NieR Re[in]carnation ストーリー資料館

記録:蛮鼓の砦

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nier_rein

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キャラクター  アケハ



第1話

揺れる灯火、艶めく指先。
ある屋敷の一角で、女が爪の手入れをしていました。


その爪同様、艶やかに飾り立てられた装い。
しかし女の瞳は、花魁の如きその風貌に反して、
冷たい刃のような輝きを放っています。


その女の背後、屏風の影から男が顔を見せます。
彼は女の爪紅を見て、せせら笑うように言いました。


「存外、様になっているじゃあないか。
 とても人斬り鬼の姿とは思えん」

女は男の言葉にも表情を変えず、
磨き上げた爪に、軽く息を吹きかけます。


彼女の正体は、ある大名に忠誠を誓う暗殺者でした。
その花魁姿は標的を欺くための変装。
男の方も、彼女を標的の元へ運ぶ協力者です。


主君と対立する敵軍の総大将。
好色家で知られるその標的を始末すること。
それが今宵の彼女達の任務でした。

僅かなやり取りで段取りを確認した二人。
夜闇の中、血塗られた計画が動き始めました......


第2話

花魁に扮した暗殺者と、仲介人に扮した男は、
敵軍の総大将を殺す為、出立しました。
花魁が遊郭の外に出るのも、総大将の命とあれば訳もありません。


城に着き、二人が守衛に案内された先は豪奢な扉の前。
随伴する男はそこで止められ、女だけが奥に通されました。

女へと向かう、武士達の好色な視線。
男は「うまくやれ」とだけ言い残し、その場を後にします。

奥の間に一人通された女。
総大将は彼女を見て、悪辣な笑みを浮かべました。

「待ちわびたぞ」


その途端、武士達が女を取り押さえます。
身体の自由を奪われながらも、
女は冷静に総大将を見上げました。


その顔を見て、総大将は堪え切れずに笑い出します。
「音に聞く鬼とやらも、縛り上げればただの女子よ」


満足そうに哄笑する総大将は語りました。
貴様らの計画は看破している、
あの男、金を見せたら簡単に寝返ったぞ、と。


買収による裏切り。
女は敵陣の中に一人、
四面楚歌の状況に陥ってしまいました。


第3話

敵軍の大将を暗殺する為、
花魁に扮して敵陣に潜入した、暗殺者の女。

しかし彼女は工作員の裏切りにより、
捕縛されてしまいました。


縛られた女に向けられるのは、
間抜けな暗殺者に対する嘲りの視線。
無力化された女に対する下卑た笑い。


「では、花魁らしく仕事でもして貰おうか」
総大将の男はそう告げて、
背後の武士達の方へ振り返りました。

総大将と武士達が、顔を見合わせて大笑いすると――


とん。と、軽い音が響き、
奥の間は瞬く間に静寂に包まれました。

総大将の額に突き立っていたのは、一本の簪。
武士達が気付くと、
女の手を縛っていたはずの縄が切れています。


崩れ落ちる総大将の身体。
混乱の中、刀を抜く武士達。


わざと縛られたのは、
抵抗の出来ない振りをして、居合わせる敵を減らす為。
そして、爪を念入りに磨いたのは、拘束の縄を断ち切る為。


女は何もかも分かっていたかのように、
準備を済ませていたのです。


女はゆらりと、その手を構えました。
磨き上げた真紅の爪を、まるで獣の様に構えて。


太鼓の音が鳴り、守衛たちが押し寄せた時、
そこに立っていたのは血に濡れた一人の女だけでした。


第4話

暗殺者の女を裏切った男は、
その見返りとして多額の金を得ていました。


総大将の居城から離れた場所。
男は銭を数えながら、 ほころんだ表情を見せます。


「うまくやれ」
居城から去る時に男が言い残した言葉......
あれは暗殺者の女に向けたものではなく、
武士達に向けたものでした。


女はきっと、自分への言葉だと勘違いしたことだろう。
そう考えると、得も言われぬ可笑しさが
込み上げてくるのでした。


男が稼いだ銭を懐に納めようと、手を上げた瞬間。
その掌に激痛が走りました。

右手を地面へと縫い付ける一振りの刀。
背後には、彼が売ったはずの女が立っています。


男の冷や汗が右手の傷へ流れ込み、悲鳴が上がりました。
そして弁明と命乞いが、続け様に吐き出されます。


「娘が病気なんだ」
「治療の為に金が必要だったんだ」
しかし、男の語る『理由』など、
女にとってはどうでもいいことでした。


女は眉一つさえ動かさずに告げます。
これは私怨じゃあない、と。

「標的の中にはアンタも入ってた、それだけさ。
 裏切りなんて、最初から知ってたよ」


刃を振り上げながら、
女は串刺しになった工作員の手を一瞥します。

傷口から流れた血が、その爪を赤く染め上げていました。
まるで紅を差したかのように。


「アンタは、様にならないね」

それが、
工作員が聞いた最後の言葉でした。
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