NieR Re[in]carnation ストーリー資料館

兵士の断章

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nier_rein

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一章 炎 の

荒れた廃線路の上を進む。
どれほど歩いただろうか、腹が って仕方がない。

馬 みたいに い太陽、 い空、
線路の両 に立ち並ぶ向日 。
終わりが見えないほど無数に連なった花が、
地面を黄色く りつぶしていた。
その全てに、イライラする。

ようやく、国境の を くトン ルが見えてきた。
あの先に隣国の街がある。

――< 幼   作戦>。
かつてこの国は、優 な 伝子を持つ子供を集めるため、
隣国から多くの幼子を った。

作戦実行時、もっとも多くの子供たちが連れ去られた場所。
それがこのトン ルの先にある街……俺の本当の故 。
真実の手がかりを め、俺はそこへ向かう。

トン ルの に、ひとり女が立っていた。
歳は40代 ばだろうか。
手には 丈そうな を っていた。
彼女はじっと、線路 の向日 を見つめている。

俺は黙って彼女の背後を通り過ぎようとした――その時。

女は から剣を抜き、こちらに向けた。
俺はとっさに剣を え、それを弾き返す。

「軍人が、私の街に何の用だ」
女が、鋭い眼光でこちらを む。

「この国の人間は皆、大切な人をその剣に殺されてるんだ」
軍から脱走する時、そのまま持ってきた剣。
 には軍の 章が刻まれている。
隣国の彼女にとっては、 き敵軍の だ。

「…… いものだ」

女の眼が鋭く光る。その  。
 いの剣がぶつかり合い、あたりに甲高い金属音が響いた。
「そんな言葉、信じると思うか?」

 烈な女の剣。
認めたくはないが、俺は押されていた。
この女、 者じゃない!

女の りが  に入り、俺の身体は線路の上に投げ出された。
意 だけは手放すまいと耐えるが、上手く呼 ができない。

……目を くような 空と向日 を背に、
女がこちらを見下ろしていた。
そして彼女は、剣を振り上げる。

「団長ッ! 敵襲です!」

突然。トン ルの中から、女を呼ぶ声がした。
女はチッと 打ちをして、剣を下ろす。

――敵襲? まさか。
俺は何とか首を け、女の視線の先を追う。

見覚えのある軍服集団が、こちらに向かってくるのが見えた。
あれは、かつて俺が所属していた軍の諜報部隊。
軍から逃げた俺を追って、ここまで来たのだろう。

「ひとり残らず追い え! 向日 は つけるなよ」
女の号 と同時。
トン ルの内から、銃で武装した 人が飛び出してくる。
彼らは素早く 形を んで、諜報部隊と戦 を始めた。
まるで、本物の軍隊のように。

どうやら女の注意は、あの軍へ移ったらしい。
――安 すると同時に先ほど受けた が みだす。

 やけていく視界。
 のように く銃弾の音。
それは徐々に ざかっていった……

二章 向日 の子

「あんた、ぜんぜん綺麗に掃けてないじゃないか」
リビングの埃を箒で掃いていると、怒号が飛んでくる。

後ろを振り返ると、この家の主が立っていた。
2日前、廃線路の上で俺に襲いかかってきた女だ。

彼女は怪我をさせた詫びにと、
自宅の客間を俺に貸し与えてくれた。
……ところまではよかったが、
宿代のかわりに、掃除やらの雑用を押し付けてきたのだ。

「これから見回りに行ってくる。
 あんたはちゃんと掃除しておくんだよ」

――国境に位置するこの街は、
常に侵略の危機にさらされている。
彼女は自警団の団長として指揮を執り、
日々街の安全を護っているらしい。

俺にいきなり襲い掛かってきたのも、
街を侵略しに来た軍人だと勘違いしたからのようだ。

直後にやって来た諜報軍に始末されかけた俺を見て、
その 解は解けたというが……
これ以上、雑用をやらされる 合いはない!
こんな家、今夜にでも出て行ってやる……

腹立ちまぎれに箒で埃を き らかした時。
突然、ドンッと  が破れそうなほどの音が響き った。

俺は窓へ駆け寄り、外を く。
高 にあるこの家からは、街の風景が一望できる。

俺は物見 の上にある大 から、
巨大な水の が飛び出していくのを目撃した。
 音の正体はあれだ。

巨大な水の はトン ルの外 まで飛び、弾ける。
それから、どこまでも くような廃線路、
その両 に並ぶ向日 へと降り注いだ。

きらきらと水の粒が光り、 空を う。
その光景に、 俺は思わず目を奪われる。

「 ……この街の子供たちが    、敵国に連れ去られたんだ」
剣、それと銃。装 を整えながら、女が言う。
おそらく彼女は、
〈 幼   作戦〉のことを言っているのだろう。

「それで私たちは、連れ去られた子供の数だけ、
 街の入り口に向日 を えたんだよ」
線路に って立ち並ぶ向日 。
 われた子供たちのために えられたもの。
ならば、あの中には俺の向日 もあるのかもしれない……

ふと、ある光景が頭の中に かぶ。
 われた子供を い、向日 を見つめている男の姿。

そいつは、家 の を討つため俺がこの手で殺した軍人。
――だが、俺が大切に い けてきた両親は、
< 幼   作戦>で俺を った敵だった。

そして、あの男こそが、俺の本当の父親で……

「あの向日 の中にいる子たちの帰りを待っている人が、
 たくさんいるんだ。今でも、ずっと」
女の声で、俺は我に返った。

彼女の瞳は暗く沈んでいる。
俺は目を らして、その場を後にした。
そういう辛気臭い話に き込まれるのは、面倒だ。


深夜。
俺は 物をまとめ、家を抜け出した。

怪我も大したことはないし、雑用だってウンザリだ。
なにより俺は一刻も早く、
〈 幼      作戦〉について調べたかった。

街の大通りに出る。
少し れた場所を、ランプを持って歩く女の姿が見えた。

――彼女だ。
急いでいるのか、いつもと様子が違う。
俺は何かの に引っ られるように、彼女の後を付けた。

女が向かったのはトン ルの先、向日 の く線路 い。
ランプに照らされ、彼女の口が小さく開かれるのが見える。
向日 を前に、絞り出すようにして彼女が いた、その名前。

その名前は――
名前は。

俺は一歩、二歩、と後退る。
こんな風のない静かな夜では、聞き間違えようもない。

彼女は確かに、
向日 に向かって俺の名前を呼んだのだ。

ならば。
彼女は俺の――……

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