- 分類:エッセイ集(短編収録あり)
- 初出:別記
- 初刊:1985年/名古屋タイムズ社
- 刊行回数:2回
- 入手:古書のみ
解題
『
恋文』での直木賞受賞による連城フィーバーを受けて作られたと思われるエッセイ集。
タイトルはこれだが、特に『恋文』と強く関連するエッセイが中心なわけではない。
見逃しがちだが、「季刊SUN・SUN」掲載の掌編5編も収録されている。
単行本の装画は奥田瑛二が手掛けている。文庫版では装画が駒田寿郎に変更されたため、単行本表紙は巻頭エッセイ「夜明けの草笛」の末尾に小さく載っている。
収録内容
【エッセイ】
夜明けの草笛
奥田瑛二とのエピソード。
水の流れに
幼少期に実家を訪ねてきた水商売の女性たちの思い出話。
聖娼婦
こちらは高校生のときの水商売あがりの女性との思い出話。
母の背中
家族で富士山に登ったとき、母が父を背負って登ろうとしたエピソード。
母の手
父の暴力から逃げる際に自分の手を掴んだ母の手の力の強さの思い出話。
幻のニューヨーク
- 初出:「ジャパン・ニューヨーク」1985年VOL.15
母のアメリカ旅行の話。驚きのオチがつく。
芒の首
父の思い出。
酒との出会い、父との出会い
酒浸りだった父の記憶によるかつての酒への忌避感の話。
わが花鳥風月
身辺雑記。
独楽のススメ
釜山の月
韓国旅行の話。
雨蛙
身辺雑記。
花を買う
身辺雑記。
机あるのみ
密室ものを書かないのは室内装飾の描写が苦手なせい、という話。
思い出音痴
眠れなくなる本
珍しい読書エッセイ。この中で〝最も推理小説らしい推理小説〟として、鮎川哲也『黒いトランク』、森村誠一『虚構の空路』、泡坂妻夫『乱れからくり』を挙げている。タイトルの〝眠れなくなる本〟はフレデリック・フォーサイス『ジャッカルの日』。
初夢来信
身辺雑記。
家出の季節
最短記録の家出の思い出話。
革ジャンのベスト・ドレッサー
北方謙三との往復書簡の片割れ。
線路の向こう側
落合恵子『A列車で行こう』の感想文。
泡坂妻夫――活字づくりの寄席
- 初出:「波」1983年7月号
- 泡坂妻夫『妖女のねむり』角川文庫版解説
- KAWADE夢ムック『総特集 泡坂妻夫』収録
当世風シンデレラたちへ
現代女性へのアドバイス的な文章。
カタカナ世代の漢字の〝恋〟
身辺雑記。
戦争の「罪」と「悲劇」
『
敗北への凱旋』に対する中国からの引き揚げ経験者の読者から電話の話。
〝出たがらない〟病
直木賞受賞での騒ぎに対する居心地の悪さの話。
映画と原作
映画『もどり川』について。
トリュフォーへのオマージュ
フランソワ・トリュフォー(映画監督)論。
『乱』――黒澤映画で初めて見た〈人間の顔〉
黒澤明の映画『乱』の感想。
【対談】
林真理子×連城三紀彦
- 初出:「名古屋タイムズ」1985年5月22日~31日
奥田瑛二×連城三紀彦
- 初出:「名古屋タイムズ」1985年6月25日~7月4日
【小説】
刊行履歴
初刊:名古屋タイムズ社/1985年10月15日発行
直木賞作家・連城三紀彦
初のエッセー集&小説&対談 林真理子 奥田瑛二
(単行本オビより)
単行本/222ページ/定価980円/絶版
装画・装丁・挿画/奥田瑛二
文庫化:文春文庫/1988年6月10日発行
戦後まもなく下宿業を営んできた著者の家には、心優しき娼婦たちが集まっていた。彼女たちの悩みを幼時から聞いて育ったことが、後年女性心理を描くにあたって役立ったのか。――名作「恋文」に至る過程を初めて明かしたエッセイ類に林真理子・奥田瑛二両氏との対談、短篇小説連作を加えて贈る人気作家のすべて。
(文庫裏表紙より)
文庫/222ページ/定価320円/絶版
解説/中村康生(名古屋タイムズ記者)
カバー/駒田寿郎
最終更新:2016年03月14日 00:36