NieR Re[in]carnation ストーリー資料館

記録:欺瞞の街

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nier_rein

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キャラクター  グリフ



第1話

瓦礫が転がり荒れ果てた街。
燻る黒煙があちこちから立ち昇っています。

それは、あるテロ組織と軍との戦闘の痕。

その戦いに勝利した軍の小隊を率いていた男は、
煙の中、隊員達に指示を出していました。


生存者の捜索、負傷者の手当、残党への警戒……
一通り指示を出した男は、自らも捜索に加わります。

程なくして、 廃墟の中で小さく震える
幼い姉妹を発見しました。


姉と思しき少女は怯えながらも、
妹を抱きしめたまま、男を睨みつけます。

男は少女達の警戒を解くために、
優しく微笑み、ポケットから飴玉を差し出しました。

しかし、よほど怖い目にあったのでしょう。
少女は妹を抱きしめたまま、
警戒を解こうとはしません。


しばらく膠着状態が続き、沈黙が場を支配します。

..................グゥ。

沈黙を破ったのは、少女のお腹の音でした。


男は思わず吹き出してしまいましたが、
すぐに「失礼」と、レディに非礼を詫びます。

少女は顔を赤らめながら、
「妹に食べるものを」と呟きました。
どんなことでもするから、と......


男は再び、優しく微笑みました。
駆け引きではない、心からの笑みでした。

「では、拠点の掃除を頼む」


少女は男のその言葉に頷き、
これで妹を守れると、喜びに顔を緩ませます。


幼いながらも守るべき者のために戦う少女。

同じく隊員達の命を守るべき立場にある男は、
その小さき同志に敬意を示すことを、
心に誓うのでした。


第2話

少女が隊の仮設拠点を掃除し始めてから、
数日が経ちました。

妹の為、一所懸命に掃除に励んでいます。

その姿は、隊員達の数少ない癒しとなり、
少女は、たちまち隊のアイドルとなりました。


隊員達は、少女とすれ違う度に
ガムやクッキーなどを与えようとします。

しかし、少女は
「お給料はもう、もらっているから」と
それを受取ろうとはしませんでした。


少女に掃除を命じた男は、
そんな少女と隊員達のやり取りを見て、
手にした飴玉をこっそりとポケットに戻します。

そして、「ご苦労様」とだけ声をかけ、
通信室に入っていきました。


男は部屋に入るなり、
部下から電報を受け取ります。

それは、軍の本部から送られてきた
テロ組織についての報告。

そこには、組織が購入した武器の記録、
次の襲撃の予想地点と日時などが
記載されていました。


男はその情報を基に、慎重に作戦を思案します。
自分が率いる小隊の被害を最小限に抑えるために。

そこに、新たな通信が入りました。
すぐさま部下が文字に起こします。


「敵ハ 子供ヲ スパイ ニ シテイル 注意サレタシ」

男は顔を上げ、部屋の外を掃除していた少女に
視線を向けます。

少女は男の視線に気が付くと、
小さく頭を下げました。

傍らにいた妹は男に向かって、
無邪気に手を振っています。


男はそれに応えながら、
たった今、頭に浮かんだ疑念を打ち消そうと
次の作戦の思案を再開させるのでした。


第3話

本部からの通信を受けたその夜。
男は自室で、次の作戦の詳細を記した
書類を作成していました。


目論みが上手くいけば、隊に被害を出さずに
テロ組織を壊滅に追い込むことができる。
男はそう確信し、ペンを走らせます。

男が書類を書き上げ、ペンを置いたとき、
部屋に少女が訪ねてきました。


男は咄嗟に書類を、机の引き出しに仕舞います。

そして、「ここには慣れたかい?」と
優しく少女に尋ねました。


少女は頷いて、感謝を述べます。
おかげで、妹の笑顔がまた見られたと。
おかげで、妹が安心して眠れると。

そして、伏し目がちに続けました。
「おじさんは、危ない所に行っちゃうの?」と。


男は微笑み、必ず帰ってくることを約束します。

少女は「絶対だよ」と不安そうに言った後、
おやすみなさいと、部屋を出ていきました。


翌朝。
拠点から少女の姿が消えていました。

男の机を漁った痕跡を残して......

妹を一人置き去りにして......


第4話

男達の小隊は、軽傷者こそ出したものの
死者を一人も出すことなく、
テロ組織との戦闘に勝利しました。

これにより組織は壊滅。
隊員達は皆、笑顔で勝利を喜びます。


暗い表情を浮かべているのは男と、
少女の妹の二人だけでした。

妹は今にも泣きそうな様子で、
「おねぇちゃんは、どこ?」と
男に尋ねます。


男は、「お姉ちゃんは......」と言葉を詰まらせ、
その最期の姿を思い返しました。


少女はテロ組織のスパイでした。

それはまだ幼い少女が、
妹を守るために選んだ道だったのです。


しかし、少女は失敗しました。
男の部屋から盗んだ情報が、偽物だったから。

それこそが、男が自分の隊の犠牲を
最小限に抑えるための目論みでした。

誤った情報を掴んだテロ組織に
奇襲を仕掛けることで、
隊は大きな被害を出さずに勝利したのです。

ただ一つ、少女がテロ組織の報復を
受けてしまったことは誤算でした。

いいえ。男は充分にその可能性を考慮したうえで、
この作戦を実行に移したのです。

隊の被害と、少女の命を、冷徹に天秤にかけて......


結局男は、少女の妹を前に
それ以上、言葉を紡ぐことはできませんでした。


拳を握る男の耳に、
自分が守りたかった者達の歓声と
少女が守りたかった者の泣き声が
遠く響きます。


男はそれ以来ずっと、
ポケットに飴玉を入れ続けています。

自分が犠牲にしたものの重さを 忘れぬために......
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