変調二人羽織(短編集)

  • 分類:短編集
  • 初出:別記
  • 初刊:1981年/講談社
  • 刊行回数:4回(うち1回は再編集)
  • 入手:入手可(電子書籍あり)

解題

第3回幻影城新人賞入選のデビュー作「変調二人羽織」など5編を収録した第2短編集。
刊行順では『戻り川心中』が先になったが、事実上こちらが連城三紀彦の処女短編集である。

 こう書きならべて、僕に感慨らしきものがあるとすれば、それは死んだ父が語った一言ではないかと思います。
「ミステリはどれを読んでも犯人がすぐにわかってしまうので退屈だ」
 十年前、まだ僕が大学生だった頃、孤独癖が強く無口だった父が、珍しく自分の方から僕に語りかけてきた言葉です。そうは言いながら、ミステリは、後半生をほとんど寝たきりで通した父の、唯一の道楽といえるもので、父の思い出となると、まず泛ぶのはいつも枕もとに二三冊は散らばっていた推理小説のさまざまな表紙や題名です。
 同じ家に住みながら、言葉も気持も通い合う物は何もなかった父親だけれど、推理小説に屈みこんでいる物静かな背は好きだったから、それなら父が読んでも犯人のわからぬ推理小説を書いてみようか――そう気負いこんでわけもわからぬまま、原稿に対いました。これが、僕のミステリ事始です。
 残念ながら、書きあげたとき父はもう最期の床についていたのですが、この時の作品を後に改稿したものが、この短篇集に納められています。
(単行本あとがきより)

ちなみに「この時の作品を後に改稿したもの」は「依子の日記」のこと。

第3回吉川英治文学新人賞候補作。ちなみに第3回は候補作が公表されておらず、選評でも言及されていないが、第5回で『宵待草夜情』で受賞した際の選評に「これまでにも二度候補になっている。二度とも短編集であり」(佐野洋の選評より)とあり、『戻り川心中』が対象期間の第2回は候補作全てが判明しているため、本書が第3回の候補作であることは間違いないようだ。

ハルキ文庫版のみ、『密やかな喪服』から「消えた新幹線」「白い花」「密やかな喪服」「黒髪」を増補した9編収録の再編集版。
またハルキ文庫版の法月綸太郎による解説は、後に「謎解きが終ったら」と題され、『謎解きが終ったら 法月綸太郎ミステリー論集』(講談社、1998年)の表題作として収録されている。
現在は光文社文庫版が入手可能。

2015年に中国語版が出ている。→中国版amazon

各種ランキング順位

  • 探偵小説研究会編『本格ミステリ・ベスト100 1975→1994』(東京創元社)80位

収録作

変調二人羽織

  • 初出:「幻影城」1978年1月号
  • 雑誌時挿絵:山本博通

ある東京の扉

  • 初出:「幻影城」1978年3月号
  • 雑誌時挿絵:山本博通

六花の印

  • 初出:「幻影城」1978年5月号
  • 雑誌時挿絵:西岡保之

メビウスの環

  • 初出:「幻影城」1978年8月号
  • 雑誌時挿絵:大竹明輝

依子の日記

  • 初出:「オール讀物」1980年2月号
  • 雑誌時挿絵:中原脩

刊行履歴

初刊:講談社/1981年9月20日発行


本年度日本推理作家協会賞受賞
俊英・連城三紀彦
推理読者待望の最新本格探偵小説集!
本格推理の原点に帰ろう!
(単行本オビより)

単行本/217ページ/定価980円/絶版
あとがきあり
装画・装釘/村上芳正

文庫化:講談社文庫/1984年7月15日発行

大晦日の東京の空を幻のように飛んだ一羽の鶴。同じ頃、落語家伊呂八亭破鶴が引退記念の独演会で二人羽織を熱演中不審な死を遂げた。衆目のなか、しかもその瞬間、羽織の〝手〟は空を泳いでいた――。トリッキーな本格推理の魅力と透明な抒情性で連城ミステリの出発を告げた俊英の初期傑作短編集。
(文庫裏表紙より)

文庫/255ページ/定価360円/絶版
あとがきあり(単行本と同一内容)
解説/関口苑生
カバー装画/村上昴 デザイン/菊地信義

再編集:ハルキ文庫/1998年9月18日発行


引退を決意した落語家・伊呂八亭破鶴の最後の演目――それはごく少数の客を招いての奇妙な〝二人羽織〟だった。独演会の席上、破鶴は怪死を遂げる。集まった客は五人。うち四人までが彼を殺す動機を持っていた! 幻の探偵小説誌「幻影城」新人賞入選作である表題作をはじめ、二転三転する展開で、ミステリーの醍醐味を存分に堪能させてくれる全九篇を収録した傑作小説集。
(文庫裏表紙より)

日下三蔵編《連城三紀彦傑作推理コレクション》第3回配本
9編収録(「消えた新幹線」「白い花」「密やかな喪服」「黒髪」を増補)

文庫/404ページ/定価838円+税/品切れ
解説/法月綸太郎
装画/宇野亜喜良 装幀/芦澤泰偉

再文庫化:光文社文庫/2010年1月20日発行


東京の夜空に珍しく一羽の鶴が舞った夜、一人の落語家・伊呂八亭破鶴が殺された。舞台となった密室にいたのはいずれも破鶴に恨みを抱く関係者ばかり。捜査で続々と発覚する新事実。そして、衝撃の真相は――。伝説的探偵小説誌・幻影城の第三回新人賞を受賞した初期の傑作「変調二人羽織」を含む、読者を唸らせる連城ミステリー傑作五編を収録した永久保存版。
(文庫裏表紙より)

文庫/257ページ/定価514円+税/入手可/電子書籍あり
解説/島崎博
カバー写真/Ⓒorion/amanaimages カバーデザイン/多田和博

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最終更新:2017年03月29日 01:22