NieR Re[in]carnation ストーリー資料館

記録:虚影の筵

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nier_rein

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キャラクター  リオン


第1話

少年が目を覚ましたのは、見慣れない部屋。

傍らには静かに行む機械の男と、
優しそうな微笑みを浮かべた女性がいます。


少年と男は、祖国が始めた戦争を止めるため、
国々を巡っていたはずでした。
しかし、今自分が居るのは民家のベッドの上。
いったい何があったのかと、少年は尋ねました。


男は独断を謝罪します。

発作で朦朧とした少年を抱えていた時、
この女性が助けてくれた、と言いました。


弱い体を不甲斐なく思いつつ、
少年はお礼を言います。


その時、ありがとうという言葉と一緒に、
こほっと咳が出ました。


咳き込む少年を、
女性は優しく横たわらせます。


病による疲弊のためか、
手の温もりのおかげか。

少年はすぐに眠りへ落ちていきます。


それは不意に訪れた、
安らぎの時間でした。


第2話

少年が療養を始めて、数日が経ちました。

時折、外から聞こえてくる喧騒。
街の人々が戦争のことを話しています。


日に日に燃え広がっていく戦火が、
いつかこの街をも呑み込むのではないかと。

不穏な空気を警戒してか、
護衛の男は見張りに立つようになりました。


国家間の争いを和平に導くため、
一刻も早く、架け橋となる勢力を造らなくては。

少年がそう思っても、
弱った体がそれを許しません。


助けるはずの人々に助けられている。
少年は高熱だけではなく、
自責の念にも苦しんでいました。

そんな彼を、甲斐甲斐しく看病する女性。
慈愛に満ちた言葉。
貧しくも暖かな食事。


少年はなぜか、それを懐かしく感じました。
考えを巡らせた彼は、
やがてひとつの思い出に辿り着きます。


それは幼き日の記憶。
今はもういない、母親の顔......


第3話

ゆっくりと体を休めたことで、
少年は少しずつ快方に向かいました。


ある日、少年の頭にふと疑問が浮かびます。

なぜ彼女はこれほど尽くしてくれるのだろう。
なぜ母のことを思い出したのだろう。


少年は男に事情を聞いていないか尋ねました。
男は頷き、伏せられた写真立ての方を示します。

写真立てには、一枚の家族写真が入っていました。


男はこの部屋の過去について話し始めます。
この国には、全国民のデータベースが存在し、
機械である男はそこへアクセス出来ました。


男は語ります。
女には家族の存在記録がある事。
そして、この部屋が女の子供のものである事。


写真の中で、幸せそうに笑う家族。

その一人が、戦火により命を落とした子供である事を。


少年が彼女に亡き母親を感じたように、
彼女もまた、
失った子供を少年に重ねていたのでしょう。


少年の胸に痛みが走りました。
病のためではありません。


安らぎの時間。

女性の献身。

見え隠れする愛情。


その理由は......
祖国が引き起こした戦争だったのです。


第4話

女性の献身は、少年に亡き子供の姿を重ねたもの。
そして子供を亡くした原因は、祖国の起こした戦争。

その事実が、少年の胸に重くのしかかります......


「行こう、僕はここにいてはいけない」
少年はそう言って身支度を整えると、
杖を支えになんとか立ち上がろうとしました。


男が少年の肩を支えると、遠くで大砲の音が轟きます。
それは命の失われる音。
覚えのある悲劇の足音が迫っています。

今にもこの家を飲み込みそうなほどに。


物音に気づいた女性が起き出してきました。

出ていくのを止めようとする彼女に、
少年は自身が王国の人間、
ひいては王家の血筋であることを告げます。


その途端、女性の表情は驚愕に染まり、
次第に、憎しみと怒りへ変わっていきました。


「あなた達のせいで、あの子は......」

喉から絞り出される、怨嗟の声。
変わらぬ過去に苦しむ母親の、悲鳴。


「私の責任です」
そう言って少年は頭を深く下げました。
女性の子が戦火に命を落としたのなら、
王族である自分は彼女に恨まれるべきだと......


――民家を去った少年の体はいまだ熱に苛まれ、
痛みは意識を塗り潰そうとします。

しかし彼は進み続けました。
憎悪をその背に負いながら......
戦いを止めるために。

この家を、守るために。


少年は......

二度と振り返りませんでした。
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