背中合わせ(短編集)

  • 分類:短編集
  • 初出:別記(全て「季刊SUN・SUN」)
  • 初刊:1993年/新潮文庫
  • 刊行回数:1回
  • 入手:古書のみ

解題

宗教団体「解脱会」の機関誌「季刊SUN・SUN」に掲載された掌編21編を集めた短編集。
一夜の櫛』に続く文庫オリジナルでの刊行。

 本書には、連城氏の小説の特徴である破天荒なほどの大ドンデン返しや大仕掛けのトリックはありません。ごくごくありふれた男女の感情の憤りや燻りから起こる、ささいな事件とも呼べないような事件があるばかりです。しかし、そのモチーフとして使われるいたずら電話や万引き、夫の浮気に悩まされる主婦といつも不機嫌な妻を持つタクシー運転手との会話といったディテイルには、いつもちょっとした仕掛けがめぐらされていて、その描き方の巧みさに連城氏ならではの味わいがあります。
(中略)
 ファンの方ならばすでに御存知の通り、連城氏は出家をされた真宗のお坊さんであります。この掌編集は、その宗教関係の小冊子に掲載されたものを纏めて一冊にしたものだそうです。ですからこの二十一の物語は小説のスタイルを借りた連城氏の法話なのかもしれないと納得しました。
(島田美恵子「解説」より)

多少の誤解があるため書いておくが、「解脱会」は連城の宗派である真宗大谷派とは無関係である。

なお、本書の収録作の発表期間には「季刊SUN・SUN」には合計24編が掲載されているが、そのうち1988年秋号掲載の「洗い張り」、1992年冬号掲載の「赤い蜂」、1993年夏号掲載の「まわり道」(本書収録の同題作品とは別作品)の3編が漏れることとなった。
また本書には「季刊SUN・SUN」1993年秋号の掲載作までが収録されているが、翌94年夏号で「季刊SUN・SUN」は一旦刊行を止め、1995年春号から「解脱増刊SUN・SUN」としてリニューアルされた。それに合わせて連城も後に『さざなみの家』にまとめられる連作をスタートさせたため、この間の3号分の掲載作(1993年冬号掲載の「片思い」、1994年春号掲載の「七年の嘘」、1994年夏号掲載の「花のない葉」)が宙に浮くことになった。うち「七年の嘘」は後に『年上の女』に収録されている。
単行本未収録となった5編は、2016年に刊行された同人誌『幻影城 終刊号』に掲載された。

収録作

優しい雨

  • 初出:「季刊SUN・SUN」1989年夏号

つぼみ

  • 初出:「季刊SUN・SUN」1988年春号

夏の影

  • 初出:「季刊SUN・SUN」1988年夏号

冬の顔

  • 初出:「季刊SUN・SUN」1988年冬号

まわり道

  • 初出:「季刊SUN・SUN」1989年春号

足音

  • 初出:「季刊SUN・SUN」1987年冬号

再会

  • 初出:「季刊SUN・SUN」1989年秋号

背中合わせ

  • 初出:「季刊SUN・SUN」1989年冬号

先輩

  • 初出:「季刊SUN・SUN」1990年春号

  • 初出:「季刊SUN・SUN」1990年夏号

背後の席

  • 初出:「季刊SUN・SUN」1990年秋号

誕生日

  • 初出:「季刊SUN・SUN」1990年冬号

  • 初出:「季刊SUN・SUN」1991年春号

鞄の中身

  • 初出:「季刊SUN・SUN」1991年夏号

彼岸花

  • 初出:「季刊SUN・SUN」1991年秋号

紙の靴

  • 初出:「季刊SUN・SUN」1991年冬号

いたずらな春

  • 初出:「季刊SUN・SUN」1992年春号

ねずみ花火

  • 初出:「季刊SUN・SUN」1992年夏号

あの時

  • 初出:「季刊SUN・SUN」1992年秋号

切符

  • 初出:「季刊SUN・SUN」1993年春号

ガラスの小さな輝き

  • 初出:「季刊SUN・SUN」1993年秋号

刊行履歴

初刊:新潮文庫/1993年10月25日発行

離婚するのかしないのか、夫と話し合う喫茶店。洋子と背中合わせの席から「馬鹿だな」という声が聞こえてきた。若い娘と向かい合って座る灰色のコートの背中。淋しそうなその肩を、洋子が忘れるはずもなかった――。意地悪な偶然に弄ばれ、かつての恋人の述懐を背中越しに聞かされる人妻の緊張を描く表題作を始め、ふとしたきっかけで日常の裏側を垣間見る女たちを描く21の短編。
(文庫裏表紙より)

文庫/267ページ/定価388円+税/絶版
解説/島田美恵子(フリーライター、関口苑生の妻)
カバー装画/管野研一 デザイン/新潮社装幀室

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最終更新:2017年07月17日 03:30