戻り川心中(短編集)

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戻り川心中(短編集) - (2018/04/23 (月) 04:45:21) の1つ前との変更点

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-分類:短編集 -初出:別記 -初刊:1980年/講談社 -刊行回数:4回(うち1回は再編集) -入手:入手可(電子書籍あり) *解題 [[花葬シリーズ]]のうち5編を収録した、連城三紀彦の第1短編集。 表題作「[[戻り川心中]]」が&bold(){第34回日本推理作家協会賞短編部門受賞}、第83回直木賞候補。 また短編集として第9回泉鏡花文学賞候補。 > 僕の家の小さな庭に、毎年、一つだけ時期を遅らせて咲く藤の花があります。 > 他の花より二ヶ月も遅れて、ひと房だけ、盛夏の焼けつくような光の中に、薄紫の小さな影を落とす花を見ていると、僕も人並みに〝命〟という言葉を想い浮かべたりします。季節に追いつけぬまま、人の命もそんな生い茂った葉のかたすみに繋がっているのかもしれない――日本人ならおよそ当り前のそんな感慨を、ミステリに借りて書いてみようと思ったのが、この短篇集におさめられた五つの物語の出発点でした。 >(単行本あとがきより) 連城三紀彦の代表作、国産ミステリを代表する短編集として、今なお名高い傑作中の傑作短編集。 刊行当時から非常に評価が高く、SRの会の1980年のランキングで1位。1985年の東西ミステリーベスト100では、刊行から僅か5年の新作でありながら、横溝正史『本陣殺人事件』(7位)、鮎川哲也『黒いトランク』(8位)、高木彬光『刺青殺人事件』(10位)などの名作と肩を並べる&bold(){9位}にランクインしている。 >&bold(){郷原} ベストテンに戻ると、九位の連城三紀彦『戻り川心中』。これは健闘しました。 >&bold(){内藤} ぼくはこれによって最近の若い連中の良識を認めたい。 >&bold(){権田} 連城さんには独特のムードがありますね。 >&bold(){瀬戸川} 『戻り川心中』は大正ロマンチシズム。 >&bold(){内藤} 小説に情感があふれています。注文を出すと、恋愛小説ももちろん素敵なんですが、そればっかりだと悲しい。ぜひぜひもっとミステリーを!(笑) >(「週刊文春」1985年9月5日号 「文春図書館特集 日本ミステリー・ベスト100」座談会より) 以降もオールタイムベスト投票では10位前後が定位置で、泡坂妻夫『亜愛一郎の狼狽』と短編集1位の座を争うのが基本。だいたい本格寄りのATBでは『亜愛一郎の狼狽』が勝ち、ミステリ全体のATBでは『戻り川心中』が勝つ。 ハルキ文庫版のみ、『[[夕萩心中>夕萩心中(短編集)]]』から「[[菊の塵]]」「[[花緋文字]]」「[[夕萩心中]]」を増補した花葬シリーズ完全版(当時)である。 > 大正から昭和初頭を背景に、流麗無類の美文で男と女の情念の世界が描かれている――それが、これらの物語を読みはじめた時の第一印象だろう。だが、その背後には、読者の常識を覆すようなミステリーとしての大胆極まる仕掛けが隠されている。その落差が生み出す甘美な眩暈、それは著者の作品からしか味わえない危険な快楽なのだ。 >(『東西ミステリーベスト100』2012年版 「『戻り川心中』うんちく」より 執筆者不明) 抒情性に裏打ちされた極度の意外性の背後に、緻密な伏線と〝狂人の論理〟が張り巡らされていることが、本格としてもオールタイムベスト短編集としての評価を得ている秘訣であろう。 > この短編集を貫いているのは、真相における倒錯の論理である。これは、サイコ・スリラーなどにおける「倒錯者の論理」とは別物であり、正確にいえば「論理的な倒錯」という表現になるだろう。類似品としては、G・K・チェスタトンのブラウン神父シリーズなどに見られる「逆説」が連想される。そして『戻り川心中』に収録された作品の場合、その論理は事件や謎の解明に従属するものではない。前述した意味でいうと、道具的に使用されるものではないのだ。論理は、見出された真相の中心にあって、真相の「姿」というべきものを支えている。その論理の倒錯が読者を驚かせもし、また納得させもする。 >(中略) > この「論理性」に着目すれば、連城につきまとう「文学的」「抒情的」といった冠を相対化できる。つまり、連城は、「論理」と同じように「心理」をいじくっているのではないのか。連城の「抒情」の舞台裏は、おそらく甘い液状のものではなく、冷たい硬さである。愛や憎しみや孤独という心理を解体し、その破片を拾い集めては並べ直し、様々な演算をほどこし、剰余を検算し、小数点以下を整理し、数式全体の姿を俯瞰して効果を整える。これは、曖昧な「感性」や勿体ぶった「芸術性」のタレ流しではない。皮肉で逃げ道のない打算であるし、誤解を恐れずにいえば、このような構築性こそが一級の通俗性と呼ばれるべきなのだ。 >(『本格ミステリ・ベスト100 1975→1994』より 執筆者:田中博) 現在は2005年に刊行された光文社文庫版が入手可能。 **各種ランキング順位 -年間 --週刊文春ミステリーベスト10 1980年版 &bold(){9位} --SRの会 ミステリベスト10(1980年) &bold(){1位} -オールタイム系 --週刊文春『東西ミステリーベスト100 1985年版』(文春文庫) &bold(){9位} --探偵小説研究会編『本格ミステリ・ベスト100 1975→1994』(東京創元社)&bold(){10位} --週刊文春『20世紀傑作ミステリーベスト10』(文春文庫PLUS) &bold(){11位} --週刊文春『東西ミステリーベスト100 2012年版』(文春文庫) &bold(){12位} **収録作 ***[[藤の香]] -初出:「幻影城」1978年8月号 -雑誌時挿絵:村上芳生 ***[[桔梗の宿]] -初出:「幻影城」1979年1月号 -雑誌時挿絵:嶋田善雄 ***[[桐の柩]] -初出:「幻影城」1979年5月号 -雑誌時挿絵:山本博通 ***[[白蓮の寺]] -初出:「幻影城」1979年6月号 -雑誌時挿絵:山本博通 ***[[戻り川心中]] -初出:「小説現代」1980年4月号 -雑誌時挿絵:朝倉摂 **刊行履歴 ***初刊:講談社/1980年9月20日発行 #amazon(4061307061,image,left) >[推理小説界に若き才筆の登場] >&u(){新探偵小説 &bold(){花 葬} 連作集} >花が散る時、儚い命も消えて行く >(単行本オビより) 単行本/225ページ/定価980円/絶版 あとがきあり 装画・装釘/村上芳正 ***文庫化:講談社文庫/1983年5月15日発行 #amazon(4061830635,image,left) >大正歌壇の寵児・苑田岳葉は二度の心中未遂事件で二人の女を死なせ、情死行のさまを二大傑作歌集に結実させたのち自害する。女たちを死に追いやってまで岳葉が求めたものとは? 凄絶な滅びの歌の韻律に秘められた男の野望と道連れにされる女の哀れを耽美に描きとめた秀作「戻り川心中」(日本推理作家協会賞受賞)他、花にまつわるミステリ四編。 >(文庫裏表紙より) 文庫/280ページ/定価359円+税/絶版 あとがきあり 解説/権田萬治 カバー装画/村上昴 デザイン/菊地信義 ***再編集:ハルキ文庫/1998年5月18日発行 #amazon(4894564106,image,left) >「桂川情死」「菖蒲心中」という、二つの心中未遂事件で、二人の女を死に追いやり、自らはその事件を歌に詠みあげて自害した大正の天才歌人・苑田岳葉。しかし心中事件と作品の間には、ある謎が秘められていた――。日本推理作家協会賞受賞の表題作をはじめ、花に託して、美しくも哀しい男女のはかない悲劇を詩情豊かに描き切る「花葬シリーズ」八篇を完全収録した傑作ミステリー群。 >(文庫裏表紙より) 日下三蔵編《連城三紀彦傑作推理コレクション》第1回配本 8編収録(「[[菊の塵]]」「[[花緋文字]]」「[[夕萩心中]]」を増補) 文庫/457ページ/定価838円+税/品切れ 解説/巽昌章 装画/宇野亜喜良 装幀/芦澤泰偉 ***再文庫化:光文社文庫/2006年1月20日発行 #amazon(4334740006,image,left) >大正歌壇の寵児・苑田岳葉。二度の心中未遂事件で、二人の女を死に追いやり、その情死行を歌に遺して自害した天才歌人。岳葉が真に愛したのは? 女たちを死なせてまで彼が求めたものとは? 歌に秘められた男の野望と道連れにされる女の哀れを描く表題作は、日本推理作家協会賞受賞の不朽の名作。耽美と詩情――ミステリ史上に輝く、花にまつわる傑作五編。 >(文庫裏表紙より) 文庫/301ページ/定価533円+税/入手可/電子書籍あり 解説/千街晶之 装画/黒川雅子 カバーデザイン/多田和博 #comment
-分類:短編集 -初出:別記 -初刊:1980年/講談社 -刊行回数:4回(うち1回は再編集) -入手:入手可(電子書籍あり) *解題 [[花葬シリーズ]]のうち5編を収録した、連城三紀彦の第1短編集。 表題作「[[戻り川心中]]」が&bold(){第34回日本推理作家協会賞短編部門受賞}、第83回直木賞候補。 また短編集として第9回泉鏡花文学賞候補。 > 僕の家の小さな庭に、毎年、一つだけ時期を遅らせて咲く藤の花があります。 > 他の花より二ヶ月も遅れて、ひと房だけ、盛夏の焼けつくような光の中に、薄紫の小さな影を落とす花を見ていると、僕も人並みに〝命〟という言葉を想い浮かべたりします。季節に追いつけぬまま、人の命もそんな生い茂った葉のかたすみに繋がっているのかもしれない――日本人ならおよそ当り前のそんな感慨を、ミステリに借りて書いてみようと思ったのが、この短篇集におさめられた五つの物語の出発点でした。 >(単行本あとがきより) 連城三紀彦の代表作、国産ミステリを代表する短編集として、今なお名高い傑作中の傑作短編集。 刊行当時から非常に評価が高く、SRの会の1980年のランキングで1位。1985年の東西ミステリーベスト100では、刊行から僅か5年の新作でありながら、横溝正史『本陣殺人事件』(7位)、鮎川哲也『黒いトランク』(8位)、高木彬光『刺青殺人事件』(10位)などの名作と肩を並べる&bold(){9位}にランクインしている。 >&bold(){郷原} ベストテンに戻ると、九位の連城三紀彦『戻り川心中』。これは健闘しました。 >&bold(){内藤} ぼくはこれによって最近の若い連中の良識を認めたい。 >&bold(){権田} 連城さんには独特のムードがありますね。 >&bold(){瀬戸川} 『戻り川心中』は大正ロマンチシズム。 >&bold(){内藤} 小説に情感があふれています。注文を出すと、恋愛小説ももちろん素敵なんですが、そればっかりだと悲しい。ぜひぜひもっとミステリーを!(笑) >(「週刊文春」1985年9月5日号 「文春図書館特集 日本ミステリー・ベスト100」座談会より) 以降もオールタイムベスト投票では10位前後が定位置で、泡坂妻夫『亜愛一郎の狼狽』と短編集1位の座を争うのが基本。だいたい本格寄りのATBでは『亜愛一郎の狼狽』が勝ち、ミステリ全体のATBでは『[[戻り川心中]]』が勝つ。 ハルキ文庫版のみ、『[[夕萩心中>夕萩心中(短編集)]]』から「[[菊の塵]]」「[[花緋文字]]」「[[夕萩心中]]」を増補した花葬シリーズ完全版(当時)である。 > 大正から昭和初頭を背景に、流麗無類の美文で男と女の情念の世界が描かれている――それが、これらの物語を読みはじめた時の第一印象だろう。だが、その背後には、読者の常識を覆すようなミステリーとしての大胆極まる仕掛けが隠されている。その落差が生み出す甘美な眩暈、それは著者の作品からしか味わえない危険な快楽なのだ。 >(『東西ミステリーベスト100』2012年版 「『戻り川心中』うんちく」より 執筆者不明) 抒情性に裏打ちされた極度の意外性の背後に、緻密な伏線と〝狂人の論理〟が張り巡らされていることが、本格としてもオールタイムベスト短編集としての評価を得ている秘訣であろう。 > この短編集を貫いているのは、真相における倒錯の論理である。これは、サイコ・スリラーなどにおける「倒錯者の論理」とは別物であり、正確にいえば「論理的な倒錯」という表現になるだろう。類似品としては、G・K・チェスタトンのブラウン神父シリーズなどに見られる「逆説」が連想される。そして『戻り川心中』に収録された作品の場合、その論理は事件や謎の解明に従属するものではない。前述した意味でいうと、道具的に使用されるものではないのだ。論理は、見出された真相の中心にあって、真相の「姿」というべきものを支えている。その論理の倒錯が読者を驚かせもし、また納得させもする。 >(中略) > この「論理性」に着目すれば、連城につきまとう「文学的」「抒情的」といった冠を相対化できる。つまり、連城は、「論理」と同じように「心理」をいじくっているのではないのか。連城の「抒情」の舞台裏は、おそらく甘い液状のものではなく、冷たい硬さである。愛や憎しみや孤独という心理を解体し、その破片を拾い集めては並べ直し、様々な演算をほどこし、剰余を検算し、小数点以下を整理し、数式全体の姿を俯瞰して効果を整える。これは、曖昧な「感性」や勿体ぶった「芸術性」のタレ流しではない。皮肉で逃げ道のない打算であるし、誤解を恐れずにいえば、このような構築性こそが一級の通俗性と呼ばれるべきなのだ。 >(『本格ミステリ・ベスト100 1975→1994』より 執筆者:田中博) 現在は2005年に刊行された光文社文庫版が入手可能。 **各種ランキング順位 -年間 --週刊文春ミステリーベスト10 1980年版 &bold(){9位} --SRの会 ミステリベスト10(1980年) &bold(){1位} -オールタイム系 --週刊文春『東西ミステリーベスト100 1985年版』(文春文庫) &bold(){9位} --探偵小説研究会編『本格ミステリ・ベスト100 1975→1994』(東京創元社)&bold(){10位} --週刊文春『20世紀傑作ミステリーベスト10』(文春文庫PLUS) &bold(){11位} --週刊文春『東西ミステリーベスト100 2012年版』(文春文庫) &bold(){12位} **収録作 ***[[藤の香]] -初出:「幻影城」1978年8月号 -雑誌時挿絵:村上芳生 ***[[桔梗の宿]] -初出:「幻影城」1979年1月号 -雑誌時挿絵:嶋田善雄 ***[[桐の柩]] -初出:「幻影城」1979年5月号 -雑誌時挿絵:山本博通 ***[[白蓮の寺]] -初出:「幻影城」1979年6月号 -雑誌時挿絵:山本博通 ***[[戻り川心中]] -初出:「小説現代」1980年4月号 -雑誌時挿絵:朝倉摂 **刊行履歴 ***初刊:講談社/1980年9月20日発行 #amazon(4061307061,image,left) >[推理小説界に若き才筆の登場] >&u(){新探偵小説 &bold(){花 葬} 連作集} >花が散る時、儚い命も消えて行く >(単行本オビより) 単行本/225ページ/定価980円/絶版 あとがきあり 装画・装釘/村上芳正 ***文庫化:講談社文庫/1983年5月15日発行 #amazon(4061830635,image,left) >大正歌壇の寵児・苑田岳葉は二度の心中未遂事件で二人の女を死なせ、情死行のさまを二大傑作歌集に結実させたのち自害する。女たちを死に追いやってまで岳葉が求めたものとは? 凄絶な滅びの歌の韻律に秘められた男の野望と道連れにされる女の哀れを耽美に描きとめた秀作「戻り川心中」(日本推理作家協会賞受賞)他、花にまつわるミステリ四編。 >(文庫裏表紙より) 文庫/280ページ/定価359円+税/絶版 あとがきあり 解説/権田萬治 カバー装画/村上昴 デザイン/菊地信義 ***再編集:ハルキ文庫/1998年5月18日発行 #amazon(4894564106,image,left) >「桂川情死」「菖蒲心中」という、二つの心中未遂事件で、二人の女を死に追いやり、自らはその事件を歌に詠みあげて自害した大正の天才歌人・苑田岳葉。しかし心中事件と作品の間には、ある謎が秘められていた――。日本推理作家協会賞受賞の表題作をはじめ、花に託して、美しくも哀しい男女のはかない悲劇を詩情豊かに描き切る「花葬シリーズ」八篇を完全収録した傑作ミステリー群。 >(文庫裏表紙より) 日下三蔵編《連城三紀彦傑作推理コレクション》第1回配本 8編収録(「[[菊の塵]]」「[[花緋文字]]」「[[夕萩心中]]」を増補) 文庫/457ページ/定価838円+税/品切れ 解説/巽昌章 装画/宇野亜喜良 装幀/芦澤泰偉 ***再文庫化:光文社文庫/2006年1月20日発行 #amazon(4334740006,image,left) >大正歌壇の寵児・苑田岳葉。二度の心中未遂事件で、二人の女を死に追いやり、その情死行を歌に遺して自害した天才歌人。岳葉が真に愛したのは? 女たちを死なせてまで彼が求めたものとは? 歌に秘められた男の野望と道連れにされる女の哀れを描く表題作は、日本推理作家協会賞受賞の不朽の名作。耽美と詩情――ミステリ史上に輝く、花にまつわる傑作五編。 >(文庫裏表紙より) 文庫/301ページ/定価533円+税/入手可/電子書籍あり 解説/千街晶之 装画/黒川雅子 カバーデザイン/多田和博 #comment

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