- 分類:長編小説
- 初出:「東京新聞」朝刊 1998年7月6日~1999年8月14日
- 連載時挿絵:蓬田やすひろ
- 初刊:2000年/東京新聞出版局
- 刊行回数:2回
- 入手:古書のみ
あらすじ
「紅茶、もういいでしょ」
知子は、その朝も夫と娘にそう声をかけた。
十四歳の娘・水絵は、母と父のそれぞれに、相手が浮気をしていると告げていた。水絵の真意はどこにあるのか? 知子が娘の奇妙な言動をさぐるうちに、亡き母・ゆいの過去が浮かび上がってくる。ゆいが残したノートに記されていた過去とは……。
登場人物
- 小橋知子
- 小橋水絵
- 菅野ゆい
- 小橋行広
- 中川春美
- 山下シゲキ
- 田桐弥州夫
- 岡島
- 橘
- 瀬田豊次
- 知子が小学生の頃にゆいを訪ねていたガラス工場の男。
- 立原美樹
- 郁子
- アヤ乃
- 珠子
- 藤緒
- 学生
- 西山
- 大杉
- セイ
- 花車
- 狩谷梁平
- 善蔵
- エイ
- 石黒
解題
東京新聞朝刊に連載された女三代記の恋愛長編。タイトルは「ひか」と読む。
連城の生家の近くにあった中村遊廓をモデルにした作品である。いわく、泣けるドラマを目指したとのこと。
この作品には過去に名古屋に実在した中村遊廓が登場しますが、ドラマに合わせて現実の遊廓の歴史にも若干粉飾がほどこしてあり、資料的な価値はありません。この遊廓の近くで育った作者が、子供の頃見聞きしたいろいろな記憶を頼りに作りあげたフィクションであり、登場人物、舞台となる家や寺などはすべて作者の創造であることをお断りしておきます。
(単行本巻末より)
――遊廓は、以前から書きたい世界だったとか。
連城 ずっと興味を持っていて、ただ、この世界を本格的に書くのは初めてなんです。これまでも書いてきたように思われがちですが。水上勉さんの「五番町夕霧楼」なんかも大好きで。
――ご自宅が、遊廓のあるあたりだったということが関係ありますか。
連城 それはありますね。小さいころ、名古屋の中村遊廓の近くに住んでいて、子どものころから身近だったということはあると思います。もちろん遊廓自体は知りませんが、いつか書きたいと思っていたわけです。
(「中日新聞」1998年7月2日夕刊より)
刊行履歴
初刊:東京新聞出版局/2000年9月7日発行
濃密な情感で描く女三代
ある日突然、中学生の娘から夫が浮気していると聞かされた主婦、そして夫には妻が浮気していると告げた娘……
娘はなぜ家庭を崩壊するような嘘をついたのか? しかも娘は妊娠していた!
話は、夫の不可解な行動から祖母の生い立ち、主婦の出生の秘密へと展開する。昭和初期から現在にいたる女三世代の〝熱い血〟の流れ。
(単行本オビより)
単行本/527ページ/定価1800円+税/絶版
カバー装画/蓬田やすひろ 装丁/鈴木弘
文庫化:新潮文庫/2004年3月1日発行/上下巻
「お父さん、浮気してるわよ」中学三年の水絵の言葉に知子はギョッとした。水絵は父親にも「母さんは陶芸教室の先生と浮気している」と作り話をしていたのである。十四歳の娘のなかで何が起こっているのか? 古い鼈甲の櫛をめぐり、亡き母ゆいと夫の関係について煩悶する知子に、水絵は自分が妊娠四ヵ月であることを告白する――ミステリ・タッチで展開する、女三代の恋愛大河小説。
(文庫上巻裏表紙より)
四年前に亡くなった知子の母ゆいは、孫の水絵に遺言めいたノートを託していた。そこに綴られていたのは、哀しくも強かな女の性。十四歳で男を知り、不義の子を宿し、名古屋の遊廓で体を売って生きてきたゆい。知子は母の淫靡な過去に心乱れ、自分の出生の秘密に慄くが、水絵はゆいのように子供を産んで育てたいと言う――母娘孫、女三代の心の襞を緻密に描いた号泣必至の傑作長編!
(文庫下巻裏表紙より)
文庫/上巻287ページ・下巻397ページ/定価上巻438円+税、下巻552円+税/絶版
あとがきあり(文庫書き下ろし)
ダブル・イメージの迷宮/中島丈博(脚本家)
カバー装画/服部純栄 デザイン/新潮社装幀室
最終更新:2017年07月21日 22:33