- 分類:短編集
- 初出:別記
- 初刊:1997年/中央公論社
- 刊行回数:2回
- 入手:古書のみ
解題
88年から97年にかけて中央公論社の雑誌に発表された6編に、掌編4編を併録した短編集。
連城氏の作家デビューがミステリィであったのは周知のことだろう。昭和五十三年、探偵小説専門誌と謳われていた『幻影城』の新人賞に入選した「
変調二人羽織」がデビュー作で、昭和五十六年には短編「
戻り川心中」で日本推理作家協会賞を受賞している。現在では恋愛小説が創作の中心だが、結末への伏線や意外性溢れる物語など、ミステリィの手法が巧みに用いられてきた。それがまたいっそう、どんな展開でどんな結末を迎えるのか予想もつかない、恋愛関係の不可思議を際立たせていくのだ。
(中公文庫版 山前譲「解説」より)
ちなみに中公文庫版の山前譲の解説は「二十一世紀という新しい時代が来たからといって、」と時事ネタで始まるが、残念ながら中公文庫版の出た2000年はまだ20世紀である。
掌編の初出誌のうち、「サントリークォータリー」はサントリーの、「相鉄瓦版」は相模鉄道グループの、それぞれPR誌。また、中央公論社系の雑誌が初出の短編はほかに「
夢路より」があるが、一編だけ漏れた理由は不明。
単行本・文庫とも、目次では収録10編が4つに区切られている。区切りの意味はもうひとつはっきりしないが、「中央公論文芸特集」初出の25ページほどの三編、それに比べるとやや長めの40ページ前後の二編、掌編四編、そして〆の一編、という長さでの区切りだったのかもしれない。
収録作
- 初出:「中央公論文芸特集」1988年冬季号
- 雑誌時挿絵:吉原英雄
- 初出:「中央公論文芸特集」1989年夏季号
- 雑誌時挿絵:宇佐美圭司
- 初出:「中央公論文芸特集」1990年春季号
- 雑誌時挿絵:中西夏之
- 初出:「小説中公」1993年10月号(「幾何学模様」改題)
- 雑誌時挿絵:荒井冨美子
- 初出:「婦人公論」1997年1月号
- 雑誌時挿絵:木村桂子
- 初出:「サントリークォータリー」1997年第54号
- 雑誌時挿絵:堀内慶子
- 初出:「サントリークォータリー」1997年第55号
- 雑誌時挿絵:松永謙一
- 初出:「季刊SUN・SUN」1994年春号
- 雑誌時挿絵:川村昭人
- 初出:「婦人公論」1997年10月号(「砂の痕」改題)
- 雑誌時挿絵:木村桂子
刊行履歴
初刊:中央公論社/1997年11月7日発行
あなたへの愛の言葉も、
不倫の告白も、
ぜんぶ嘘。
連城三紀彦最新作品集
(単行本オビより)
単行本/245ページ/定価1400円+税/絶版
装丁/上原ゼンジ 写真/アイピーエス
文庫化:中公文庫/2000年9月25日発行
私に結婚を申し込んだ男には、私より愛している女がいます。その女は、男より五歳年上で、ブランド品を買い与え、けれど肉体関係はなく――。見知らぬ女からかかってきた電話を聞く杉崎友江は、次第に怯えにも似た感情を抱き始める……(
年上の女)。純粋ゆえに残酷な愛のかたちを描く十篇。
(文庫裏表紙より)
文庫/262ページ/定価552円+税/絶版
解説/山前譲
カバー画/荻野大輔
最終更新:2017年10月17日 02:48