※当wikiで使用している画像、情報等の権利は、株式会社スクウェア・エニックスに帰属します。削除依頼等への速やかな対応のため、当wikiからの内容の複写および他サイトへの無断転載を禁止します。
※スマートフォンからの閲覧で表示が崩れる場合は、ページ最下部の「最新の情報をみる」または「PC表示に切り替える」ボタンでのリロードをお試しください。
※スマートフォンからの閲覧で表示が崩れる場合は、ページ最下部の「最新の情報をみる」または「PC表示に切り替える」ボタンでのリロードをお試しください。
キャラクター | ![]() |

第1話
その一家は、貴族達が定めた理不尽な新法により、
一夜にして社会的弱者へと転落しました。
一夜にして社会的弱者へと転落しました。
真面目に勤め続けていたのに、突然職を失った父。
買い物に出ただけで、周囲から白い目で見られる母。
そして、学校にすら行けなくなってしまった娘。
買い物に出ただけで、周囲から白い目で見られる母。
そして、学校にすら行けなくなってしまった娘。
新法の施行以来、父と母は毎日のように、
互いの苛立ちとやり場のない怒りを
ぶつけ合うようになっていました。
互いの苛立ちとやり場のない怒りを
ぶつけ合うようになっていました。
たいそうな剣幕で口論する両親に、
まだ幼さの残る娘は何も言えませんでした。
まだ幼さの残る娘は何も言えませんでした。
しかし、娘は心の中で訴えています。
本当は二人に仲良くしてほしい。
家族で笑い合った、あの頃のように。
家族で笑い合った、あの頃のように。
「でも、私には何も......」
どうにもできない現実が、
娘の心をさらなる闇へと突き落とします。
娘の心をさらなる闇へと突き落とします。
その直後、娘はふと、
腰かけていた椅子から立ち上がりました。
何かを思い付いたようです。
腰かけていた椅子から立ち上がりました。
何かを思い付いたようです。
「これ」ならきっと父と母は仲直りしてくれる。
そんな思いに胸を躍らせながら、
娘は自分の部屋に駆け込んでいきました。
娘は自分の部屋に駆け込んでいきました。
第2話
父、母、娘。
どこにでもいそうな、ごく普通の家族。
どこにでもいそうな、ごく普通の家族。
その家族は、理不尽な法律によって、
貧困と差別を強制されるようになりました。
貧困と差別を強制されるようになりました。
みずからの不遇を呪いながら、
互いの鬱憤をぶつけあう父と母。
互いの鬱憤をぶつけあう父と母。
それに心を傷めていた娘は、
仲直りの策を思い付きました。
仲直りの策を思い付きました。
自分の部屋に駆け込んだ娘は、
薄汚れた紙を広げると、鉛筆を手に取ります。
薄汚れた紙を広げると、鉛筆を手に取ります。
娘は真剣な眼差しで、紙に鉛筆を走らせました。
それからほどなくして、
ようやく浮かび上がってくる全体像……
ようやく浮かび上がってくる全体像……
お世辞にも上手いとは言えない絵でしたが、
それは手を繋いだ父と母の姿でした。
それは手を繋いだ父と母の姿でした。
娘は精いっぱいの気持ちを込めて、
丁寧に絵を仕上げていきます。
丁寧に絵を仕上げていきます。
まだ皆が笑って暮らしていた頃の、
大切な記憶を思い返しながら……
大切な記憶を思い返しながら……
そして最後に描き込んだのは、
二人の優しい笑顔でした。
二人の優しい笑顔でした。
この絵のように、二人には仲直りしてほしい。
それだけが、 娘の願いなのです。
それだけが、 娘の願いなのです。
第3話
一生懸命に描いた、笑顔で手を繋ぐ父と母。
この絵を見せれば、
きっと二人は仲直りしてくれる。
きっとあの頃を思い出してくれる。
きっと二人は仲直りしてくれる。
きっとあの頃を思い出してくれる。
そんな期待を込めて、
テーブルでうつむいている母に、
娘は絵を差し出します。
テーブルでうつむいている母に、
娘は絵を差し出します。
しかし、父との喧嘩で苛立ちが収まらない母は、
無言で娘の絵を払いのけました。
無言で娘の絵を払いのけました。
そしてぼそりと呟きます。
「今は遊びに付き合う気分じゃない」と。
「今は遊びに付き合う気分じゃない」と。
母は娘を見ることもなく、
再びテーブルに目を落とします。
再びテーブルに目を落とします。
娘は何もする事ができず、
その場に立ち尽くします。
その場に立ち尽くします。
それからほんの少しして、娘は気が付きました。
自分の目から、大粒の涙が溢れていることに。
自分の目から、大粒の涙が溢れていることに。
誰に向ければいいか分からない悲しみが、
娘を追い立てます。
娘を追い立てます。
気付くと娘は、家の外へと駆け出していました。
娘の背後から微かに響く、父の怒声。
また母と揉めているのでしょう。
また母と揉めているのでしょう。
しかしその声は、もう娘には届きません。
第4話
母に冷たくされ、泣きながら家を駆け出した娘。
しばらく夜風に当たっているうちに、
揺れる心は少しだけ落ち着きを取り戻しました。
揺れる心は少しだけ落ち着きを取り戻しました。
娘は、両親に余計な心配をかけたくないと、
重い心を引きずりながら帰路につきます。
重い心を引きずりながら帰路につきます。
「まだ喧嘩してるのかな……」
少女が不安げに窓から家の中を覗くと、
テーブルを挟んで父と母が向かい合っていました。
テーブルを挟んで父と母が向かい合っていました。
母が、父に何かを話しているようです。
理不尽な法律による、差別と貧困を免れない暮らし。
もともと苦しかった生活はさらに困窮し、
精神的にもう限界だと顔を覆う母。
もともと苦しかった生活はさらに困窮し、
精神的にもう限界だと顔を覆う母。
父はそんな母を責めることもできず、
ただ黙って耳を傾けていました。
ただ黙って耳を傾けていました。
「本当は私だって......」
母は泣きながらそう言うと、
父を残して家の奥へと消えていきました。
父を残して家の奥へと消えていきました。
父は母を追うでもなく、
一枚の紙を広げ、じっと見つめています。
一枚の紙を広げ、じっと見つめています。
よく見ると、それは母が拒絶した、娘の絵でした。
父は静かに席を立つと、
娘のつたない絵を棚にしまいます。
娘のつたない絵を棚にしまいます。
その棚は、父が大事な物をしまっている場所。
娘はそれを知っていました。
娘はそれを知っていました。
まだ結婚する前に、母と交わしていた手紙。
娘が初めてプレゼントしてくれた押し花。
家族で出かけた海で拾った、綺麗な貝殻……
娘が初めてプレゼントしてくれた押し花。
家族で出かけた海で拾った、綺麗な貝殻……
自分だけではなかった。
本当は、父も母も、
家族みんなで笑って暮らすことを望んでいる。
本当は、父も母も、
家族みんなで笑って暮らすことを望んでいる。
泣きはらした目をこすり、娘は家の扉を開きます。
「ただいま」
少し元気になった娘の声が、家の中に響き渡りました。