虹のような黒

  • 分類:長編小説
  • 初出:「週刊大衆」2002年10月28日号~2003年7月7日号(全36回)
  • 挿絵:連城三紀彦
  • 初刊:2019年/幻戯書房
  • 入手:入手可

あらすじ

「今日は別れ話なのよ」
 男が運ばれてきたコーヒーに口をつけるのを待って、紀子は言った。

大学教授の矢萩と不倫関係にある大学院生の紀子は、矢萩との結婚のため喫茶店で恋人の沢井に別れ話を切り出したところ、沢井から奇妙な絵を見せられる。紀子と矢萩の情事を描いたように見えるその絵は、矢萩やゼミ生の元にも何枚も送りつけられていた。さらに紀子は喫茶店の窓から、矢萩の奇妙な行動を目撃する……。そして二日後、矢萩の研究室でレイプ事件が発生する。犯人は密室状態の研究室にどこからともなく現れ、そして消えたのだ……。

登場人物

  • 麻木紀子
    • 大学院生。
  • 沢井彰一
    • 紀子の恋人。出版社の社員。
  • 矢萩浩三
    • 聖英大学英文学科教授。
  • 海津量太
    • 矢萩のゼミ生。
  • 安田優也
    • 矢萩のゼミ生。
  • 犬飼有美
    • 矢萩のゼミ生。
  • 光瀬紗枝
    • 矢萩のゼミ生。
  • 矢萩絢子
    • 矢萩の妻。

解題

2002年から2003年にかけて双葉社の「週刊大衆」で連載された長編。ジャンル表記は《官能ミステリー》。
21世紀に書かれた4長編の最初の作品。なんと連載の挿絵も全て連城三紀彦自身が手掛けた

レイプ事件をめぐる、連城作品では非常に珍しいフーダニットに主眼を置いたミステリである。
犯人探し、密室からの人間消失など、ミステリらしいガジェットを揃えつつ、愛欲に翻弄される人間模様をミステリーとして描いた作品と言うべきか。様々な事実が小出しにされ事件の様相が二転三転していく展開、終盤の畳みかけるような真相の反転、絵が重要なアイテムになるところなど、いかにも連城らしい長編である。

連載最終回には「2004年1月に単行本として刊行予定」の文字があり、2005年9月にも刊行予告が一度出たようだが、長らく未刊行のままだった。

2019年8月、連載終了から16年を経て幻戯書房から初単行本化。連載時の挿絵全72点も完全収録した愛蔵本として刊行され、さらに限定100部で天地と小口を黒く染めた特別版(同価格)が幻戯書房直接注文限定で販売された。

ちなみに連載4回目で初めて紀子の名字が登場した際は「麻井」になっているが、9回から「麻木」に変更されている。

刊行履歴

初刊:幻戯書房/2019年8月26日刊行予定


誰もが彼女を狙っている――。
大学祭の当日、英文学ゼミの教室で発生した陵辱事件。ばらまかれる怪文書、謎の猥褻画、五転六転する議論の応酬。いったい、あの「密室」で何が起こったのか?
連城三紀彦“最後の未刊長篇”を初書籍化。さらに、連載時(「週刊大衆」2002~2003年。全36回)に著者が毎回描き下ろした自筆挿画(全72点)を完全収録。本文と連動した挿画にによる著者ならではの企みに満ちた「仕掛け」にも注目いただきたい、ファン必携の愛蔵本。
(内容紹介より)

単行本/384ページ/定価3000円+税/入手可
解説/千街晶之
装幀/真田幸治 装画/連城三紀彦

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最終更新:2019年08月24日 22:42