- 分類:短編集
- 初出:別記(全て「週刊小説」)
- 初刊:1993年/実業之日本社
- 刊行回数:3回
- 入手:入手可(電子書籍あり)
解題
『
夜よ鼠たちのために』に続く、「週刊小説」に掲載された7編を集めた短編集。発表時期は『夜鼠』刊行直後の1983年から、本書刊行と同年の1993年までと幅広い。
「週刊小説」に掲載された短編は全部で13編であり、この2冊に収録されたもので全てである。
単行本オビには「連城ミステリー・ワールドへようこそ」の文字が大きく書かれているものの、新潮文庫版の裏表紙のあらすじでは一言もミステリーだと書かれていない。実際のところはほぼ純粋なミステリ短編集である。「このミステリーがすごい!94年版」では34位。
証言集形式(「
瀆された目」)、官能サスペンス(「
美しい針」)、密室劇(「
路上の闇」)、誘拐もの(「
ぼくを見つけて」)、妻と愛人の対決(「
夜のもうひとつの顔」)、浮気(「
孤独な関係」)、画家・絵画もの(「
顔のない肖像画」)と、連城三紀彦が他の作品でも何度も用いている題材やテーマがあらかた入ったバラエティパック的短編集といえる。
新潮文庫版の鈴木邦彦の解説は、「
戻り川心中」や『
恋文』収録作(特に「
私の叔父さん」)に対し、
一切の断りなく豪快なネタバレをしているので、それらを未読のうちに本書を手に取った場合は要注意。
2016年8月、元版の出版社である実業之日本社文庫から復刊された。9月には電子書籍化。
解説は法月綸太郎。後に『法月綸太郎ミステリー塾 怒濤編 フェアプレイの向こう側』(講談社)に収録された。
収録作
刊行履歴
初刊:実業之日本社/1993年7月30日発行
連城ミステリー・ワールドへようこそ
謎を秘めた孤高の画家荻生仙太郎――その作品のオークションが開催された。そして会場では、奇妙な競売が進められていく……。人間心理の綾を巧妙な筆致で描く、名手の好短編集
(単行本オビより)
単行本/216ページ/定価1359円+税/絶版
カバーイラスト/井筒啓之 装幀/道信勝彦
文庫化:新潮文庫/1996年9月1日発行
『顔のない肖像画』――それを描いたのは、戦後画壇に彗星のごとく現われ、10年間の精力的な活動の後に死した孤高の画家、荻生仙太郎だった。その絵が個展から忽然と消えた後、彼の作品のオークションが開催されるが、競売は奇妙な展開を見せてゆく……。美術品をめぐる人間心理の綾を描く表題作をはじめ、緻密な構成と巧妙な筆致で男女の微妙に揺れ動く感情を綴る短編7編を収録。
(文庫裏表紙より)
文庫/276ページ/定価427円+税/絶版
解説/鈴木邦彦(沼津高専教授)
カバー装画/管野研一 デザイン/新潮社装幀室
再文庫化:実業之日本社文庫/2016年8月15日発行
謎は巧緻に仕組まれた。優れた美術品のように。
死後に注目された萩生仙太郎の絵画が、30年ぶりにオークションへ出品されることになった。そこには幻の傑作も出品されるらしい。萩生の絵に魅せられた美大生の旗野康彦は『顔のない肖像画』という絵を必ず競り落とすよう未亡人から依頼される。その肖像画は幻の傑作なのか、それとも知られざる理由が?(表題作)。究極の逆転ミステリー7編。
(文庫裏表紙より)
文庫/314ページ/定価620円+税/入手可/電子書籍あり
解説/法月綸太郎
カバーデザイン/山田満明 カバー写真/ⒸFoodcollection/amanaimages
最終更新:2022年02月23日 16:55