NieR Re[in]carnation ストーリー資料館

男囚の断章

最終更新:

nier_rein

- view
メンバー限定 登録/ログイン

※当wikiで使用している画像、情報等の権利は、株式会社スクウェア・エニックスに帰属します。削除依頼等への速やかな対応のため、当wikiからの内容の複写および他サイトへの無断転載を禁止します。
※スマートフォンからの閲覧で表示が崩れる場合は、ページ最下部の「最新の情報をみる」または「PC表示に切り替える」ボタンでのリロードをお試しください。


一章 Escape

夜の基地に、警報機の音がけたたましく鳴り響く。

「脱走兵が出た。可能であれば生け捕りにしろ」

盗んだ通信機から、指揮官の声が聞こえてくる。
様子をうかがおうと物陰から顔を出した瞬間、
サーチライトが頬をかすめた。

まずい……!

人の二倍はある巨大な機械の体。
その目は脱走兵を逃すまいと、闇夜の中で怪しく輝いていた。
一体、二体……徐々にその数が増えて行く。
私は気配を悟られないよう、ゆっくりと移動を始めた。

――何故こんなことになってしまったのか。
その理由はわかっている。すべては『花』のせいだ。
やつらは突如現れ、人々から幸せな生活を奪っていった。
私と妻からは、まだ幼い息子を……

復讐のため『花』と戦う兵士に志願したが、
人類は未だ勝機を見いだせないままでいた。
妻は戦うことに疲れたのか、最近はふさぎ込みがちになっている。
このままでは、私は彼女まで失ってしまうかもしれない。

八方ふさがりの現状を打破するため、
私は『花』に対する独自の調査を始めた。

情報を得るために向かったのは、基地の奥。
指揮官以上しか出入りできないエリアに入り、
サーバーから情報を盗み出す。

危険を冒した分、得られた情報は大きかった。

サーバーの奥深くに、 隠すように保存されていたデータ。
それは『花の巣』と呼ばれる、敵群生地の所在地を示している。

ここには何かある。私の直感がそう告げていた。

さらに深くデータに潜ろうとしたところ、
探知器に引っかかってしまい、私は逃亡を余儀なくされた。

物陰に隠れ、気配を殺し、基地の出口に近づいていく。
あと少しでここから脱出できる……

盗み出した情報を入れた携帯端末。
懐にしまったそれに、そっと触れた瞬間。
強烈な光が私の全身を照らす。

「脱走者発見」

温度の低い機械の声。
鉄の巨体がこちらへと迫って来る。

「くそっ……!」

さらに大きくなる警報機の音。
ここで捕まれば、すべてが水の泡になってしまう。

「武器を捨て、両手を上げなさい」

サーチライトの眩しさに目を細める。
私は基地から持ち出した剣の柄に手をかけた。

「そう焦るな。抵抗はしない」

武器を投げ捨てると、
それはがちゃんと大きな音を立てて地面に転がった。

「これでいいか?」

「――追跡対象者を拘束します」

機械は指揮官たちへ通信を入れる。
それから私を捕まえるため、こちらに一歩近づき――

「悪いが、 少し眠っててもらおう」

姿勢を低くし、機械の脚の間を通り抜ける。
そのまま相手の後ろに回り込み、腕の力だけで巨大な背中を上る。

「あった……!」

首の付け根にあるカバーを外すと、ソケットが姿を現す。
私はケーブルを使って、
懐から取り出した端末を機械の体へと直接繋いだ。

「マルウェアの侵入を確認。強制終了を実行」

持ち出した武器は剣だけではない。
こういった事態を予測し、
携帯端末に自己増殖型のウィルスを保存しておいたのだ。

機械の動きが止まるのと同時に、
剣を回収しその場から走り出す。

これ以上、大切なものを失わないため。
『花』との戦いに、終止符を打つために。
一縷の望みを抱き、私は『花の巣』へと向かった。

二章 Exploration

基地から盗み出した『花の巣』の情報。
携帯端末に入れたマップデータを頼りに、
私は長い道のりを進んだ。

データを見る限り、巣の制圧には成功しているようだ。
しかし、上官たちは1人として調査員を送り込んでいないらしい。

本来であれば『花』の生態を調べる絶好の機会なのだが……
どうも奇妙に感じる。

夜が明け朝を迎えたころ、
私は目的地である『花の巣』へと到着した。

周囲には何人かの遺体が転がっている。
ここを制圧するために送り込まれた兵士だろう。
戦いの跡がそこかしこに残されていたが、
私の目を引いたのは別のものだった。

見上げるほど巨大な建物。
雨風に晒され薄汚れてはいるが、
それは奇妙な荘厳さをまとっていた。

半壊している扉の隙間から、中へと侵入する。

「なんだ、ここは……」

建物内は薄暗く、果てが見えないほどに広い。
頑丈そうな壁は蔓でびっしり覆われていた。

崩れた窓から差し込むわずかな朝日を頼りに、奥へと進んでいく。
床には割れたガラスや、壊れたベンチの破片が転がっていた。

「ドウカ……ドウカ……」

ささやくような女の声が、どこかから聞こえてくる。

「……誰かいるのか?」

闇の中から返って来るのは沈黙だけ。
慎重に歩みを進めると、ようやく建物の果てが見えてくる。

「ジヒヲ……」

次に聞こえてきたのは男の声。
まさか複数の生存者がいるのだろうか。
人影を探し、あたりを見回した時。

「……!」

建物の最奥。
そこにいたのは、小さな『花』の幼体たちだった。

幼体の花弁に浮かんだ顔は、
苦悶の表情を浮かべながら言葉を唱え続けている。

「キュウサイヲ……」

何人もの声が重なる。
あれは『花』に食われた人間のなれの果てだ。
だが、彼ら自身に意思があるようには見えない。

――彼らは自ら喋っているのではない。
『花』に喋らされているのだ。

幼体たちは、人の顔が浮かびあがった花弁をゆっくり下に向ける。
頭を垂れたその姿は、何かに祈っているように見えた。

「ハハヨ……オタスケ……」

『花』の幼体が祈りをささげる先にあるのは、朽ち果てた祭壇。
そこに安置されていたもの。

「あれは――」

1枚の大きな肖像画に目がひきつけられる。

薄汚れているせいで
どんな人物が描かれているかはわからなかったが、
不思議と胸の奥をくすぐられるような感覚がした。

――何故こんな気持ちになるのだろう。

その疑問に答えてくれる者はいない。
建物の中には、囁くような祈りの声だけが響いていた。

No.3



No.4



No.5



喋々の男

おう、今日もやるか? カードならあるぞ。レートはいつも通りでいいだろ。は? なんだよ。063yに負けたから賭けるもんがないだろって? おいおい、なめてもらっちゃ困るな。あのあと大逆転して全部取り戻した……っつーのは、まあ嘘だ。大負けだよ、大負け。あいつ表情変わんねーから、やり辛いんだよなあ。けど、あんだけ大勝ちしたくせに「これだけでいい」って、テーブルから紙1枚ひょいっと取ってどっかに行ったんだよ。他に賭けたもんはぜーんぶ無事だ。変わったやつだよなあ。そりゃ確かに、俺ら囚人にとっちゃ紙は貴重品だけどよ……お? なんだなんだ? あいつ、奥さんのご機嫌取りに手紙書いて贈ってんのか? へぇ〜……それで紙だけ……なんだよ、意外と可愛いとこあんじゃねえか。

No.7



No.8



No.9



No.10

記事メニュー
ウィキ募集バナー