たそがれ色の微笑(短編集)

  • 分類:短編集
  • 初出:別記(全て「小説新潮」)
  • 初刊:1989年/新潮社
  • 刊行回数:2回
  • 入手:古書のみ

解題

恋文』『もうひとつの恋文』に続く、「小説新潮」発表作を集めた短編集。
と言っても家族小説や童話もあり、恋愛短編集というより、〝幸福〟を統一テーマにした短編集というべきだろう。

 真面目にテーマを考えて小説を書いたことがありません。思いついた話を何とかまとめるだけで精一杯です。
 それでも一年もしてふっと読み返したりすると、その時々に考えていたことがあからさまに文に出ていて思わず顔が赤くなることがあります。
 この本に収められた五つの短篇を読み返してみて、もしかしたらこれを書いていた頃僕は幸福について考えていたのかもしれないと思いました。「幸福とは何か」と訊かれたら、たぶんこの五篇が僕の答えになるだろうと。
 僕の考える幸福というのは、「金色の落葉」であり、「夕暮れの中の笑顔」や「白い花」であり、本当の色からちょっと薄まった「水色の鳥」なのです。
(単行本あとがきより)

文庫版の解説を書いている白鳥あかねは、『もどり川』『恋文』など神代辰巳監督作品に多く携わった映画スクリプター・脚本家。表題作「たそがれ色の微笑」についてさらりと書かれた一節がなかなか強烈である。

 主人公がクラブから帰って来て深夜鏡に向う描写は、目を背けたくなる程女心の核心を衝いている。やはりこの作家は誰かが云っていたように、自分の中に子宮を持っているらしい。
(新潮文庫版 白鳥あかね「連城さんと私」より)

白蘭」は自身での舞台化を前提に書かれた作品。「風の矢」は新美南吉風の童話を指向して書かれたものであるらしい。また単行本の初出一覧では「たそがれ色の微笑」の初出が1986年7月号になっているが、1987年7月号が正しい。

現在、「白蘭」は『連城三紀彦レジェンド2』で、「水色の鳥」は『落日の門 連城三紀彦傑作集2』で読める。

収録作

落葉遊び

  • 初出:「小説新潮」1987年1月号
  • 雑誌時挿絵:安西水丸

たそがれ色の微笑

  • 初出:「小説新潮」1987年7月号
  • 雑誌時挿絵:安西水丸

白蘭

  • 初出:「小説新潮」1988年10月号
  • 雑誌時挿絵:長友啓典

水色の鳥

  • 初出:「小説新潮」1989年2月号
  • 雑誌時挿絵:村上みどり

風の矢

  • 初出:「小説新潮」1986年6月号
  • 雑誌時挿絵:梶山俊夫

刊行履歴

初刊:新潮社/1989年6月20日発行


「幸福とは何か」と訊かれたら
たぶんこの五篇が
僕の答えになるだろう
(単行本初版オビより)

単行本/212ページ/定価971円+税/絶版
あとがきあり
装画/MIZU

文庫化:新潮文庫/1992年4月25日発行


十五年前、わずか一年で結婚生活に失敗して以来、ずっと独り身を続けてきた四十七歳の女性弁護士撩子。大学時代の友人に連れられていったホスト・クラブの化粧室で、撩子は、突然、唇を奪われた。相手は爽やかな笑顔の青年宮島ヒデジ。彼女は、ヒデの境遇を聞くうちに麻疹にかかったように、彼に一目惚れをしていた……。表題作を初め、大人の愛のかたちを描く5編を収める短編集。
(文庫裏表紙より)

文庫/235ページ/定価311円+税/絶版
連城さんと私/白鳥あかね(スクリプター)
カバー/升たか

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最終更新:2018年12月23日 21:58