- 分類:長編小説
- 初出:「小説推理」1993年1月号・2月号
- 雑誌時挿絵:牧美也子
- 初刊:1994年/双葉社
- 刊行回数:2回
- 入手:古書のみ
あらすじ
彼女はゆっくりと夫の胸から包丁をぬいた。
荻窪のアパートで会社員の小幡勝彦が殺され、部屋に火が放たれた。容疑者として浮かんだのは小幡の妻・斐子と、愛人・高木安江。斐子は、かつて付き合いのあった弁護士・彩木の元を訪れ、自分が逮捕されたら弁護を引き受けてほしいと依頼するが……。
主な登場人物
- 小幡斐子
- 勝彦の妻。旧姓土田。6歳のとき、実母と養父を火事で亡くしている。
- 小幡勝彦
- 高木安江
- 彩木一利
- 弁護士。11年前に短い間だが斐子と交際していたことがある。
- 彩木祥子
- 白根圭一
- 川井美緒
- 遊上力
- 沖島
- 早川定夫
解題
中期作品であることに加え、タイトルが恋愛小説と紛らわしいためか埋もれた感の強い作品だが、評価は高い。
池上冬樹篇『ミステリ・ベスト201 日本篇』では、『私という名の変奏曲』とともに〝A級作品〟に認定されている。採点は人物★★★、描写力★★★★、謎・事件★★★★★、スリル★★★、カルト★★(五段階評価)。
ご存じのように連城作品では、男女の愛憎劇や人生における哀歓の模様が物語全編にわたり陰影深く描かれている。
だが、そればかりでなはなく、意欲的なテーマのもと、奇抜で斬新な趣向が、毎回凝らされていることに注目されたい。そのうえで、「謎に満ちた冒頭場面、なんども反転をくりかえしながら展開する中盤のサスペンス、そして周到な伏線により驚くような真相を見せるラスト」というミステリの醍醐味に満ちているのだ。こうした要素が小説の中で見事に融合し、驚愕や感動といった言葉では単純に語ることのできない面白さを満喫させてくれる。本書もまたそうした傑作のひとつ。
(『ミステリ・ベスト201 日本篇』より 執筆者:吉野仁)
多くのミステリファンが連城の名からまず想起するのは七〇~八〇年代の作品群だろうと思われるが、九〇年代の著者の執筆活動はもっと注目されるべきだろう。(中略)殺人罪で逮捕された女が重い刑に服したがっている謎を弁護士が探ってゆく『終章からの女』(一九九四年)は、ホワイダニット(動機探し)のミステリとしては著者の作品中でもトップクラスの驚愕度だ。
(『流れ星と遊んだころ』双葉文庫版 千街晶之「解説」より)
なお本作の双葉文庫版には、なぜかあらすじも解説もない(オビも元々なかったらしい)。
単行本のオビの裏表紙側には本文からの引用があるが、わりとネタバレ気味の箇所なので注意。
各種ランキング順位
刊行履歴
初刊:双葉社/1994年4月15日発行
【本格長編推理小説】
連城ミステリーの新しい魅力
劇的に逆転する一人の女の半生のドラマ
(単行本オビより)
単行本/297ページ/定価1553円+税/絶版
装画/牧美也子 装幀/岸顕樹郎
文庫化:双葉文庫/1998年4月15日発行
(文庫裏表紙あらすじなし)
文庫/309ページ/定価543円+税/絶版
解説なし
写真・デザイン/上原ゼンジ
最終更新:2017年07月12日 18:17