後述)。
  • 意外とシリアスなシナリオ
    • 公式サイトの情報やタイトルからして、馬鹿馬鹿しいノリの抜きゲーのように思うかもしれないが、シナリオ面では意外とシリアスな展開が繰り広げられる。
    • 上記の通り設定面はかなりぶっ飛んでいるため、ギャグシーンとシリアスシーンの落差も含めて、非常に濃いストーリーが展開されていくことになる。
    • とあるヒロインのルートでは性産業の負の側面が強調され、ある人物の過去描写もあって、バカゲーの皮を被った泣きゲーと評されることも。

賛否両論点

  • 下ネタ・淫語を含むパワーワードの連発
    • 上記のような設定のエロゲなので当然……と言ってしまえばそれまでかもしれないが、本作には下ネタや淫語がかなり多い。
    • 中でも顕著なのがモブキャラたちのボイス付きの実況や淫語で、「島では積極的なエッチが推奨されている」という設定上、ストーリーを進める上で、モブキャラたちがエッチをしている場面にしょっちゅう出くわすことになる。
      • その言い回しの中には下品に改変したパロディネタや直球な下ネタなども多く、人を選ぶ。
    • 「パワーワード」として笑える人ならばとことん笑えるが、あまりに下ネタが多いため、下ネタに耐性がない人の場合はうんざりしてくる可能性も。
    • 18禁のアダルトゲームだからこそできる芸当と言えるし、本作の魅力の一つにもなってはいるが、下ネタである以上一概に評価点とも問題点とも決め難い。

問題点

  • 若干ご都合主義な部分も
    • ネタバレになるため詳細は省くが、シリアスなバトル部分(特に終盤)のシナリオはお世辞にも練られているとは言い難く、若干ご都合主義的な感じで勝利してしまうことも。
      • 特にとあるヒロインのルートはバカゲーに片足を突っ込んでいるような流れで話が進んでいくため、勢い重視の「深く考えたら負け」的なシナリオとなっている。
  • シナリオ全体に統一感がない
    • 好感度でヒロインが決まりストーリーが分岐していくシンプルなシステムだがヒロインごとの物語の温度みたいなものが違いすぎる。これをシリアスとバカゲーを共存していると捉えるなら1粒で2度おいしいと言えるが悪く言えば統一できなかったともいえる。
      上記でバトル部分のご都合主義的なものがあると触れているがご都合主義が発動するヒロインとそうじゃないヒロインがいるのでまるでアンソロジー作品のように1つの題材を複数の人間が書きそれを乱雑にまとめただけに見えるのが問題点と言える。
      メタ的な話になってしまうがシナリオライター同士でどこまでネタに走るか、シリアスな部分を残すかの連携が上手くいかなかった為に担当したキャラ毎のシナリオによって温度差ができてしまったのではないかと思われる。

総評

一見ぶっ飛んだ設定のバカエロゲーに見せかけて、シリアスな物語が展開されていく作品なのでそこを受け止められるかによって評価が変わる。
タイトルを見て気楽に楽しめるゲームだと思って購入したプレイヤーからすれば唐突なシリアスや重い展開は期待外れであり、そこを許容できるかそうでないかが個人個人のゲームとしての評価を分ける部分であろう。
しかしインターネットで情報が簡単に行き来し獲得できる現代だからこそタイトルはバカゲーっぽいが中身は一味違うゲームとして有名になりプレイ人数が増え結果的にはアニメ化や漫画化したりするなど商業的には大成功した作品と言える。
総じて前述したエロに全振りしたぶっ飛んだ世界観こそ許容するという大前提はあるが、それさえ受け止めることができるのであれば、笑いあり、愛あり、涙あり、エロありの濃厚な物語を存分に楽しめる作品と言えるだろう。


余談

  • メインクリエイターは本作以前に同人サークル「はとのす式製作所」で活動していた。
    • このサークルで発売されたタイトル『雨衣カノジョ』のポスターが、本作の主人公の部屋に貼られている。
    • 公式同人誌『ぬきたしお疲れ様本』等もこちらのサークル名義で発売されている。
  • 2020年3月に放送されたテレビ番組『勇者ああああ』の「勇者ああああ GAME OF THE YEAR 2019」において、芸人であるマヂカルラブリーの野田クリスタルによる本作の紹介が行われた*1
    • 他のノミネート作品がゲーム映像やパッケージを直接出して紹介していたのに対し、ごりっごりのエロゲーである本作を深夜番組とはいえ、地上波で直接紹介できるわけがないため、野田クリスタルが描いた下手過ぎて全く似てない登場人物の似顔絵によって、紹介が行われた。
      • 前述した「ギロチンの刑」なども紹介され、まさかの地上波デビューにSNS上では話題となった。
    • その後、2020年8月に同番組で行われた「徹底討論! ド~なる!? ギャルゲーの未来」において、またしても野田クリスタルが「一番泣けるゲーム」として、下手くそな似顔絵と共に『ぬきたし』を紹介。
      • しかし、ヒロインの一人である畔美岬の紹介と共にア〇メ漱石のパワーワードが出た時点で、番組スタッフから「ここ広げても使えない」と言われてしまい、野田クリスタルによる『ぬきたし』の紹介は殆どカットされてしまった。
      • ちなみにこの回に共演していた天津の向曰く、この番組で野田クリスタルが本作をプレゼンしたことによって、下記のプレミア化に拍車をかけた模様。
  • 動画サイト・SNS等を通じて普段エロゲをしない層にまで広がり、初回版や予約特典はプレミア価格となっている。
    • 続編の発売時に『1+2』のセット販売もされたが、そちらもプレミア化している。DL版が手を出しやすいだろう。
    • また、本作の影響からか同人サークル時代のオリジナルタイトルもプレミア化している。
  • 2020年12月25日からまんが王国にて、コミカライズ版が連載開始された。
    • タイトルは『ぬきたし-抜きゲーみたいな島に住んでるわたしはどうすりゃいいですか?-』。原作の「貧乳」部分はひらがなの「わたし」に変更されている。
    • 2021年10月16日にはウルトラジャンプでも連載開始されることが発表された。
  • 2021年3月11日に稼働したマーベラスのAC音ゲー『WACCA Lily R』に本作の1stOP主題歌「非実在系女子達はどうすりゃいいですか?」が収録されてしまった。
  • 2024年1月28日にはアニメ化が発表された。
    • タイトルは『ぬきたし THE ANIMATION』、サブタイトルは『▢▢▢▢みたいな島に住んでる▢▢▢▢▢▢▢はどうすりゃいいですか?』と白く塗りつぶした異例の形になっている。もう何が何だか分からねぇよ

その後の展開

  • 2022年1月28日にQruppoの新作として『ヘンタイ・プリズン』が発売。
  • 2023年6月23日には『NUKITASHI』のタイトルで英語・中国語対応でSteam版が発売。パブリッシャーはShiravune。
    • ただし、日本語はボイスしかサポートしておらず、いわゆる「おま語」となっている。
  • 2024年6月28日にリマスター版『抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか? 1+2 Remaster パック』が発売された。
最終更新:2024年06月28日 00:05

*1 厳密にはノミネートしたのは続編の『2』であるが、紹介した内容は本作のもの。